【数年前】
「重い...だりーわマジで...」
スズカに加えてタイシンも担当することになってしばらくしたある日、俺はちょっと離れの駅前まで買い出しに出かけていた
「あいつらここぞとばかりに色んなもの頼みやがって...クソッ、じゃんけんにさえ負けていなければ....」
「日が暮れる前に帰れるといいんだけど...ん?」
「ふぅ...休憩おしまい!早く戻って次のメニューを...」
「がんばれれライス、がんばれー...おー!」
おぉ...こんな離れまで練習に来る生徒は珍しいな...
「あ、赤信号...」
「また赤信号...」
「あうぅ...ま、また...」
あの子、凄い頻度で赤信号で捕まってる...
というか、同じ帰り道を通ってる俺も重たい荷物を抱えながら何度も何度も赤信号に捕まり続けていた
...休憩できるから、ある意味ではありがたかったケド
その後も信号という信号に捕まり続け、アカデミアに戻るころにはすっかり夜になってしまっていた
「あのっ、すみません!」
「えっ?」
アカデミアにつくやいなや、さっきの生徒がこちらに振り返ってペコリと頭を下げてきた
きょろりと辺りを見回してみるが、俺とこの子以外には誰もいない。じゃあやっぱ俺に話しかけてるのか...
「えと...何が?」
「だって、ライスがそばで走ってたから...帰るのがこんな夜に...」
「ホントにホントにごめんなさい!」
「いや、そんなの別に君のせいじゃないでしょ。別に謝らなくても...」
「ライスのせいなんです!ライスはすぐみんなを不幸にしちゃうダメな子だから...」
へー、ライスっていうのかこの子。腹減ってくる名前だな、そういえば昼メシ食ってないし腹減ったな
...ってやばいこの子泣きそうだぞ!?
まずいまずい!こんな現場見られたら明らかに子供を泣かせる不審者と思われてしまう!
「ほ、ホントに大丈夫だから!泣かないで!な!?」
「ごめんなさい!で、でもライスがいなくなれば大丈夫だから!それではっ...!」
「あ、ちょっと...行っちゃった」
ツイてないのは今朝からだから、絶対あの子とは関係ないと思うんだけどな...
てかかなりキレのある走りだったな。もしかしたら、スズカやタイシンにとって手ごわいライバルになるかも...
「遅いんだけど」(ATK2100)
「ねぇトレーナさん?さっきの子、誰ですか?」(ATK2000)
「あっ、やべ...」
ギャアアアアアアア!!!!(LP4000→0)ピー
◆
【GⅡ 金鯱賞】
「リミッター解除の効果を受けた『HSRチャンバライダー』でダイレクトアタック!」
「お、オーバーキルすぎー!?」(LP4000→0)ピー
【GⅡ 京都記念】
「『サイバーエンドドラゴン』で攻撃!エターナルエヴォリューションバースト!」
「こ、攻撃力8000だとおおおおおおお!?」(LP4000→0)ピー
【GⅡ 中山記念】
「『永の王 オルムガンド』ッ!キングの威光を知らしめなさい!ウロボロス・ヴェノム!」
「むーりー!?」(LP4000→0)ピー
【GⅡ 阪神大賞典】
「『閃刀姫-カガリ』でダイレクトアタック!閃刀-殲光花火!」
「きゃあああああ!!!!」(LP4000→0)ピー
『チーム5Us快進撃!"最強"チームは止まらない!?』
「やっぱりすごいデースチーム5Us!最近また話題沸騰してマース!」
「当然でしょう?このキングの所属する一流のチームなのだから!」
「それにスぺちゃんも、弥生賞優勝おめでとうございます」
『スペシャルウィーク、弥生賞優勝!』
「えへへ...私なんてまだまだだよ」
「編入早々重賞とってる時点で凄いと思うけどなー」
「まぁ、私もスカイさんもいなければ、グラスさんも出走回避してたもの。正直退屈だったんじゃない?」
「そ、そんなことないよ!減量すっごく大変だったんだから!」
(苦労したのデュエルの内容じゃないんだ...)
「でも、結局ブルボンさんとの特訓で得た力も使わずじまいだったじゃない?」
「うん...『ミューゼシア』ちゃんにも出番あげたかったなー」
「あらスぺちゃん、新しいカードを手に入れてたんですか?」
「はい!やっと私のEXデッキにもご飯以外の仲間が入ったんですよ!」
「スぺちゃん、『簡易融合』と『簡素融合』をご飯って認識してるの...?」
「ソリッドビジョンでも食べてる感覚は味わえますから!お腹は膨れませんけど...」
ちなみに彼女のEXデッキと言う名のお弁当の中身は
・チキン(紅妖鳥&無の畢竟 オールヴェイン)
・焼肉(ミノケンタウロス)
・パスタ(カルボナーラ戦士)
・刺身(深海に潜むサメ)
である。
なお、食べてしまったら召喚出来ないのではないだろうかというツッコミはしないように
「ふふっ、それなら皐月賞で戦うのがとても楽しみですね」
「えっ!?グラスちゃんも皐月賞出るんですか!?」
「ええ。故障といってもちょっと足捻っちゃっただけですし、もう完治しましたから皐月賞には出走しますよ」
「エルは日本ダービーに出走しマース!スぺちゃんと戦うの楽しみデース!」
「私とキングはもうクラシック出れないから、私達と当たるとしたら宝塚記念とか有マ記念とかかなー?」
「え?スカイちゃんもクラシック出ないんですか?」
「出ないってか、もう去年出ちゃったんだよねー」
「スカイさんも1年待てばクラシック3冠も狙えたかもしれないのに、もったいないわね」
「それ、キングが言う~?」
「でも、私とキングがいなくても今年のクラシックは大変かもね」
「そうね。あの『トウカイテイオー』が出てくるもの」
「とうかいていおー...?」
「あっ、そっか。スぺちゃんはアカデミアに来たばかりだから知らないか」
「別名『無敵の帝王』...去年G1レースのホープフルステークスを含む10回のレースを無敗で快勝し、URAから最優秀ジュニアウマ娘の賞を獲得したウマ娘です」
「今最もクラシック3冠に近いウマ娘と言われているそうですし、苦戦は避けられない相手だと思います」
「ぐ、グラスちゃんがそこまで言うなんて...」
「それに、テイオーは去年の表彰式にURAから"ミレニアム・カード"を受け取っているはずデース。きっと去年より格段にパワーアップしてマース!」
「え?ま、まってさらっと新しい単語出てきませんでした?"ミレニアム・カード"ってなんですか?」
「去年のURA大賞で表彰されたウマ娘に配られた、URAが受賞者の為に作り出した世界に一枚だけのカードよ」
「そしてこのキングも、"ミレニアム・カード"を1枚持っているわ!」
「ええっ!?」
「ていうか、チーム5Usはみんな持ってるよね~」
「年度代表チーム大賞を受賞してましたからね。去年いなかったスぺちゃん以外のメンバーはみんな持ってると思いますよ?」
「し、知らなかった...世界に一枚のカードなんてずるいですよ!」
「それを言うなら貴方のドレミコードもどうかと思うのだけれど...なんで学園のデータベースにも載ってないのよそのモンスター達は」
「知りません!!」
「いやそんな迫力出して言わなくても....」
「でも"ミレニアム・カード"があろうがなかろうが関係ありません!デュエルの勝敗を分けるのはカードの強さじゃなくて
「む、私だって負けませんよ!」
「あらあらエル、私を差し置いて世界最強を名乗るなんて...お仕置きが必用みたいですね~?」
バチバチバチ...
「い~ね~青春だね~。私達も去年はこんな感じだったっけ...ねぇ、キング」
「あら、なにかしら?」
「今年の有マ記念は負けないから」
「...ええ、望むところよ。キングは逃げも隠れもしないんだから!」
◆
【チーム5Us 部室】
放課後、教室の外で出待ちしてた(びっくりしました)トレーナーさんに
『大事な話があるからすぐに部室に来るように』
と呼び出され、キングちゃんと一緒に部室へ向かいました。
「よし、全員集まったな」
「大事な話って何ですかトレーナーさん?」
「ようやくお前らの今年の目標スケジュールが決まったからな。ここで一斉に発表することにした!」
「じゃあいくぞ、まずは!じゃかじゃかじゃかじゃかじゃかじゃか...」
「うざい、早くして」
「ハイ...」
「えーまずスズカ、宝塚記念!」
「GⅠですか、燃えてきますね」
「張り切り過ぎてまたケガしないようにしなよ?」
「大丈夫よタイシン、折れても走るから」
「それで去年大事になったでしょうが!」
「次にタイシン、秋の天皇賞!」
「スズカの次はアタシか。5Usで連覇、やってやろーじゃん!」
「キング、まずは安田記念!そして有マ記念連覇!」
「一流のキングのロード、世界に知らしめてあげましょう!」
「ブルボン、今年こそジャパンカップ!」
「マスターからのミッション、今度こそ完遂します」
「スぺは前から言ってるようにクラシック3冠、まずは皐月賞だ」
「はい!頑張ります!」
「そして....」
「ライス、春の天皇賞に出走するぞ!」
「...えっ?」
「春の天皇賞は3200m、菊花賞と同じ超長距離レースだ。ライスが最も得意とする距離、狙わない理由はない!」
「久々のレース、しかもGⅠだ!絶対に勝ちに行こうぜ!な、ライ...ス?」
「...嫌です」
「えっ?」
「ライス、もうレースに出るのは嫌なんです!」
「ライス先輩、それってどういう事ですか?」
「...ライス、大丈夫だって。今度はきっと...」
「ごめんなさい、お願いだからもう放っておいてください!」
「あ、ライス先輩!」
止めるまもなく、ライス先輩は部室を飛び出してしまいました...
「やっぱり、菊花賞の事がまだ糸を引いてるのか...」
「ライス...」
「あ、あのー...菊花賞の事っていったい何なんですか?」
「..........」
「去年、ライスとブルボンはクラシック戦線に挑戦していたの」
「ブルボンはクラシック三冠の夢の為、ライスはそんなブルボンに追いついて、追い越す為。二人はチームメイトでありながらライバルとして、お互い競い合いながら走っていたわ」
「皐月賞、ダービーはブルボンが勝利だった。そしてブルボンにとって無敗の3冠がかかった菊花賞。そこでライスはついにブルボンの背中を捕らえ、追い越し勝利した」
「本当に、熱く燃え滾る最高のデュエルだったわ」
「でも、レースを見ていたほとんどの人にとってはそうではなかった」
「"3冠ウマ娘ミホノブルボン"の誕生を見に来ていた人々は、ライスの勝利を受け入れなかった」
◆
「『リチュアル・ウェポン』を装備した『竜姫神サフィラ』で、『閃刀姫-カガリ』に攻撃!」(LP500)
サフィラ(ATK2500→4000)
カガリ(ATK3000)
「この瞬間を待っていました!」(LP1000)
「!!」
「速攻魔法発動、リミッター解除!」
「私のフィールドの機械族モンスターの攻撃力は倍になります。つまりカガリの攻撃力は倍の6000!」
カガリ(ATK3000→6000)
『ここに来て閃刀姫カガリの攻撃力が跳ね上がったー!!この瞬間の為に墓地に魔法を溜め続け、カガリの攻撃力を上げていたのか!?』
『勝利の為に何手先をも計算していたミホノブルボンに勝利の女神は微笑んだ!今この瞬間、無敗の3冠ウマ娘ミホノブルボンが誕生だーッ!』
「私の勝ちです!ライス!」
「ライスも...」
「ライスもこの瞬間をずっと待ってたよ!」カンコーン!
「えっ...!?」
「速攻魔法発動!『禁じられた聖典』!」
「そのカードは...しまった!」
「お互いのモンスターが戦闘を行うダメージ計算時、禁じられた聖典以外のフィールドのカードの効果をダメージステップまで無効化する!」
「そして、その戦闘ダメージの計算でモンスターの攻撃力は元々の攻撃力と同じになります!」
「装備魔法の効果は無効になり、サフィラの攻撃力は2500...ですが、カガリの元々の攻撃力は1500...」
「ライス、貴方は私の最後の切り札を読んでいたのですね...」
「ブルボンさんはきっと、カガリの攻撃力を上回ることを読んで、リミッター解除を構えてくると思ってたよ。絶対必中のカウンターを決める為に!」
「ここで使ってきてくれると思ってた。ライスはずっと、耐えて、耐え続けて...この布陣が揃うのを待ってた!」
サフィラ(ATK4000→2500)
カガリ(ATK6000→1500)
『なんという事だーッ!?最後の最後でサフィラとカガリの攻撃力が逆転!』
『その差はミホノブルボンのライフポイントに並んでしまっているーっ!』
「"ヒム・オブ・ライト"ーーーッ!!!!!!!」
「ーーーーーッ!」(LP1000→0)ピー
『ゲームセーーーーット!ミホノブルボン三冠ならず!今年の菊花賞ウマ娘はライスシャワーだーっ!』
「はぁ...はぁ...やった!」
「やった、やった!ライス、ブルボンさんに勝っ(なんでだよー!)...え?」
「クラシック3冠、最後の最後でライスの勝ち...か。ホント、熱いデュエルしてくれるんだから...!」
「どっちが勝つにせよ、もうすぐ同じチームに...ううん、二人とももう仲間だもの。ちゃんと祝福しなきゃ、ね?」
「そうだな。んじゃみんなで呼びかけてやるか!」
「せーの、おめでとう、ラ(ふざけんなー!!!!)!?」
「お見事でしたライス...ライス?」
(Boooooooo!!!!)
「これは...!」
(三冠ウマ娘の誕生を見たかったのにー!)
「なんで...ライス、勝ったのに...」
(余計な事するんじゃねーよライスシャワー!)
「誰も、ライスが勝つ事なんて望んでなかったの...?」
(なんでミホノブルボンじゃないんだよー!)
「おい...どういう事だよ...なんなんだよ一体!!」
「これは...」
「ざ、ざけんなッ!勝ったのはライスじゃん!?なのに、なのに...ッ!」
「ライスが、みんなの夢を壊した...?ライスが、みんなを悲しませた...?」
「ライス...?」
「ごめんね、ブルボンさん、みんな...」
「ライスがデュエルなんて、やっちゃいけなかったんだね...」
◆
「そ、そんなひどい事が...」
「会場を覆う巨大で異質な空気...その中では、私達数人の声援はあまりに小さすぎたわ...」
「その後のライブも散々、勝ったライスの事は誰も労わないばかりか、勝敗を無視して"三冠おめでとう"なんてバルーンを打ち上げるバカがいたくらいだ」
「あんなに熱いデュエルだったのに...ライブの方は逆だった。今までアタシが見た中で、最悪のライブだった...ッ!」
「それ以来、ライスはデュエルをしなくなった。トレーニングには真面目に出ても、あれから一度もレースには出ていない」
言われてみれば、このチームに入ってからライス先輩はよく私のトレーニングを助けてくれたり、一緒にお出かけしてくれたり...
何度も傍で支えてくれたのに、ライス先輩がデュエルしているとこは一回も見た事がありません
ずっと不思議でしたけど、そんな重い理由があったとは...
「まだチームが出来る前の事で、私もその時はトレーナーの担当じゃなかったから、詳細は知らなかったけど...ひどい話ね」
「それに...ライスにはきっと、天皇賞に出たくない理由がもう一つあるんだろうな」
「もう一つの理由?」
「...チームサティスファクションの"名優"、『メジロマックイーン』の三連覇、ね」
「『メジロマックイーン』さん...あっ、テレビで見た事あります!去年、天皇賞春を2連覇したウマ娘って大きく取り上げられてました!」
「あっ...でも、ライス先輩が天皇賞春に出るって事は...」
「そう、ブルボン先輩の無敗の三冠を阻んだように、今度は今まで誰も成しえていない"春の天皇賞3連覇"を阻むということ」
「メジロマックイーンは去年URAから"ミレニアム・カード"を贈られたほど人気のウマ娘だ。当然、3連覇という偉業を目当てに来る観客も多い...というか、それが殆どだろう」
「菊花賞の時と同じようになるのは目に見えている...それならいっそ出走したくないというのも、分かる...」
「いいえ、私は分かりません。今のライスは、間違っています」
「ブルボン...?」
「あれだけのブーイングを受けて、大きな損傷を受けてしまったライスの心の痛みは計測は不可能でしょう」
「ですが、デュエルから逃げるのは決闘ウマ娘として間違っています」
「『決闘は、ぶつかり合う魂の儀式である』...決闘から逃げる事は、自らの魂を捨て去るのに等しい行為です」
「マスター、私はミッション、"ライスの説得"を実行しに行くのでこれで失礼します」
「...トレーナーさん、私も行ってきます!」
そう言って、スズカ先輩とブルボン先輩はライス先輩を探しに走り出しました
菊花賞でライス先輩の心がどれだけ傷ついたのか、私には想像もできません...
でも...あんなに優しくて、それなのに厳しいトレーニングを笑顔でやり切って、みんなを元気づけてくれるライス先輩が...
そんな人が笑ってデュエルできないなんて、そんなの...そんなのは...!
◆
『幸せの青い薔薇』
いつもライスに勇気をくれる、ライスの大好きな、大好きなお話
その絵本の主役、不幸の花と言われ続けた青い薔薇、ライスはいつも青い薔薇に、自分を重ねてきた...
しおれかけた青い薔薇を助けた、"お兄様"...
不幸の花を幸せの花に変えた、"お兄様"の様な人に...
そんな人にもし会えたら、ライスも、ダメな子じゃなくなるかのかな...
なんて思っても、ライスはやっぱり駄目な子のままで...
また選抜レースに出る勇気がなくて、結局出られなかった日の夜
学校の偉い人に声をかけられて...
とうとう学校から追い出されちゃうのかな、でも、それも仕方ないのかな...
そう思いながら着いていって...そしたら...
「"紹介"ッ!トレーナー君、彼女が君が新しく担当するウマ娘だっ!」
「え、えぇ!?」
「ライスシャワー、自己紹介だ!」
急に男の人と二人のウマ娘の前に連れてこられて、自己紹介をさせられることになっちゃった...
え、えと...とりあえず...
「え、えと...ら、ライスシャワーです!よ、よろしくお願いします...」
「ふふっ、よろしくね。ライスシャワーさん」
「よろしく、アタシはナリタタイシン、こっちがサイレンススズカで...こいつがアタシ達のトレーナー」
「よろしく....って、君は昨日の...」
「...あ、昨日のお兄さん!?」
き、昨日ライスのせいで不幸になっちゃたお兄さんだ...
やっぱり、怒ってたのかな...だからライスを呼び出して....
「ご、ごめんなさい!」
「ええっ!?いきなりどうした!?」
「"驚愕"ッ!?き、君!ライスシャワーと何が...?」
「は?アンタこんな小さい子に何したの?」
「やっぱり昨日...」ゴゴゴゴゴ
「ご、誤解だ!何もしてないし何もされてない!てか大きさはタイシンとそんな変わんないだろ!」
あれ?ち、違うの...でも、じゃあなんで?
「ていうか会長、もしかして彼女も例の...」
「"肯定"ッ!このライスシャワーこそ、伝説の痣、"
うまぐなー...?痣...?
何の話だろう?痣って事は...
「あのー...痣って、もしかしてこれの事ですか...?」
ライスが髪を上げて隠してる右側の顔を見せると、みんなじーっとライスの顔を覗き込んできました
うぅ...やっぱりこれを見られるのはドキドキする...
「ホントだ、また変なデザインの痣だな」
「...え?"また"って...」
「私達にもあなたと同じように、身体に変な痣があるの。ほら」
それぞれ左脚の靴下と右腕の袖をまくると、そこには本当にライスの顔にあるものみたいな変な形の痣がありました
「ライスシャワー、その痣はいつからあったんだ?」
「えっ?生まれつき、だけど...」
そう、生まれつきライスの顔には変な痣があったんです
絵本の青い薔薇と同じ変な見た目、まるで、絵本の様にライスは不吉な子なんだと言われている気がして...
昔からずっと、ライスは前髪を伸ばしてこの痣を隠してきました。
「"看破"ッ!髪で隠していたようだが、決闘巫女たる私の眼は誤魔化せないぞッ!」
「ご、ごめんなさいぃ!」
「"困惑"ッ!なぜ謝る!」
「だって、だってぇ...ライスがダメな子だから...」
「はぁ?いったい全体どうしてそういう話に持っていくわけ?」
「え?だって、ライスが選抜レースに出ないから...ライスがいつまでも変われないから...」
「んー...よく分かんねぇけど」
「レースに出る勇気がないなら出るまで一緒に頑張るよ。俺は君のトレーナーだからな」
「えっ?ライスの、トレーナーさん...?」
「"肯定"ッ!彼は今から君の担当トレーナーになる!」
「え、えぇっ!?ライス、選抜レースにも出てないのに...?何度出ようとしても出られなかった、ダメな子なのに...?」
「変われないのを怖がってるって事は、それだけ変わりたいって願ってるって事だろ?」
「なら、君が立派な決闘ウマ娘になれるよう、最後まで支えるよ」
「ほ、本当に...?」
「ああ!昨日一瞬だけ見た君の走り...君は間違いなく、強く、みんなに夢を与えられる決闘ウマ娘になれるからな!」
「だって、君の名前は____」
◆
「はぁ...はぁ..また、逃げてきちゃった」
(「天皇賞、あのマックイーンさんが出るんだってね!」)
「!!」
(「次勝ったら前人未到の3連覇でしょ?めっちゃ見たいよねー!」)
そう...だよね。
みんな、今度はマックイーンさんの3連覇が見たいんだ...
もし、天皇賞にライスが出たら...
「やっぱり、ライスは天皇賞に出ちゃいけないんだ...」
ああ、ごめんなさい。お兄様...
あの時、お兄様はあんなに優しくしてくれたのに...
あの時と変わらずダメなライスのままで...ごめんなさい...お兄様...ブルボンさん...みんな...!
「あ、いた!」
「見つけましたよ、ライス」
「ひっ!!ぶ、ブルボンさん...スズカ先輩...」
(スズカ先輩、ここは私に任せてください)
(え、大丈夫なの?)
(任せてください。こういう時にかける言葉はマスターから学んでいます)
(ほ、ほんと?なら、お願いするわね)
「ライス....」
「四の五の言わずに走りなさい!!!!!!」
「「えぇーーーーー!?!?」」
「ちょ、ちょっとブルボン!あなた一体トレーナーさんから何を学んだの!?」
「いえ、シミュレートの結果、マスターならこういうはずです」
「そ、そのシミュレート絶対何かバグってるよブルボンさん!」
◆
「ハックショイ!」
「...?なんか今凄い不名誉な誤解をされた気がするぞ?」
「は?こんな時に何バカなこと言ってんの?」
◆
「ライス!天皇賞に出なさい!」
(え?続けるの?ここから?)
「しつこいです...もう放っておいてください」
(あ、続いた...)
「しつこいのはライスです!いつまでくよくよしてるつもりですか!」
「菊花賞の時のしつこさはどうしたんですか!私が何度も何度も勝ちへの手を指しても、何度も凌いで...最後に最高のカウンターを決めて勝った...あの時の勝利への執念はどこへやったんですか!」
「菊花賞の話なんてしないで!!」
「ライスはブルボンさんに勝ちたかった...すっごく強いブルボンさんに勝てば、みんなが認めてくれると思った。みんなに夢を与えられると思った!だから頑張った!」
(ブルボン惜しかったなー、次頑張れ!)
(三冠ウマ娘見たかったけどよくやった!)
「でも!誰もライスの勝利なんて求めてなかった!ライスが勝っても誰も認めてくれなかった!ライスはむしろ、みんなの夢を壊したヒールだった!」
「それなのに、今度は天皇賞でマックイーンさんの連覇を阻めっていうの!?みんなが望んでる、夢の3連覇を!?」
「ライスはそんなことできない...ライスはマックイーンさんや、5Usのみんなとは違う...みんなから嫌われて、みんなを不幸にする...」
「そんなわけない!!!!」
「え...スズカ、先輩...?」
「さっきから聞いてれば、誰も求めてない、だれも望んでないって...そんなわけないでしょう!」
「だって、トレーナーさんも、ブルボンも、チームのみんなも...あんなに辛そうじゃない!」
「それは...ライスがブルボンさんに...」
「違う!ぜんっぜん違うわ!」
「辛いのは...ライスが笑顔にならないから!ライスが笑顔で決闘できないからよ!」
「トレーナーさんも、ブルボンも、タイシンもキングもスぺちゃんも、私だって!ライスの決闘が見たい!ライスに天皇賞で勝ってほしい!」
「"誰も"求めてないなんて、全部あなたの思い込みよ!」
「そうですライス、だって貴方は、私の"ヒーロー"なんですから」
「...え?」
「覚えてますよね。私が大きなケガをしたこと、また走れるのはいつなのか、そもそももう一度走れるようになるのか」
「私はずっと、不安に押しつぶされそうになっていました」
「それでも、それでも諦めずにいられたのは、貴方のおかげなんです」
「私は菊花賞の、私を負かしたあなたの姿に夢を見たんです。今度こそ勝ちたい、あの時私を破った貴方を、今度は私が破りたい」
「私の三冠の夢は、確かにあなたに奪われました。でも、それ以上に大きな夢を、私は貴方からもらいました」
「私の夢は、貴方からもらった夢で形を変えたのです。『最高のライバルと競い勝ちたい』と言う夢に!」
「私がケガをした時もそうだった。あの時、私でも勝てないかもとさえ思うほどのフィールを発していたブルボンに勝って見せた貴方の姿が、私も、タイシンだって、ずっと眩しかった」
「あの日のあなたを超えたい、もしいつかあなたと戦う事があったら、私の全力を持ってあなたを打ち負かしたい...だから、秋の天皇賞で折れた脚で走り切ることが出来たの!」
「リハビリも、ライスがトレーナーさんと一緒にずっと手伝ってくれたから、予定よりもずっと早く復帰できたのよ」
「そういう事だ、ライス」
「お、お兄様!?それにみんな!?」
「全く、二人ともいきなり飛び出していきやがって」
「あんたが遅いから遅れたんでしょ」
「しょーがねーだろ俺はヒト息子なんだよ!」
「ライス先輩、去年の菊花賞...私も出たから分かります。あの時の貴方は"超一流"のウマ娘だったわ」
「本当に、あれ以上のデュエルはこれから先一生見れるか分かんない。それくらい凄くて、カッコよかったよ」
「走ってくださいライス先輩!私、大好きなライス先輩の決闘、見たいんです!!」
「それに、お前の魂はずっと、本当はレースに出て勝ちたいと叫んでる」
「だってライス、お前ずっと"自分が勝ったら"って前提の話ばかり...それって、自分が出たらあのメジロマックイーンにだって勝てるって思ってるからだろ?」
「そ、それは...!」
「言っとくが、メジロマックイーンは滅茶苦茶強いぞ?だからこそ"強すぎて人を退屈させる"なんて言われるし、それだけ3連覇を期待されるんだ」
「そんな相手にも"勝つ"って言えるような熱い魂...俺たちみんな、お前の魂から夢を貰ってるんだ」
「貴方は...貴方は私達チーム5Usのヒーローなんです!天皇賞に出てそれを証明なさい!!」
「みんな...勝手な事ばかり言わないでよ...」
「...すみません」
「でも...みんなの気持ち、受け取ったよ」
「!!」
「ライス!じゃあ...」
「やっぱり、またブーイングを受けるのは怖いけど...でも、またみんなと笑ってデュエルできるようになりたいから...」
「だから...ライス、天皇賞に出るよ!もう一度頑張る!」
「ら、ら"い"す"せ"ん"ぱ"い"~!!」
「うわっ...!もう、スぺちゃん。びっくりしちゃうよ...」
「もう、なんで一番泣いてるのが貴方なのよスぺ!てか離れなさいな!」
「だっ"て"~!だっ"て"~」
みんな、ライスのせいで泣かせちゃってごめんなさい。ライスはやっぱりダメな子だね
でも、もうダメな子のままではいないから...
"ライス"のヒーローのみんなが...ライスに勇気をくれたから...
だから勝つよ。今度はライスが、みんなのヒーローになる...!
◆
「はっ、はっ...はっ、はっ...ドロー!」
「...まだまだですね。ドロー!」
「ようマックイーン。自主トレか?」
「あら、鬼柳トレーナー」
「昼間のトレーニングじゃ満足できなかったか?」
「天皇賞の盾はメジロ家の悲願、そして3連覇という誰も成しえなかった偉業を果たそうというんですもの。やれることはすべてやって、メジロの名に恥じぬ決闘をしなければなりませんからね」
「その為には、このカードをもっと使いこなせるようにならなければ」
「..."ミレニアム・カード"か」
「ええ、URAより贈られた世界に一枚だけのカード。このカードを賜ったものとしても、情けない姿は見せられませんから」
「だったらスイーツも控えるべきじゃねぇか?ちょっと前に大分満足な体重になってただろ」
「そ、それとこれとは話が違いますわ!それにちゃんと天皇賞に向けて減量しましたもの!」
「ところで、わざわざ会いに来たという事は何か伝えることがあるのではなくて?」
「ああ...次の天皇賞春、"ライスシャワー"が出る」
「...そうですか、あのライスシャワーさんが」
「チーム5Us、"漆黒の刺客"。菊花賞でミホノブルボンを下した、お前と同じミレニアム・カードの持ち主だ。手ごわい相手だぜ」
「それはそれは...よかったですわ、本当に」
「へぇ?ライバルが増えたってのに嬉しそうじゃねぇか」
「当然でしょう?鬼柳トレーナー風に言うなら...」
「満足できそう...という事ですわ」
キーンコーンカーンコーン
「はーい席につけー。今日は高等部で授業はじめっぞ」
「本編凄いシリアスだったのにやるんですか?ギャグ授業を?」
「シリアスだったからこそやるんだろギャグを...てか授業がギャグになるとは限らねぇだろ」
「ねぇ、ハヤヒデとチケットいないんだけど」
「あいつらまだ本編出てないからさっき『次元幽閉』で強制的に欠席にした」
ウワアアアアアアアン!シャトルノナカニトジコメラレタアアアアア!!!
ワナカ...
「今ギャグになりましたよ???」
「てか次元幽閉って事はアンタ攻撃されてるよね?何したの?」
「腹減ったからハヤヒデが髪に隠してたバナナ食った」
「バカなの???」
「んじゃフィールの説明しまーす」
「だからOCG関係ないじゃないですか!」
「もういいでしょフィールは。原作読んでても分かんないし」
「しょーがねーなー。じゃあ今日は儀式召喚について説明するか」
「はいじゃあスズカ!」
「は、はい?」
「儀式召喚とは何か答えろ!答えてみろスズカー!」
「そんな蟹みたいな頭してる人みたいに言われても...」
「儀式召喚は"儀式モンスター"と呼ばれる、カードの枠が青いモンスターを特殊召喚する為に必要な召喚法です」
「儀式モンスターにはそれぞれ対応した儀式魔法が存在して、基本的にその魔法の効果で手札かフィールドからレベルの合計が儀式召喚しようとしているモンスターのレベル以上になるようリリースする事で特殊召喚出来ます」
「手札とフィールドに儀式モンスターカード、儀式魔法カード、コストとなるモンスターをすべて揃えなければいけない大変重い召喚法ですが、EXデッキに依存しないためEXデッキメタに引っかからない、強欲で金満な壺などのデメリットを無視して強力なモンスターを呼べるという利点がありますね。」
「はい正解。多分ここ読んでる人はOCGやってる人だろうからそんな長文で説明するまでもなかったと思うけど」
「嘘でしょ...」
「ちなみに最近では『高尚儀式術』みたいなデッキから儀式召喚できる儀式魔法や、儀式魔法使わずに儀式モンスターだけで回せる『メガリス』とか、そもそも単体でめちゃくちゃ強い『カオスMAX』とか、儀式召喚にもテコ入れが入って昔よりは使いやすくなってるな」
「あと注意点として、例えばレベル4の儀式モンスターのコストにレベル7のモンスターに加えレベル1のモンスターも使用する...みたいな感じに、コストが足りてるのにさらに余分に払う事はできないから注意が必要だ」
「そんなことやる意味あんの?」
「儀式魔人を使いたい時とかにある」
「ちなみにいきなり儀式召喚の解説をした理由は?」
「次の回で使うから」
バリィィィン!
ヨシ、ヤミジゲンノカイホウデヌケダセタゾ
シャバノクウキウマイヨオオオオ!!!!
「やっべ!お前ら、シャトルの中に隠れるぞ!」
「いやあんただけで隠れてなよ、アタシ達関係ないでしょ」
「閉じ込められた!」
「バカなんですか???」