やはり原作のクオリティが高いから比べてしまうのだろうか。
場所はゴナル山への復路だった。クレアの脇腹が暖かい。主人公の脇腹にいるとか感無量である。動けないため、小脇に抱えられての移動となった。しかし、現場に戻らないといけない事を考えるとやっぱ辛い。どうしてこうなった。憂鬱だ。
リフル達に遭遇した後、目が覚めるとボロボロのミアに引きずられていた。当然のことだが、引き摺られてるので瓦礫に頭をぶつけ、再度昏睡した。次に目が覚めると、クレアの目の前だったというわけだ。
身体が思うように動かずにぐったりとしていたのだが、突如として右手が動き出してクレアの足を掴んだ。えぇ!? エイリアンハンド
このまま置いていってはくれませんかねぇ? と言うニュアンスの声を掛けたが、出た声はデスメタル調の“連れていけ”だった。誰だ貴様!? おいまて、冗談だろう? 私はもうフカフカベッドで寝たいんだが?
私の意思はいったいどこへ。人はどこから生まれどこへ行きどこへ消えるのか……。突然少女に生えた私はヒトとしてカウントして良いものか……。いーや、ヒトだね! 一人で哲学して遊んでいるとクレアが立ち止まった。
「おい。おまえ、もう動けるか?」
「うん。『サンキューな』」
「……」
もう自分の意思で動けるようだった。いったい何だったんだ……。クレアの小脇も名残惜しかったが、降りることにした。よっこらせっ。少し膝が抜ける感じがするが、もうしばらくしたら走れるだろう。預かってもらっていた大剣を返してもらった。クレアの視線が戦士の印へ注がれていた。恥ずかしくなってきた。いやほんとに。だって“呆”だぜ?
「おまえ。ナンバーはいくつだ?」
「26。なまえはオリヴィア」
クレアが少し驚いた顔をした。私の妖気が小さいせいだろう。なんせ元42番だからね! 君も頑張り給え、はっはっはっ。でも、クレアに高速剣されたら一瞬で挽肉にされそう。逆らわないようにしよ。
「そうか……。私は元No.47 クレアだ」
『知ってます』
「何て言ってるんだ……」
クレアが肩を落としたような声を出した。今の時期は、組織を抜けた感じになっているんだったか。わりと立ち位置がフワッとしてたように思う。気にし始めたら負けだけど。
ってか、リフルのところにまた帰るのか……。自殺願望者かな? でも、ミアが私を連れ帰っているのを認識しているだろうし、クレアは既にシスター・ラテアに捕捉されてるんじゃなかったっけ。つまり、逃げると任務放棄扱いで粛清対象となる。くっ、組織の犬共め! カフェラテみたいな名前しやがって! 詰んでるじゃないか!
とりあえず、隅っこで邪魔にならないようにするしかないか……。それにしても、皆無事だろうか。妖力開放してからの記憶がないのだが。最後に覚えているのはジーンがリフルへ剣を突っ込もうとしたところだ。しかし、わざとジーンを放置していたリフルに当たるとも思えんが。
「何があったかわかる範囲で教えてくれ」
これはあれか、日本語以外でおkみたいな感じか。おっしゃ任せろ!
えーと、北の覚醒者イースレイがなんか企んでて、その対抗で西のリフルが戦力集めるために、戦士を捕まえて覚醒させまくってるんだったっけ。ううーん、と。
「ハゲのダフとチビが来て、隊長を連れて行った。食べるため違う」
あれ微妙に違う? な、なんて言えばいいんだー! この大陸の言語、発音難しくて長く話すの苦手なんだ。普通に舌を噛む。浮かび上がった単語を繋いでいく。途中聞き取れない単語もあったようだが、クレアは辛抱強く聞いてくれた。
「はぁ。あの長髪の戦士が言っていたのと、ほとんど変わらないじゃないか……」
『マジですまん』
クレアは、さらに肩を落とした。
結局何度かチャレンジしたが、うまく伝えられないまま廃墟へたどり着いてしまった。クレアからしたらリフルだ! リフルだ! って伝えても、えっ、だれ? みたいな状態だと思う。さもありなん。
廃墟一帯を見渡すが、やはり広い。リフル達は地下のほうにいるんだっけ? そもそも、この廃墟の町のどこから入るんだ……。
仕方なく、妖気感知に優れているクレアに付いて行った。廃墟の陰から、羽持ちの妖魔に襲われたがクレアが難なく倒してしまった。先輩さすがっス! やきそばパン買ってくるので、先に終わらせといてくれっス!
逃げ出す暇もないまま、ついにダフ棒が壁中に刺さりまくっている廃墟ゾーンにたどり着いてしまった。この建物内は狭すぎて、剣振れないんじゃなかったっけ。踊れない詰んだ。はい、くそー!
何匹かの妖魔を倒したが、クレアに襲い掛かった癖に逃げ出した妖魔が、地面を割って出てきたダフの拳で潰れた。
「な、なんだこの強大な妖気は!」
「ハゲのダフダフのダフ」
落とした指は既につながり、前回の戦闘痕も見られなかった。完全に回復してしまったようだ。はい、くそー。
「んあ? なんだぁおめぇ、おとこか? あで!? おまえしんだはず! なんで生きてる」
どうやらダフの中では、私は死んだことになっていたようだった。事前に飲んでいた、妖気を消す薬で死んだ振り作戦が上手くいっていたようだ。ばれてしまったので、小細工は全てお終いだが。闇討ちでダフを狩れないかと思ったが、原作でNo.3のガラテアが限界ギリギリの妖力開放をして時間稼ぎが精々だったところを考えると、私程度の妖力では素の攻撃自体通らないだろう。前回はカウンターできたから良かったが、今回のこんな狭い通路では、クレアの邪魔になってしまいそうだ。
あれこれ考えて突っ立っている間に、クレアがダフに高速剣を放った。やはり、外皮が異様に硬いせいでほとんど攻撃が通っていなかった。音圧やば。慌てて両耳を塞いだ。
「いだだだだだ……。今のはけっこうきいたぞ。てめぇ……」
「ば、莫迦な……」
全然効いてないことにクレアが驚いていた。まぁ、必殺剣効かなかったらそうなるよね……。打つ手なし! 状況終了! 解散!!
「ゆるさねぇ……。ゆるさねぇぞ、てめぇ!」
「くっ!」
切れたダフが口に矢を装填した。あ、やべ。クレアが硬直している。クレアには、ジーンを助けてもらわないといけない。むやみに負傷する必要はあるまい。
『だらああああ!』
急いでクレアまで突っ込み反転、回し蹴りの要領でクレアの首元を押し、飛んできた巨大な矢の力を前回と同じように奪う。しかし、片足を上げた体勢だったためうまく力を伝達できず、受け流すのが精いっぱいだった。質量に負け、天井まで飛ばされて落ちた。
クレアは無事なようだ。ちょっと咳き込んでるけど。
『くっそ痛てー! 相性わるすぎ』
「がはっ。……オリヴィア!」
一度でも受け流しに失敗すると、ほぼ戦闘不能になるのはクソゲーと言わず何と言おう。いやゲームじゃないけど。質量差がありすぎる。
「げひゃひゃ。前のお返しだ」
ヘイトがこちらを向いてしまった。大剣を支えに起き上がるが、ダフからもう一発矢が放たれた。まだ、受け止める構えができていない。大剣を捨て、横へ飛ぼうとしたときクレアが割り込んだ。ばっかおめぇ、せっかく助けたのに!
「ぐっ!」
『うわーっ!』
やはり止められず、クレアの尻に押され床を滑った。ガンヘッドスライディングのように吹っ飛んだことで、地面と顔が擦れた。ヒップアタックの方がダメージでかいんですけど??
「さーんぼんめー」
「が、ぐがああ」
すさまじい音が響き、クレアの左足が砕けた。あの速度で連打してくるのはやばい。全然対応できない。そうこうしている間に、クレアがダフに捕まってしまった。
「こいつはひん剥いてみようかなー? おとこかなー。おんなかなー」
「困ったなぁ……。こういう場合、私はどうすればいいのだろうな?」
ガシャガシャと支給された
「ぐへ。遊び相手ふえたから、こいつはつぶしちゃおう」
「ぐああああ」
ダフに指先で頭を
「あで?」
「見た目以上に軽いな。もっと飯を食え」
「No.3ガラテアか……」
「おや、私を知っているのか」
ダフは意に反してクレアを放してしまったようで、固まった。クレアを確保したガラテアは三歩程下がった。
これあれか、飯食いまくってる私が抱き上げられたら、おっも。とか言われるんだろうか。よく考えたらNo.34のミアにも引き摺られてなかったか……。あれ、私重すぎ……?
「私の用はこいつなんでな。悪いがこれで失礼するよ」
そう言ったガラテアは、まだ寝転んでいる私の脇を普通に歩いて行った。あれ、私は? スルー?
その時、ダフの口から巨大な矢がガラテアを目掛けて打ち出された。しかし、ガラテアは避ける素振りも見せず矢が
ガラテアはその後もダフの攻撃を全て躱して見せた。躱したというよりダフが勝手に外しているのだが。相手の妖力に干渉して、外部から操作できるんだったっけ。しかし、ダフの攻撃によって退路が崩れてしまった。
「おっと、見くびっていた。一応考える頭が残っていたらしい」
「てめぇ、ばかにしやがって。手足引き千切って
クレアを降ろしたガラテアは、ダフに向き直った。
「それにしてもお前達。よりによって、ろくでもない奴と闘うつもりでいたもんだな」
「りふる」
「なんだ。転がっているチビは知ってたのか」
「どういうことだ? こいつに捕まったんじゃなかったのか?」
「下にいるもう一匹のことだ。お前も妖気読みに長けた戦士なんだろう? 正確な場所と相手の妖気に波長を合わせればわかるはずだ」
今のうちにと、匍匐前進でクレアの隣までたどり着いた。顔面スライディングのせいで出た鼻血を拭った。ガラテア、絶対私を認識してやがったな。覚えてろよ。
しかし、ガラテアにはリフルが居ることは始めから分かってだろうし、一戦当たらないと逃げることもできないことは、ここに入ってきた時点で覚悟していたのだろう。そう考えると、割と仲間想いなのかもしれない。妖力開放したらウンディーネの姉御並みにムキムキになるんだったっけ。不謹慎ながら、ちょっと見るの楽しみなんだが。
考え事をしてる間に、ガラテアが妖力操作を使いダフの装甲が薄い部分から大剣を突き入れ、右腕を手首から落とした。
「先に手足をもぐのは私だったようだ」
「がああ! 手が、おでの手が!」
そんな時、天井を髪を使って高速で這うリフルが見えた。お前瞬間移動してると思ったら、こういう演出だったのかよ。こわっ。ちょっと目が合った気がしたんだけど。
「きた」
「なんだ?」
リフルが後ろに座ったので、注意を促すべく呟いた声をクレアが拾った。あダメだ。この子、全然気づいてない。
ダフが号泣している。こいついっつも泣いてるな。それはそれとして、クレアはよ治せよ。あっ、治癒苦手なんだったっけ。えへへ、私も。全身が痛くてヤバい。
「ばかよねぇ。そんなのだからいつまで経っても、私の男って自慢できないのよねぇ」
「!」
リフルの声に全員が反応した。ダメンズ可愛がりおばさんみたいな発言しやがって。私は気づいてたから……。気づいてても、今なんにもできないんだけど。
「ちっ。思ったより早く出てきたな。〈深淵のもの〉西のリフル」
「なっ!?」
『いや、お前の隣に降りたぞ』
あれ、ガラテアも認識できていない……? 妖力の隠蔽力が半端ないのか。リフルお前絶対忍者だろ。しかし、ホラー感半端なかったな。だって髪だけで移動してるんだぞ、こいつ。こわっ。
「力いっぱい。思い切り打ち込みなさい」
「えっ? さっきからやってるけど、あだらなくて!」
「いーからさっさとやりなさいよ! 次外したら別れるからね」
「うぐっ、ぐそ! おまえのせいだからな!」
リフルは、早々にダフへのアドバイスを送った。意識の間隙を狙う妖力操作って、集中した強い妖力で上書きできるんだったっけ。なんかそんな感じだった。リフルが余裕ぶっこいて説明してる間に、鼻血が止まった。もう一度、拭って立ち上がる。
ダフは泣きながらガラテアに拳を放った。ガラテアは妖力操作で回避しようとしたが、軌道を変更できずに狙いを定められ拳が直撃した。
「うぐっ!」
「まずい! よけろ!」
ダフの拳からパイルバンカーのような技が繰り出され、ダフの追撃を見たクレアが叫んだ。追撃の前に私は、すでに走りだしていた。次はうまく受ける! ダフとガラテアの間に割り込み、両足をしっかりつけて、もう一度力を
「ちっ! こいつまた!」
『よっしゃおらあああ!』
バカの二番煎じだが、これしか受けられる技がない。一発くらいならガラテアも耐えられただろうが、被弾しないに越したことはない。瓦礫の間隙を縫って回転を始めようとしたとき、後ろから黒い帯に巻きつかれた。
『えっ? うああああああ!』
「今いいところなんだから、不気味な貴女は大人しくしててちょうだい。気が向いたら仲間にしてあげるわ」
「オリヴィア!」
「……オリヴィア? そうか、あいつが〈痴呆〉のか」
慣性を受け入れた段階で動きを封じられた為に均衡が崩れ、ダフの足の間をバウンドしながら
◆
リフルは立ち上がって片手を突き出した姿勢を止め、再び座った。
「ごめんなさいね。続けて頂戴。あれはあんまりにも不気味だから、ここには似つかわしくないわ」
「どういうことだ?」
クレアの問いにリフルは
「あら? あはは、知らなかったの。滑稽ね」
「耳を貸すな、47番!」
ダフの攻撃を避けながらガラテアは言った。
「あの子。この間会ったとき、鬱陶しかったから首を刎ねて殺したはずなのよ」
「なん……!?」
「生きているからびっくりしちゃった。相変わらず、組織もとんでもないものを作るものね」
クレアは自分が連れていた幼い戦士が死んだはずだと聞かされて動揺した。
「馬鹿な。首を刎ねられて生きている戦士など……」
「あら? 私の話が信じられない? でも、事実は事実よ。それよりも貴方、足を直さなくていいのかしら。仲間が大変よ?」
「くっ! ガラテア!」
リフルと話しているうちにガラテアが窮地に陥っていた。クレアは瞠目してダフを睨み、妖力開放の上限を解き放った。
多分、今も昔も酒飲みながら書いてるからですね(脳制限プレイ)