人か喰種か両方か   作:札幌ポテト

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9話

4月p日

 

佐々木一等が上等に、暁さんが准特等になった。

真戸准特等……と2人でいる時は階級で呼ばれたくないそうだ。

一時期は酷かった精神状態も、亜門さんから立ち直り、より彼女は逞しくなっている。

さすがは若くして準特等に至った人だ。

しかし最近フエグチを佐々木が抱えている事に神経が尖ってしまっている。

フエグチは父親の仇の1人である、殺したい程憎いだろう。

少しだけ不安だ、同様に佐々木もだが。

オウルと同等の戦いをした彼の実力はSS以上、最盛期に近づいて来ている。

また次の駒をエトさんがぶつけるだろう。

 

それと特等が2人増えた。

1人は鈴屋くんだ、佐々木の次に話しかけられている気がする。

有馬さんと同じく22歳での特等への抜擢、最年少である。

 

そして出席しなきゃいけないこの授与式なのだが、やはり私の居心地は悪い。

私自身の討伐したグールの数は記録上、A以下が7人。

年々減っている、減らす意識はしていないがSと戦わない姿勢を貫いている影響だろう。

ただ昨年から始まっているキジマ準特等の監視の仕事が面倒というのもあったが、宇井さんは特に何も言ってこない。

 

個人的にそれでありがたいので、私からも何も言わない。

 

伊丙のふっかけた賭けには負けているので宇井さんと有馬さん、ついでに伊丙上等にも仕事以外で関わりは持たないようにしている。

待たなくても変わらないからだ、だからそれでいい。

 

4月q日

 

S1班の新たな任務対象が現れた、コードネームは『ロゼ』といい和修政特等曰くドイツにいた残党らしい。

その任務に宇井班、キジマ班、佐々木班、下口班の計四班での合同任務とあいなった。

 

佐々木上等と仕事を共にするのは0番隊にいた時以来だろうか、クインクスとは初めてである。

あと下口上等とも初めてか、最近部下を亡くしたそうだが新しい人が入っていた。

 

伊丙はクインクスの人達と仲良くなっていたが、普段の彼女は本当にポワポワとした乙女だ、その雰囲気で話されたら誰でも多少は気を許す。

恐ろしいほど戦闘時に人が変わるだけで、私の前でもそっちよりだ、普通にポワポワしていた方が精神的に疲れないのだが、それもあと少しの付き合いだ。

 

大きな任務に乗じで殺す、それが今の私の任務だ。

 

今回の件で、殺す事になるだろう。

 

だから私は、自分の嫌いな悪者になるしかないのだ。

 

4月r日

 

キジマ准特等と伊丙上等達でロゼの一派、その1人を捕縛した。

所有件はキジマ准特等にあったので予め控えていた倉庫をしらみつぶしに探していくと、やはりその一箇所にいた。

 

男のグールは酷い拷問を受けており衰弱していた、舌も取られており、さすがに問題行動が過ぎていた。

彼を無理矢理説き伏せてグールは私が連行した。

 

宇井特等にもちろん報告、グールの所有件は一時的に私のものとなった。

キジマ准特等には査問委員会へ問われるだろう、よくやったと珍しく宇井さんは褒めてくれた。

 

ただ伊丙の前ではやめて欲しい、目がやばい。

 

4月s日

 

キジマ准特等、またやらかした。

あのグールを拷問した時の動画を公式でアップロードした、自分を餌にしてグールを誘い出すために。

そんなものを準備していたとは思いもしなかったので、詰めの甘さについて宇井さんには謝罪した。

宇井さんはかなりキレてるのがよくわかった、といってもキジマさんに対してだが。

また彼は査問委員会に呼び出されてる、これのパートナーの旧多一等も大変そうである。

 

それとロゼのグールはコクリアに送り、私が引き継いで情報を探っている。ただ舌がないので筆談だ、それに向こうも応じようとしないので遅々として進まない。

 

私とてただで生かしてるのではないのだ、しかし彼の組織への忠誠心は本物である。

 

なのでキジマさんの動画を見せた、かなり困惑しながらも自身の恋人が先走るかもしれないとだけ書いた。

 

また倉庫の見張り仕事である、地味な仕事である。

 

4月t日

 

佐々木達がアオギリのグールに襲われたらしい。

アオギリとロゼが関わりを持っていれば規模は大きくなる、人は倍以上必要となるだろう。

 

5月u日

 

網にかかったグールを見つけたのは、首を飛ばす寸前だった。

ドアは前よりも厳重に施錠されていたがぶっ壊して入った。

元から情報が無ければ絶対に間に合わなかった自信がある、彼女は口が軽かったようですぐに音を上げたそうだ。

 

ただロゼは月山財閥のグールという事が判明した、100年以上続く巨大企業である。

その功績はどうでもいいので全てキジマさんのものだが、グールはまた私の所有件に移行させた。

 

キジマさんからは滅茶苦茶な嫌味を言われたが、私は宇井特等の名代だ、虎の威を狩る狐と言われようが何も気にしない。

 

「貴方はグールも人で数えるんですねぇ、グールは嘸かし嬉しいでしょう」

 

とも言われたのは、何故か何となく頭には残っている。

人もグールも同じ一つの命として扱っているのが間違いだとは思わない、ただ理解者が少ないことを理解している。

 

だからこの私のあり方は、私だけが理解していればいいのだ。

 

5月v日

 

女の方、名前はアリザというグールから話は少しずつであるが聞き出せている。

男の方、ユウマの書いた手紙を読み上げる事で上手く聞き出せている。

渡した方が楽なのだが、検閲の問題もありかなり先になる事だけは留意してもらっている。

生きていると実感するたびに涙しながらも話す彼女を見るに、相当拷問は酷かったのだろう。

 

やはりこういうやり方は私個人としては気に食わないが、必要な時は必要な役回りという事も理解しているつもりだ。

 

だが私の聴取もそろそろ一息つく頃合いだろう。

 

佐々木上等のグールのマスクを使った捜査活動がそろそろ身を結ぶ、そろそろ月山家を落とす時だ。

 

 

「……久方ぶりだな、成」

 

式典も終わり、真戸暁は狭っ苦しい休憩所にやって来た。

式典は人が多い、少し休みたかったと言うのもあるが、目的はいつもそこで暇を潰している青年だ。

 

「真戸准特等、昇進おめでとうございます」

 

「2人でいる時ぐらいは、昔のように呼んでくれ」

 

最初の出会いは父の忘れ物を曲に届けたときだ、その時に若い捜査官というので印象が残っている。

亡き亜門上等同様、父の口からよく出てきた捜査官の名前としても頭に残っている。

 

しかし、彼の階級は一等だ。すぐに追い付き、追い抜き、突き放した。

 

「……暁さん、顔色が優れませんが」

 

「何、母と同じ階級に上がり緊張しているのだよ」

 

今ある彼の形を、どう解釈すればいいのか未だに暁には分からない。

戦っている瞬間を見た事がない彼女には、判断ができない。

 

「また、2人の話をしてもらえるか」

 

だからこの曖昧で中途半端な形での繋がりが今でもある。

2人の事を知る人間というのは少ない、まして2人ともをよく知る捜査官なぞ片手で収まるだろう。

父がよく囮にしてきた話も、無茶振りの話も、捜査官としての手解きを受けた話も聞いた。

亜門の熱意的な己の正義や父への信頼、その話もよく聞けた。

 

次は何を話してくれるのかと、話を待っていると。

 

「……もう、辞めておきませんか」

 

言い淀みながら、それを拒んだ。

 

「なぜだ?」

 

「話を聞くと辛そうなので」

 

暁は驚いた、と言っても拒まれた事にではない。

普段、話はしても意見を出さない成が初めて自分から意思を伝えた、それが拒否という形であってもだ。

 

ここ数年の付き合いで多少なりとも、成遼太郎という捜査官について暁は知ってきたつもりであるが、それは情報的な面が多い。

 

遺書は書かない、人に媚びない、梟から生き残れる程度に戦え、父直伝の捜査能力を持ち、他者の死を悼む事はあれど、引きずる事はない。

 

「過去を見つめるのは必要な事です、ただ執着するのは良くないかと」

 

「そう見えるのか?」

 

「……どうなんでしょう。ただ何かしら区切りをつけたいんじゃないですか、フエグチの廃棄で」

 

そして、たまに鋭い言葉を吐いてくる。

 

「君は、父を失った後でも変わらなかったな」

 

父亡き後にも、彼の人間としての姿勢は変わらなかったそうだ。

真ん中に芯がある、それも誰に何を言われても、何が起きてもブレない、自分だけの芯がある。

 

「今ある命の事しか、私は考えられないので」

 

「切り替えが上手いな。捜査官向きだよ」

 

「切り替えが苦手だがら、自分でそう決めてるだけですよ」

 

そう決めつけて、生きれるほど人間というのはシンプルじゃない。

成遼太郎は、やはり心技体のどれもが残念な程に捜査官に向いているのだ。

 

だからこそ、暁という捜査官は彼の未来を、行く末を、案じているのである。

 

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