プライベートでそれどころではなくなりまして一ヶ月程空けてしまいました
✳︎主に就職活動で遅くなりました
本当にすみません
ブライト家には一つの家訓があった
家訓というか暗黙の了解ではあるが、家族が全員揃う日は全員で食卓を囲むという一つのルールみたいなものが存在していた。
以前迄レイはリベール中を旅してなおかつ一年前までは王都で生活し、ロレントにいる日など数えるほどしかなかった。
更には父カシウス・ブライトもリベールを股に掛ける遊撃士だ、ロレントに毎日いるわけでは無い、それこそ一ヶ月開けるまで…
故に家族が全員揃うなどという日はある時は続いてあるが、ない時も続いてあるような状態であった。
夜、家族全員で食卓を囲む…平凡な事かも知れないが、幸せな事である。
いや平凡だからこそ、その有り難みを一日一日を大切にしなければいけない…
◇◆◇◆
翌朝、カシウスの見送りにはブライト一家の全員とシェラザードが見送りに来ていた。
「さて…………そろそろ時間だ。
エステル、あまり無茶をしてヨシュアやレイ達の手を焼かせるんじゃないぞ。」
「もう、耳タコだってば〜
父さんも無理しちゃだめよ?もう若く無いんだらね」
「フン、まだまだ若いもんにはまけられんさ!…なあ"レイ"」
「……そうだな」
(まさかまだ負けたことを気にしているのか?)
やたらとレイの部分が強調されていたが…気のせいだろう。
「シェラザード、お前にも急な仕事を押し付けて済まんな」
「いえ、気にしないで下さい。先生の代わりが務まるかどうか心配ですが」
「謙遜するな銀閃の…レイ、レナ、二人を頼むぞ」
「…あぁ」
「はい!あなたも気をつけて下さいね」
和やかに会話をしているとアナウンスが流れてきた。
ピンポーン
『王都行き定期飛行船、《リンデ号》まもなく離陸します。ご利用の方はお急ぎください。』
「おっといかんいかん…そうだ」
親父が急に真面目な顔つきに変わりレイの耳元により、レイ以外に聞こえない位まで声を落とし、話しかけてきた。
「…レイ、もし私もしくはリベールに何かしらの事があったならば私の机の二段目を開け………」
「……………分かった」
ただレイは静かに頷いた。
カシウスは一つ頷き、元の表情に戻り飛行船に移動した。
「父さん、行ってらっしゃい。こっちの事は心配いらないから」
「どこかに行くか知らないけどお土産期待してるからね!ちょっと洒落た小物とか♡」
「こらこら。遊びに行くんじゃないぞ。…まあ財布に余裕があったら考えてやらんこともないがな…それでは2人とも元気でな、レナ シェラザード レイ、頼んだぞ」
やがて飛行船のエンジンが掛かったようで、徐々に空中へと上昇していきやがて雲の彼方へと見えなくなっていった。
「そう言えばレイ兄?父さんに何て言われたの?」
…さて、どうしたものか?
「ん、なに……」
エステルにだけ聞こえるように、耳元で囁いた。
「親父が隠している秘蔵のブランデー《スタインローゼ》を飲んでもいいとだ…母さんやシェラに内緒でな」
「スタインローゼですって!!」
シェラがいきなり声を張り上げてレイの目の前まで接近してきた。
…聞こえてたのか
「レイ!何年物なのよ!?」
「………確か20年物だ…」
「20年!?……ふふふ、レイ勿論一人では飲まないわよね……」
済まんな親父……
レイは唯頷く事しか出来なかった。
あれはもう、捕食者の目であったと後日語った。
「あぁ、平和だな……」
その時はまだ予想もしていなかっただろう、食卓を囲めるのが当分先になることを。
◇◆◇◆
翌日、エステル ヨシュア シェラが真っ青な顔色に変わり果て依頼から家に帰ってきての、エステルの一言で全てが狂い始めてしまった。
「と…父さんが、父さんの乗っていた飛行船が行方不明に……」