人か喰種か両方か   作:札幌ポテト

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お久しぶりです。

鎖骨って要はDMCのレッドクイーンみたいなもんか
→めっちゃかっこいいので採用


38話

戦闘区域から大きく外れた場所で、1人でバケモノと相対するのはエトだ。エトも間違いなくバケモノ側の存在ではあるのだが、今は少し違う。

 

「なるほどな、流石は私の父親と言ったところか」

 

部分的な赫者化はできる、だが完全体にはなれない。それだけの余裕がないからだ、自力はエトの方が遥かに上回っているのだが苦戦している。

エトの父親、不殺の梟である芳村功善はSSSを冠する最強の1人だ、むしろ全力でない状態でも相手できるエトがおかしい。

 

「……まだ立つか」

 

だが、所詮は操り人形である。あんていくを守る最恐の姿はそこにはない、感情のない機械的で単調な攻撃はエトに届かない。

雑魚を大量に倒すならば問題はない性能ではあるが、エトを相手取るとなれば色々と不足している。

 

だが、そんな事は向こうも分かっているだろう。

 

「(何をする気だ?)」

 

少し遠くから汽笛のような音がすると梟が構えた、まるで固定された砲台のように。

愚直過ぎる、避けることなど雑作もないだろう。Rc細胞による爆発力を活かした砲撃というのは見るだけでわかる、しかし当たらなければ意味がない。

 

「まさか……っ!?」

 

だからだろう、離れた戦地に確実に当たるように砲塔を向けている。レーザーの様な眩い光の奔流が、発射された。

エトは咄嗟にその光を遮る様に、庇った。今のエトはこの戦場を任せられているのもあるが、人の命を簡単に粗末に出来るほど非道になれない。

そんな事を見抜いての砲撃だった、これならば確実に彼女に当たる。

 

常人どころかグールですら消し炭にする熱量は、辺りに轟音を撒き散らしていた。

 

 

一部の瓦礫の表面程度とは言え溶かす程に高温な爆発は、当たりを地獄に変えている。

捜査官達の戦う戦場に放たれていれば間違いなく半数近くの被害を出しているであろう攻撃だ、その威力は凄まじい。

 

だが、CCGへと襲いかかる事はなかった。たった1人によって防ぎ切られたからだ。骨すら残らないだろう、だが受けてしまったのだ人形は砂塵の舞う瓦礫の中に、黒炭になっているであろう死体を探し始める。

 

操縦者の意思だろう、この玩具よりも間違いなくその方が使い勝手もいい。

だが、唐突にその人形の動きは止まる。

 

「笛の音……なるほど、操っているのはクラウンか?」

 

彼女が頭上から丸ごと梟を貫いたのだ、ブレードの様に尖らせた赫子で。

 

「まぁ、どうでも良い。父親の引導が渡せるんだ、後草れなく終わらせられる」

 

燃料切れを起こしていたのだろう、動きにぎこちなさが出ていた時にエトは刺し穿った。

そもそもエトにこの攻撃をなぜ耐えれたかというのもあるが、彼女は部分的に赫者化し盾を張れていたからだ。

砲撃の威力が分散するように馬鹿正直に受けるのではなく、撒き散らす様な盾を張った。

 

ただ彼女もただでさえ少ない体力を大幅に削った技でもある、それだけの威力があった。

 

「……呆気ないな」

 

だが、既に事切れている人形は破壊した。もう動く事はない。

 

「聞きたい事は今になって色々出て来る、歳をとったせいかもしれないが……まぁなんだ、親不孝な娘であったがお互い様か」

 

そもそもが喋ることすらできなかった状態にしていたのはエト自身だ、父親として意識したことなぞ一度としてない。自身を地下へ放って喫茶店をしていた男を父親と感じろという方が難しい。

 

だが、骸に話しかけるエトの表情は少し暗い。

 

「聞けなくなったが私は私で、自分なりに考えてみるよ」

 

そこから漏れる独白は、悲壮感もあれば前を向くという意思も感じる。

この歪んだ世界の形を破壊する、それを成し遂げだ後に何を探していくのかを考えなければならない。

 

その後の世界で、生きる事を頼まれてしまったのだから。

 

「こんな歳になっても、色々と知りたいからね」

 

ただどう生きていくかを、考える時間は今はない。

そのまま彼女は轟音の鳴り止まない戦場へかけて行った。

 

 

地下を走り出して時間も経ってきた、19区には既に侵入し順調に目的地へと向かえている。

 

「嫌な空気がしてきましたね、大丈夫ですか?」

 

「臭いが問題ない。行こう」

 

そして、もうそれが近いのを2人は察してきている。

明らかに雰囲気が変わっているのだ、空気の澱みは特に顕著でその臭いの元はすぐそこに感じる。

 

「……かなり地下まで伸びてるな」

 

そして、目の前に現れたのは巨大な肉の柱とそれにアブラムシのように大量に付いた卵だ。無論、その中には毒持ちの落とし子が見える。

目的の卵管、それは下に向かっているのがわかる。

 

「旧多は見当たりませんね」

 

だが、旧多が居る気配はない。

それどころかVやピエロの者もだ、多少はいてもおかしくないと身構えていた2人からすれば警戒のし過ぎであったのかもしれないが、それだけ戦場に人を送り込んでいるとも言える。

 

「居るとすれば、下だろうな」

 

2人はガスマスクを装着する、ここから先は毒の影響も出て来るだろう。いくらこの2人でも何があってもおかしくない、そのまま2人は肉の柱を伝って下へと降りていく。

 

「下に行くほど、空気も悪いな」

 

暗い空間であるが、地上から差し込む僅かな光と元から地下道として使われていた名残りの電灯だけが彼らの道を照らす。

真っ暗とまでは言わないが、十分に視界が通らない場所だ。しかし2人はグールの影響で視覚は人より多少優れている、この程度なら問題はないだろう。

むしろ不気味な肉の柱を見て見ぬふりをしやすい。

 

だが、空気はそうではない。

 

「大丈夫ですか?」

 

「安心しろ、苦手な野菜を食べた程度の気分の悪さだ。そのうち慣れ……ん?」

 

空気の悪さは酸素の薄さというよりは不気味な何かを感じるという事でもある、それだけ核となるものあると言うことだ。

 

「飛び降りろ!!」

 

突然、成が叫んだ。

瞬間、目の前でパキパキと音を鳴らしながら肉の卵が割れ始める。

2人はどこまで続くかもわからない底に飛び降りたが、赫子を使い何とか着地する。

 

「羽化したか」

 

そして、その2人を追って落とし子達も降ってきた。

数は具体的には数えられないが、200は軽く超えている。

そのどれもが毒持ち、竜の防衛機能として孵化したのかは分からないが憂慮すべき非常事態である。

敵が時間を稼いでいる中で、こうも時間のかかる敵が現れてしまえば戦闘を避けるべきではあるのだが、戦うしかない。

 

「行け」

 

すると、成は走り出す金木を背にする。別に口約束をしていたわけではない、ここまでの非常事態を想定していたわけでもない、だが自然と成はそこに残った。

 

何故という問いに答えがあるのならば、この先で戦うべきは誰かと言われたら金木であったからだろう。

 

「5分で追いつく」

 

そう呟くと、クインケと共に赫子を排除行動に移していくのであった。

 

 

「鯱の動きを普通のグールと同列に考えるな、常に牽制を続けろ!」

 

宇井が檄を飛ばす、それは梟の次に厄介なグールに対してであり、技が死んでいようと持ち前の体の柔らかさと身体能力の高さで他を圧倒する怪物であるからだ。

 

「無理をするな松前!金木くんも手を焼いた相手だ!」

 

そして、それはグールにも当てはまる。

 

「盾すら破るか、バケモノめ」

 

月山とその執事である2人の甲赫は蹴りだけで粉砕される、それだけのパワーがあるのだ。死体になり果て、技も死んでいてなお彼らに操られているのは、そう言った理由だろう。

 

しかし、死体になっているという事は生きている時と違い都合よくその体を弄れるという事でもある。

 

「赫者!?そんなデータはなかったはず」

 

突如として、彼の背中から赫子が巻き付き始める。完全なそれではないが、速度やパワーは段違いに跳ね上がる。盾を張るグール達を赫子ごと貫き、その後ろにいる捜査官ですら薙ぎ払っていく。

飛び回る戦車だ、その体を皆捉えられていない。

 

「ミズロー、牽制のままで。じゃないと死にます」

 

死神の継承者である、鈴屋を除いて。

アラタを着る彼はその動きを目で追い、体が追いつけている。いかに前者のような破壊力はあれど、そこまでの装甲があるわけではない。

 

しかし、彼だけだ。鈴屋班の殆どがVの対処に追われており、鈴屋と環水朗の2人だけで対応している。半兵衛から借り受けているアラタを彼はつけているが、その環も赫者化した鯱には追いつけていない。

 

このままでは、倒れるまで時間の問題であった。

 

「(手はないのか、アレを何とかしなければ戦線の維持なぞ不可能だ。だが倒すにしても回せる人員も……)」

 

しかし、その状況を打破できる捜査官は余っていない。グールにはいるのかもしれないが、把握しているわけでもなく、そもそも戦えるかどうかすら怪しい。

実力者である月山やその従者を丸ごと蹴散らしているほどなのだから。

だが、何かをしなければならない。だが、Vを相手しながらギリギリ残っている頭のリソースを使うが妙案は出てこない。

 

『手を焼いているようだな』

 

そんな彼らを見かねてか、はたまた気づいてか無線に声が通る。

 

「その声、エトか」

 

『すまないが負傷中でな、少し戻れんがアドバイスはできる』

 

梟を一人で相手したエトの声が聞こえてきたのだ。無線は渡していたが、この様子からして梟は無力化する事が出来たのだろう。

 

「どうすればいい?」

 

エトはアオギリを指揮してきたいわば司令塔だ、その力はある。でなければアオギリという組織は半月保たずに瓦解しているだろう、身勝手なグール達を纏めるのも扱うのも、それを運用するための頭があるからだ。

 

『とめるなら頭の方だ』

 

そして、倒すべきは何かを彼女は察している。

 

『ピエロがどこかで操作してる、一度耳にした。北西方向を当たればある程度絞れるはずだ』

 

エトはグール界隈において知らないことの方が遥かに少ない。アオギリの構成員がどこで誰とお茶をしていたかのすら把握していたグールだ、無論ピエロについても相応の知識と対策が頭の中に入っている。

 

『向かいたい奴に向かわせてやれ、それで片がつく』

 

それだけ伝えると、エトの通信は切れる。この無線事態は指令部に伝わっているので今は敵の所在地を洗っている頃合いだ。

程なくして所在が明かされるとは思うが、既に誰か察しのついた者達がビルの上を走っていくのが目に入る。

 

「……どうりで、有馬さんしか止められないわけだ」

 

舞台を完全に掌握する怪物、エトという存在の大きさに宇井は初めて人間としても畏怖するのであった。

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