【数年前 中央トレセンデュエルアカデミア】
「ち、チームっすか?」
「"肯定"ッ!君とサイレンススズカのコンビの活躍は聞いている。先日の中山記念はお見事だった!」
「最近新しく担当し始めたナリタタイシンも君の指導によってメキメキと実力を伸ばし、遂にはフォーチュンカップ優勝を成し遂げた!」
「故にッ!二人の優駿の才能を開花させたその実力を見込んで、君は今この瞬間よりチームトレーナーへと昇進となったのだ!」
「えー!?そんな、スズカとタイシンだけでも大変なのに、まだ担当増やせっていうんですか!?」
「大体元々デュエルトレーナーだった俺が1年そこらで昇進って...理事長、この辞令、ちゃんと周りと相談して決めてます?」
「"沈黙"ッ!」
「やっぱり勝手に決めてんじゃないですか!またたづなさんに怒られますよ!?」
「"許容ッ"!それでも致し方ない!」
「はぁ!?なんなんですかもう、いくらなんでもそれ...は...」
いつものようにやや暴走気味の理事長に抗議しようとして、しかし、彼女の瞳を見たとたん言葉が詰まってしまう。
この瞳は、以前にも見た事がある。
故に、気づいてしまった。
彼女の瞳の中で燃ゆる決意を、彼女から発せられる力強いフィールを、彼女が胸の内に秘める想いを。
いつもの暴走ではなく、あらゆるウマ娘の為、誰よりも真剣に考えたうえで言葉を発しているのだと。
心なしか頭の上の猫からも威厳が出てるように感じる。なんかレベル1モンスターを墓地から吊り上げそうな顔してるし
「"回想"、君をデュエルトレーナーとしてこのアカデミアにスカウトする時、私はこう言ったはずだ。」
「『URA、そしてランニングデュエル界に、新たな風を呼び入れなければならない時が来る』、と...」
「私は今、来るべき時の為に新しいチームの設立を計画している。」
「理事長自らが、新しいチームを...?」
「現在、ランニングデュエル界で確立されている常識をひっくり返す、新たな風となるチーム...君にはそのチームの担当トレーナーになってもらいたい!」
「そして"時"はもう迫りつつあるのだ...近い未来必ず、君と君の受け持つウマ娘たちの力が必要になるときが来る!」
「"歎願"ッ!どうか、どうか...私に力を貸してほしい!」
◆
「なーんて言われちゃったら、断れねぇよなぁ...」
("信任ッ"!君が現在多忙なのは理解している。特にナリタタイシンはクラシック戦線途中だ、チーム設立の為の作業に時間を割くのは難しいのだろう。そこでチーム設立の責任者として、私も尽力させてもらう!)
(チームに必要なメンバーのスカウトは任せてくれたまえ!アカデミア内部から地方に眠る優駿まで、私の力を持って隅々まで探してくる!)
(失礼します。理事長、急な要件とは...あら、トレーナーさんも呼び出しですか?)
(たづなっ!私はしばし出かけるので、一週間ほど留守を頼む!)
(...えっ!?)
「たづなさんの書類の手伝いして、夕飯食って帰ったらもうこんな時間か...」
ちなみに一緒に行ったラーメン屋で今日の事を話してみると、やっぱり今回の件は完全に独断で行われて居たらしい
たづなさんが少しキレ気味に頭を抱えていたので、理事長は戻ってきたら説教されるのだろう。
可愛そうだが『自業自得』だろう...怒られても致し方ないって言ってたし、フィールドのモンスターの数×500くらいダメージ食らうのは覚悟の上だろう。
たづなさんには強く生きてほしい。
「夜のターフってのは静かだな...?」
ダッダッダッダッダッ!!!
せっかく誰もいないんなら、俺も気分だけランニングデュエルを体験してみようか...
なんて魔が差したような事を考えていると、鋭い脚音が近づいてくるのが耳に入る。
「あれは確か...ミホノブルボン?」
総合トレーナーに昇進した今でも、元々のデュエルトレーナーとしての仕事が無くなったわけじゃない。
元々任されていたデュエルタクティクス授業の際に、中々見所のあるデュエルをしていたのが印象に残っている。
『ミホノブルボン』...入学前からかなりの好成績を残している有名なルーキーだと多くの同僚が話していた。
脚質は逃げ、短距離路線の期待の星としてベテランのトレーナーが付いているらしい。
俺が担当しているスズカとタイシンとは適正距離が合わないから、精々スズカがマイル出るときに当たる事があるかもなというくらいで、トレーナーとしては気に留めていなかった
...しかし、彼女の自主トレーニングをぼーっと眺めている内に、違和感に気づく。
「はぁ...はぁ...『サイボーグドクター』で...攻撃..!」
走行距離が短距離の基準の1400mを過ぎても一向に止まる気配がない。
それどころかマイル基準の1800mを超え、次第に減速しながら2000m、2400、2500mと走り続けている
「まさか...3000m...」
デビュー前から走る距離ではない。そもそも3000mを超えるレースなんてジュニア期には存在しないし、彼女の適性は短距離のはず...
最初の速度が見る影もないほど減速しながら、ついに3000mを走り切るかに思えたその瞬間、ミホノブルボンが電池が切れたように突如倒れこむ。
「ちょっ、大丈夫か!?」
◆
【現在 トレセンアカデミア 5Us部室】
「「「おぉー!」」」
『スペシャルウィーク、デビュー戦勝利!』
『5Usのルーキー、見事期待に応える!』
「わぁ...昨日のスぺちゃんのレースもう記事になってる!」
「ウイニングライブも"概ね好評"と評価されています」
「当然でしょう?このキングのダンスレッスンを受けてるのよ」
「いやーホント、無事にライブまで終わって良かった...良かった...」
「あのー...トレーナーさんはウイニングライブ苦手なんですか?」
昨日のレースの後のウイニングライブの時、ステージの上から見えちゃったんですよね。トレーナーさんが心配そうにおどおどしてるのを
具合が悪いのかと思って心配してたけど、ライブが終わった後にはけろっとしてて、結局何があったのかわからなかったんですけど...
「こいつ、昔ライブの練習させてなくてスズカをセンターで棒立ちさせた事があったんだよ。その時に生徒会長にめちゃくちゃ怒られたのがトラウマなんだってさ」
「昨日もスぺのライブが無事に終わるまで、ウザいくらい心配してた」
「そ、そうだったんですか...」
「ダンスは、苦手だ...」
「キングの指導だから大丈夫だって何度も言いましたのに...」
「一緒にいるあたし達まで白い目で見られるからしっかりしなよ、ほんとに」
「ええい!もうそのことはいいだろ、もうすぐ次のレースがあるんだからそっちの話しようぜ!」
「スぺ、勝つ準備はできたし、三冠ウマ娘取りに行くぞ!」
「え、ええええええええええ!?!?!?」
「このチームで今年の三冠に挑めるのはお前しかいないからな」
「え?でもキングちゃんだって私と同世代ですよね?」
「私は...色々あって去年クラシックの挑戦権を使ってしまったのよ。最近URAがクラシックの参加条件を変更して、中等部のウマ娘ならだれでもクラシック登録できるようになったから」
「まぁそれでも人生で一度しか出走できないから、キングみたいなのじゃない限り、みんな一番身体が出来てる3年目で挑むんだけど」
「ちなみにウチはタイシンが皐月賞取ってるし、去年なんかブルボンは2冠、ライスが菊花賞取ってその年の三冠総なめにしてるから、割とクラシック戦線の成績は良い方なんだぜ?」
「それって、その分だけ期待とプレッシャーも重いってことじゃないんですか...?」
「日本一のウマ娘になるんだろ?ならクラシック3冠は外せないだろ!」
「...菊花賞」
...?
ライス先輩、なんで胸を押さえてるんだろう?
「ライス先輩、どうしたんですか?祝勝会の食べ過ぎで胸やけしちゃったとか?」
「う、ううん。なんでもないよ!」
「...とにかく、だ。スぺは皐月賞の前哨戦である弥生賞を取りに行ってもらうつもりだ...が、その前に」
「ブルボン、分かってるな?」
「はい。3日後の復帰レースに向けて、ボディとデッキのメンテナスは万全に整えてあります」
「ブルボンさん、もう脚は大丈夫なの...?」
「はい。既にダメージは完治しています」
「そっか!良かった...」
「復帰レースって事は、ブルボン先輩、活動休止してたんですか?」
「ブルボンは去年三冠に挑戦した時に大きなケガをしちゃって、今まで療養中だったの」
「ですが、今日までマスターの支えのもとリハビリを重ね、以前の走行力まで修正に成功しました。解析の結果、デュエルタクティクスに関してはクラシック時期よりも向上してさえいます」
「調子は"絶好調"ってワケだな。そうだスぺ、お前もみんなと一緒に応援に来い」
「ブルボンの復帰レースはGII、日経新春杯だ。重賞レースのデュエルを見ておくのは、これからクラシック重賞に挑むお前に貴重な経験を与えてくれるはずだ。」
「当日は遅刻しないようにな。スズカもスぺが寝坊しないようにしっかり起こしてやってくれよ」
「ふふっ、起きなかったらチャンバライダーでダイレクトアタックしてあげるわね、スぺちゃん」
「はい!ちゃんと起きるのでダイレクトアタックはやめてください!」
「って言ってたのに遅刻したあああああああああ!!!!!!」
違うんです!ダイレクトアタックはギリギリで回避したんですけど、その後がダメだったんです!
早めに出て時間に余裕があるからって、折角だから走っていきましょうかってスズカさんに提案されて並走しながらレース会場に向かってたんですけど、途中で美味しそうな人参飴屋さんを見つけちゃって!
ついついそっちの方に寄っちゃったら、いつの間にかスズカさんに置いてかれてしまいました...
あんな所に屋台と言う名のリバースカードを仕掛けてたお店の人が悪いんです!あ、人参飴はおいしかったです。もぐもぐ!
そういう訳で現在、痛む肺を根性を振り絞って動かして、何とか指定された客席を目指して走っています!
「ギリギリセーフ!」
「は?余裕でアウトなんだけど」(ATK2100)
ダメでした。タイシン先輩がサイバードラゴンでダイレクトアタックの構えに入っていました。
「ごめんなさいスぺちゃん!私はぐれたのに気付かず走って行っちゃって!」
「あんだけ言われたのに力及ばず大遅刻しました、許してくださいって?」
「許してやれよぉタイシン、スぺも悪気があったわけじゃ」
(無言のエヴォリューション・バースト)
「ってなんで俺にぃ!?」(LP4000→1900)
「もう!静かにしなさいな、もうすぐブルボンさんの決勝が始まるわよ!」
「ブルボンさん、決勝まで行ったんですか!?」
「うん!今まで1ポイントもライフ削られてないんだよ!」
「えーーーっ!?」
重賞レースの予選で完全試合!?凄い!?
見たかったぁ...人参飴の罠に引っかかってなければ...
『ウェルカムトゥトゥインクルシリーズ!実況は私、ペガサスと解説藤木さんでお送りいたしマース!』
『黙れ』
『ホワッツ!?』
「ブルボンさんたちがゲートに入ったよ!」
「あれがブルボン先輩の相手...」
(ミホノブルボン...2冠ウマ娘...だけど、最後にレースに出たのは去年の菊花賞)
("最強"チームだか何だか知らないけど、病み上がりで勝たせてなんかやらないんだから!)
「『サンバイザー』...最近キャピタルSに勝って調子を上げてるって聞いたことがあるわ」
「俺も授業であの子のデュエルを見た事があるが、中々厄介なシンクロモンスターを使っていたな」
「シンクロ召喚...スズカさんと同じ戦法ですね」
「私の方が速いわ」
「なに張り合ってんのアンタは」
「でも、ブルボンさんは勝つよ」
じっとブルボン先輩を見つめていたライスさんがそう呟く。
そして、確かな信頼がこもったその言葉に、全員が首を縦に振ります。
「スぺ、このデュエルをよく見ておけよ」
「...絶対に面白いデュエルになるからさ」
「...はい!」
◆
(ステータス、"緊張"を確認)
(.....この空気、この歓声、久々ですね)
かつて、私の適性では無理だと言われた中距離レース
もう二度と立てないかもと言われた、中央のターフ
自分でももう入れないかもと思っていた、このパドック
(メモリーに反応、オーダー、"思い出の回想")
この様なステータスになると、いつも胸元の痣を見て思い出してしまう
あの日、一緒に夢を駆けようと言ってくれた人の事を
そして、このデッキを手にした時の事を...
「マスター...」
◆
「適量の水分チャージ、脈波、血圧共に正常値へ推移。メンテナンス完了」
「ホントに大丈夫?」
「はい。現在順調に回復中です。残り5分7秒コンマ3で走行可能範囲まで回復します」
「えっ?もしかしてまだ走る気なのか...」
「はい。回復後2000mの走行をする予定です。」
「だ、ダメだろそれは!」
「なぜです?」
「体が完成してない癖にそんな無茶なトレーニングしたら故障するに決まってるだろ!俺は走りの方のトレーナーとしての経験は浅いが、それくらいわかるぞ!」
「しかし、私はクラシック3冠という目指すべき目標があります」
「クラシック3冠って、全部中長距離レースじゃないか...」
ていうかこの子のトレーナーは短距離路線で育てるって聞いていたのに...まさかこいつ...
「それ、君のトレーナーは知ってるのか?」
「マスターは...乗り気ではない状態です。私の適性なら、短時間で決着が決まりやすい短距離路線を目指すべきだと」
「そりゃあ、なぁ...」
ランニングデュエルでは、コースを何周しようがデュエルに決着がつかない限り走り続ける事になる。
だが、コースを一周するごとにデュエルディスクにかけられているフィールの上限が上がっていく。
その為、一周するまでの距離が短い短距離レースではその分フィールを速く高めることが出来るのだ。
フィールが高まればドロー力も攻撃の際の威力も上がり、それだけ決着は速まっていく。
故に、彼女のようなスピードは速いがスタミナに難があるウマ娘は短距離やマイルレースで競うのだが......
「しかし私の最終目標はクラシック3冠、変更はできません」
「なので独自のフローチャートで中、長距離のトレーニングを行い、身体機能をカスタマイズしています」
「.......」
嗚呼、一日に二度もこのような眼差しを見ることになるとは。
昼間に理事長室で見たのと同じ瞳、"絶対"の決意を宿した瞳...
「走行可能範囲まで体力を回復、トレーニングを再開します。」
「ちょ、待てよ!?」
「なにか?」
「いや、その...」
さて、どうしたものか...
何を言ったって彼女の意思は変えられないだろう。しかしこのまま放っておけばいずれ故障するのは目に見えている。
その上、俺は彼女の抱える苦しみを理解してしまった。見捨てることは、どうしてもできない
だが、他のトレーナーの指導を勝手にするのはマナー違反だ。
俺だって、もし知らないところでスズカとタイシンが別のトレーナーの指導を仰いでいたら...多分拗ねるだろう。
まぁ総合トレーナーとしてはド新人だし、もしかしたらそうなっても仕方ないのでかもしれないが...
「状態、"フリーズ"と判断。何も無いようなので、私はこれで」
「あー待って待って待って!」
やばい!余計な事を考えてる暇はなかった!
仕方ない、あくまでアドバイスをするだけだ、指導じゃない。よって"マナー違反"の効果は無効!
レベルとランクの違いみたいな屁理屈理論武装を固め、俺は彼女に一つの提案をした
「ラップタイムを意識するんだ」
「ラップタイム...ですか?」
「君の脚質は逃げだから、最初から全力で走り続けてるんだろ?でも、長い距離で必要なのは正しいペース配分」
「むやみに全力を出すんじゃなくて、安定して走り続けることでタイム更新に繋がる」
「君は授業でも複雑な攻撃力計算やチェーン処理がスラスラ出来てたから、そういう計算は得意だろ?」
「あと、まずは1600mから始める事。短めの距離からラップ計測に慣れてから、少しづつ距離を伸ばしていこう」
「しかし...」
「焦る必要はねぇ。どの道あと一年は長距離レースは無いし、じっくり慣れていけばいい」
「...了解しました。ステータスを"おおらか"に変更。トレーニングを開始します。」
その後、彼女はラップタイムを意識し、安定した走りで自己ベストを更新。
よかった、少し畑違いの経験則だったがランニングデュエルでも通用したみたいだ。
目標を一つ乗り越えた彼女を見届け拍手を送った後、その日はそのまま帰宅した
...が、次の日もまた無茶なトレーニングをしているのを見てしまい、余り肩入れしてはいけないと理解しつつもついつい見守ってしまう、そんな日々を暫く続けていた。
しかしある日......
「君がミホノブルボンに勝手に長距離のトレーニングをしていたトレーナーか?」つサイクロン
やっべぇ...
いややばくない、この日の為に理論武装は重ねてきた!
「俺はトレーニングはしていません!ただアドバイスをしていただけです!」つマジックジャマー
「その二つの何が違うんだ?」つ神の宣告
ダメだった。カード名が違うみたいなノリで許してもらえると思ったのだが...
「マスター、自主トレーニングは自己判断で開始したもの。この方は何も関係ありません」
「そうですよ。トレーナーさんは私の担当なんですから、他の方の担当に手を出すわけないじゃないですか」
「毎夜居合わせていて関係ないわけないだろう」
というかスズカ、お前はなんでいるんだ?
「最近理事長さんが連れてきたライスちゃんにつきっきりだったり、トレーニング後にデュエルのお誘いをしても用事があるって行ってどこかへ行かれて、寂しかったので....こっそりついて来ちゃいました」
くっ...そんな目をしないでほしい。確かにスズカを放ったらかしにして他のトレーナーの担当を指導していたのは自分でも悪かったと思ってるぞ...
「はぁ...大方彼女に同情していたのだろう?」
「...同情ってわけじゃないですよ」
「三冠の事なら何度も聞いた。しかしあまりにもリスクが大きすぎる。君もトレーナーならわかるだろう?」
「それとも...理事長のコネで総合トレーナーになった様な素人には難しい話だったかな?」
「えっ...?」
「.........」ゴゴゴゴゴゴゴ
あっ、そういえばブルボンにその事言うの忘れてたわ。
まぁ俺にとっても唐突過ぎて意味わかんない人事だったから、言われてもしょうがないと思ってるけど。
正式にチーム発足したらまたなんか言われるんだろうなぁ...
あとスズカさん、俺は別に気にしてないんでその『王者の看破』みたいな気迫しまってください。お前レベル7以上の通常モンスターなんて使わないだろ。
「知らなかったのか?そのトレーナーは元々ランニングスキルを教えられるトレーナーではない。デュエル専門のトレーナーとしてこの学園に入った人間だ。」
「だが、理事長によって急に走りと決闘両方を見る総合トーレーナーに任命された。ランニングスキルについては新人トレーナーに毛が生えた程度だと言うのに、だ」
「まぁ、そういう事なんですわ...いやそういう事なんですけど...」
確かに俺は素人だ。だけど、素人なりに言いたいことはある...!
「素人の目でも分かりましたよ。確かに彼女は短距離路線が一番適しているんでしょう。」
「だけど、努力で適性の差を埋めれるほどの才能があります。現に少しずつですが走れる距離も伸びてきましたし」
「何より、三冠という夢を命を懸けて追い求める心の強さがあります。決闘者として何よりも大事なものを彼女は持ってる!」
「だから、認めてもらえませんか。彼女がクラシック三冠に挑戦することを」
「決闘者として一番つらいのは負けることじゃない...戦う機会すら与えられない事です!」
戦いたくても戦えない、戦いの舞台にすら立てない。
その苦しみを痛いほど理解してしまった俺は、つい熱くなって語ってしまう。
それでも、ブルボンのトレーナーの意見を変える事はできなかった。
彼は深くため息をついて、ブルボンに問う。
「ブルボン、先程の君の自主トレーニングを見させてもらった。はっきり言って、今の君では3000mを走り切れるかすら怪しい」
「それでも、君はクラシック3冠を挑まなければならないのかね?」
「はい。この目標だけは、たとえマスターのオーダーでも変更を許可できません。申し訳ありません。」
「そうか...そこまで意志が固いなら仕方ない」
「じゃあ、ブルボンさんの三冠挑戦を認めて頂けるんですか?」
「好きにしたらいい。ただし、私との契約は今日で終了だ」
「えっ...」
「君がそんなに愚かだったとは、正直失望したよ」
そう呟いて、ブルボンのトレーナーは静かに去って行ってしまった...
「......」
「ブルボンさん、大丈夫ですか?」
俯いて沈黙しているブルボンをスズカが気遣う。
無理もない、いきなり担当トレーナーに見限られてしまったのだから
「事実として、私は今日までトレーニングを重ねても、3000mでのデュエルを最後まで走り切ることはできませんでした」
「クラシック三冠だけは、どうしても譲れません。しかし...私の選択は、本当に正しいのでしょうか。」
「正しいに決まってる」
そうブルボンに告げ、俺はブルボンをスズカに任せて、その場を後にしようとする
「トレーナーさん、どこへ?」
「理事長に会ってくる」
絶対に、諦めさせはしない!
◆
数日後、俺は彼女に種目別競技大会の芝2000mに参加するようブルボンに進言した。
理由はただ一つ、結果を示してブルボンのクラシック三冠挑戦を周りに納得させる事
その為に、この人にもレースを見てもらうよう予めお願いをしておいた。
「"期待"ッ!君がそこまで言うウマ娘のデュエル、見せてもらおう!」
「そもそも、元々ミホノブルボンの件は私も気になっていた。彼女が本当に長距離を走れるようになるなら、私はこの学園の理事長として、彼女の背中を支えてやりたい!」
「それで理事長さんを...トレーナーさんは変なところで行動力がありますね」
「それに、私の感覚が正しければ彼女のフィールは...本物なら、きっとこのレースで...」
「なんか言いました?」
「えっ!あっ...ひ、"否定"!なんでもない、何でもないぞ!」
『さぁ芝2000mのデュエルレースもいよいよ佳境!距離延長を不安視されたミホノブルボン、ここまで優位に逃げ切っていますが、このまま勝利を掴めるか!?』
「ここだっ!『サイコショッカー』で攻撃!」
「っ!」(LP2500→100)
『おーっとミホノブルボン精彩を書いたか!?ついにまともにダイレクトアタックを貰ってしまったー!』
(このドローが最後のドロー、ここで逆転のカードを引けなければ、私は負ける)
(...エラー、勝ち筋の計算に失敗、このドローで、何を引けば...)
(やっぱりスタミナ切れで集中力を欠いたかー)
(短距離に挑めば圧勝でしたでしょうに、彼女のトレーナーは何を考えてるのかしら)
(それが彼女、長距離に拘り過ぎて契約してたトレーナーに切られたらしいよ)
(っ...)
「...言いたい放題ですね」
「だからなんだ。ブルボンには何を言われようと、クラシック三冠に食らいつく意思がある。それがある限り、あいつは負けない」
「だから...最後まで意地張って勝って見せろ、ミホノブルボン!!」
(!!)
(トレーナー、いえ、"マスター"の声)
(...ライフは100、フィールドのカードは0、スタミナ残量残り僅か、それでも、私は!)
「っ!?」
「どうしたスズカ...ってお前、左脚の痣光ってんぞ!?マジでどうした!?」
「わ、分かりません...だけど、何か感じる?ターフの方から...」
「...!?ブルボンの胸が赤く光ってる!?」
「"確信"、やはり彼女が...!」
(む、胸の熱量が急上昇...?ですが、不思議と力が...)
(考えても答えは出ないと判断、とにかくカードを...)
「私のターン、ドローッ...!?」
【閃刀姫-レイ】
(デッキデータ検索、エラー...全カードデータ検索、エラー)
(この様なカード、デッキに入れた記録は...そもそも、見た事さえ...)
(なのに、使い方が分かる...何故...いえ、今はこの手に賭けるのが最善...!)
「私は閃刀姫-レイを召喚、そして...」
「閃刀姫-レイをリンクマーカに...セットッ!」
◆
「...時間ですね」
決勝戦開始の知らせがアナウンスより流れ、私はスターティングゲートの座標へと移動を開始する
その一歩一歩に、今日まで積み重ねた努力と想いを乗せて
マスター、2冠を手にさせたうえで私が故障した後、貴方が周りに何を言われていたのか、私は知っています
貴方が短距離路線に進ませなかったから、無理をして走らせたから、そう言われていたのを
そして、理不尽な言葉を浴びせられていた人がもう一人いた事を...
だから、見ていて下さい、二人とも
優秀なマスターとライバルによって育て上げられた、私の雄姿を
貴方達が私の選択を肯定してくれたように、私もあなた達の選択が正しかった事を証明します
「見ていてください。マスター、そして...」
「ライスシャワー」
キーンコンカーン
「はーい席につけー授業はじめっぞ」
「すいませんトレーナーさん!」
「なんだスぺ、あと教室では"先生"、もしくは"熱血指導王ジャイアントレーナー"と呼べ」
「後半意味わかんないデース!」
「じゃあ先生!今日は最強カードのコーナーじゃないんですか?」
「回想で尺使いすぎてデュエルまでいかなかったから代わりに授業するんだよ。」
「授業と言っても何の授業をするんですか?」
「いい質問だグラス、今日はウマ娘目当てで遊戯王OCGのルールを知らずに読み始めた読者の為に、遊戯王の基本ルールを解説していくぞ」
「それ知らない人読んでないと思いますけど」
「基本を大事にしてこそ決闘者なんだよ、基本ルール大事にしないからうっかりスケール1でレベル1モンスターをP召喚しようとしたりするんだよ」
「私の初デュエルのミスほじくり返さないでください!」
「んじゃ最初はフィールの説明しまーす」
「OCG関係ないじゃないですか!」
「うっせーなそんなん公式のルルブ読むかアニメ見るかしろよ」
「先生数行前のセリフ覚えてます?」
「フィールはフィールで解説したほうが良い気もしますけどね。あれは漫画版5Dsにしかない概念ですし」
「しょーがねーなー、じゃあこの前来てたルールについての疑問のお便り読むか」カキカキ
「自作自演デース!こいつ今自分でお便り書いてマース!」
「えーペンネーム"ゴールデン・コーン号"さんからのお便りです」
『スぺはいつもP召喚する時EXデッキからは1体しか出さねーけど、EXデッキから出せるならもっと100体くらい出せばいいんじゃねーの?あとあたゴルシちゃんの出番まだ?』
「あー、あれですか。あとそもそも100体は物理的にもデッキ枚数的にも無理です」
「それ私も気になってマース!」
「エル、あれはちゃんと理由があるのよ。ですよね、先生」
「えー、現在のルールでは、原則としてPモンスター、そしてリンクモンスターがEXデッキから特殊召喚される場合は、融合、シンクロ、エクシーズと違い『必ずEXモンスターゾーンに召喚する』必要がある」
「EXモンスターゾーンはリンクモンスターによるEXリンクを考慮しない限りプレイヤー1人に一つだけ、だからスぺは毎回EXデッキからは1体しか出せないわけだ」
「それを搔い潜って大量にP召喚するために、私はいつも"ハルモニア"の効果やキューティアで手札にドレミコードモンスターを増やしてるんです。手札からならP召喚でもメインモンスターゾーンに出せますからね!」
「まー実はEXのPモンスターを2体以上P召喚する方法もあるにはあるんだが...」
キーンコーンカーンコーン
「時間が来たので今日はここまでにしまーす」
「後半の質問はどうするんですか?」
「少なくとも5Usが全員デュエルしてからじゃないか?」