〈痴呆〉のオリヴィア【完結】   作:peg

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アンケありがとうございました。
散らばったオリ要素の回収作業をさせて頂きます。
クレイモア主人公のクレアについても、タイミングを見て描写していきます。


空飛ぶラ・ボナ教

 街が落ち着いてきた頃、ミリア隊長に呼び出された。あの戦いから既に何日か経過しており、怪我していたミアータと色付き――クラリス――も全快していた。二人は、ラボナに残ることを選んだようだった。ミリア隊長やガラテアの庇護下に入るようだ。

 

「全員集まったな」

 

 場所はラボナの聖堂の一角にある、街並みを一望できる展望台だった。聖堂は先の戦闘場所から外れたところにあり、被害を免れたのだった。下では家を失った難民達へ、炊き出しが行われているようだった。……あとで混ざろう。あ! あの肉でけぇ!

 

「おら! ちゃんとこっちに来なさい!」

「ふぎゃ」

 

 真下を覗き込んでいたら、イライザに首元を掴まれてUターンさせられた。見習い用のシスター服を着ているため、掴みやすいのだろう。前着ていた襤褸の革鎧は、無慈悲にも老シスターによって捨てられた。……煮れば食えた非常食だったのだが。

 

「皆を集めたのは他でもない、これからのことだ。組織や深淵との闘いは、非常に厳しいものになるだろう……。まずは皆、心残りを清算してきて欲しい。必ずしも、生きて帰れる戦いではないだろう。北の大戦とは違い、しがらみもないんだ。だから、出来るだけ悔いの残らないように戦って欲しいんだ」

 

 ミリア隊長は全員の顔を見渡して、そう言った。

 

「その結果、ここに戻らなくても構わない。生き残ったそれぞれが、これからの生き方を見つけられるのであれば、北に散った仲間も本望だろう……。ただし、どこへ行くにも基本的に2名以上で行動して欲しい」

「……ふーん。2名ね」

「心残りつってもよぉ。故郷も、もうないぜ?」

「私の出身の村は、組織の拠点近くに在った……。妖気が消えてるとは言え、迂闊に近付けないだろうな……」

 

 ウンディーネの姉御の故郷は、既に無いようだった。ユマは不幸なことに、組織近くの出身のようだ。イライザはふーんとか言ってるけど、ちゃんと聞いているのか。

 

「あたしは南の出なんだ。……デネヴも行くだろ?」

「……腐れ縁だ。付き合ってやるよ」

「きひひ。素直じゃねーな」

 

 ヘレンとデネヴは一緒に行くようだ。

 

「クレア。お前はどうする?」

「私は……」

「ラキってやつを探すんだろう? 生きてて良かったじゃねーか」

 

 ミリア隊長がクレアに問いかけた。逡巡したクレアだったが、ヘレンからフォローが入った。意外と面倒見がいいよね。

 

「最低2人で行動しろ。一人で行かす訳にはいかん」

「それなら、私が一緒に行きましょう。私の故郷も、もう無いですから」

「……ユマも連れていけ。それであれば許可しよう」

「待ってくれ! ミリア、私は一人で」

 

 シンシアがクレアとの同行を立候補した。話が一気に進んでしまったクレアが反論した。

 

「お前は何かと暴走しがちだ。2人を連れていれば無茶もすまい」

「……」

 

 ミリア隊長が諭すようにクレアへ言った。クレアもミリア隊長の言っていることに心当たりがあるのか、大人しく聞いた様に思えた。

 

「くくく。シンシアはともかく、ユマも付けるとは姉ぇさん考えたな」

「え?」

 

 デネヴの肩を掴んで顔を寄せたヘレンが笑った。近くで聞いていたユマが声をこぼした。ユマは元々ナンバー40代の戦士だった。弱っちぃけど良い奴なんだ。そして、ヒエラルキーが割りと低い。クレアが無茶できないように、枷として付けられたみたいだ。

 

「あたしの故郷、この近辺だったんだけど……、見知った顔はもういないわ。それにしても、……オリヴィアの故郷はどこなんだ?」

「オリヴィアは……」

「うーーーん」

 

 イライザに故郷を聞かれた。そりゃ、南だった気もするし、東のは全焼したでしょ……。西の教会は燃えカスがありそう。雪山のは壊滅したしなぁ。あれ、何でこんなに故郷があるんだ?

 

「『壊滅!』ヨシッ! あてっ!」

「いや、良しって。結局どこなんだお前……」

 

 記憶を辿って指差し確認していると、イライザに頭を小突かれた。

 そう言えば、朝にガラテアを眺めてて思い出したが、シスター(せんせい)の埋葬くらいはしてあげたい。大分時間が経っているが、何か残っていないだろうか……。あれから声が聞こえなくなったセフィーロの実家みたいなところに行くか。聖都ラボナから南西側のどっかだった気がする。

 

「教会に行く! ……カティアを探す!」

 

 両手を挙げてアピールした。ラボナに缶詰されては叶わん。これはチャンスだ。暴虐なミリア隊長から離れるチャンスだ。ついでに、町に寄って人里のグルメを堪能しよう。ぐへへ。7年ぶりの食堂開拓だ!!

 

 あと、カティアを探してやらないといけない。一人できっと寂しいはずだ。

 

「オリヴィア……。よし! オリヴィアには、ウンディーネとイライザが付いていけ」

「え? またぁ!」

「……ま、良いけどよぉ」

 

 ミリア隊長の一声で、イライザとウンディーネの姉御が付いてくることになった。イライザは頭を抱えていた。やれやれ、〈まつげ〉のお守りをさせられるとは、苦労するぜ……。

 

 ナタリーはミリア隊長とラボナに待機するようだった。ナタリーのふかふかロン毛の首元には、何故かミアータが股がっていた。肩車とか、お父さんか。私もやれ。

 

「くれぐれも行動は慎重にしてくれ。特に覚醒者や戦士との接触は避けるんだ。私は此処から……、全員の無事を祈っている」

 

 ミリア隊長がみんなの眼を見て言った。隊長は何か企んでるとき、眼を見てくるのよね。バレバレよ。きっと、老シスターのお菓子を独り占めにするに違いない。戻ってきたら、デブになっているかもしれない。デミリア……。ぷぷぷ、うける。

 

 

 

 

 

 

「はい! ちゃんと飲めよ、これ」

「えー……」

「えーじゃない!」

 

 聖都ラボナを立って数日後のことだった。鬱蒼とした森の中、イライラ森ガールのイライザに渡されたのは、妖気を消す薬だ。私たちが持っていたやつは賞味期限が怪しかったので、クラリス達が持っていたものを分けてもらっていた。

 前助けた戦士達は黴けたやつを飲まされていたのだが、お腹を壊さなかったのだろうか……。

 

「お前だけ妖気が漏れてるだろ! 早く飲め! こら!」

「ぬごごごご! 〈まつげ〉め!」

「あー! また〈まつげ〉って言った!」

「……まぁ、感知範囲に戦士はいないから、良いんじゃねぇーか?」

 

 ついに取っ組み合いになり、無理矢理食わされそうになった。私の〈まつげ〉回避が決まり、姉御の一言で、あえなくドローとなった。

 

「ちっ。町に入る前に飲めよ」

「わかったわかった」

「ホントに分かってんのか!?」

 

 いちいち煩い〈まつげ〉なのだった。妖気を消す薬は……苦ぇんだよ!!!

 

「……チビ助。隊長にも言われただろ、余計な戦いを避けるためだ」

「……あい」

 

 片膝立ちで視線を合わせたウンディーネの姉御が、肩に手を置いて諭してきた。いや、分かってるんだけど、〈まつげ〉相手だとなんか素直になれないのよね。許して。

 

――キャー!

「!」

 

 ボリボリと妖気を消す薬を噛み砕いていると、めっちゃ遠くから悲鳴が聞こえた。膝を落とし、両耳に手を当てて耳を澄ました。

 

「オリヴィア?」

 

 沢山の人間が移動している音と、馬の嘶きが聞こえた。妖魔の群れか何かか……?

 

「町が燃えてる……」

「何だって?」

「んあ? ……ちっちぇ妖魔の気配が沸いたな」

「妖魔って沸くものなのか……? 隊長は組織が作っているって言ったけど」

 

 皆で顔を見合わせた。

 とりあえず、町へ向かうことになった。襲われている人を無視するのは、矜持に反するというのはイライザの言だった。

 イライザはきっと、任務外でも立ち寄った町で妖魔をサービスキルしていたのかも知れない。北の地に送られた理由が判った気がした。

 

「〈まつげ〉遅い!」

「うるさい!」

 

 町へダッシュで向かった。ミリア隊長との修行に付き合っていたら、私の足はいつの間にか速くなっていたのだった。

 この中で足が遅いのはイライザだった。イライザの能力は、これといって突出しているものはないが、オールラウンドに何でも卒無くこなせた。膂力も高く、私よりもパワーがあった。しかしよく考えたら、このチーム脳筋しかいねぇ!!

 

「見えたぞ」

 

 益体もないことを考えていると、町が見えてきた。黒い煙が上がり、生き物が焼けた臭いがした。

 

 南に渡る山岳地帯の麓に出来た小規模な町だった。町の人々が、平地側に取る物も取りあえず逃げ出していた。

 逃げ惑う人々の声を拾うと、妖魔だの盗賊だの口々に違うことを叫んでいた。いや、どっちよ。

 

 人々を躱しながら町に到着した。私達は黒っぽいローブをすっぽりと被って、半人半妖であることをバレないようにしていた。

 

「……なんだ? 妖魔と盗賊が、かち合ったのか……?」

 

 人々の死体が、そこかしこに在った。身なりが悪い者が多く、倒れている者の殆んどが山賊か盗賊であることが窺えた。

 イライザが、盗賊の死体を蹴って仰向けに向きを変えた。

 

「うげー……」

「これは……妖魔の仕業なの……?」

「いや、内蔵が残ってる」

 

 男は上半身の一部が失われており、顔の一部分もなかった。ウンディーネの姉御が言うように、妖魔は内蔵を好んで食べる傾向にある。いや、他のとこも食べるんだけどね。

 

 突然、死体達が起き上がって襲ってきた。顔中の血管が浮き上がり、目が白濁していた。さながらゾンビのような様子だった。

 大剣を抜いて一瞬でバラした。もはや、妖魔などは何人いようと、私達の相手には成ら無くなってるなぁ。これも血反吐修行の成果だろう。

 

 通りから雄叫びが聞こえた。声のする方まで移動すると、銀色のスライムみたいなやつに寄生された盗賊と、隻腕の重戦士が向かいあっていた。重戦士の鎧は、聖都ラボナの兵士が着ていた鎧に良く似ていた。バケツ型の兜で顔は見えなかった。

 

「くくく……。こうなってしまっては、貴様も道連れよ。商人から買った、瞬時に傷を癒す水薬が……、まさか人を妖魔に変える薬だとは……」

「……」

 

 隻腕の重戦士は、無言で長剣を八双に構えた。妖魔にするには、手術しないといけないんじゃなかったっけ……? 私は首を傾げた。

 

 考えことをしている間にスライムマンと重戦士が交差し、一瞬で勝負がついた。

 重戦士のバケツ型の兜が落ち、スライムマンの首が落ちた。

 

「……」

 

 重戦士は無言で死体に向かって、ラボナの聖句を唱える所作をした。

 髪は短髪で顔に大きな傷があり、精悍なナイスミドルだった。老シスターの話で聞いた、流浪の聖騎士様だろう。妖魔を暴き、世を救う旅を続ける騎士様だ。

 

「ばかっ! なにしてんだ!」

 

 ならばと、私は勘の赴くままにローブを脱ぎ去った。小声でイライザが止めようとしたが、何となく無視した。大事なことなんだよっ!

 妖気を押さえる薬を飲んでいるため、目の色は色素の抜けかけた赤色に近い茶色になっていた。一見して、私が半身半妖とは思わないだろう。蒼いシスター服と洗礼者の首飾りをした私は、さながら流浪の宣教者に見えるはずだ。

 

 重戦士は、印を見せると跪いた。

 老シスターに仕込まれ、笑顔で頷いて免許皆伝を許された洗礼を見せてやる。跪いて洗礼を請うがいい!

 

 眼をつむった私は、重戦士の頭に手を添えて厳かに言った。

 

「めんまマシマシ。ラメン」

「……は?」

 

 その時、イライザの踵落としが飛んできて私の意識を狩った。

 

「ややこしくするな!!!」

 

 それが、今日の私が聞いた最後の言葉となった。

 




ラーメン!

老シスターは懐が広い。

後の展開の参考にします。

  • ミリア(ラボナ待機)ルート
  • ヘレン・デネヴ(南へ)ルート
  • クレア(西へ)ルート
  • オリキャラ(廃教会他)ルート
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