人か喰種か両方か   作:札幌ポテト

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残り3話

筆が止まった理由、旧多との問答考えてたのとか他の作品書いてた事が原因です。



40話

「どこまでも邪魔をしてきますね、成二等は」

 

「どこまでも嫌がらせしてくるからだろ、旧多」

 

2人は互いのクインケをぶつけ合っていた。高い位置にいる両者の戦闘はグールの身体能力も相まって超高速で行われていく。

無論、互いにまだまだ本気ではない。旧多は既に金木とリゼの戦いには間に合わないと察している、故に確実に目の前の敵を読み取ろうとしている。

 

対して成も、時間の制限もないので堅実に戦いをすすめているのだが、それは旧多には面白くはない。

 

「ここに来たって事は、貴方は失うかもしれないんですよ?向こうには改造した鯱に梟、毒貰って喜んでるキチガイ共に、ピエロまで送ってるんです」

 

故に挑発している、互いに動きの余裕があるうちに。頭のリソースを戦闘に回さないでいられるうちに。

 

「貴方の大切にしてた梟も、守ってきた人達も根こそぎ剥ぎ取られるんですよ?こんな所で、もう駒としての価値もない僕を相手してても良いんですか?」

 

しかし、動じる様子はない。そのままクインケを振るう姿も、体捌きも、何も変化はない。

 

「グール達と捜査官が組んでるんだ、そこにはエトさんや鈴屋や宇井さんに、伊丙までいる。負けるはずがないだろ」

 

なぜならば、信頼しているからだ。グールについての信用値はよく知る捜査官よりは劣るものの、エトという存在がいる。ゆえに彼自身がここで揺らぐ事はないのだろう。

 

「全員、僕に負けた事がありますけどね!」

 

「なら、私がその人生に黒星をつけてやる」

 

だがそれはあくまでも、その置いてきた戦場についてだ。

 

「今迄の世界を見たでしょう、人とグールの歪み合う世界を!」

 

これから先の世界については、誰も想像がつかない。

 

「グールが傷つき殺戮されて喜ぶ大衆、グールに害され悲しみの連鎖がそれを増長させたんです!貴方程度個人が動いて、何も変わるわけないでしょう!!」

 

旧多は知っている、人の醜さを。自分が害されないと分かればどこまでも冷酷になれるのが人間だ、だからこそその性質を利用して煽動したのだ。

グールの屍を築いたショーは一部の人間には不評でこそあれど、大多数の人間の理解を得ていた。むしろそれを狂喜している者は多くいたのだ、そしてそれは悪いこととは誰も認識していなかった。

 

不評だったのもモラルの問題があると考えられていただけで、その行動理念は否定されなかった。

 

「グールと人は分かり合えない、人もグールも壊れてしまえばいい」

 

だがそんな言葉では、この相手は壊れない。それは知っている、あくまでも自分の貫いている志や考えを曲げない。ゆえにやってから考えるだろう、やる前に諦める人間ではない。

 

だからこそ、方向性を変える。

 

「僕の事を気が狂っていると思いますか?ならそれは自分の事を見てから話してくださいよ」

 

「……何だと?」

 

問答にあまり反応しなかった成が反応する、それは逆に攻撃の隙を与える。

 

「梟が食べてきた人間の中には、貴方の同僚がいる。なのに貴方は平気でその隣にいれる、狂人なのはどっちなんですか?」

 

グールの悲劇は最も大きく感じてきた者は、間違いなく喰種捜査官だ。人の死を最も目の当たりにし、身近に感じ、悲劇を見せられてきた。民間人が襲われた被害は大きいが、一人当たりの摩耗や被害で言えば捜査官に勝る者は居ない。

 

そして、そんな悲劇をばら撒いてきた者が、彼の最も身近なグールだ。

 

「上司の妻を食われたのを知って、また普通に会えるんですか?その娘に会って平気な面を見せて、ピエロなのはどっちでしょうねー!!」

 

攻撃の威力が増してくる、今が好機と感じたのだろう。何も言い返せない成に向けて、力に任せてクインケを振り回していく。それを受けきれなかったのか、成は壁際まで弾き飛ばされる。

 

「あれれー?論破しちゃいましたか、それとも真面目な成二等は今頃、頭の中で謝ってる最中ですかねー?」

 

あまりの反撃の弱さに、もはや心を折ってしまったかと、呆気なさ過ぎないかと笑う旧多。

 

「でも良いんですよ、何もかも壊して償ってる気分にさせてあげます。天誅がくだったとおもって、諦めさせてあげますから」

 

そんな彼に成は憎悪の目を向けてはいない。

 

「旧多、お前にとって……善悪とはなんだ」

 

「はぁ?質問に質問ですか、でもまぁ答えてあげますよ」

 

成の出す質問にヘラヘラと笑い、余裕を崩さない旧多。圧倒的な優位に立っていると考えているからだろう、事実問答という点では彼の一方的な攻撃しか行われていない。

 

「僕に都合の良い存在だけが[善]です、他はーーいらない()

 

そして、いらない存在を終わらせる一太刀を浴びせにいく。

 

「……そうか」

 

だが、それは一歩も動かずに止められた。

 

「私にとって、生きる事そのものが[悪]だ」

 

成が旧多に挑むのは、エトを彼に害されたという意味での怒りがあるからだけではない。彼と決着をつける為だ、負けて終わる事はあれど負けたまま終わらせる人間ではない。

 

成遼太郎という人間は、己が意思を貫く為だけにここにいる。

 

「生きる為に何かを奪い続ける、だからエトさんに限らず、誰でも……奪ったものを精算しなきゃならない」

 

生きる事は奪う事、故に奪われる者からすればそれは悪になる。しかし与える事は利己的な意思があろうとも、それを受ける取る者からすれば、善人なのだ。善とは与える事なのだ。

 

「壊して終わり、死んで終わりなんて方が……無責任でしかない」

 

エトや伊丙を死なせなかったのは、悪人でその人生を終わらせたくなかったからだ。人生の終わりから見た総合点で、罪は精算できる。人の罪は消える事はないが、人を救う事実も消える事はない。

 

「何かを奪い続けるお前は必ず倒して贖罪させる、生きてこれから償い続けろ」

 

だからこそ、殺す必要がない敵を彼は殺さない。悪人のまま死なせない。

 

「僕を殺さないって宣言するのーー舐め過ぎでしょ」

 

「私を挑発する余裕があるうちは、勝てないぞ」

 

気付けば旧多の挑発的な表情が真顔になる、講釈を垂れていたが筋や信念を通わせた彼の答えを見せられた事でイラついているというのもあるだろう。

 

「僕も負けらない理由があるんですよ、そろそろ本気で勝負と行きましょうか」

 

2人の戦いは更に激化していった。

 

 

絶望的な戦いが展開されている。それは圧倒的な存在、赫者となった鯱がいたからだ。技が命を失おうとも、鋼の肉体と赫子は大きな脅威であり、大多数の捜査官が鯱に倒されている。

 

「化け物め……!」

 

鯱というグールは本来赫者にはなれない、それは共食いをしないからだ。SSレートでそこまでの被害を出さずに大食いでもなく、共食いによるRc細胞の増加がない者がここまで強くなるというのは異常ではある。それだけ規格外の存在だったのだ、それが共食いをしたような形に、Rc細胞が増幅されて解き放たれたとすれば、強大すぎる敵となるのは必然だった。

 

「時間稼ぎに徹しろ、鈴屋班の支援以外で出しゃばるな!」

 

ゆえに現場指揮を取る宇井が取った策は、倒す策ではなかった。いや倒すつもりではある、倒さなければこれはCCGにとってとてつもない脅威として君臨し続けるだろう。

 

しかし、宇井は倒す事を見限った。限界ギリギリまでアラタを使用し皆を庇う鈴屋を見て、勝ち目があると信じて動く彼を見て、時間稼ぎに徹した。

 

「っ!宇井特等、鯱の様子が……!」

 

そして、徹底した時間稼ぎを行っていた時に好機は訪れた。

 

「鯱が止まった!?」

 

機械的に動き続ける鯱の動きにノイズが生まれたと思えば、急に錆び付いたように動きが硬くなったのだ。

 

「今だ!!」

 

瞬間、宇井の合図と共に捜査官達が鯱に斬りかかった。足や腕、赫子を剥がすようにして皆斬りつけていく。だが決定打ではない、あくまでもこれはそれへの繋ぎだ。

 

自重を支えきれずに、鯱の膝が落ちた。

 

「決めろ、鈴屋くん!!」

 

そして、更に鈍化した動きに合わせ剥がれた赫子を縫う様に鈴屋のクインケが振り下ろされる。

 

 

その報せは、すぐに全軍へ駆け巡っていく。

 

『鯱とピエロは撃破した。繰り返す、鯱とピエロは撃破した!』

 

戦いはまだ続いている、しかしその報せを聞いた者達は雄叫びを上げていく。

 

「「「うおおおおぉぉぉぉーーー!!!」」」

 

宇井が時間稼ぎに徹したのはその方が被害が少なくなると考えたから、そして……別働隊で動いていた亜門を含めたグール達が必ず操るピエロを撃破してくれると信じていたからだ。

 

「よし、よし!!」

 

間違いなく今の勝負で戦局は大きく、傾いた。もはや残っているVもクインクス班や鈴屋班、0番隊やグールの幹部格が粗方制圧をしており、勝負はついたと言って良いだろう。

 

「ぐはっ!?」

 

ただ一つの、懸念点を残して。

 

「伊丙上等!!」

 

半赫者化が解けかけた状態の伊丙が、瓦礫へ海へ粉塵を大きく上げながら吹き飛んできたのだ。

 

「クソが……」

 

伊丙が瓦礫から這い出してくる、幸いにも命に別状は無いようだ。しかし今の彼女は捜査官やグールを引っくるめた、この戦場において1,2を争う存在だ。それを吹き飛ばすとなれば、皆に動揺が走ってしまうのも仕方がない。

 

そして、それをやった者がまるで散歩でもしているような足取りで現れる。この戦場において最も異彩と威圧感を放つ存在が、そこにいた。

 

「どうした、ん?ん?」

 

芥子、Vのリーダーである彼の姿はもはや人間とは言えない。梟の羽とムカデのような赫子を纏い、赫子で作られた仮面の奥には赤黒い双眸が輝いている。

 

そしてその手にはクインケ、梟も握られている。

 

「……おっかなさそうですね」

 

「今の私1人じゃ無理よ……手貸しなさい」

 

鈴屋が伊丙の元へ寄る。先程の戦闘でもはや展開するのもギリギリであろうアラタを再展開、ジェイソンを握りしめる。伊丙もまた自身に赫子を纏い直し、草薙を構える。

 

「実力の差をやっと認めたか、勘もプライドも鈍いぞ」

 

対して、敵は余裕綽々である。これだけ戦局は圧倒的で味方が壊滅していたとしても、まるで気にかけていない。それだけ自身が圧倒的な次元に至っているという自覚があるのだろう。

 

有馬にクインケを教え、長くVを支配してきた男だ。その裏付けされた自信に間違いはない。

 

「私も忘れてもらっては困る」

 

だが、それに臆さない者がもう1人いる。

 

「エト、休んでていいのよ」

 

「冗談言うな、あれは私の案件だぞ」

 

満身創痍な2人の元へ、助っ人として満身創痍なエトがやって来たのだ。1番倒れそうなのは鈴屋ではあるが、その次に倒れそうである。

 

しかし彼女もただの敵であれば無理を押しては来ない。ただ相手は自身の因縁の相手の親玉であり、見る先には標的の手にある獲物と、標的から生えた翼がある。

 

「はっはっは、成る程な。貴様らがここの気をもたせている柱か」

 

殆どの捜査官達の士気を保つ鈴屋、宇井や0番隊といった者達の士気を保つ伊丙、そしてグール達の士気を保つエト、この3人はこの戦場において、絶大な信頼と力を持つ強者だ。

 

しかし裏を返せば、これは違う意味を持つ。

 

「全てへし折ったら、どうなるかな」

 

希望である3人を殺せば、それは絶望へと塗り変わる。このレベルの敵に数で攻めるのは屍の山を築く事にしかならない、宇井ですら足を引っ張りかねないだろう。

 

その3人ですら、力の差があるのだ。それを超える存在を相手出来る人間は、もうここにはいない。

 

化け物との戦いが、始まる。





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