人か喰種か両方か   作:札幌ポテト

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5話

2月s日

 

グールとして情報を集めていると、やはり色々な話を聞ける。

どの区にやばいのがいて、アオギリに新しく入ったヤベー奴がいるとか、そんな話の他にピエロ、魔猿、ブラックドーベルといった団体の名を聞けたりとかなりやばいんだ。

特に最近は眼帯のグールが話題らしい。

 

絶対に関わりたくないが、最近の私に振り当てられる仕事が軒並みコクリア脱獄犯のものが多い。

さすがにシャチといったSSレートまではやる事は無いと思うが、ちょいちょいSレートが混じっている。

 

なので絶対に見つけても戦わない事にした、私は並に生きたいのである。

 

2月t日

 

有馬さんと久しぶりに会った。

梟と戦ってどうだったとか色々と聞かれた。

当たり障りのない事を色々と答えたと思うが、あまり記憶はない。

現CCG最強、白い死神と会えばだれでもテンパるのは仕方ないと思う。

ただグールと戦うのは、嫌か?という質問だけはちょっと覚えてる。

「戦うのは嫌で、命を奪うのは苦手だ」と答えた。

復讐の因果に巻き込まれたくない、そう思っての答えであるが、その後すぐに「そうか」と答えて有馬さんは消えた。

質問に対して何か反応をしたのはそれだけだったが、そもそも何で話しかけてきたのかは分からなかった。

 

3月u日

 

0番隊へ戻された。

正直歓迎されていなかったが、有馬隊長のパートナー役に指名されてしまった。

伊丙の私を見る目が明らかにヤバかったので彼女は出来る限り避けている。

あの人、多少なりとも一緒にいたので有馬さん崇拝者なのは知ってるしそのパートナーに私が選ばれたのも納得いかないし気に食わないのだろう。

正直変わって欲しい、ていうか誰か助けて欲しい。

稽古という名の理不尽な講義が始まってるんです。

 

 

5月31日

 

授与式ではヤモリを倒したと噂の鈴屋君に声をかけられたり、上等となった亜門さんと話した。

黒巌特等にも会ったが頑張れとだけ言われた、真戸さんの推薦で入った時からこんな感じではあったが梟の時にそれなりの動きをしたせいで拍車が掛かっている。

 

ただ変わらず、有馬さんの鍛錬という名の理不尽は凄い。

両手で武器を振り回すのが何で難しいのかわかってない、そしてその練習の為だけに過去に討伐したSSレートの甲赫を渡して来た。

 

名は『草薙』と言い尾赫も入ったせいか有馬さん手持ちの『IXA』と似たような地面を通って遠隔で触手が敵を貫くと言ったギミックまで搭載している、ただ向こうは盾の機能があるのでそれが理由で恐らく使っていないのだろう。

緑色の西洋剣が二つ繋がったような奴で、単体での扱いが恐ろしく難しい。切り離して二刀にできるが、それを扱わせたいから渡したのがよく分かる。

なのでそれ相応の期待か何かがあるのだとわかってしまう。

 

そう思うと夜道と伊丙に気をつけようと、何となく感じてしまった。

 

6月v日

 

0番隊として捜査するというよりは、処理するという事が多くなった。

もう当たり前のようにSレートを任せられる、一度も単騎で倒した事は無いのだが無理矢理である。

やったね、白単翼賞たくさんもらえるね……!

伊丙の目が最近、ていうかもうずっとだけどやばいね!

 

後輩達はなんか羨望の眼差しで見てくるけど、それはそれでなんかきついんだよね!

 

 

……階級、上がりたくないなぁ。

 

7月w日

 

宇井副隊長から有馬さんについて色々レクチャーされた、かなり今更感があるのだが……この人が有馬さんをどれだけ信頼しているかはよく分かった、伊丙もそうだが有馬崇拝者は同じところに集まりやすいのかもしれない。

 

もしくは私を引き込みたいのかもしれないが、伊丙に会えば殺される気がしてならないのであまり関わり合いたくないところである。

 

 

8月になって少し時間の経った頃、有馬に呼び出しを喰らっていた。

これから20区にて大きな討伐戦が行われるのでその前の話し合いでもするのかと、この時成遼太郎は考えていた。

 

場所は有馬の指定した神社の境内で、あの有馬さんでも験担ぎぐらいはするんだと呑気に考えていた。

 

「……今なら冗談だと、笑い流せますが」

 

ただ、話はそう呑気な内容では無かった。

 

「アオギリの樹のリーダー、隻眼の王は俺だ」

 

アオギリの樹、今現在最もCCGとの抗争が激しい団体の名を有馬貴将は出していた。

出来る限り関わり合いたくないと考えていた組織の親玉であると、グールを纏めている存在だと宣言したのだ。

 

「なんで私にそんな事を」

 

「お前ならば、この諍いの絶えない世界を変える事に手を貸してくれるからだ」

 

有馬は自身の計画について大雑把にだが、話始めた。

グールと人間のわかり合った世界を目指すのが目的だそうだ。

自身を倒すグールが現れ、自身が倒されればそれがグール側の希望となる前提の作戦だ。

確かにそうなる、確信を持って言える。

有馬貴将という存在はそれだけ、この世界に大きい存在だ。

それを倒したグールも相応の存在に成り果てる。

 

「将来的には俺の亡き後を任せられる」

 

そして、その役目の中の一つが任されようとしている。

それだけの信頼を持たれ、この話をするだけで絶大なリスクを抱えている。

しかし、成はかなり言い淀む。

 

「ですが、私と有馬さんはそこまでの信頼がある程の付き合いは……」

 

ただ受ける受けないの段階ではないのだ、ここまでの話をして来た事がおかしい。

有馬とは確かに時間だけで言えば5年も関わりがある、しかし実際の関わり合いがある時間はここ半年である。

 

確かにこの半年は誰よりも有馬に付き添ったと確信を持って言えるのだが、それだけでこの話がされると思うほど自惚れてはいない。

 

ただ、それは有馬も分かっている。

 

「渡すものがある」

 

そう言うと二つのケースを渡す。

見慣れているから分かる、それはクインケのケースだ。

開けてみろ、と言われ恐る恐る開封してみるが。

 

「……どこで、これを」

 

1振りの太刀と、4振りの小刀の様なクインケがそこにあった。

かなりの高性能なものというのが一目見ても分かる。

しかし、そんな事はどうでもい。

ただ、有馬の目がどこまで届いていたのかと言う事に対して畏怖の目で聞いた。

 

「太刀の名は『鎖骨』短刀の方は『砂塵』地下でお前が倒した、グールのクインケだ」

 

信用がない、それはあくまでも成視点での話だ。

有馬は自身が0番隊へ来てから見ていたのだ、そしてその確認を兼ねてここ半年で見定めたのだろう。

 

「……他に、この事を知るのは?」

 

「人では丈だけだ」

 

丈、平子丈の事だろう。

 

過去に5年ほど有馬とパートナーを組んだ上等捜査官だ。

成を除けば唯一のパートナーである、それなりの関係が結べているのは不思議ではない。

 

「……宇井さんや他の0番隊には秘密にしてるんですね」

 

ただ、自身と同等か以上の時間のあった0番隊への信頼は少なくとも無いのだろう。

いや、あってもここまでとはならないと判断されたのだ。

個人的には伊丙や宇井などといった信奉者は喜んで手を貸してもらえると思うが、今の有馬からすればお眼鏡に合わなかったようだ。

 

「それで、後ろにいる彼女は?」

 

ふと、気になっていた同席している少女を見た。

先程からいるところからして関係者なのは確実であるが、見覚えは全くない。

 

「隻眼の梟だ、と言っても成と戦ったのはその父親だが」

 

サラリと言い切った。

この場に現グール最強と現捜査官最強がいるという事だ、元からこの2人で画策した作戦らしいが、もはや脅迫である。

 

正直に言って、やりたくない。

 

私がやる必要はない、しかしここで断って他言しないと約束した場合どうなるか。

少なくとも、アオギリのグールに口封じをされる。

 

断るという選択肢が、そもそも存在できない。

 

「……分かりました、手を貸しますよ」

 

こうなれば成のできる事はない。

もはやこの広大な流れの中に巻き込まれてしまったのだ、どこで道を間違えたと言えば最初からなのだが、ここまで至るとは当時は思いもしなかっただろう。

 

「ただ条件が一つ、いいですか?」

 

もはや乗ってしまった船である、成は一応のやる気を出す為にある契約を結びたいと言う。

そしてそれに対しては梟の方が答える。

 

「うんいいよ、こっちでやっても」

 

あっさりと了承した、それを聞けたので満足したのか成は天を仰いだ。

 

「……死ぬまで付き合いますよ、有馬さん」

 

「あぁ、頼む」

 

これから始まるのは彼が最も忌避した、混乱の渦中に混ざる事だ。

 

成遼太郎という人生の中で、最も狂乱とした4年間の始まりである。

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