〈痴呆〉のオリヴィア【完結】   作:peg

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一時、オリヴィアに改変されしミリア編が始まります。






ミリアリザレクション

 流石にあれだけハッキリとした妖気を感じれば、その存在は疑いようが無かった。あれがイースレイか。

 あまりの妖気の大きさに、ぶつかってきた妖気から姿がイメージ出来た。妖気から姿形を察するに、まさかロン毛ショタおじさんだったとは……。……あれ? 原作でもそうだったっけ?

 

 考え事をしているうちに、ショタスレイが消えてしまった。

 

「き、消えた……?」

「いえ、高速でどこかに向かって移動し始めました。遠ざかっていきます」

 

 虚空を見つめて冷や汗をかくデネヴに、シンシアが目を瞑って言葉を返した。

 シンシアは、オデコに青筋が立ってた。結構無理して遠くまで探ってるのかもしれない。でも一見して、ただキレてるだけに見えなくもなかった。ぷぷぷ……。

 

「…………」

 

 ヘレンはビックリして口を開けて固まってるのだが……、無性にエビフライを投げつけたくなるのは私だけだろうか。

 

「な、何だったんだ一体」

「……なぁ、なにかの間違いじゃないのか? うっ、冗談だ冗談」

 

 動揺するナタリー達他、妖気感知勢に、ユマが能天気な声を掛けて緊張組に睨まれていた。ちなみに妖気読みが中途半端に得意なユマは、現役組と同じ能天気勢だ。ウケる。

 

 シンシアの青筋の事も相まって、遂には腹筋が崩壊した。

 

「ぷぷぷ……ぷ……」

「あたしは、あんたが分からなくなってきたよ。オリヴィア」

 

 それを見ていたイライザが、何時になく弱々しく突っ込んできた。なんか調子狂うなぁ。

 

「ていっ!」

「痛! 何するんだ!?」

 

 私はイライザの尻を引っ叩いて揉んでやった。吸い付くような軟こさだった。この世界に、セクハラの概念はあんまりない。天国かな?

 

「揉むな!!!」

「ぎえぴ!」

 

 私のゴッドハンドによって、顔を真っ赤にしたイライザに普通にブッ飛ばされた。そうそう、私とイライザはこんな感じ……。

 私はスライディングしながら、荒野に仰向けで転がった。高が尻を揉んだだけで、ここまでふっ飛ばされるのは全然納得が行かなかった。

 

「あの娘は、こんな時に何をやってるんですか?」

「戦士の情けだ。見ないでやってくれ」

 

 アナスタシアとデートリヒがコソコソと何か言っていたが、微妙に聞こえなかった。

 

「……」

 

 起き上がると、皆の呆れた視線を感じた。

 

「うだうだしてても、しょうがねぇだろ。いい加減、ミリアを助けに行くぞ」

 

 一連の流れを無視した姉御の一声で、組織側に向かって、また進み始めた。

 

 最後に振り返ったが、もう何も感じ取れなかった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 組織のある東の地スタフでは、現役の戦士達が組織からの召還を受けて勢揃いしていた。

 高台から平地に並ぶ戦士達を見下ろした幹部が呟いた。

 

「壮観ですな」

「これで、行方が分からない上位ナンバー以外、ほぼ全ての戦士が集まったわけだ」

 

 この大陸でのパワーバランスの崩壊。混沌と化した覚醒者との戦い(実験)を有利に進めるためだった。

 

「組織の戦士達に告ぐ! 敵は北の山道から下ってくるとの情報が入った!! 北にあった組織の拠点を襲撃し、既に戦士の姿に擬態してこちらに向って来るとの情報も入っている! 人の形をしていても躊躇うな!!」

 

 ついでを言えば、組織の拠点を破壊したオリヴィア達一行も、推定だが何を仕出かすか分からない集団として既に標的にされていた。

 これには、バキアによる冤罪も多分に含まれていた。

 

「行け!」

 

 黒い服を身に纏った組織幹部の号令が下された。ここまで大所帯となった戦士達に、本来であれば統率など望むべくもないが、幹部の巧みな言葉の誘導によって一斉に北に向けて足並みを揃えた。

 

 しかし、暫く進んだところで足を止める戦士達が現れた。

 しかもそれは、徐々に伝播して行き、遂には全員が足を止めた。

 

「なぜ止まるんだ?」

「貴様等! 進め、進めぇ!!」 

 

 幹部達は白けた号令を何度も掛けた。

 立ち止まった戦士達が、ゆっくりと振り返った。

 

 沈黙が辺りを包んだ。

 

 並んでいた戦士達の人波が割れ、コツリコツリ、と足音を響かせて一人の戦士が前に歩いてきた。

 

「ば、馬鹿な……」

「〈幻影〉のミリアだと……!?」

「死んだはずだぞ!」

 

 目を剥く幹部の前に現れたのは、顔に十字に切り裂かれた傷跡の残る、死んだ筈のミリアだった。

 

 

 

 

「左腕の傷は、もう大丈夫かしら?」

 

 組織のナンバー3。オリヴィアに〈おしっこを漏らした女〉として認識されている、ストレートロングのオードリーがミリアに話しかけた。

 

 ミリアは一度、ここに至るまでの間に、四肢を分割され辛うじて息をしている肉塊に成りかけた。5体が揃ってここにあるのは、奇跡に近かった。

 

「あぁ、問題ない。私は大剣さえ握ることができればそれでいい。息があっただけ感謝しているんだ……」

 

 ミリアが組織を襲撃した当時、現役の戦士達30数名を持ってしても、ミリアの進撃を止められるものは居なかった。それは、現役の戦士とミリアの圧倒的な実力差があっての事だった。

 

 しかし、組織には反逆した戦士に対抗する術がいくつか用意されていた。

 

 1つ目は、〈黒〉のアリシアの後継者。組織は、双子の実験を続けており、一組の双子がアリシアの後継にあたった。性能としては、既にアリシア達を凌駕している実験体だった。

 

 2つ目は、対戦士戦闘に特化したナンバー10の存在だった。組織がこの地に根を下ろして以降、ナンバー10は対戦士戦闘に特化し、反逆者狩りや組織に謀反する意図のある戦士の炙り出しを行っていた。妖気同調能力に長け、トラウマや記憶の呼び出しを行い幻覚を見せる。

 双子の戦士との戦いで妖気開放した結果、ミリアはナンバー10による妖力同調によって、組織に反逆するに至った記憶を何度も反芻させられ、遂には四肢をもがれることに成った。

 

 3つ目は組織が直接的に用意していたことではないが、ミリアは戦士達を無傷で制圧していた事だ。組織に操られる戦士達に同情してのことだったが、ミリアの甘さとでも言うべきことだった。

 組織は反逆する戦士の思想を逆手に取っていた。反逆する戦士のその殆どが、仲間意識から戦士達に対して甘くなる。出来るなら剣を交えたくないほどに。ミリアも同じだった。

 

 次期ナンバー1候補の双子との戦いの最中(さなか)、幻覚を見せられたミリアは、起き上がった現役の戦士達に半死半生の重症を負わされたのだった。

 

(最もその甘さが、現役の戦士から畏敬を集め、助けるに至ったのだけれど)

 

 ナンバー3のオードリーは、惨殺しかけた記憶を頭を降って追い出した。

 

「さぁ、命令なさい。〈幻影〉のミリア。ここにいる全ての戦士は貴女の命に従うわ」

 

 オードリーはミリアに振り返り、現役の戦士達の行く末をミリアに託した。これは、ここにいる現役の戦士達が納得済みの事だった。そうでなければ、危険を犯してまでミリアの延命に協力していなかった。

 皆がミリアの抱く強い光に、焼き焦がれていた。

 

「…………。皆、剣を取れ。我々の手で、この日を組織の終焉の日と成す」

 

 戦士達全員が、ミリアの号令で大剣を引き抜き構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 その時、組織本部に重い音が響き渡った。重い金属製の何かを擦り合わせるような、そんな音だった。

 

「何だこの音は……?」

(重い扉が開く、音……?)

 

 オードリー達が動揺する中、ミリアは正確に音を聞き取っていた。

 

 突如、ミリアの脳裏に、ラボナへ保護を求めてきた元ナンバー6の戦士ミアの言葉が思い出された。

 

――組織は覚醒者の血肉を使って、悪魔の兵器を作っている。

――〈深淵の者〉を殺すためのものだ。

――その兵器は11人で1セット。

――何体かが殺られても、逃げ延びた個体が経験を共有するんだ。

――戦う度に学習し、妖気同調によって強化されていく生物兵器。

――名前を〈深淵喰い〉と言う。

 

「キシャァアアアアア!!」

 

 組織に蓄えられた、経験共有前の〈深淵喰い〉が全て解き放たれた。

 

 




改変され……てない!?
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