拙作も最後の大運動会に向けて、準備を進めて参ります。
あー、なんかうっすら思い出してきた。確かリフルに会って、この数年間の出来事を聞き出すんだったっけ?
この大陸の紙と言えば羊皮紙だから、原作のこと書いてメモって持っておくこともできなかったせいで、大分記憶が怪しい……。でも、シスタータウンは好きなので覚えているなぁ。
そんなことを考えていると、森林が大規模に破壊される音が轟いた。城塞型酢昆布系ドS年増幼女が暴れているのだろう。……どこに需要あるんですかねコレ。あ、
「おい! 4人だけで大丈夫なのか?」
「隠密性を高めるための少数精鋭のはずです。戦闘はしないと思われますが……」
ユマが妖気感知で読み取った情報を実況しながら、そんなことを言い出した。対するシンシアは、冷静に答えていた。姉御は、一本だけの腕を反対の肩に引っかけて気怠そうにしている。ナタリーは目を瞑って状況確認に努めていた。イライザは、まつげをいじっていた。あんたそんなんだから、〈まつげ〉って言われるんだよ?
「ちょっと、時間が掛かりすぎじゃないか……?」
「救出した戦士達も、薬で一時的に妖気が読めなくなっています。状況が読めませんね」
「……」
「はぁ……。そんなに心配しなくても、すぐ帰ってくるでしょ」
なんか、みんながワイワイやっているので、ユマの脇からこっそり混ざることにした。ついでにユマのローブでよだれを拭った。
『オリヴィアーズアイ発動っ!』
「うわっ! ……急に叫ぶな!」
説明しよう! オリヴィアーズアイとは、前かがみ気味の中腰になり、両手の指を眼鏡型にして遠くを見る技法だ。よく分からないけど、倍率増し増しで見えるんだ。口が無意識に尖がるのが欠点ね……。他にもイヤーとノーズがあります。
「……妖気感知の及ばないところでは、これに負けるのが、なんだか納得できませんね……」
「まったくだ」
「あれで視力が上がるっていうんだから、やっぱ異……いや、特別なんだろ。あたしは嫌だが……」
みんなめちゃくちゃに言ってくれちゃってぇ。さては嫉妬だな、おめぇら?
外野を放置して集中した。
覚醒体となったリフルの悔し気な顔が、ドアップで映った。よく考えたら、南側に降りてきて最初に見るのが、シスターじゃなくてコレ? なんか嫌になってきた……。
軽く見まわしたが、結局、背の高い森林があるせいで小さい戦士たちは見えなかった。
「で、どうなんだ?」
「うーーーん。こっ」
「! 戻ってきた」
ヤキモキしたユマに聞かれたので、こっち側に居ない。って言おうとしたら、ミリア達が帰ってきたのを察したナタリーに遮られた。言い直すのもあれだったので、静かに体勢を戻して着地したミリアに向き直った。
ユマからの視線が痛い。タイミング悪くて、う〇こって言ってしまっちゃったじゃん!!
「すまない遅くなった。この場所を気取られないように、分散しつつ遠回りして帰ってきた」
「あ、おい! デネヴ、重症なんだから丁寧に扱えよ!」
「重症なのは、ミリアが担いでいた厳つい戦士だ」
ミリアが開口一番にそういった。
助けた戦士を投げて捨てたデネヴとヘレンが、また言い合いしてた。でも、デネヴの全員分の大剣をちゃんと拾ってくる律儀なところ好きよ。
「! 目を覚まします」
ナタリーが言うと、デネヴに投げ捨てられた長髪の戦士が目を覚ました。
「……。頭が……。妖気を消す薬を飲ませたのね……、何者よあなた達」
「好きに推察しろ。答える気はない。しかし、こちらの質問には答えてもらおう。上位ナンバー、組織の1~5の戦士の名前を教えてもらおうか」
頭を押えて座り込んだままの長髪の戦士へ、ミリアが高圧的に言った。
「……話すと思って?」
「ふん。命を助けてやったんだ。そのくらい安いものだと思うがな。……それに、私はお前のような高潔な戦士が、受けた恩を返せないとは思えない」
「! ……くっ……」
「おー、言うねぇ姉ぇさん。相手を持ち上げつつ脅すとか……」
ミリアの脅し文句にヘレンが反応した。シリアスしてるんだから、おちゃらけるんじゃないわよ……。でも、やっぱ恩着せて喋らせる感じなのね。
「さすがに、仲間の名は言えんか……。では、質問を変えよう。アリシアは完成したのか?」
「!」
長髪の戦士の肩が跳ねた。
「それだけ分かれば、十分だ。いくぞ」
「え? 待ってくれよ姉ぇさん! アリシアってなんだ?」
ヘレンがミリアに、アリシアについて尋ねた。薄れたとは言え、覚えがあるぞ! 覚醒しても戻ってこれる双子の姉妹。奇跡の世代。そして、巨大化しても服が破けない。あれくれよ。いや、特に巨大化する予定ないけどさ。
「……、組織のナンバー3の戦士、ガラテアはまだ生きているのか?」
「……私がナンバー3よ。それが答えになるかしら」
「……。そうか、礼を言う」
いつの間にか、クレアが長髪の戦士に話しかけており、ガラテアの所在を訪ねていた。ガラテアなら、シスターになってラボナのベッドで寝てるよ……。
「待って! 彼女は恐らく生きているわ。貴女達と同じように、組織に離反してね」
「……そうか」
それを聞いたクレアは、嬉しそうに笑った。守りたい、この笑顔。
ミリアの合図で10人全員が、崖から飛んだ。そういえば、この世界に来たばかりの頃、高いところから飛び降りたり、めっちゃ高く飛んだりするタマヒュン……、いや、マタヒュン遊びをしたものだが、何時しか慣れてしまった。あの時の新鮮な気持ちは、思い出の中に行ってしまった。
「ミリア、どうするんだ?」
「……」
戦士や妖魔の気配を探りつつ、西に向かって森を駆けていると、クレアがミリアに並んで言った。
「しばらくは、状況の把握だ。このトゥールーズには、ナンバーの浅い戦士が多い。現代のエース達に当たりを付けておく」
「敵を知れば……ってやつか。ま、さっきのがナンバー3って言うなら、現代の戦士達は相手にならないだろうさ」
ウンディーネの姉御が交じって、そんなことを言った。いや、それはどうなんですかね……。
やり取りを聞いているうちに、泉の畔に辿り着いた。あれ、ここ来たことあるな。
「小休止をとる。それから、組織のナンバーは絶対的な数字ではない。忘れるな」
ミリアの言葉に、全員がクレアを見た。そういえばクレアは、ナンバー最下位でしたね。今では、ウンディーネの姉御よりも強い。まぁ、姉御は腕が一本なんだけど。
「ふん!」
「ぴぎィ!」
そんなことを考えていると、突然姉御に殴られた。特に理由のない暴力が、私を襲った。暴力反対!!
頭を押さえて、姉御に抗議の視線を送った。
「けっ! ……失礼なこと考えてるのが、見え見えなんだよ、お前は」
姉御は超能力者だった……? 心を読んでくるのやめろ。ファミチキ食べたい。あ、マジで食べたくなってきた。似てるオリジナルスパイス作ったのよね。ヘレンは、食べてくれました。
「ちっ、今度は飯のこと考えてやがる……」
「それ以上はやめろ、ウンディーネ。さらに阿呆になってもらっても困る」
姉御は、振り上げた右手を下ろした。デネヴもさぁ。止めるにしても、もうちょっと言い方ってもんがあるよね……。
デネヴにもギロリと睨まれ、咄嗟に口を押さえた。あれ、声に出てたかな?
「何だこの傷は……」
「これ……なんかの模様?」
泉の巨岩近くで、声を出したのはナタリーだった。隣にいたイライザが、ナタリーが見ている岩壁を覗き込んだ。私も気になって覗き混むと、汚ねぇひらがなが書いてあった。なにっ!?
「それにこれは……、大剣を打ち込んだ痕か」
あー、なんか思い出してきた。ここ私の担当エリアだ。ナンバー42の時の……。懐かしいなぁ。修行場にしてたんだ、ここ。
汚ねぇひらがなを読んでみた。たしか大剣で掘ったのよね。なになに?
『みりあをたすける おしゃれろんげつよい きをつける ねこがちりぐい きをつける らいおんつよい きをつける かいじゅうだいせんそう つよい きをつける いーすれいやばい きをつける りふるやばい きをつける ありしあやばい きをつける ぷりしら ころす くろふく ゆるさん ころす』
何だこれは……。
気を付けるしか書いてないじゃないか!? 書いたやつはバカなのか!? 私だった……。辞めよう……これ以上は不毛だ……。
ここは危険だ、今すぐに離れよう。主に精神的に危険だ。
「隊長! 危険!」
「オリヴィア? どうしたんだ、……シンシア!」
「えっ? あ、はい! ……敵勢反応はありません」
「……オリヴィア。本当に離れた方がいいんだな?」
「(コクコクコク)」
全力で頷いた。
「皆聞いてくれ。直ぐに西に向かって発つ。遅れるなよ」
「えっ? 姉ぇさん! まだ、着いたばっかだぞ!」
「良いからいくぞ!」
ミリアは直ぐに動いてくれた。さすが隊長! 愛してる。
不満そうなヘレンは、デネヴが引っ張っていった。
皆、ミリアの言うことを聞いて出発してくれた。良かった良かった。
「オリヴィア……、何がいたんだ?」
ミリアが、真剣な表情で聞いてきた。あ、駄目だコレ。嘘ついたら死ぬ。しかし、危険だったのは本当だ。精神的にだったが……。うまく言い繕えないだろうか……。
「うねうね! 一杯いた!」
「は? うねうね?」
仲間達全員が顔を見合わせた。必死な顔で先頭へ飛び出ると、皆が慌てて速度をあげた。やべぇ! 顔を見られたら嘘がばれる!
「まて! オリヴィア、そんなにやばいのか!? オリヴィアー!」
森を抜けて西の山岳地帯へ突入し、ミリアが仲間の戦士の大剣を拾うまで、追いかけっこは続いた。
◆
「ふーん。あの気持ち悪い子も生きてたんだ……」
木陰から現れたのは、簡易なワンピースを着た少女リフルだった。リフルは長い時を経て、口に出して思案するのが癖になっていた。普段、間の手を入れるダフが居るのだが、ここには居なかった。
「10人か。人数が割れたのは良かったわね」
右手の人差し指を顎に当てて、リフルは思案した。リフルの頭の中で、敵対勢力の構成が一部修正された。
「ま。雑魚だし、大勢に影響はないわね……。でも、気を付けた方がいいかしら?」
目下の敵は、南のイースレイと組織の兵器だった。リフルには、全力で当たった場合、どちらの勢力にも今一歩及ばずに負けることが解っていた。勝つためには、南で拾った物のような、切り札が必要だった。
もっとも拾い物は、そのままでは使い物にならないものだった。
リフルは、南での拾い物を使えるものへ変える為、妖気読みに特化した戦士を探していた。しかし先程の戦士達が、
「さてと……」
リフルは右腕を覚醒体へと戻すと、泉の脇にある巨岩を破壊した。
水源が破壊されたことで、水が吹き出した。
おもむろに、リフルは触手を水源へと送った。うねうねと蠢く平らな触手が、水源の奥へ奥へと進んでいった。
「……いたわ」
リフルは、にたりと笑った。
リフルがこの場に居合わせたのは、偶々だった。リフルの目的は、勢力に対抗するためのもうひとつの可能性だった。
「長い間、ずいぶんと逃げ回って……。手こずらせてくれたわね」
リフルが右腕を引き上げると、岩盤が割れて泉が枯れた。地面が盛り上がり、引き抜かれたのは黒い巨木だった。幹についた目が少し開かれて、リフルと視線が交わった。しかし、巨木は起きること無く、再び瞼が閉ざされた。
「あら? 貴方まで寝てしまうの? ……はぁ。まぁいいわ」
リフルは鼻唄を歌いながら、古城へ揚々と引き上げた。
息抜きに短編ギャグものを投稿しております。
宜しければ、箸休めにどうぞ。