〈痴呆〉のオリヴィア【完結】   作:peg

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鎮・エロパンツ

 

 走り続けて丸1日半。

 バキアはイースレイの分体に追い付いた。

 

「ぷり……ぷり……らき。ぷり……ぷり……ラキ」

 

 小さなイースレイは、うわ言の様にぶつぶつと言いながら、凄まじい速度で聖都ラボナの西まで走り続けた。

 

「ぜぇ……ぜぇ……はぁはぁ。な、何なのよ、もう」

(やっと、追い付いたのに……力を使いすぎて覚醒体が維持できない……)

 

 山あり谷ありの道を、馬の襲歩を超える速度で夜通し走るという、覚醒体の力を持ってしても常軌を逸した速度だった。

 覚醒体を維持できず、バキアは両膝を折った。

 それでも、バキアは長年の努力の結晶である小さなイースレイを失うわけにはいかなかった。

 

 バキアは異様な妖気を感じて顔を上げた。ソコには、見たこともない黒いご立派様がご()座していた。

 

「な、なんて逞しいの……」

 

 バキアは、一瞬イースレイを忘れて見惚れた。

 それが致命的な一瞬となった。

 

「ぷり……ぷり……」

 

 うわ言を呟く小さなイースレイは、ぷりぷりの尻を振りながら、ぷりぷりの黒い御鎮座様の元へ歩いて行った。

 小さなイースレイが黒い御鎮座様へ両手をかけると、その身体が徐々に埋まっていった。

 

「何処へ行くのよ! ちょっと待ちなさい!」

 

 バキアは必死に手を伸ばした。此処まで追いかけた、我が子同然の個体を失いたくはなかった。

 

「待って、ま……。あばあああ!」

 

 人間体のまま追い縋るように手を伸ばしたバキアは、小さなイースレイに触れると、そのまま黒いご鎮座様に吸い込まれた。

 

 そして、黒い巨砲以外誰も居なくなった。

 

 

◆◆◆

 

 

 ラボナに着いた。

 

「本当に7日程度で着くとはな……」

「けっ。あの飛んでる〈深淵の者〉は、山も谷も飛び越えてくるんだろうさ。あんまり時間はねぇぞ、隊長」

 

 ミリアが感慨深げに言ったが、首に手を当てたウンディーネの姉御が苦言を言った。

 

「ああ、分かっているさ。空いた時間は1週間程度もないだろう。その間に体制を整えるんだ」

 

 その時、ラキ男が明後日の方向に歩いていった。どこいくねーん。

 

「おーい! 君もラボナに行くのかい?」

 

 傾斜になっている地面に座り込んでラボナを眺めている牧歌的なロン毛美女に、ラキ男が声を掛けた。巨乳だった。ナンパか? お??

 

 歩いて向かっていくラキ男を、デネヴが掴んで止めた。んーーー。隠蔽しているけど、こいつ覚醒者じゃね?

 

「それ以上近づくな」

「え?」

「食われたくなければな」

 

 見回せばラボナを囲うように、覚醒者達がたむろしていた。鬚のダンディーからムキムキのおなごライダー迄よりどりみどりだ。なんか10人くらい居る。全員つよそう。

 中でも、雑に簡素なワンピを着ている二つ結びのやつのサイコパス感がヤバい。妖気がトゲトゲしてる。センサーに感、淫乱です。うわ、やべ。目があった。

 

「オリヴィアも急に突っ込んでいくなよ」

「はいはい」

 

 私は適当に往なした。イライザにどんだけ信用されてねぇんだ。あんなやべぇとこには、流石に行かないよ。

 

「くく……ちゃんと見ておけよイライザ」

「またぁ!?」

 

 ヘレンがイライザの肩へ片手をかけて言った。

 憐れ、言い出しっぺの法則でイライザは私の担当となった。ちょっとだんしぃ、その罰ゲームみたいな言い方やめなよぉ〜。

 

「はぁ……」

 

 私は外人のように両手を広げて、やれやれと肩をすくめた。今日から私はやれやれ系主人公だ。やれやれ、私は腹減った。ご飯はまだですか?

 

「まぁ……別に……いいわよ。ちゃんとしててよね!」

「わぷっ」

 

 いつもの流れで脱力していたけど、急に赤い顔になってイライザがデレた。私の頭をグリグリとかき回した。な、なんなんなにゃ。待って、強い。

 無意識にグリグリしたのだろう。イライザは自分の手を見て更に赤くなった。

 

「そ、そのだからね。これは、そんなんじゃなくてね」

「いたたたたはた『待て待て! 抜ける抜けるハゲる首が取れる!!』」

「おい、イライザ。……おい」

 

 私の頭が赤べこのようにガクガクと往来した。おい! くそ! なんのデレだよ!? デレが雑なんだよ!!

 ドン引きしたユマが止めに入ってくれて、私の頭皮と首は守られた。

 

 

 

 

 

 

 私達は覚醒者達に見られながら、聖都ラボナに入った。

 ラボナの中は活気がなく、人の営みが消えたようだった。

 

「皆何処へ行ってしまったんだ?」 

 

 キョロキョロとしながらユマが不安そうに言った。確かに、実力派揃いの覚醒者に取り囲まれていたら、そういう不安も湧いてくるだろう。

 

 守衛の兵士が遠巻きに私達を眺めている。

 ガラテア達の気配は残ったままだから、そのうちくると思うけどなぁ。

 

「〈幻影〉のミリア。まさか本当に生きているとはな……」

 

 空中からシスター服を着た雰囲気未亡人が落ちてきた。ほらきた。親方ぁ! 空から未亡人が!

 ミリア死亡説を訴えていたガラテアのご登場だ。私は腕組みして前に出た。

 

「さあぬげ!『賭けはお前の負けだぞ。素直に全裸になるんだな』」

「何を言ってるんだ……? オリヴィアも相変わらずだな。……全員欠けることなく戻ってきたことが、奇跡のように思えるな」

 

 どこか嬉しそうにガラテアが言った。勢いで脱いでくれると思ったが、全然駄目だった。

 

「……世話を掛けたようだな」

「まったくだ」

 

 元上位ナンバー同士、何か通じるものがあるのかもしれない。そう声を掛け合った二人は、薄く笑って再開の会話が終わった。

 

「さて、再会を喜んでもいられない」

「……あぁ。この街の現状を教えてくれ」

 

 ガラテアが言うには、暫く前に、ラボナへ超弩級の妖気が迫ってきた。街の住人も何かを感じるほどで、皆怯えていたそうだ。

 しかし、そいつは高速で通り過ぎた後、西に置いてある猥褻物あたりで突然消えた。

 その後何日か経って、先の出来事に釣られるように、ラボナの周りを覚醒者達が取り囲んだみたいだ。

 

「その後の事を危惧して、街の住人には避難してもらった。ここに残っているのは、どうしても聖都を守りたいと思う志願兵達だ」

「ちょっと待てよ……。クレアに何かあったのか!?」

 

 説明途中のガラテアにヘレンが噛み付いた。

 

「それについては、見てもらったほうが早い。……と、言うよりは説明が難しくてな……」

 

 ガラテアが逡巡して言った。

 

「……」

「ラボナの西にある物体に、一体何があったと言うんだ……」

 

 またお通夜ムードな空気が流れた。ユマが緊張感から冷や汗をかいていた。こいつ、いっつも汗かいてんな。

 

「ガラテア、暫く前と言っていたか。その、猥……クレアを取り込んだ存在に強い妖気が接触したのは何時だ?」

「今から、大凡6日前だ」

「ふむ……。〈深淵の者〉との戦いと被るな」

 

 ミリアが顎に手を当てて考え込んだ。何か思うことがあるのかもしれない。そう言えば、ちゃんとした料理を食べてないのが、そのくらいかも知れない。保存食とか生食ばっかだったな。ははーん、さては温かい物が食べたくなったな。

 

「どういうことだ?」

「奴()は突然西へ向かった。そのタイミングとおそらく同じだろう」

 

 全然違った。

 組織で戦った〈深淵の者〉についてだった。

 

「本体側に影響のあるものが、接触したということか……」

「憶測ではあるがな……」

 

「けっ……。何にしても、行ってみないことには判らねぇんだろ? 早く行こうぜ」

 

 姉御の一声で西の猥褻物へ向かうことになった。

 

 

 

 

 現役達をラボナに置いて、私達は街の西をワンダーフォーゲルしていた。今回は様子見とのことで、ラキ男は置いてきた。やつは……これからの戦いについて来れない。性的な意味で。

 

「着いたぞ」

「うわぁ……」

 

 とか思っていたら到着した。

 

 ビンビンだったはずのネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲は、頭頂部が中折れしており可哀想な感じになっていた。

 

 更に先っぽには、女の上半身が出てきていて、今にも発射されそうだった。痛々しすぎて、こちらのイマジナリーアストラルブレードまで痛くなってくる。

 思わずヒュンとして股を押さえた。

 出てきている女は、プリシラの覚醒体の形をしていた。これは……生命力(尿道結石)のメタファー……? セラフィトかユグドラシルの類か何かですか??

 

「さっき言った事だ。こんなことになってしまった。何と言うか……口では説明が難しくてな……実際に見てもらったわけだ」

 

 ちょっと顔を赤くしたガラテアが、モザイクが掛かっても仕方のない物体を手のひらで示した。

 確かに中折式射精体出現は説明しづらい。それでもガラテアの口から聞きたかったのは、私だけだろうか。

 

「……この中に、クレアが居るというのか……」

 

 なんというか、初めて見る皆はドン引きしていた。

 

「いよいよ大剣で刺すか、移動させるかと考えていたときに、例の件で変型してしまったんだ。……お前達の話も聞きたいが、最早時間もないように思える……。さて、どうする〈幻影〉のミリア」

「……。我々はクレアを救い出す鍵を連れてきた」

 

 雰囲気を出した後に、ミリアがドヤ顔で言った。

 

「ラボナに置いてきたがな」

「……デネヴ、なんか姉ぇさんに冷たくね?」

 

 即座にデネヴに突っ込まれた。デネヴもヘレンに突っ込まれた。ピタゴラスイッチみたいでうける。

 吹っ切れたのはミリアだけではなく、デネヴもだった。ただミリアの考えに従うのではなく、本当の仲間として寄り添おうとしているのだろう。

 

「私も!」

「ふん!」

「ぬぅ『ぬかったわ……!』 ぅごごご」

 

 私も寄り添おうと考えて、ミリアの尻にフェザータッチをしたら後ろ蹴りを食らった。鳩尾に入って超痛い。

 

「こんな時に何やってんだ……おまえ……」

 

 そう言いながら、イライザが背中を撫でてくれた。うるせぇ! 行けると思ったんだよ。

 

「その人間の男に、希望を託すのか。らしくない、まるで奇跡でも信じているようだな」

「くく」

「ぷ」

 

 ガラテアの冷たい物言いに、北のメンバーの全員が吹き出した。前やったやり取りだからだ。

 

「ガラテア。我々は誰ひとり欠けることなく、東での組織との戦いを潜り抜けた。それが奇跡でなくてなんだと言うんだ」

「……」

 

 ガラテアが、虚を突かれた様な面白い顔になった。これはチャンスでは……?

 私は奇蹟は自分で摑むものだという、ミリアの言葉に共感し、以前編み込んだ髪の毛に意識を集中した。

 

「死んでいない。生きてる。取り返す。……以前そう言ったオリヴィアの言葉は、今の我々に必要だ」

「そう言うこった」

 

 腕組みしたデネヴと姉御が、最後にそう付け加えた。言ったっけ?

 

 私はラボナを出立する前、どうしても見たかったガラテアの真の姿を見る為、ある画策を施した。

 ガラテアが持っている紐パンの紐に私の髪の毛を細工し、全てレース生地のやばいやつに入れ替えてやった。

 

 

『今こそ、神よ! 我に力を!』

「!? 待て、ここで何をするつもりだ」

「!?」

 

 ガラテアに私の妖気の高まりを察知された。

 だが行くしかねぇ!

 

「はぁっ!」

「なにを……!」

 

 ガラテアにヒュアっとされる前に、紐パンと妖気を繋いだ私は、例の妖気送りを発動した。

 

 ガラテアの腰元が破裂し、シスター服からエロパンツが落ちた。

 

「……」

「……」

「……」

 

 決まった。

 シスターエロパンツの乱。

 

 決めポーズを取った私は、皆の無言の視線に押されて少し後ずさった。ヤバい、やりすぎた。

 

「あっ……? ありが」

 

 後ろ足が引っ掛かり、後ろ向きに倒れた私を、誰かが優しく支えてくれた。

 視線を向けると、黒いモジャモジャ触手が見えた。その後ろにはネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲。

 

「ちん毛じy!」

 

 触手が絡まり私は空中に運ばれた。1本の棒と2個の球体が突然パカッと割れて、私は中折れしたネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲に喰われた。

 

「オリヴィアァァァ!!」 

――オリヴィア。

 

 最後にイライザの声とどこか懐かしい声が聞こえた。

 

 




主人公が食われるなんて……なんてひでぇ話なんだ。
次回、ギャグ回。
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