「皆さん!見ましたか!?今朝のニュース!」
教室に入ってきた途端、慌てた様子のキングちゃんが机に新聞を叩きつけるように広げて叫びました。
いつも冷静なキングちゃんがこんなに取り乱すなんて、何があったんだろう?
そう思って、キングちゃんが持ってきた新聞に目を向けてみると...
「えーーー!?!?マルゼン先輩がドリームトロフィーリーグに移籍ー!?」
「...って、ドリームトロフィーリーグって、何ですか?」
(((((ズコー!!)))))
「あれっ?なんでみんないきなり転んだの?」
「す、スペちゃん!ドリームトロフィーリーグを知らないんデスか!?」
「はぁ...よく聞きなさいスぺ、ドリームトロフィーリーグというのは、トゥインクルシリーズで好成績を収めたスターウマ娘たちが集うレースプログラムよ。」
「ってことは、マルゼン先輩は栄転って事?すごい!」
「あー、うん。確かに栄転だねー。そこは間違ってないんだけどさ」
そう言うスカイちゃんの顔はなんだか複雑そうで、ちらっとグラスちゃんの方に目を向けています。
...あれ?なんかお祝いムードなの、私だけ?
「スぺちゃんはグラスの異名について知ってマスか?」
「えっ?グラスちゃんの異名?」
「"怪物二世"、デビュー戦で見せた圧倒的な走りから、グラスは私達の先輩のあるウマ娘に準えて世間からそう呼ばれているのデース」
「まさかその先輩っていうのが...」
「はい、マルゼンスキー先輩です」
まさかあのマルゼン先輩と同じ評価を受けてるなんて!
グラスちゃんって本当にすごいんだなー...
「凄いと思いますか?」
「えっ?そりゃ思うけど...」
「確かに光栄な評価です。でも、私は"二世"は"頂点"の名では無いと思います」
「だから、いずれマルゼン先輩を直接対決で打ち負かし、"二世"から"頂点"へ昇り詰める。それが私の目標なんです」
「そっか!なら、マルゼン先輩と戦える様に私達も頑張らないとね!」
マルゼン先輩と戦うとしたらクラシック三冠レースが終わった後だから...ジャパンカップとか有馬記念になるのかな?
とんでもなく強い相手だけど、日本一になるなら超えなきゃいけない先輩だし、私もグラスちゃんみたいに頑張らないと!
『............』
「...あ、あれ?」
「スぺ、もう無理なのよ」
「え?」
「ドリームトロフィーリーグに移籍したウマ娘は、もうトゥインクルシリーズには出走できないの。私達はもう、マルゼン先輩とトゥインクルシリーズてわ決闘することはできないのよ」
「え、えーーーー!?そんなー!?」
マルゼンせんぱーい!?選抜レースの時、今度は本気で決闘しようって言ってたじゃないですかー!!
あれ何だったんですかー!?
「...ですが、まだ機会が完全になくなったわけじゃないわ」
「えっ?キングちゃん、それはどういう事ですか?」
「私達もトゥインクルシリーズで結果を残し、マルゼン先輩と同じ...いいえ、マルゼン先輩だけじゃないわ」
「皇帝や葦毛の怪物、伝説のウマ娘たちが集うドリームトロフィーリーグに進む。そこでなら、今度こそ本気の勝負が出来る。そうでしょう?」
「!!」
「だから3人共しゃきっとしなさいな!午後からの取材でもそんな顔見せるつもり!?」
「取材?何の話?」
「スぺ!?貴方昨日トレーナーの話聞いてなかったの!?」
「タイシン先輩のご飯が美味しくて何も聞いてませんでした!」
「開き直るんじゃないわよ!」
「ははは...まぁ今年のクラシック戦線は皆注目してるみたいだよねー。なんたってトレセンの双璧、5Usとイリアステルのルーキースぺちゃんとエルちゃん、"怪物"グラスちゃん」
「そして...既に無敗でG1ホープフルステークスを含む重賞を連勝してる、あの"トウカイテイオー"、注目株が4人もいるんだからさ。そりゃ記念会見とかもやっちゃうよねー」
「記念会見...あー!!!」
思い出しました!そういえばそんな事言ってた気がします!
「...キングちゃんの言う通りですね。クラシック三冠を取り、同じ舞台に立てるだけの結果を残せばいいのです」
「その通りデース!でも、三冠ウマ娘になるのは私デスよ!」
そっか!トゥインクルシリーズで結果を残せれば、憧れの先輩たちと同じ舞台に立てるんだ...!
グラスちゃんとエルちゃんから感じるフィールに影響されて、私の中に熱い感情が込み上げてきます...
日本一のウマ娘になる為に、三冠ウマ娘の座は渡しません!
◆
「無事手続きが終わりました。マルゼン、貴方はこの瞬間をもってドリームトロフィーへ移籍。以後トゥインクルシリーズへの出走権は無くなり、明日からはドリームトロフィー組のトレーニングに合流して、サブトレーナーのブルーノの主導で動いてもらいます。」
「分かったわ。今までありがとね、ゾーンちゃん!」
「チーフトレーナーとしてそちらにも顔を出すことはあるとは思いますが...そうですね、ひとまずはお別れです。」
「それにしても随分急な移籍でしたね。いえ、貴方の成績なら本来もっと早く移籍することも出来たのですが、なぜ今なんです?グラスワンダーも寂しがっていましたよ」
「最近の後輩たちを見て、もうあたしやルドルフがいなくてもトゥインクルシリーズは大丈夫だと感じたの。だけど、確かに、グラスちゃんにはちょっと悪い事をしちゃったわね...」
「でも、私とグラスちゃんが勝負すべきは今じゃないと思うのよ。グラスちゃんはあたしが焦がれても焦がれても手に入らなかったものを、最初からたっっっくさん持ってるもの!」
「...ライバル、ですか」
「ビンゴ!さっすがゾーンちゃん、話が速いわね!」
「...正直、後輩たちが凄く羨ましいわ。私は、求めて、求め続けて、やっと見つけたと思ったのに...それに手を伸ばす事すら許されなかったから」
「..................」
「あたし、色々迷惑かけてきたけど...ゾーントレーナー。今まで本当に、ありがとう」
「いえ、こちらこそ。貴方の未来が光指す道であることを、心から願っていますよ」
◆
授業後、部室に入るとスーツを着たトレーナーさんとタイシン先輩が待っていました。
「トレーナーさん...いつもと雰囲気違いますね?」
「理事長とたづなさんに正装しろって釘指されたんだよ...あとお前も他人事じゃないからな」
トレーナーさんがグイグイ押し付けてきた袋の中には...えっ、これってもしかして!
「スぺの勝負服だよ。GⅠレース用のね」
「偶にブルボンの奴みたいに変なパーツ混ざってて着方が意味わかんないやつあるから、念のためアタシが着付けの手伝いに来たよ」
「そういう訳だ。さぁ、早く着替えろ!」
「いやアンタは出てけ」ゲシィ
(数分後)
「おー。流石特注、似合ってるじゃねーか」
「割とシンプルな構造だったしアタシいらなかったね、んじゃあたしトレーニング行ってくるから」
「はい!ありがとうございましたタイシンせんぱ...あっ」
「どうかした?」
「い、いえ!なんでもないです!」
(言えない...尻尾がちょっと入らないなんて...!)
「安心しろよー、...ちゃんと皐月賞までに減量できるようメニュー組んであるから」
「ギクゥ!」
◆
「...はい!それでは、今年の皐月賞に出走するウマ娘達に登板していただきましょう!」
「まずは1600mレースで一周1分34秒のタイムを叩き出した"グラスワンダー"選手!マルゼンスキーが走ることが出来なかったクラシック戦線へ参戦です!」
「ふふっ、期待に応えられるよう頑張りますね」
「続いてトレセン学園の名門チームイリアステルより颯爽と現れた、"エルコンドルパサー"選手!世界最強を目指しているとの事ですが?」
「イエース!世界最強の名を掲げる為に、必ずクラシック三冠をつかみ取ってみせマース!」
「続きましてあの話題沸騰中のチーム5Usより期待のルーキー、スペシャルウィーク選手!...スペシャルウィーク選手?」
(ズーン...)
「元気がないように見えますが、大丈夫でしょうか?」
「...あっ、はい!大丈夫です!頑張ります!」
(スぺちゃん、ほんとに大丈夫?)
(あはは...ちょっと悲しい事があっただけだから、大丈夫...)
「そして最後に登場するのはこのウマ娘!」
ビリィッ!!
(!?)
「昨年URAから授与されたミレニアム・カードを手に、目指すはあの皇帝に並ぶ無敗の三冠!今期のクラシック戦線最有力候補!」
「"トウカイテイオー"だあああああああ!!!」
「ヤッホー!トウカイテイオーだよー♪」
(来た!トウカイテイオーだ!)
「ふっふーん♪存分に撮っていいよー!」
(場の空気が一気に変わった...違う、変えられた!?)
(いえ、それだけじゃありまセン。テイオーさんが登壇した瞬間に感じたあの感覚...)
(テイオーさんは私達より一つ下の学年ってみんなが言ってた...なのに、あれだけのフィールを涼しい顔で発せるなんて...!)
(...本来、デュエルの場以外で無暗矢鱈にフィールを撒き散らす意味はありません)
(つまりこれは、この場のウマ娘全員に対する挑戦状!絶対は自分だという覚悟!)
(トウカイテイオー、手ごわい相手であることは理解していましたが、まさかこれ程の相手とは...!)
「カイチョーと同じ無敗の三冠ウマ娘、それがボクの夢なんだ!みんな、無敵のテイオー伝説から目を話しちゃだめだからね!」
(だから君たちも、ギッタンギッタンにしてあげるから。覚悟してなよ)
(((!!!!)))
ぞくり、と全身が騒ぎ出すのを感じる...
きっとグラスちゃんとエルちゃんもそうだ
今まで勝ってきたレースとは違う、本物の戦い
これがGⅠレース...!
...見てて、お母ちゃん
この本物のデュエルに勝って、日本一のウマ娘になる所見せるから!
◆
...スペシャルウィーク達の会見と時を同じくして
現世とは思えないような深い闇が射す空間にて、数人のウマ娘がその会見を覗き込んでいた
「あれが6人目、最後のウマグナー..."スペシャルウィーク"」
「これでようやく、彼女達ウマグナーが揃ったようですね...」
「長かったけど、よーやく私達が闇の帳を降ろす時が来たわ!」
「...いいえ、まだ私達が動く時ではありません」
「えー!?どーいう事よー!」
「ウマグナーの覚醒をもっと促す必要がある、ってこと?それに、こっちの人数もまだ足りてないじゃんね?」
「そういう事です。最後の柱を探しつつ、彼女たちにもっと刺激を与え、歴史を揺らす必要があります」
「もー既にけっこー頑張ったと思うんですけどー、まだコソコソするのー?」
「幸い...この世界には高い実力を持ちながら、心に闇を抱えたウマ娘は...履いて捨てるほどいますもの...」
「ええ、それらのウマ娘の中から私達と同じ資質を持つものを探しつつ、ウマグナーを刺激しましょう」
「最初のターゲットはどうするんだ?」
「そうですね...手始めに5Usの中核、一度運命を乗り越えたウマ娘、サイレンススズカ...」
「丁度彼女の相手に相応しい駒を捕まえました。普通に勝つならそれでよし、ですが駒に負けるようなら....それはそれでよし」
「これはほんのご挨拶です。フフ...」
「はーい席につけ-授業はじめっぞー」
「なんか今回短くなかったデスか?」
「本当は次のデュエルまで入れようとしたみたいだけど、なんかキリが良いしデュエル入れると逆に長くなりすぎそうだから切ったらしいわ」
「つまりあとがきの茶番で尺稼ぎをしなければならないという事よ」
「真顔でなんてこと言うんデスかグラス」
「すいませんトレーナーさん!早速ですが質問があります!」
「なんだスぺ、あと先生と呼べ」
「前回のデュエルでスズカさんが攻撃力4800のクリスタルウイングで攻撃して勝ってたじゃないですか!」
「それがどうした?」
「あれって銀幕の鏡壁の効果で攻撃力が半分になってたんですよね?」
「確か...OMKガムの効果で4000になったクリスタルが銀幕で半分の2000になって、そこからクリスタルの効果でSCの攻撃力を吸収して2800アップ、最終的に4800の攻撃力デース!」
「...あら?エル、その計算間違っていますよ」
「ケ!?」
「そうなのグラスちゃん!銀幕の鏡壁ってドレッドルートと一緒で他の攻撃力上限の計算した後最後に半分に再計算されるから、クリスタル自身の効果で攻撃力アップした後にもう一回銀幕の効果で攻撃力が変わるハズなの」
「正確には元の4000に2800を足して6800になった後銀幕の効果で半分になるから、攻撃力は3400、フルターンの効果含めてもワンショットキルできないんだよ!」
「これどういう事なんですかトレーナーさん!」
「はい、次元幽閉」
「えっ、ちょっ、チョットー!!!!」
「スぺちゃんがボッシュートされましたー!?」
「面倒な攻撃(質問)してくる奴はこの手に限る」
「自分の担当にやる所業じゃないデース!」
「まぁそんな感じで、永続効果の処理とか攻守変動はめんどくさいのが多いから決闘で使うときは気を付けような。リアルではもちろん架空デュエルでも気を付けてないとベテラン決闘者でも処理間違えるから」
「スズカ先輩の手札が余っていたような気がしますし、『サイクロン』でも使ってもらうか、エアグルーヴ先輩の伏せカードが元々の攻撃力を半分にする『収縮』あたりに変えてもらうかで脳内保管してもらうしかないですね」
「もしかして今日の授業の内容って攻守変動デース?」
「んなめんどくさいもん尺足りないし絶対やりません。マジでお前ら『疾風のゲイル』のwiki見てみ?脳が理解を拒否するから」
「尺稼ぎたいんならやったほうが良いのでは?」
「攻守増減とか攻守の固定化とかガチで解説したら本編一本分余裕で超えるのでやりません。コンマイ語講座は各々検索して調べてくださーい」
「教師にあるまじきテキトーさデース...」
「じゃあめんどくさい質問も片付いた事だし授業始めます。さぁよくわかるデュエル哲学の39ページを開けー、良いかお前ら、ここに書いてあるのはな...」
(ちょっ!授業始める前に出してくださーい!)