梅雨ですが、もうかなり暑くなってきました。
皆様におかれましても、暑さで体調を崩されないよう気を付けてください。
私はホラーも結構好きなんですが、最近素面で作業しようとしたら、より時間が掛かるという怪奇現象に見舞われました(言い訳)
クレア達と別れた後、カティアと共にゴナル山の麓街へ帰ってきた。ミアの様子を見るためだった。最初の戦闘から丸1日ほど経っており、防御型戦士のミアならもう立ち上がれるほどに回復しているだろうとは、旅立つ前のジーンが語った見解だった。え、そんなに早く治るの? 舌噛んだときにできた口内炎が、全然治る気配ないんだけど。ということは、私はやはり攻撃型だったということだな。
宿屋の前に差し掛かった時、黒服ため息おじさんが現れた。そういえば激戦のせいで装備がみんなボロボロだった。このままでは、戦士たちが歩く痴女集団の
『やっほー☆』
「お前たちに緊急の別命が下った。このまま北の街ピエタへ向かえ。複数の覚醒者が確認されている。既に34番については移送中だ」
『死ねやくそが』
おいおいおい。死んだわこいつ。いや、死亡フラグ立ってんの私か。いやいやいや、ピエタは無理だろ。ってか私、結構従順だったと思うんだが!? くっ、一体どこで道を間違えたんだ……。くそっ! リフルと闘わずに逃げればよかった。いや、逃げてもやっぱ斬られるじゃねーか!
両手を地面について絶望した。くそ! 吾輩、詰んでおられる!!
「はぁ……。オリヴィアよ、何をしている。早く立て」
「あの、私達は〈深淵のもの〉と会敵して……」
「既にナンバー3から報告は受けている。以後は、お前たちの関知するところではない」
カティアが食い下がろうとしたが取り付く島もなく、襤褸装備のまま馬車へ押し込まれた。いやせめて着替えさせてよ。マジで痴女になっちゃうじゃん。二人ともビーム食らった直後の悟空みたいになってんだけど(鉄壁)
『ちくしょー! バカにしやがってー!』
「ちょっとオリヴィア。一般人がびっくりしてるから叫ばないで」
味方はどこにもいなかった。世知辛くない?
場所は移って北国アルフォンス地方に入る前の関所だった。なお、戦士たちは顔パスだ。どことも知れない国の兵士たちが、関わりたくないオーラをビンビンだしていた。あまり気にしていなかったが、大陸というだけあって、小さな国が乱立していた。もっとも、妖魔のせいですぐに崩壊するが。いちいち覚えてられん。
ひとつ前の村からここまでは、駄馬に引きずられた馬車に乗っていた。急ぎと言うことで、馬を乗り継ぎまくっている。しかし、今回の馬は鈍すぎる。よだれ垂らしまくってるし……。
既にゴナル山を出て10日程が経っていた。大陸の西から北へといっても大分距離がある。さらに、道中に謎の移動速度で先回りした黒服からの命令があり、大陸の東側を一部経由してスタフの息の掛かった街を通過していた。ピエタへの物資輸送のためだ。黒服がやれよ、さぼるな。
そこから北に行くに連れ、貧乏農家が多くなってきた印象だ。この駄馬もまともな馬が買えなかった為、妥協して買った。歩いたほうが早くないかと思う。それにしても、この物資何人分なのよこれ。べらぼうに数が多い。まぁ、兵糧摘まみ食いできるからいいんだけどさ。
格好は既に、襤褸を捨てピカピカの支給品に身を包んでいる。毎回思うけど錆びないし、謎金属よねこれ。
雪が降りだしていた。いよいよ北国感出てきたな。心なしか楽しみな私がいる。今生では初めての積雪を見るかもしれない。それが、死亡フラグがびんびんに立っているピエタに向かう途中じゃなかったら良かったのだが。
「ゆき」
「降ってきたわね」
空を見上げて呟くと、カティアが髪を耳に掛けながらその呟きを拾った。カティアそれ癖よね。あんまやってると、そこだけ擦れて刈り上げみたいになるぞ。
戦士になってから寒さも感じにくくなって情緒感も減っているが、何となく郷愁に駆られた。あれ、私こっち出身だったっけ?
この関所町は、大陸東側から北の始まりの町ピエタに入る前にある、最後の交通の要所だった。町の中心には時間を報せるためだろう、大きな鐘が塔に釣ってあった。大陸各所と交流があるのか、市場には様々なものが置いてあった。まぁ、のんびり観光する暇がないんだけど。
道中の交渉事は、カティアが専ら請け負ってくれた。私はほとんど座っているだけだった。
「……なんですって?」
「だから、雪の中じゃそんなに運べねぇよ」
小さな馬屋のおっさんが言うには、この時期ピエタまでの道は、場所によっては腰高まで積もっていると言うことだった。おいおい、黒服ちゃんよ、これ無理なんじゃない? 原作ではどうやって運んだんだ……。んー、あそうか
くいくいとカティアのマントを引っ張って言った。車輪に橇着けるしかあるめぇよ。組織のお金一杯あるし。ぐへへ、なんでも食えるぜ。
「そり」
「えっ?」
「へぇ。嬢ちゃんの方が詳しいじゃないか」
『まぁねぇ』
「……なんだこいつ」
『おい、誉めるのか貶すのかどっちかにしろ』
このおっさん、私達がなんにも知らないと思って情報を出し渋って、お金巻き上げようとしてやがったな。がめついと言っていいのか、逞しいと言っていいのか……。戦士相手によくやるよ、まったく商売上手め。あ、美味しい宿教えて。
結局お金を余分に払って、取り付け出来る
こんな量の積載を出来るやつはおそらく軍用。小さい店じゃ滅多に売れないだろうなぁ。
紹介された宿で一晩明かすことになった。ずっと移動したままだったから、ストレスが溜まっていた。食堂に行って食事を頼んだ。アルフォンス地方から伝わる、スープ物が名物と言うことでそれを注文した。ドロドロの鹿スープだった。油マシマシで激うま。
当然のごとく10人前ほど食べたが、カティアがびびっていた。おい、偶にだけれど失礼なやつだな。
フカフカのベッドに入った深夜、ふと目が覚めた。カティアも目が覚めたようだった。ベッドに大剣をぶっ刺す裏技を教えたら喜んで寝てたんだが……、かわいそうに。時間は深夜付近だろうか。目がしょぼしょぼする。きっと、数字の3の様な目になっているだろう。
ビリビリとなんか震えているように感じる。妖気……ではない? 似てる感じはする。
「なんなの、これは……?」
ベッドから大剣を取り出したカティアが、冷や汗を垂らした。ちなみに私は、大剣を胸に抱いて寝るタイプだ。なぜだか、ケガをしたことは無い。
ちょうど、目があったカティアの方を見て首を振った。わかるわけないだろ! 攻撃型だぞ私は! 私は自身を指差した。
「攻撃型」
「いえ。攻撃型とか今まったく関係ないわよ……」
しばらく一緒に旅をしていたせいか、カティアとの意思疏通が比較的容易になっていた。適当に単語でしゃべっても、なんでも拾ってくれる。……だよね?
現在、二階建て宿の二階角部屋にいる。部屋には窓はなく、簡易な木の戸が窓枠についていた。押し込んで開くと冷たい夜風が入ってきた。寝起きでしょぼしょぼする目で夜の町を覗き込んだ。
「あっち」
「……確か鐘塔がある方向ね」
何となく嫌な予感がする。鎧着て行った方がいいな。身を乗り出した窓から部屋へ戻り、いそいそと鎧を着ていると、靴と一体になった脛当だけ先に履いたカティアが言った。
「オリヴィア。先にいくわ」
『え? ちょ、まっ』
小さな窓からすぐに飛び出していった。止める間はなかった。はぇ……ノー装備で行きよった。ゆうた系オワタ式モンハンじゃないんだからさ。フッ、勇気と蛮勇は別物だぜ。いやいやいや、遊んでないですぐ追いかけないと。
カティアは、たぶん確認だけのつもりで行ったのだろう。行動が、台風の日にちょっと田んぼ見てくる! で川に流されるおじいちゃんのそれだ。
カティアを追いかけて、夜の町を駆けた。二階建ての建物が多く、屋根上を跳び跳ねても高低差は少ない。跳ぶ感覚もわりと均等だった。
豆粒サイズのカティアの影が、鐘のある塔へ登ったのが見えた。下から見えなかったのだろう。それにしても、はっや。あんなに速かったっけ? あ、装備してないからか。
私の位置は、塔まで結構遠かった。漸く近づいたとき、鐘塔が大きく鳴った。さっきから感じるビリビリ感が、音に合わせて異様に大きくなった。
走りながら見ていると、重たい振動音が響き塔の一角が壊れた。立ち上った煙からカティアが飛び出して、頭から墜落しようとしていた。ほらぁ、絶対なんかいるって。
走ったそのままの勢いで、カティアをキャッチして着陸した。カティアは右足を負傷していた。傷跡は妖魔の指っぽい。
「くっ、鐘が妖魔の塊だった」
「カティア……。『妖魔が鐘な訳ないじゃん。馬鹿な、ブッ!』」
呆れて声をかけると、おもむろに立ち上がったカティアに顔面を蹴られてひっくり返った。痛ったー! 怒らないでよ。でも、やっぱ伝わってたのね。わたしたちズッ友だょ。
その時、風切り音が聞こえ、なにかを回避できたことがわかった。まだ、寝起きでしょぼしょぼしていた目が漸く覚めた。頭の傍に、妖魔の身体の一部のような物体が地面に刺さっていた。こわ。そのトゲは、厄介なことに体皮が黒く闇に紛れて見えにくかった。忍者かよ。
「オリヴィア! ほとんど妖気を感じないわ。気を付けて!」
『まじかよ』
飛んできた方向を推定して見上げると、塔の上がうねうねしていた。うわ、気持ち悪っ。覚醒者か?
塔の上部を触手で掴んだ推定覚醒者が、一気に降りてきた。
それは、苦悶に満ちた妖魔の顔が張り付けてあった。人と人を無理矢理に鐘の形に押し込めたようになっており、無数の妖魔達が潰れ絡み合いながらお互いを貪っていた。
『グロすぎだろ。えっ、なにこれ』
「くっ! 降りてきたか!」
えっ。こんなの原作にいなかった。きっしょ。
◆
関所町の比較的高い建物の一室で元組織のNo.10、バキアは血でできたワインをグラスに注いだ。かつて、組織の意向に沿わない戦士を狩るための戦士として暗躍したが、男の戦士の例に漏れず覚醒した戦士だった。本来、食欲や性欲が極端に増す覚醒者であったが、生来の性のせいか、少々ゆがんだ方向にその情熱が発露されているのだった。
「ん-。大陸南の地の28年物……まだ酸っぱいわね」
どこか、女々しい動きをする筋肉隆々の男であった。
組織に離反し、抑圧されていたものがふっきれたのか、色々ねじ曲がった結果、芸術分野で欲望を発露することに落ち着いていた。また、もともと対戦士戦闘のための妖力操作能力に秀で、覚醒者であっても殆ど妖気を漏らさないことが可能だった。正確には、誤認識させ、感じにくいようにさせるのだが。そして、長命であることを活かし、商売でこの関所町の商業長に近い立場に座っていた。
「ぐふふ。2人入ってきたわね」
そんなバキアの町へ、2人の戦士が通りがかった。一人は綺麗な長い髪の戦士で、もう一人は戦士の中でも珍しく、癖毛の銀髪を肩口で切り揃えた幼い戦士だった。
「おや? 銀髪の戦士なんて珍しい……」
バキアは是非ともコレクションに加えたくなった。しかし、2人の戦士が引き連れている馬車は、普段スタンドプレイが多い戦士にしては少々過剰な荷をしていた。
(アルフォンスがきな臭いと言っていたけど。イースレイは本気ね)
既に情報通のバキアの下へも情報は入っていた。おそらく、しばらくすると大陸を巻き込んだ覚醒者と組織の戦争に突入するだろう。大方、足止め用の捨て駒たちの装備であろう。
(捨て駒にするにはもったいないけれど。態々、ここで組織に見つかっても面白くないわね。そうだ!)
これまで、リスクを犯さずにやりたい放題やってきたバキアは、バレずに戦士を捕まえる方法を考えた。
「鐘を使いましょう。ええ、きっとうまくいくわ」
別段、捕まえ損ねても良いのだ。バレずにできるというだけで、その手段を選ぶことにした。
鐘とはこの町の真ん中に佇む塔にあるもので、バキアお手製のものであった。組織が放った妖魔や弱い戦士を捕らえ、妖力操作を用いて鐘の形・硬度に押し込めた彼の傑作であった。
並みの覚醒者を凌駕する力を持っており、さらにはバキアの能力の一部である妖力同調を用いた力の隠蔽ができる存在であった。感じ取れる妖気を考える限り、それで十分に思えた。
「ふふふ。会うのが楽しみね」
一室の床には、無駄にクネクネする影が映し出されていた。
お祓いしたほうがよさそうですね(清め酒)