堂島凛視点
池袋天球儀より犠牲なく帰還した私達自衛隊とムラクモ13班だが、余り空気は良くなかった
というのも、天球儀中層部で保護した元ムラクモのヒムロという男の話を聞いたからだった
曰くムラクモ総長であるナツメは信用ならない。だから彼はムラクモを離れたのだと
私達自衛隊員や13班は一切動揺しなかった
つい昨日、その片鱗を見たのだから
だが、それに対してキリノ副長はあくまでもナツメ総長の擁護に回った。気持ちは分かるが、あの状況での擁護はムラクモに隔意を持っている私達はいざ知らず、13班も嫌悪感を隠さなかった
そもそも、あの女が先の作戦指揮をとったのであるならば何らかの処罰はするべきだった筈
信賞必罰によってこそ、組織は正常に運営されるべきなのだから
民間組織などという話もなくは無いが、ムラクモ機関はあくまでも総理直属の組織という形であるからこそ私達自衛隊すら時に指揮下におけたのだ。今更その様な話が通るはずもない
避難民の救助も一通り終わった為に、撤退用の臨時ポイントを何箇所か設置した後に天球儀より撤退する事になったのだが、殊更13班のリーダーであるフェルから感じる怒気が洒落にならない
気持ちは痛いほど分かる
いや、私が自衛隊員を率いたのは今回が初めての様なもの。であるならば、それこそ都庁奪還作戦という明らかに劣勢の時より知人である2人の命を預からねばならなかった彼の気持ちが分かるというのもおかしな話だな
自衛隊は市民を守る為に文字通り『命懸け』で任務に挑まなければならない。その覚悟をもって常に任務にあたる
だが、フェルは状況的に逃れられない状況の連続により自身の近しい人間の命を預かる。そんな事は日常的には殆どあり得ないだろう。それを選択肢の無い状況下で行ない続ける事がどれだけ負担になるのか?
おかしい話だが、避難民という者達の中には露骨に彼等13班に対して厳しい目を向けるものも少なくないと聞く
確かに彼等が現状打破の為に戦っているのは事実。であるからこそ、そのコンディションの維持については最優先にせねばならない。そうでなければ、いざという時にバッドコンディションでは話にもならないのだから
だが、避難民の中には食料の彼等への優先供与や13班専用の個室等の待遇に対して不満を露にする者も出ている
そういう者達に限って、「自分達は戦えない。
更にタチが悪いのは、他のムラクモに対しては表立って不満を言わない事にある
ムラクモ実働班には
馬鹿らしいと思う
その資材であるDzはドラゴンを倒した素材なのだ。13班が命がけで狩ってくるドラゴンが無ければどうにもならないと言うのに
一度、あまりな状況にカマチ前隊長がマカベ長官に提案した事があった。
この際、様々な事を積極的に開示してはどうか?と
私達自衛隊は拠点である此処都庁の防衛や、ある程度の安全が確認された地域からの物資調達も行なっていた
それは避難民からわかりやすい形で見えている。だから非難はされない
ムラクモ上層部は言うまでもなく、此処都庁における影響力が高い。故に非難されない
13班と共に実働班であるムラクモ10班は常に先行偵察等を行なっている。それ故に避難民の中にも忙しい部署と認識されているらしい
だが、13班はムラクモ上層部や政府首脳からすると『決戦戦力』であり『有事の際の機動戦力』なのだ
一応それなりの頻度で領域拡大や治安の安定化の為に出るものの、その頻度はあまり多くない
更に彼等が救助した者達は、私達自衛隊が都庁まで護衛する為に自衛隊に助けられた。という認識らしい
発見の報が無ければ、私達とて容易に動けないし、到着までの護衛は13班の仕事だというのに
彼等の任務は『避難民の発見』であり、避難民の護送ではない。だが、それが薄情に見えるのだろうか?
面倒なのが、助けられた人間のほとんどは現状に対して不満を露にする者が多く、助けられる事を当たり前と思っている節がある様に思えてならない
そして、都庁に避難したら何もしない者も増えつつある。食糧にせよ、資源にせよ浪費を続ければいつかは枯渇すると言うのに、
不幸中の幸いなのは、ムラクモ関係者の身内やごく少数だがこの現実をしっかり受け止めているものもいる事だろうか
だが、関係者の身内という事でほとんどの者達からはよく思われてないと聞くし、13班を擁護する者は何らかの特権があるのでは?と邪推されているとも
既に都庁内部において、一部の人間からは都庁の運営に対して口を出す権利を主張している者もいる
堂島凛個人としても、自衛隊員としても正直に言うと賛成しかねる
前回の作戦とて、ムラクモ上層部の強引過ぎる作戦が直接的原因でこそあったが、事前調査を行えなかったのはその一部の『自称良識派』という連中からの速やかな安全確保。という猛烈な突き上げがあったとも長官やカマチ前隊長から聞いていた
確かに民意を大切にしてほしいと言う気持ちは分からなくもない。だが、時と場合を見てから言ってもらいたいとも思う
13班に好意的な民間人の大半が都庁一階にて自主的に警備をしてくれている者
彼等は理解しているのだ。どれだけ都庁の外が危険なのかを
対して、13班に批判的な者達は「住む場所が狭い」だの「配給制なのに13班は特別扱い」だの「もっとマトモな生活がしたい」だのと贅沢な事ばかり意見する始末
では、何かに協力するかと言えば、支給品を自分達で売買して小金を稼いだ挙句、支給品が少ないと文句を言い出す
女性の中には「女性専用のフロアが無いのはおかしい」だの「一日一回は風呂に入りたい」だのと言っている
凛とて女だ。気持ちは痛いほど分かる
だが、現状最も確保が難しいのは水源であり、フロア増設の為のDzなのだ
文句を言うなとは言わない。だがせめて、それなりに協力してから発言してもらいたいと切に思う
この辺りの事は本来なら、総理を始めとした政府首脳や都庁に常駐しているムラクモ上層部で対応しなければならない問題のはず
常に未知の領域での戦闘を余儀なくされる実働部隊に余計な負荷をかけて欲しく無い。と言うのが凛の本音だ
しかし、それをしないどころか何を企んでいるのかは知らないが、ひたすら帝竜討伐を目指す日暈ナツメ。それに異を唱えないどころか、実働班である13班に理解を求めようとするキリノ副長
頼りになっていたガトウは先の作戦で亡くなり、その補佐をきていたアカツキも負傷により戦線離脱する事となった
その代わりとなりそうなヒムロとやらもガトウの代わりになるとも思えない
先行きの悪さに凛はため息をつく他なかった
とある市民視点
俺は東京都庁に拠点を移す前のシェルターの頃からムラクモとか言う組織について来た
はっきり言って、今の生活はあの時に比べたら雲泥の差だろう
雨風を凌げるだけの拠点があり、少ないとは言え支給品が配られる。この都庁自体も自衛隊員が守ってくれているし、多少気に食わないがあのガキどもも必死でやってるの位は理解できる
シェルターの付近で生活していた頃は、確かにガキどもに対して良い感情を持っていなかった
何であんなガキどもが俺たちよりも良い生活を送れるのか?ってな
だが違ったんだ
都庁に移ってすぐに魔物が都庁前の広場にまで攻め寄せて来た事があった。
その時は偶々自衛隊員の数も少なく、エントランスまで入って来ようとしやがった
そんな時、俺は何一つ出来なかった。ただ魔物に怯えてパニックになっていた連中と一緒にエントランスの奥に避難していた
けど、アイツらは躊躇う事なくその魔物達に挑んでいったんだ
あの時に理解した。あのガキどもが背負っているのは俺たちの世界でもあったんだってな
だから、俺は一階のエントランスで寝泊まりしている。あのガキどもが留守の間、何とか守らねえといけねぇから
違うな。上に移った連中はガキどもを露骨に敵視してやがるのが多い。そんなのと一緒にされたくない。
だから分かるんだろう。ガキどもがどれだけヤバい状況で戦ってんのかが
そんな状況のガキどもを後ろから撃つ様な真似するなんざ、正気じゃねえだろう?
幸いと言うべきか、此処の連中の中には武術家や元米兵の奴もいる。
華々しく魔物に挑むなんて出来るわけもねぇが、せめてテメェの身を守れる位には力をつけねぇと大人として情けなさ過ぎる
それはこのエントランスで過ごす者達共通の思いだ
上で引きこもってる連中がこの前、署名を求めてきた
何でも政府とムラクモに全てを任せるのは危険!だとか言ってやがったが、エントランスの連中の中でそれに同調したもんはいない
んな寝言言う暇があるなら、何か手伝うなりすりゃ良いのによ
だが、そんな一部の人間の思いなど知らない者達により、議会招集の提案が後日なされる事となった
これにより、ムラクモ実働班と自衛隊員達に更なる負担を強いる事になるなど、当事者達には理解できていなかった
故に更なる悲劇を生む事となる
ナツメの暴走、キリノの未覚醒、総理もまだ覚悟完了してない
実のところ、かなーりヤバい人類でしたと言うお話