「うっ、今日も暑ちぃな…」
…あれから二年位経ったのだろうか、しみじみと似合わない事を言いながらも日課である方稽古に励む前に井戸まで水を汲みに行っていた。
たまたま野盗共が住み着いていたボロい山小屋だったが"お話"をしたら快く譲ってくれたのであれから二年程この場所で過ごしていた。
水が無限にあり、食料に関しても何ら困る事がなく、前の世界とは比べものにならない位贅沢はできて無いが平和な毎日を送っていた。
…しかし、俺には合わないな。
あの腐り切った荒野の世界、俺はその世界で残虐非道の毎日を繰り広げていた、ケンシロウに悪名を着せるために関係のない者まで殺してきたのだが…
「…まあいい」
考えるのをやめて井戸まで再び向かい始めた。
「ん?」
井戸まで着くと人の気配を感じ振り向いてみると、一人の男が此方に向かって来るのがよくわかる。
…こんな山の奥に向かって来るのは、野盗共か物好きな奴、そしてもう一人
「…またてめーか……ワイスマン」
度々仲間にならないか?と勧誘に来るこの胡散臭い男位なものだ。
「フフフ…そう言わないでくれないかジャギよ」
癖なのか、眼鏡を指で上げながら胡散臭そうに話しかけてくる
「…何の用だ?」
「なに落ち着きたまえ、今日は土産がある」
何処から出したのか知らないが、手にはボトルに入ったある酒が握られていた。
「…いいだろう」
…………
小屋に着きジャギはグラスを用意して、ワイスマンが持ってきた酒を注いだ、…中身はダークラムか?
注ぎ終わり、ジャギはそれを一気に飲み干した。
その様子を見てワイスマンは胡散臭い顔から、驚いたような顔つきに変わっていた。
「驚いた、…まずは毒味をしろとでも君なら言いそうだが」
再び顔つきには元に戻り、にやけながらワイスマンもグラスに手をつけた。
「…毒味もなにも、てめぇは少なくとも俺に利用価値があると考えてやがる、それを殺すなんて莫迦な真似はしねぇ、…それだけだ」
「ふむ、なるほど…では殺さないまでも睡眠薬だとかはどうかね…」
「…それもねぇな、拉致るならもっと効率が良く大人数で来るべきだが
、周りに誰一人として気配を感じられねぇ、…少なくとも1人で来てる筈だ、ならその可能性はねぇ、それだけだ」
再び空になったグラスにジャギは酒を注いだ。
「クク…なるほど」
「で、何の用だ?」
十中八九間違いないだろうが、
「ジャギよ、私たちの仲間にならないか?」
…案の定それか。
「…くどいようだが、俺は誰の指図も受けるつもりはねぇ、帰りな」
…俺も甘くなったものだ、以前ならば殺していた筈だが…
「ふむ、…ではジャギ、君は何を求のかね?」
「…求?」
「金か?地位か?」
金 地位だと…
「…一言いってやる、そんなもんは犬にでも食わせてやれ」
その答えを聞き、ワイスマンの表情は更に怪しくなり不気味さを物語るかのように口元を緩めて笑始めた。
「ククク、ならば……力、何者にも屈さない強靭な力、言わば《超人》!…いかがかね?」
「……………」
狂気すら孕ませている言葉にジャギですら言葉を失ってしまった。
超人…その一言は胡散臭いを通り越してもはや呆れるだろうだが、…間違いなく嘘は言っていない
「何故そこまで俺にこだわる?」
いつの間にかに飲み干したグラスに再び注ぎながら、それを一気に飲み干し、狂気に…禍々しく理由を述べた。
「私は見てみたいのだよ、圧倒的な力、超人を!…力があり、君のような内に秘める狂気の持ち主を、ずっと探していた、…見てみたい、ジャギ 君は私の理想像そのものだ、故に君にとにかく拘った、…納得してくれたかね…」
……こんな提案に乗るなんざ正気の沙汰じゃありえねぇな、何よりもその顔が証明してらぁ、…だが面白い!
「…いいだろう、てめぇのその馬鹿げた提案に乗って木偶になってやろう!…だが、勘違いするな、俺は俺の意思で動く、何でも思い道理にとは思うなよ」
「ふむ構わない、それにしても面白くなりそうだ」
今一度狂気を孕んだ笑い声は小屋全体に響き渡り、ワイスマンの不気味さを増幅させていた。
「おい、それでこれから旗揚げする組織なんだ、…名前は?」
その瞬間、全ての歯車が再び狂いだし、世界は混沌へと向かい始めた
「身喰らう蛇《ウロボロス》だ、ようこそ…ジャギ」
…だあ終わった!
すいません、テスト期間で更新が遅れました
予定ではあと1話かもしくは2話でFC本編に突入できそうです!
…ここまで長くなるとは思わなかったな…