〈痴呆〉のオリヴィア【完結】   作:peg

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〉パーティ会場の真ん中に突然の核が!〈
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ジェノパへの(いざな)

「……よってぇ、第345回、暗黒武道大会を開催する」

「異議あり!」

 

 間延びした声を出した黒尽くめの裁判長が判を鳴らし、私は立ち上がって抗議した。この問題は安易に答えを出さず、審議を尽くさなければならない。

 

「裁判長! 確かに被告人は、壁から生えた尻に手を出しました。しかし! 分裂体を複製するには至っていません!」

「アウトだよ!?」

 

 私の正義の叫びは、傍聴に来ていたロザリーのツッコミで遮られた。

 

「ふむ。よってぇ……弁護人オリヴィアを極刑とする」

「なんで!?」

 

 突然、私は極刑の憂き目に合ってしまった。

 証言台に立った、全身黒タイツの明らかに犯人ですと言った風貌の男は、ニヒルな笑顔を私に浮かべた。くそが! 嵌めやがったな! 嵌めたのはお前だ!!

 

 その時、裁判所に光が差し、犯人の風貌が明らかになった。

 

「……」

 

 映画ドロボウだった。クソが! 顔を晒せや!!

 

 

 

 

―――

――

 

 

 

 

 

「うう……。カティア……どこ……ここ?」

 

 目を覚ますと木目の天井が目に入った。何処かの民家だろうか。美味しい匂いが私の鼻腔を擽った。お腹へった……。

 開きっぱなしの窓を見ると、ラボナの街並が見えた。動けないと思ったら、私は縄でぐるぐる巻きにされていた。……なぜだ。

 

 

 なんとか情報を得ようと、芋虫運動で扉の前まで行くと話し声が聞こえてきた。

 

「教えてくれ! ……ラボナの襲撃は、組織が仕組んだことなのか……?」

「ディートリヒ……」

 

 デネヴとディートリヒが話しているようだった。

 ディートリヒが小さい時に住んでいた村は、今回のラボナのように覚醒者達の百鬼夜行で滅んだそうだ。これも組織ってやつが悪いんだ。

 

「共に来い、ディートリヒ。お前自身が刃の感触で知るべき事だ」

「……感謝する」

 

 なんか良い感じで、ディートリヒが着いていくようだ。……何処に? いや、あれ? 何の話だ。

 

「ヒギッ」

「あ、あれ? なんか重たいぞ」

 

 考え事をしていると、扉が突然開き、隙間に顔が挟まれた。待って、鼻が床と挟まってる。おい、カメラ止めろ! じゃなかった扉止めろ!

 

 それでも扉は止まらず、私の鼻血が床に広がっていき、密室殺人現場みたいになった。

 

「オリヴィア!? 誰にやられたんだ!?」

 

 オメェだよ、〈まつげ〉。

 血に沈んだ簀巻きの私は、脱力して悟った顔を浮かべた。

 

 

 

 

 勝手に山のネオアームストロングサイクロンジェットネオアームストロング砲まで行かないことを約束させられ、私の拘束が解かれた。

 ボロボロだった服も新たにシスター服を貰った。ニコニコばあちゃんシスターは、崩壊したラボナにあって健在だった。天使かな。

 

 民家を拠点として借りていた。私達全員が入れるくらい居間の部屋がデカいから、富裕層だったのかも知れない。

 

 深い色合いのテーブルには、パンやチーズ、足の早い果物みたいなものが雑に並んでいた。

 

 着替えて用意してもらった飯をしこたま食っていると、目が3になったナタリーが起きてきた。もう動いて大丈夫なのかな? 目が3のままなんだが、ユマ達は治すとこ間違えて無い……?

 

「ナタリー……もう起きて大丈夫なのか?」

「あぁ……。心配をかけた。……ミリア隊長を引き留められなくて、申し訳ない」

 

 イライザが話しかけると、ナタリーは申し訳無さそうに俯いた。

 

「……いや、お前は良くやったよ」

 

 そう返したのは、顔を赤くしたウンディーネの姉御だった。姉御は、珍しく洋酒のような汁を飲んでいた。なんの果物が使われているか良く分からない。

 ちなみに私が飲もうとしたら、ニコニコ顔の老シスターがミアータと同じものにすり替えてきた。おいィ? キッズと一緒にするなよ。うまい、もう一杯。

 

「クレアの状況はさっき言った通りだ」

「あの後、しばらく観察したが……。私の見立てでは、あのままでも急激な変化しないだろう」

 

 ヘレンの掻い摘んだ説明にガラテアが付け足した。ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲は安定していた。

 

「先ずは、ミリアの問題から片付けるべきか……」

「私達8人とディートリヒか……」

 

 ミリアを助けに行くのは、姉御、デネヴ、シンシア、イライザ、ヘレン、私、ナタリー、ユマの8人フルパーティに加えてディートリヒとなった。

 

 カティア達の分離方法は、時間をかけて探すしかない。ワンちゃん私の紐で行けそうだったが、ガラテアのアドバイスから行けば、クレアの覚醒体が爆誕し、そのままディストピアエンドへまっしぐらだっただろう。こわっ。

 私はガタガタと身震いした。

 

「私は、ラボナに残るよ……。変化してしまったデカブツを見て置かなければならないからな」

「だから悪かったって!」

 

 ガラテアはラボナに残るようだ。ヘレンとガラテアは、厄ネタをラボナ近郊まで持って来た事で少々揉めていた。

 

「あの! 私達は!?」

「……」

 

 ミアータと手を繋いだクラリスが叫んだ。常識的に考えてお留守番だろう。

 

「お前とこいつ等では、実力や覚悟も何もかもが違うんだ。私達と一緒にラボナで大人しくしておけ」

 

 したり顔のミアが割り込んで言った。

 

「その通りなんだが、ミア。お前はビビってるだけだろう……?」

「な、な、なんだと!?」

 

 ディートリヒのツッコミのような煽りでミアが動揺した。煽り耐性ゼロか? そしてお前、昔クール系じゃなかったっけ……? 色々あったんだろうな……。

 

 

 

 

 

 翌日、打ち合わせと準備を終えた私達は、早朝にラボナを立った。

 組織まで不眠不休の全力ダッシュで二週間程の行程だ。半人半妖の感覚でも無茶苦茶だった。馬鹿なのかな?

 昨日、酒の勢いで決めたのが悪かったと思います。

 

「ミリアの安否を気にして急ぐにしても、これは無謀だぞ……。組織も馬鹿ではあるまい。既に、現役の戦士の大部分を呼び戻しているだろう」

「……ちっ。悪かったよ!」

「いや、昨日言えよソ、ぐえっ……」

 

 デネヴに糾弾されたウンディーネの姉御が、恥ずかしそうに頭を掻いた。ヘレンは余計な一言でデネヴから肘打ちを食らっていた。

 

「てめっ」

「……」

 

 ヘレンとデネヴの無言のじゃれ合いが勃発した。

 

 昨晩、姉御とデネヴはなんか盛り上がっていた。たぶん味方の安否ジェットコースターで、テンションがおかしくなっていたのだろう。私達は常に冷静なふむふむシャギー隊長が恋しくなった。

 

「さて、どうするか……」

「……ふむ。そう言う事なら……。昔使っていた、組織へ北から下る山道がある。ハズレの担当地区だから、知っているものも少ないはずだ」

 

 困り顔のナタリーへ、元現役ナンバー3のディートリヒが、ふむ姉ぇっぽく返した。まぁ、戦士って大体口調が似てるし……。

 

「……奇襲をかけるなら、うってつけな訳だな」

「それで行きましょう」

 

 ユマやシンシアも特に反対しなかった。 

 

 それ以上の案が出なかったので、ディートリヒの案で行くことになった。

 行程的には、1月程度かかるだろう。道なき山道を隠れながら通る為だった。念の為、ナタリーとシンシアに索敵してもらったが、呼び戻されていそうな戦士以外に脅威は見つからなかった。

 

「道中の戦闘は極力無しだ」

「相手より先に感知してみせますよ」

 

 改めて姉御が言い、シンシアが力こぶを作って返した。カワイイ。

 方針が決まったが、今までとあまり変わらないのでは……? 私は腕組みして首を傾げた。

 私達は、既に妖気を放ってしまっている。今まで以上に気を遣わなければならないとか、そう言う意味かもしれない。

 

 

 

―――

――

 

 

 

 20日程が経って、場所は山道の中だった。旅の行程は8割くらい。皆がやる気なせいか割と早く進めた。

 鬱蒼としていた森林が疎らとなり、身を隠す物は岩しかなくなってきた。

 

「そろそろ、ガラテアクラスの感知範囲に入ります」

「けっ……。あんな奴がゴロゴロ居てたまるかよ」

 

 シンシアの注意喚起に姉御の顔が歪んだ。組織が保有していた感知系戦士は、ラボナに居るミアで打ち止めだと思いたい。

 しかし、此処から先は慎重に進まなければならないだろう。

 

「……おい、待ってくれ。何か……。何だこれは、妖気のような……? 生まれる前の妖魔?」

 

 目を瞑って妖気を探っていたナタリーが変なことを言い出した。生まれる前の妖魔? なんじゃそら。自然発生はしないぞ。私は詳しいんだ。

 

「えっ? ……小さい妖気の様な……朧気な感じですね。複数固まってます。規模から言って……村?」

 

 シンシアもナタリーが指さした方向に探りを入れていた。組織の隠れ施設かもしれない。

 

「組織の隠れたアジトかもしれない……。それに、1つ気になっている事がある」

 

 少し遠くを見たデネヴが皆に言った。

 

「あん? 気になっている事?」

「あぁ。以前、ミリア達と男の覚醒者に初めて遭遇した時の事だ。その覚醒者にミリアは、何事かを問われ酷く動揺していた」

「あ〜、あれかぁ……」

「あ……? それがなんだって言うんだ?」

 

 デネヴとヘレンが語り始めたが、私達は蚊帳の外だった。片眉を上げたウンディーネの姉御が、私達の心を代弁した。

 

「それが、組織が未だに男の戦士を作っていることだったら?」

「!?」

「ミリアは知ってたんだ。そして、ラボナに集まった覚醒者達も殆どが男だった。積極的な覚醒者狩りを行っているはずの大陸で、あれ程の数が集まるとも思えん」

「待ってほしい」

 

 デネヴの推論で目を剥いた皆を遮ったのは、考え込んだディートリヒだった。サイドテールが揺れた。

 

「……これは疑っている訳ではないんだが。今語られたことの殆どが推論だ。これから、その村に行って……別の何かだった時、足元を掬われかねんぞ。他の可能性もないのか? なんなら〈深淵喰い〉やもしれん」

 

 〈深淵喰い〉は嫌だなぁ……。他に可能性と言えば……。

 

 その時、私は南の地であったゾンビーズ思い出した。ラバーマンがばら撒いたって言っていた薬を飲んで、スライムマンになってしまったおっさん達の事だ。

 私は姉御に訴えかけた。

 

「ぺぷし○まん! すらいむまん!」

「あぁ。……あたしもそう思ってたんだが」

「どうしたオリヴィア、ウンディーネ」

「すまねぇ。色々な事がありすぎて、すっかり言うのを忘れていたぜ」

 

 姉御はデネヴ達に、廃教会近郊での出来事を掻い摘んで説明した。謎のスライム薬、そして変態ラバーマンの事だった。

 

「あの時、北の地で出会った覚醒者か……」

「何かを企んでいたみたいだがな。今となっては探り様はないが……」

 

 組織の隠れ施設かもしれないが、スライムマン村かもしれない。もしかしたら、〈深淵喰い〉かも知れない。混沌としていた。

 ミリアを助ける為には急がないと行けない気がするが、もし仮にこの拠点が組織のモノだとすると、背後から挟まれる可能性があった。

 

 何にしても、確かめるためには行ってみるしかない。あわよくば、人里の飯にありつけるかも知れない。ぐへへへ。

 今日の飯の事を考えていると、神妙な顔をしたデネヴが私に向き直った。

 

「オリヴィア。お前が決めろ」

「え゛?」

「我々はお前の言葉に希望を見出して、ここまで来たんだ。ここから先の道は、お前が決めろ」

「こヒゅっ……!?」

 

 喉から変な音が出た。

 先のクレア覚醒というガラテアの言葉が私の頭を過ぎり、血だらけの首だけミリアを連想して呼吸が止まった。

 

 なんで主人公格の運命が私の手の上にベットされてるんだ……!?

 

「……」

「大丈夫だ、オリヴィア」

 

 冷や汗をかいて固まる私へ、膝立ちになったイライザが両肩に手を当てて励ましてきた。そう言うんじゃないんだよ、覚醒者達のジェノサイドパーティーの始まりかも知れないんだよ!?

 それを思うと、全然大丈夫じゃ無かった。

 

 ぱっつん気味の前髪から見えたイライザの眼は、酷く澄んで見えた。oh...ふつくしい……。

 

「あんたがどちらを選んでも、此処には責める奴は誰も居ない。あたし達を動かしたのは、あんたの言葉だ。あんたのその言葉に、あたし達は賭けたんだ」

 

 私は口を開けたまま、イライザから顔を逸して見回すと、皆が微笑ましく私を見ていた。……いや、笑い事じゃないんだが。

 

「ふっ……。普段はバカなんだが、こういう時だけ核心的なことを言えるのは、ちび助の良い所だとあたしは思うぜ」

「きひひ……固まってやんの」

「信じてますよ」

「わ、私もだ」

 

 皆が、私一人では覆せない謎の一体感を醸し出し始めた。風を感じる、今までに無い一体感を……私以外は1つだ!

 

 

 




あけましておめでとうございました(小声)
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