しばらく沈黙してアスランは、スーツの内ポケットに手を入れた
メイリン(また……仕事の連絡かな…………)
こういうこともよくあることだった
二人で居てもアスランに連絡が入り、突然一人にされる
映画館、遊園地、買い物中、もちろんメイリンもオーブ軍に所属しているわけだから、二人で急いで軍へ向かうこともあったが、メイリンとアスランでは立場も職務内容も違う
アスランだけが緊急で、軍に行かなければならないことはよくあった
アスラン「すまない、これしか用意出来なかった」
アスランが内ポケットから取り出したのは、携帯端末ではなく、小さなジュエリーボックスだった
アスランが蓋を開けると、中には指輪が入っていた
アスラン「こんな俺の隣で、ずっと笑顔で居てくれるのは君しかいない、俺なんかでは不服かもしれないが…………俺と結婚してくれないか」
花束も用意していない、プレゼントも用意しているように見えない、あげく仕事の連絡が来た
そう思っていたメイリンは、目を丸くして驚いた
メイリン「!?………………!!」
メイリンは指輪を受け取らず、アスランに背を向けた
アスラン「……そうか、ダメだな、やはり俺は」
しばらく黙っていたメイリンだったが、アスランに背を向けたまま、波音にかき消されそう小さな声で言った
メイリン「…………一つ…………条件があります」
アスラン「?……条件?」
メイリン「はい…………もう、私に謝らないでください」
アスラン「……それは…………もう謝るようなことをするなと言うことか?…………」
メイリン「違います!……家族なんだったら……謝る必要なんてないです…………」
アスラン「!!……そうか、そうだな……わかった、すまない」
メイリン「ほら!!そうやってすぐに謝る!」
アスラン「!!あっああ、すま……わかった」
メイリン「そもそもアスランさんが謝る必要なんてずっとないんですよ!!…………二人でザフトを抜けた時も!私が着いて行ったんです!……今日だって!…………アスランさん遅れてくるって思ってましたもん!!……なのに!いつも!いつも!すまない!すまない!って!……私はちゃんとわかっててアスランさんの側に居たんですよ!?ずっと!」
背を向けたままのメイリンの声は震えていた、後ろから見えるその小さな肩も…………小さく……小さく震えていた……
アスランは、その小さな肩を後ろから
そっと抱き寄せた
アスラン「ああ…………ありがとう……」
メイリン「……ホン……トにっ……そうっ……なんですっ……から……」
涙を流すメイリンを、アスランは強く抱き締めた
メイリン「良かった…………ちゃんと……誕生日プレゼント……あったんだ……」
アスラン「ありがとう」
そう言ってアスランはメイリンの手に指輪をはめた
メイリン「アスランさんが謝らない限り、私はずっとアスランさんを笑顔で迎えます」
涙でぐちゃぐちゃになったままで、メイリンは満面の笑顔をアスランに向けた
海岸沿いの潮風なのか
アスランの唇は、薄い塩味に濡れていた
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