〈痴呆〉のオリヴィア【完結】   作:peg

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オリ展開が続いて申し訳ない。
そろそろ、原作に帰りたい(ルナティックモード)


多勢に無勢

 私達は、ふん縛ったオルセの前に集まっていた。

 ミアは、一瞬の出来事に放心して私達を見ているだけだった。

 

「……何てことをしてくれたんだ」

 

 しかし、心が戻ってきたのか、私によって亀甲縛りにされたオルセを見て片手で頭を押さえていた。これで、止めなかったこいつも共犯だ。ははは!

 

「組織の連絡員か……」

「んあ。ああ、今となっちゃあ懐かしいもんだがな」

 

 ウンディーネの姉御と薄幸騎士は、オルセやミヤの監視で残った。監視と言っても、亀甲縛りのおっさんと状況的に詰んでしまったミアは逃げたり出来ないのだが……。

 

 オルセが起きるまで暇になったので、シスター(せんせい)のお墓作りをした。教会の裏の空き地に棒だけ刺して墓を作った。私が持っていたラボナの(しるし)を結んだ紐へ、拾ったペンダントも一緒に通して墓に掛けた。成仏召されよ。合掌。

 

「めんまマシマシ。めんまマシマシ」

「あんたのソレ、どこの宗派よ……」

 

 ラボナ圏に住んでいたイライザから、合掌に対して呆れ声で突っ込みが入った。いいんだよ。こういうのは気持ちなんだよ。

 

 オルセは打ち所が悪かったのか、なかなか起きなかった。

 

 私達は、消沈したミヤも含めて焚き火を囲んだ。みんなで焼いた干し肉を食べた。私達半人半妖は、顎の力も鬼のように強い。ボリボリと食べた。しかしオルセを叩いたせいで、先の方は粉微塵となって、飛び散ってしまっているのが少々残念だった。

 

 食事が終わり、手持ち無沙汰になったので草笛を作って吹いた。

 

――ピェーー。

「……へったくそな笛だなおい」

 

 ロザリーに教えてもらった通りに作ったけれど、やっぱり上手く吹けなかった。ウンディーネの姉御が聞いてたみたいで、片眉を上げて私の笛の音に突っ込んだ。練習中なの!

 

 横合いの薄幸騎士が、草笛を私の手からひょいと奪った。

 

「どれ……。貸してみろ」

「あっ」

「ぬっ。これは……」

 

 草笛を観察した薄幸騎士は、私の草笛を咥えた。おぃィ? 間接キスなんだが? 変態か?

 

――ピィーー。

「おぉ!」

 

 ロザリーの笛の音と同じ音が鳴った。私は立ち上がって感嘆の声をあげた。プロかな?

 

「……これを誰に教わった?」

 

 草笛を私の前に掲げた薄幸騎士が言った。誰にって、そりゃ……。

 

「『ロ』名も知らない戦士。昔にぃ死んだ」

「…………。……そうか」

 

 私の口が勝手に動き、慌てて口を塞いだ。いつものエイリアンマウスシンドロームだった。最近無かったのに……。

 薄幸騎士は下を向いて暫くした後、私の顔を見て言った。

 

「……お前は、託されたのだな」

 

 何の事か分からなかったけれど、神妙な雰囲気だったので両手で口を押さえたままコクコクと頷いておいた。

 

 

 

 

「うっ。うぅ……」

「お、やっと起きたみてーだな」

 

 オルセがようやく起きた。顔が苦痛に歪んでいた。すげぇ痛そう。

 立ち上がった薄幸騎士が、オルセに近づいた。薄幸騎士は、まだ呻いているオルセを唐突に蹴って仰向けにした。

 

「がはっ! く、何をする……」

「答えろ。この薬は、お前達が蒔いたものか?」

 

 薄幸騎士がオルセの顔前に持っていったのは、小汚ない瓶詰めの液体だった。蓋はコルクになっていた。

 

 先程までミヤや薄幸騎士と、組織がこれまで行ってきた悪行の情報共有を行っていた。

 当然ながら、その中に人を妖魔に変えてしまう薬も話題に上がった。薄幸騎士は、オルセからなにか引き出せないかと考えているのだろう。

 

「……くそ。まずは開放しろ」

「ダメだ。話すのが先だ」

 

 しばらく押し問答をした後、ボコボコに顔を腫らしたオルセが諦めて話始めた。

 

「……その薬について、組織は関知していない。サンプルは取っていたがな」

「どういうことだ?」

「……」

 

 組織は突発的に沸いた人を妖魔に変える薬について、これ幸いと放置していたそうだ。組織に対するヘイトが減るからだろうなぁ。

 暫く話すと、オルセは黙った。それ以上情報を渡さない気だろう。

 

「数年前から……大陸中央付近にある村が一晩で消える事件が増えた。複数の妖魔が居ると依頼が入った村で、その傾向が顕著だったんだ……」

 

 沈黙を破ったのは、ミアだった。

 

「これは推測だが……。恐らく組織は、村々が特殊な覚醒者に襲われていると考えていたのだろう。複数の妖気を勝手に産み出す薬が、そいつを釣り出すのにうってつけだった訳だ」

「特殊な覚醒者……か」

「……」

 

 大筋合っているのか、オルセの額から汗が流れ落ちた。いや、さっき私のせいにしていなかった?

 

「あっ! 北から地下を移動した奴は?」

「かてぃあ?」

 

 イライザが声を上げた。カティアの事だろうか。私はミアに食って掛かった。

 

「カティア、どこ!」

「な、何なんだ急に。話す、話すから揺らすな!」

 

 私から解放され、息を落ちつけたミアが語りだした。

 

「私がナンバーを剥奪されてから、組織の目として新たにルネという戦士がナンバー6に着いた」

「……おい。そいつと、今までの話は同じ話なのか?」

 

 全然違う話を始めたミアに、ウンディーネの姉御がイラついた声を出した。危うく私もキレるところだった。

 

「まぁ、最後まで聞け。そのルネという戦士が、しばらく前から行方不明となった」

「……逃げたってことか?」

「いや、それはない。リフルに捕らわれたと言うのが、組織の考えだ」

 

 この時期のリフルってなんか色々やってるんだったっけ……。ヤバい、うろ覚えだ。

 

「リフルって、深淵のリフルか?」

「そうだ」

「一体なんだって……」

「さあな。ただ、その時期と特殊な覚醒者が出現しなくなった時期が一致するんだ」

 

 あ! 思い出した。

 酢昆布は、スケベボディ(ルシエラ)の残骸を拾って居たのだった。私は頭を抱えた。どうなるんだったっけ……。ぬおぉ! ひり出せひり出せ……。

 

「どちらも、そのリフルとやらの手中にあるということか……」

「恐らくはな」

 

 蚊帳の外だった薄幸騎士が、話をまとめた。意外と話を聞いていたみたいだ。

 

 とりあえずカティアは、いつの間にかリフルに捕まってしまった様だ。助けにいかなければならない。しかし、酢昆布め……カティアに手を出すなんて、馬を煮るときの出汁にしてやる。

 

「まぁ、何にしてもラボナに一旦帰りましょ。オリヴィアの用事も済んだみたいだし……。土産もついてきたしね」

 

 イライザが、ミヤとオルセを見て言った。

 

「私も、もう組織には戻らない方がいいだろう……。元々、こいつに良いように使われていただけだったからな。それに、さっきの話を聞いて……今更組織には戻れない」

 

 ミアも反乱組に加わる意向のようだった。

 完全には思い出せなかったが、何となく急いだ方がいいような気がしてきた。

 

「すぐに、カティアのとこ、行く人!」

「……」

 

 人差し指を上げて、急いで一緒に行く人を募集した。しかし、ビックリするくらい誰も乗って来なかった。

 

「ばかっ! どうせ西側なんだから、一度拠点に帰るんだよ!」

 

 利かん坊のイライザに否定され、ラボナに戻る流れになってしまった。

 

 

 

 ところが、ラボナに帰る道中、不穏な流れになった。

 

 オルセは、薄幸騎士の屈強な馬に縛り付けられて運ばれていた。私達も逃がすわけには行かなかったので、移動速度を合わせていた。さらには、移動ルートは森林を避けて馬が通れる通常の道を進んでいた。

 

「まずい。全員止まってくれ!」

「あ? ……なんだぁ?」

 

 叫んだのはミアだった。先頭を行っていたウンディーネの姉御が、キレ気味で振り返った。生臭い。なんか嗅いだことの無い匂いが、付近に漂っていた。

 

「全員動くな! その場で息を潜めるんだ!」

 

 かなり焦った顔でミアが叫んだ! 急に叫ぶな。

 

「一体なんだっていうん……!」

 

 イライザの眼前に、全裸の女が突然現れた。へ、変態だー!

 (ましら)のように前屈みで二足歩行しており、目と口が縫い付けられていて異様な雰囲気をしていた。

 白い長髪をした全裸の女は、イライザへ顔を近付けていった。

 

「……っ!」

「刺激するなイライザ!」

 

 本気でチューする五秒前だった。浅黒い肌の女から逃れようとするイライザをミアが止めた。

 鼻を鳴らしてイライザの肩の匂いを嗅いだ女は、興味を失ったように離れた。昨日、肩を叩くついでにイライザに鼻くそをつけた場所だった。……なんか、ごめん。

 こいつは、きっと〈深淵喰い〉だ。嗅覚に優れ、動くものに反応するんだ。執念深く、1体1体が並みの覚醒者よりも強い。私は詳しいんだ。

 

「なんなんだコイツは……」

「……妖気を全く感じないな」

「〈深淵喰い〉だ。組織が作った……対深淵向けの新たな兵器だ。妖気を感じなくとも、1体1体が並みの覚醒者を凌駕している。離れるまで大人しくするんだ。動くものに反応する」

 

 困惑する姉御達にミアが解説した。

 厄介なものにかち合ってしまった。居なくなるまで大人しくするしかない。この時期のこいつらには、イースレイやリフルがインプットされてるんだったっけ……。カティアのこともある。はやくどっか行ってくれ。

 

 その後、5体程が現れて私達の周りをうろうろとしていた。

 

「おい、ミア。何時までこうして居ればいいんだ」

「くそ! 何で居なくならないんだ……」

 

 一向に居なくならず、すんすんと鼻を鳴らして近くに居座った。なにかを探しているような動きをしていた。

 

 集団からぬっと出てきた一体が、私の前まで来た。次私かよ。こいつら、腐った魚に似た臭いがして嫌なんだが……。

 

「……」

「動くなよ……オリヴィア」

 

 心配したイライザが、私に声を掛けた。大丈夫大丈夫、すぐ終わるって。

 すんすんとイライザの時と同じ様に鼻を鳴らした〈深淵喰い〉は、私の顔面に顔を近づけてきた。

 

「え?」

 

 〈深淵喰い〉が、ガパリと顎をはずして縫われていたはずの口を開いた。ぬらぬらと光る口内が見えた。わぁ、よだれの宝石箱やぁ。

 

「避けろ! オリヴィア!」

「ほっ!」

 

 

 イライザの声を聞いた私の身体が、自然と動いた。

 〈深淵喰い〉の腹に、反応するギリギリの速度で手を当て、体内で練り上げた力の流れを一瞬で受け渡した。回転する力だ。

 唐突に逆さまになった〈深淵喰い〉が、宙空を噛んだ。

 

 ロザリーは戦士の中でも、後ろから数えた方が早いくらい足や動きが遅かった。

 そんな中、ロザリー()が編み出したのは待ちの戦闘スタイルだった。

 速度を上げるのは、ほんの一瞬だけ。それも、全身を駆動させて最速の一瞬を作る技だった。ミリアの〈幻影〉と似ている。しかし、技の性質はまるで異なっていた。

 

――〈瞬動殺〉

 

 〈深淵喰い〉は、逆さに姿勢のまま地面に激突し、頭蓋が崩れて異音が鳴った。

 

「なっ……!」

「いつの間にあんな技を……」

「しかし、これはまずいのではないか……?」

 

 姉御や薄幸騎士の声が聞こえた。

 明後日の方向を見ていた〈深淵喰い〉達が、音が鳴った私達の方へ一斉に振り返った。

 さらに、少し離れたところに居ただろう〈深淵喰い〉が、4匹集まって来た。

 

「このままじゃダメだ! 半数を殺して離脱するぞ! 半数が死ねば組織に戻るはずだ!!」

「くそっ! 全員妖力解放しろ! 力量差がひどすぎる!」

 

 ミアが〈深淵喰い〉の性質を叫んだ。さらに、〈深淵喰い〉達の身体が刃だらけの異形に変質し、力量差を察した姉御も叫んだ。単純計算で、残り9匹の覚醒者を相手にしなくてはならなくなった。

 その時、さらに2つの影が私達の前に降り立った。

 

 二人とも大剣を持ち、戦士の装いをしていた。全身を黒い装備が覆っており、無感情な顔が金色の長髪の中に浮いていた。

 組織のナンバー1、2のアリシアとベスだった。

 

「組織の命により、準深淵級〈痴呆〉のオリヴィア……討伐を開始する」

 

 ……へっ?

 ……えっ?




がんばえー!(他人事)
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