「にわかには信じられない話だな」
「嘘はついてないぜ。逆に、説明し足りないくらいだ」
歩きながら、ヘレンから西での出来事を一通り聞いたガラテアが、首を傾げながら考え込んでいた。
ヘレンとガラテア、イライザ、そして私の四人は、クレアを目指して登山途中だった。他のメンバーは、街で拠点を立て直すらしい。死体片付けよりはマシなのだが……。
妙にやる気のイライザに引っ張られて、私はここに来てしまっていた。
既に辺りも暗くなっており、半人半妖で無ければ山間の森林で遭難している所だった。
『……ご飯はまだですか?』
「さっきまでやる気だったのに……、急にどうしたんだ。疲れたのかオリヴィア?」
ご飯を食べられると期待していた私は、完全にFXで全額溶かした人みたいな顔になっていた。そんな私を気遣って、イライザが声を掛けてきた。……大体、おめぇのせいだよ。
「それに、一本角で羽の生えた覚醒者など聞いたことも無い」
「あぁ、あたしらもその時初めて見た。西のリフルから、ヤツが深淵を超える力を持っていることを聞いてはいたんだけどな……。……ついたぜ」
ガラテアとヘレンが話し込んでいる間に、ようやく着いた。エロオブジェに。
「これが……クレアだ」
ヘレンは親指でクレアを指し示した。クレアっていうか、エロオブジェクトな。
「シンシアでも、完全には読み取れなかったんだ……。ガラテアなら出来るだろ?」
「……さあな。試してみないことには何とも言えないぞ」
ガラテアはエロオブジェを見上げて、右手を添えた。
「西から手分けして運んできたんだ。どうだ……? 形は捉えられるか」
「妖気を発するものなら、その輪郭を理解することができるが……。……これは、まさに異形だな」
人の足が八本生えた異形を見上げたまま、ガラテアの顔が歪んだ。
「クレアがでかいのに取り込まれてから、シンシアたちが言うには星が降ってきて、衝撃と共に大地が消し飛んだ。何も無い土地の中心に唯一残っていたのがこいつだ」
「…………」
見えない眼の瞼を閉じたガラテアは、暫く間を置いてから口を開いた。
「まるで妖気の濁流だな。……私に分かるのは、こいつが妖気を発して息づいている事だけだ」
「ちくしょう! おめぇでもダメなのかよ!」
ガラテアが言い、ヘレンが両手で頭を覆った。ガラテアは、足を見上げたまま思案げな顔をしていた。
私は原作の一コマを思い浮かべた。あれ? ガラテアでダメなの? スッポンポンのクレアが出てくるんじゃなかったっけ……?
ここでクレアが出て来なかったら……。プリシラは倒せず、誰も勝てないまま人々は怯えて暮らすことになるだろう。絶望の未来が頭によぎった。
私は目の前が真っ暗になり、目の前にガメオベラが浮かんだ。ひえっ。
「えー! えぇー!? 『どうしてこうなった!』」
「オリヴィア、落ち着け。クレアは、きっと大丈夫だ」
「オリヴィア……。残念なのは分かるけどよ、次の方法を考えようぜ」
ヘレンやイライザに慰められたが、私は地団駄を踏んだ。
何処かで歯車が狂ったのかもしれない。なんとか原作の流れに戻すしかねぇ!
「くそっ……。『私がやるしかねぇ!!』」
「何をする気だ、オリヴィア! そいつを無用に刺激するのは危険だ、やめろ!?」
覚悟を決めた私はエロオブジェに両手の平を向けて、妖気の紐をぶっ刺した。妖気の出力全開! いけぇぇぇ!
私の妖気を注ぎ込まれたエロオブジェは、グネグネとその容姿を変え始めた。
「ヤバいぞ!? 皆、離れるんだ!」
「なにやってんのよー!?」
足が無くなり、本体が上に伸びて行った。本体の両脇から別の物体が飛び出して丸くなって行った。よし、いける! クレアが出てくるぞ!! ヒャッハー!
「いけぇぇぇ!」
「やめろ、馬鹿者!」
「みがっ!?」
元ナンバー3のガラテアに全力でぶたれたせいで、妖気の開放が強制終了してしまった。半端になっちゃった……。ねぇ、私の頭も半分になってない……?
エロオブジェだった物は、どんどん大きくなって行った。
「おい! やべぇーぞ!?」
ヘレンが焦った声を出し、目を見開いてドン引きしていた。
私は、ぶたれて痛む頭を抑えながら顔を上げた。
黒光りしたエロオブジェだった物は、周りの森林よりも頭一つ抜けた大きさになっていた。
かつて足の生えていた先の方は、円錐状になっていて硬質な光沢をしていた。視線を落とすと、テカテカと上側が光る丸い球体が2つ見えた。
「なん……!?」
「この形は……!? だ……男……性…………、器?」
「なんでよー!?」
全容を確認したガラテアは困惑した声を出し、イライザが甲高く叫んだ。
「いや、これは……! 『ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねーか! 完成度高ぇな!?』」
「なんて???」
そこにあったのは、紛れもない、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲だった。
その後、良くよく調べると、下にあるエネルギーパックのたま筋には、苦悶の表情のクレアが浮き出ていた。ほらー! もうちょっとだったじゃん!
「これ以上は危険だ。危ないのが分かっていて、みすみす見過ごすことはできん」
そう言ってガラテアは、私がネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲に紐で干渉するのを邪魔し始めた。
私が紐を出そうとすると、ヒュアッってして妖気をフラットに戻された。うわっ、何これ。高まったテンションが急に、すん……ってなる。
ガラテアはお得意の妖気操作で、外部から私の妖気を抑えに掛かっている様だった。
「お前。集中した妖気を紐状にして、相手に干渉しているな? 貫通力と瞬発的な強制力はあるが……。最悪、味方に干渉すれば覚醒させてしまうぞ」
「えぇ……?」
レアのやつ、なんて恐ろしい技を伝授しやがったんだ……。姉御達に、もう使っちまったぞ。
「今までは運が良かったんだろう。二度と使うな」
困惑していると、ガラテアに釘を刺されてしまった。レアの紐は、完全に索敵スキルに成り下がってしまった。今までと、ほとんど変わらねぇじゃん!?
私はレベルが下がった。
「……何にしてもよ。クレアがここに居るのは分かったわけだ。後は、どうやってこいつから分離するかだな……」
「そうね。本人も苦しそうだし……。……でもなんか、クレアの顔が……。段々、この玉に居るのが嫌になってるだけに見えてきたわ……」
クレアを見つめて瞬きをしたイライザが、頭痛がするように頭を抑えて言った。
ついでにと、調べた反対側のたま筋には、見ない顔が幾つか並んでいた。
「で、こっち側は誰なんだ……?」
「オリヴィアに、似ているのか……?」
その中でも1番目立っているのは、ラバースーツの様な表面から無理矢理出ようとしている女だった。動きは止まっているが、浮き上がった顔が何故か私に似ていた。
「まるで、成長したオリヴィアみたいだな」
ガラテアが疑う様な表情でこちらに顔を向けた。何疑ってんだ、おめぇ。怒らないから言ってみろ。
「他は……わからないな……」
「なんだか、不気味だぜ……」
その時、私の視界にあるものが写った。
「カティアだ……」
「は?」
「えっ……? いや、これただの尻……?」
私が釘付けになったのは安産型の尻だった。
私は過去に思いを馳せた。
二人で旅をした時、私の
私は嬉しくなって尻に飛びついた。
「いかん!? イライザ、止めろ!」
「ばかっ! 今刺激するなって、注意されただろうが!」
尻に触れる寸前で、近くに居たイライザに羽交い締めにされた。
「はなせっはなせっ!」
「こればっかりは、謝らないぞ! どっせぃ!!」
私は暴れたが、イライザの方がパワーがあり離れなかった。さらに、イライザの掛け声と共に視界が回った。
回る視界の中、私の頭の中に技名が浮かんだ。
あ、完璧なジャーマン・スープレックスだ、これ。
「ほげっ!?」
地面に叩きつけられた衝撃が伝わり、視界が真っ暗になった。
avみたいなタイトルになってもうた…………