〈痴呆〉のオリヴィア【完結】   作:peg

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投稿が遅れております。申し訳ない。
じっくり座るのは大事ですね。
じっくり座らないのに今高騰しているPC更新はどうなのか。
考えれば考えるほどいらないのではないかと……。

9、10話についてもうちょっと面白おかしく練れば良かったなと思います。
お酒が足りなかった。そのうち書き換えます(大嘘)



噂話

 気持ちの悪い鐘と戦ってから8日後、ようやくピエタへ到着した。道中の積雪もあり中々進めなかったが、なんとか到着できてひと安心だ。関所町では、時折ねっとりとした視線を感じていたのだが、何時しか解放されていた。きっと変質者がいたのだろう。このロリコンどもめ!

 

 戦闘後の夜明けに出立したが、町がその後どうなったかは黒服任せにした為に分からない。幸い人的な被害は免れたようだったが、これまでに行方不明者がそこそこ出ていたようだった。悪徳な奴隷商の仕業か妖魔の仕業か。もはや神隠し的な所業であり、分からないのがこの世の常であった。

 

 ピエタの町の規模はそれほど大きくはなく、人口は800~1000ほどの規模だろうか。

先の関所町が大きかったためか、余計に小さく感じた。ただし、全員避難させるのは骨が折れそうだが……。

 とりあえず、町に着けたのは僥倖だった。さすがに尻が痛くなってきたところだ。諸手をあげて喜んだ。

 

『やっと着いたー!』

「やっと着いたわね」

 

 カティアが髪をかきあげて言った。台詞が被ってしまった。長く一緒にいたせいでシンクロしやすくなっているのだろうか。親友だもんな。当然だろ!

 旅をするなかで、カティアと日々の訓練や手合わせを通してお互いの理解が深まっていた。なので、先日蹴られたことは水に流すことにした。私は懐が広く大人だ。

 またカティアとは、身の上話をするほどの仲に至った。しかし、私が前世から突然ここに生えてきました。と頑張って伝えたが、何一つ伝わらなかった。孤独かよ。

 カティアには、訓練生時代から共に過ごした同期がいたそうだが、そいつに私がそっくりだったそうだ。私に対して、どこか人当たりが良かったのはそういうわけか。その人物と重ねていたのだろうなぁ。しかし、その同期がどうなったのかは聞くに聞けなかった。恐らく亡くなったのだろうけど。

ラケルの話も聞けた。ラケルとは、戦士になってからつるむ事も多かったようだ。口が悪かったが、仲間をものすごく大事にするような人間だったそうな。私は付き合いが浅かったせいで悪口しか言われてないけど。

 

 町の一角に兵站の倉庫ができているようだった。民家を買い取ったのだろうか。普通の家だった。カティアと二人、運んできた荷物をぶち込んだ。

 ここに来るまで馬の交換はなかった。よだれ垂らしまくっている馬は意外と根性があり、鈍いがほとんど休み無しで動けた。気に入られたのか、私からしか餌を食べてくれない。……しかし、脳壊れてるんじゃないか、こいつ……? これも痴呆と呼ぶべきだろうか……。若い馬ということもあってシンパシーも感じる。馬としか傷の舐め合いができないとか泣きたくなってきた。

 

 戦士達も着々と町に集まっているようだった。気の強い戦士同士の小競り合いが、そこかしこで見られた。全員が集まるには暫し掛かるということで、一部避難を始めた住民達の家を借り、泊まって待つことにした。真っ先に逃げるだけあって、生活に余裕のある世帯な様だった。ベッドがやけにふかふかだ。

 

 それから何日か経ったある日、部屋でダラダラ過ごしていると広場が騒がしくなった。どうやらほとんどの戦士達が集まったようだった。誰も音頭をとらないせいで、結構集まり方が適当よね。妖気読めってことかしら。妖気が読めても空気が読めないやつの方が多いかもしれない。ゴロゴロしながらそんなことを思った。

 

「オリヴィア。行くわよ」

「いやだ。『働きたくないでござる!』」

「任務放棄で斬られたくないんでしょう?」

「くっ!」

 

 カティアに説得された。その後、カティアに手を引かれ一緒に部屋を出た。これは決してカティアに引きずられている訳ではない。手を繋ぎながらの登場だ。

 実際問題、この任務は致死率が高く生き残れるかも運次第な任務だ。連日、不安で引きこもっていた。見かねたカティアに引き摺り出された形だ。オカンか!

カティアに玄関ドア前へ背中を押された。自分で開けろってこと? そんな引きこもり更生みたいな真似せんでも……。

 

「くっ! もう!『しょうがねぇな』」

 

 諦めて、立て付けの悪い民家のドアを開け――。開け……。開かない!? いや開いてくれよ。今せっかくちょっとやる気になったのに! あれ、押し戸だっけ? いやいや、雪国で押戸とか死ぬだろ。え?……全然開かない。

 

『え? 開かないんですけど……』

「……。ふっ!」

 

 カティアに視線で助けを求めると、溜め息をついて(かぶり)を振ったカティアが戸を蹴り破った。強引過ぎて笑えてくる。此処までやる人はいませんでしたよ!

 扉が立て付けの枠ごと吹き飛び、外の冷たい新鮮な空気が入ってきた。身が引き締まる気がする。ビックリしすぎてテンションが上がった。

 

「ひゅ~♪『ド派手にやるねぇ! ……あっ』」

「あっ」

 

 カティアがムキムキキックで蹴り飛ばした扉は、すごい勢いでジャイロしながらウェーブロン毛の戦士にすっ飛んでいった。ウェーブロン毛戦士は、抜刀すら見せずに扉を両断し、周りの雪を根こそぎ吹き飛ばした。いやまぁ、元々抜き身なんですけどね。

 

「皆さんお静かに。それから、話はまだ終わっていません。それでも騒ぎたい方は私が相手になって差し上げます」

 

 外に出ると、集合した戦士達全員が唖然とした表情でこちらを見ていた。私たちもアホ面していたと思う。〈風斬り〉のフローラ様じゃん。しかし、既に手を出した感じになってしまった。 

 ばつが悪そうにそっぽを向いているカティアの代わりに、フローラ様にごめんねジェスチャーをしておいた。うちの子がすみません。後できつく言っておきます。絶対勝てないので争いになりませんように。もはやお祈りである。幸い、溜め息をついて見逃された。あぶねぇ!

 集合場所の中央に、ため息を溢してから話を始めた戦士がいた。今、私の顔を見て溜息溢さなかった? 今朝から溜め息を聞くのが多すぎる。運気下がるからやめろ!(女子力)

 

 話をしている戦士は、ロン毛のシャギーヘッドをしており、意志の強い瞳をしていた。これが〈幻影〉のミリアか。つよそう。

 

 ミリアは一桁ナンバーとナンバー11のウンディーネ、ナンバー13のベロニカ、そしてこの間一緒だったナンバー9のジーンを前に呼び出した。あっ、チーム分けか。カティアと離れるのやだなぁ。

 

「これからチーム分けを行う。隊の力をできるだけ均等に分けるためだ。異論は許さない」

 

 ミリアにナンバーと名前を順に読み上げられ、班分けが行われた。

 

ミリアチーム

No.6  ミリア

No.20 クーニー

No.30 ウェンディ

No.37 ナタリー

No.44 ディアナ

 

フローラチーム

No.8  フローラ

No.18 リリー

No.27 エメリア

No.36 クラウディア

No.43 ユリアーナ

 

ジーンチーム

No.9  ジーン

No.17 イライザ

No.26 オリヴィア

No.35 パメラ

No.41 マチルダ

 

ウンディーネチーム

No.11 ウンディーネ

No.15 デネヴ

No.24 ゼルダ

No.32 カティア

No.40 ユマ

 

ベロニカチーム

No.13 ベロニカ

No.14 シンシア

No.22 ヘレン

No.31 タバサ

No.39 カルラ

No.47 クレア

 

「ベロニカのチームだけが6人編成になる。それ以外は5人編成だ。呼ばれなかったものはいないな? 今日中にチームの仲間の顔は覚えておけ」

 

 その後ミリアから、通常の覚醒者討伐と同じように1体につき1チームで当たるように指示があった。手が空けば助勢に向かっていいらしい。

 

「以上だ」

 

 ミリアはそう締め括った。

 

 

 

「オリヴィアか。また、よろしくな」

「ん。よろしく」

 

 ジーンの班になった。あらためて死闘を潜り抜けた友として拳を合わせた。しかし、カティアとはやはり離れてしまった。さらばともよ。強く生きてくれ。

 チームメイトは、ガーリー系森ガールのイライザ、モブ系ロン毛のパメラ、そして、短髪モナリザ娘のマチルダだった。

 挨拶すると返してくれた。

 

「よろしく」

「……」

「(にこっ)」

 

 反応は三者三様だった。イライザは、ナンバー17だけあって結構強そうな感じがする。あと、まつげが長い。〈まつげ〉と渾名していいくらいには長い。

 パメラはモブに徹するようだ。30番台だが、カティアと比べてすごく弱い気がする。気のせいだろうか……。

 マチルダは美人で笑顔なのだが、夜の博物館で会ったらチビること間違いなしである。

 

「私とオリヴィアが、このチームの攻撃力の要だ。私達が技を完成させるには少し時間が掛かる。皆には、その時間稼ぎをしてもらいたい」

「別に、待たずに倒してしまってもいいんでしょ?」

 

 ジーンの言葉に森ガールのイライザが、腰に手を当てたまま反応を返した。最初会ったときは冷たかったジーンに評価されてて感無量だ。私達、親友だったのね。

 

「ふっ。頼もしいよ」

「いや、冗談じゃなくて本気なんだけど……」

 

 イライザの言葉にジーンは特に取り合わなかった。イライザは肩を落とした。ジーンは大人だなぁ。

 

「あたしが、このチビッ子に負けていると思わないんだけど!」

「ならば、手を合わせてみるといいさ。オリヴィアもいいな?」

『え、まじで』

 

 そういうわけで、いつのまにか手合わせをする流れになっていた。

 

 

 

 

 

 町の広間には、言い出しっぺのジーンがいない。いや、なんでよ……。

 他チームの見物客も結構いる。みんな暇かよ。

 

 広間はピエタの町の中心にあり、複数の覚醒者が来ても十分に戦えそうだった。見物客は屋根上から観たり、雪が積もってるのも気にせずに地べたに座って観てるのもいる。腕を組ながら壁に寄りかかっているのは、ウンディーネの姉御ではなかろうか。手を振って寄っていった。

 

『姉御ー!』

「おー、チビ助じゃないか。相変わらずなに言ってんのか分からねぇけど。元気だったか?」

「ん。カティアをよろしく」

 

 姉御はムキムキの腕で頭を撫でてくれた。飴もくれ。

 折角なのでカティアを推しておいた。私に熱い筋肉バトルを見せてくれ!!

 近くにはシンシア天使長もおり、手を振ったが目元がひきつっていた。ひどくない?

 

「ちょっとオリヴィア、こっち!」

 

 イライラした森ガールのイライザに呼ばれた。そういえば、手合わせをしに来たのだった。

 待っているところへ、雪に足をとられながらも走り込んだ。

 

「参ったって言った方が負けだからね!」

 

案外子供っぽいことを言う娘である。大剣を抜いて向かい合った。

 誰も、始め! なんて言ってくれないが、私はこの間が好きだった。なんとなく、お互いに相手を理解しようとしている様に思えるのだ。

 独りでほっこりしているとイライザに斬りかかられた。空気の読めないやつめ! 私は妖気があんまり読めない。んー、ドローだな。

 

 イライザの初撃を躱した。イライザは体の軸をブラすことなく、次の連撃に無理なく繋げている。ナンバー10番台というだけあって、剣閃も鋭い。推測できる膂力も相当なものだろう。

 以前もそうだったが、基本的に大剣を打ち合わせると力負けしてしまうため、私は避けるしかない。訓練生時代に、戦士の剣術が自分に合わないと思った理由でもある。

 

 そういえば昔、同じように手合わせしたエバ隊長はやはり北の地に散ったのだろうか……。ここに居ないということは、そう言うことだろう。少し悲しい気持ちになった。

 

「く、この! 真面目にやりなさいよ!」

 

 さて、イライラ森ガールのイライザの相手だ。私が一合も受けないせいで、イライラしている。エバ隊長と手合わせした当時は受け技をうまく扱えなかったため、あっさり気絶させられたが、今ならばどうか。攻撃を受けて体術で返そう。うまく顎を蹴り上げれば、気絶してくれるだろう。

そう考えて、イライザの斬り下ろしを“受けた”。

 

 

 

 

 クレアはミリア達の妖気を読み、ジーンやカティアを伴って町近くの洞穴にたどり着いた。

 

「遅かったな。つけられなかっただろうな?」

「あぁ。皆、誰がどこへ行こうと興味がないらしい」

 

 ショートボブへアのナンバー22の戦士ヘレンが声を掛け、クレアが答えた。ヘレン達は洞穴の中で焚き火を囲み、ミリアを上座に車座になっていた。ヘレンの対面にいるのは、ベリーショートの髪形をしたナンバー15の戦士デネヴだった。火が揺らめいた。

 

「へへっ。再会記念だ」

 

 ヘレンの掛け声で、四人は大剣を重ねた。この四人は、以前覚醒者討伐で共に戦った仲間だった。その際に、全員が半覚醒と呼ばれる状態に陥っていたことがわかっている。

 

「皆良く生き残ってくれた。またあえて嬉しいよ」

 

 クレア達はミリアのそんな声で照れ合った。それほど、ナンバー6のミリアのことを全員が認めていた。

 

「!」

「だれだ! クレアてめぇつけられたな!」

 

 そんな中、ヘレンが外の気配に気づいた。へレンが、クレアを糾弾したがクレアは慌てて弁明しようとした。

 

「待ってくれ違うんだ! ジーン達も私達と同じなんだ」

 

 クレアはジーンたちを連れてきた理由を話そうとしたが、その前にジーン達がこの場へ入ってきた。

 

「なるほど、これはそういう仲間か。友との再会に水を差すつもりは無かったが……。どうやら私達も無関係ではないらしい……」

「……そのようね」

 

 ジーンに続いてカティアも入ってきた。二人が入ってきたとき、クレアを除く3人が驚いて沈黙した。各々が思うことが異なっていたが、特にヘレンは唖然として思考停止していた。

 

「あぁ、なるほど」

 

 ミリアが2人の身体の状態について察して声をこぼした。

 

「詳しく聞きたいな。クレアお前何があった? その右腕も違っているな。誰のだ」

 

 クレアは戦いの中で右腕を失い、とある戦士から右腕を借り受けていること。そして、〈深淵の者〉西のリフルとの戦いの顛末を説明した。

 

「お前も中々に厳しい立場にいるようだ」

「それについては、ピエタに呼ばれた全員がそうだろう。この作戦、成功する確率はどのくらいだ?」

 

 ミリアは、クレアの問いに0と答えた。

全員がミリアが作戦の遂行を無理だと感じていることに呆然とした。一度場に沈黙が下りた。焚き火の薪が鳴り、ミリアは一息置いて話を変えた。

 

「それにしても、防御型の戦士の遺骸を使って傷を治す……か」

 

 そういってミリアはカティアを見やった。オリヴィアが行ったことは、死体に対しての忌避感が強い文化から言って、殆んどありえない発想に近かった。

 

「……。オリヴィアは、組織にあまり忠実とは言えないわ」

 

 居心地の悪さを感じたカティアは、ミリアへ反論した。カティアは、ピエタの町に至るまで、オリヴィアと共に旅してきたが何かに付け旅程を遅らせようとしたり、着いてからはギリギリまで集合しなかったりと今回の任務では特に顕著だった。

 

「いや、疑っている訳ではない。〈痴呆〉のと言えば、20番台にして数多く覚醒者の首を刎ねたものとして有名だ。しかし強力な技を扱う反面、意思疎通がうまく取れない為チーム戦にはあまり向かないと聞くが……」

 

 ミリアは、オリヴィアについて少し考え込んだ。視線は焚き火を見つめており、クレア達からは組織側の人間として疑っているように感じられた。

 

「いや。私も〈深淵の者〉との戦いのとき、何度か助けられた」

 

 なんとなく、クレアもオリヴィアが疑われていることへ反論した。

 

「本当に疑っている訳じゃないんだ。ただ、話を聞くに意思疎通が完全に取れないわけではない。そして今回の任務について、たどり着く前からある程度察しているくらいには知能がある。強力な技である〈千剣〉の渾名が付いていても可笑しくはないと思ってな。〈痴呆〉というには……、少々作為があるように感じられる」

 

 ミリアは、少し笑ってクレアに答えた。ミリアが言うように、クレアが関わった際には言葉に不自由しているように見受けられたが、行動の端々で勘の良さを見せていた。

 

「まぁ、本人に聞いた方が早かろう」

「で、そのナンバー26のオリヴィアはどこに?」

 

 ミリアが根本的な提案をした。目を瞑って話を聞いていたデネヴがオリヴィアの居場所についてクレアに尋ねた。

 

「広場でナンバー17に伸されたらしい。ここに来る前、気絶して雪に埋まっていたのが見えた」

 

 この場に沈黙が落ちた。ジーンが目をつぶり額に手を当てた。

 

「……」

「さっきから聞いてたらすごそうに聞こえてたけど……。そいつはすごいのか……?」

 

 ヘレンが頭に腕を組み、呆れて言った。

 




元あったモノローグ抜いて書き直すとプロットしか残らないのではないかと常々思います。

……ほぼ書き直しでは……??
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