ウマが合うからいつも一緒   作:あとん

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タマモクロス早く実装してくれ! そんな思いから書き上げました。

見切り発車なので、続きは未定です


タマモクロスとオグリキャップ

「チーム・アンタレスって知ってるかい? 昔、学園で粋に暴れまわったっていうぜ? 今もバ場は荒れ放題。ぼやぼやしてると後ろからバッサリだ。どっちもどっちも! どっちもどっちも! さあ、君もこの」

 

「アホか! そんな誘い文句あるかい!」

 俺は台詞を最後まで言いきる前に、目の前の少女に思いっきり頭を叩かれた。

 ズキズキ痛む後頭部を両手で押さえながら、俺は両目を吊り上げながら自身を見下ろす小さな少女をまじまじと見つめた。

 

 可愛らしい少女だった。

 美しい芦毛の髪を腰まで伸ばし、透き通るような白い肌と海のように綺麗な瞳。

 俺の腰位までしか身長が無いにも拘わらず、食って掛かってくる負けん気の強さ。

 彼女の名は――

 

「ひどいじゃないか、タマ」

 

 タマモクロス。通称タマ。俺が担当しているウマ娘の一人で、同じく俺が率いるチーム・アンタレスのメンバーだ。

「ヒドイも何も、完全にふざけとるやろ。そんな台詞で新入生がウチらのチームに入るわけないわ!」

 

「おかしいな……マルゼンスキーは絶賛してたんだが……」

 

「はあ……何度も言うけど、あの人のセンス信じてたら火傷するで」

 

 嘆息してタマは言った。

 現在、俺とタマはトレセン学園の校庭で新入生相手への勧誘活動を行っている。

 

 我がチーム、アンタレスに所属するウマ娘はタマを入れて4人。あと1人、入団して5人にしなければ、学園からチームとして認めて貰えず解散となってしまう。それだけは断固として避けたい。

 かつてトレセン学園の中で名を轟かせたチーム・アンタレスをここで終わらせるわけにはいかない。そのためにここで俺とタマは必死で新入生たちを勧誘していたのであるが……

 

「見事なまでに誰も入ろうとしないな」

 

「まあ、普通の娘はもっとしっかりしたチームにいくやろ」

 

 タマの言う通りだった。

何せ競争相手は、強豪揃いでしっかりした練習設備を持つトレセン学園指折りの名門チーム達。片や俺たちのチームは歴史は浅く、充分な設備など無い弱小チーム。誰だって強豪チームに入るに決まっている。

 

「……そろそろオグリのダンスレッスンが終わる時間だな」

俺は現実から眼を背けるように俺は腕時計を見て言った。タマの顔が一層、渋みを増す。

 我がチームのエース・オグリキャップは、去年この学園に転入してきたウマ娘で、転入前に地方のレースで勝ちまくっていた強豪である。その活躍がトレセン学園の理事の耳に入って推薦入学してきたという異色の経歴を持つウマ娘である。そんな彼女だが、少し問題……いや、変わった特徴がある。普段は真面目で優等生なオグリのたった一つの難点。それは、

 

「なにぼやぼやしとんねん! はよ行かんと、また空腹でぶっ倒れるで! 」

 

 オグリはフードファイターもびっくりの健啖家なのだ。

 

 チーム・アンタレスのホームであるプレハブ小屋は学園の隅の隅、裏の一番奥にある。そこまでタマと走り、たどり着いた俺達が見たものは。

 

「……トレーナー……タマ……」

 

 死にそうな顔で机に突っ伏すオグリキャップの姿だった。

 

「だ、大丈夫か?」

 

「すまない……ダンスのトレーニングで動きすぎたようだ」

 

 弱々しい声と同時にオグリのお腹がキュルルと鳴った。

 

「購買に行かなかったのか?」

 

「いや……トレーナーの作るご飯が食べたかったんだ……」

 

 オグリは妙に俺の手料理を気に入っている。というかこのチームに入るきっかけになったのが、俺の料理だったのだが……今はその時のことを思い出している余裕はないな。

 

「タマ、ホットプレートの準備だ! その後、野菜を切ってくれ!」

 

「まかしとき! トレーナーは?」

 

「俺は鶏肉を切る」

 

 冷蔵庫から鶏肉、キャベツ、人参、もやしを出して並べていく。それを俺とタマが切り分けていき、熱くなった鉄板の上に乗せるのだ。まず鶏肉。塩コショウで軽く味付けして炒めてから、そのあと野菜・もやしの順に入れていき、それらがしんなりしてきたら取り出して一旦、別のところに避難させる。その後、麺と少量の水を鉄板に入れて火が満遍なく通った所で、再び野菜と鶏肉を入れて炒めていく。そして最後に伝家の宝刀、オタ○クソースで炒め合わせて出来上がりだ。漂いだしたソースの香ばしい匂いに、オグリが顔を上げる。

俺はそんな彼女の目の前に皿を置いて、山盛りの焼きそばを入れていく。本当はお好み焼きを作りたかったのだが、タマと広島か大阪かで論争になるのでやめにした。俺とタマが唯一、譲れない戦いがお好み焼き論争なのだ。

 

「オグリ! 出来たぞ! 大盛り焼きそばだ!」

 

「あ……ああ……」

 

オグリは体を震わせながら、両手を出来立ての焼きそばへ伸ばす。が、途中で何を思ったのか手を止めて、再び突っ伏した。

 

「ど、どうしたオグリ!?」

 

 俺が尋ねると、オグリは弱々しい声で答えた。

 

「……だ、ダメだ。体が動かない……」

 

「ま、まじかよ……」

 

「トレーナー……頼みがあるのだが」

 

 オグリは机に突っ伏したまま続ける。

 

「う、動けそうにないから、た……食べさせてくれないか……」

 

相当辛いのか、耳まで真っ赤にしてそう言うオグリ。これは相当疲れているのだろう。こんな弱小チームで毎日頑張ってくれているのだ。俺はトレーナーとして、彼女を支えてあげなければ。

 

「よしわかった。ゆっくり顔を上げろ」

 

 俺がそう言うと、オグリはおずおずといった感じで顔を上げた。

 その上目遣いの顔に思わず、ドキリとしてしまう。タマと同じ芦毛の白髪に宝石のような瞳。スッと整った鼻筋に桜色の唇が美しいクールビューティー。思わず見とれてしまうような、上品な美しさ。それがオグリキャップだった。

 

「く、口を開けてくれ」

 

 照れ臭さを隠すべく、俺は出来るだけオグリの方を見ないようにして箸を取る。

 

「……ふ、ふーふーも……してほしい。た、頼めるだろうか」

 

 恥ずかしいのか、ほんのりと頬を染めてオグリは言った。どうやら相当、空腹で参っているらしい。

 

「わかったわかった。ほれ」

 

 熱々の麺に軽く息を吹き掛けてから、彼女の口元に運んでいく。

 

「はい、あーん」

 

「あ、あーん」

 

 体が動けないという事情とは言え、やはり恥ずかしいのかオグリは頬を紅く染めながらゆっくりと咀嚼していく。

 もぐもぐ、ごっくん。

 オグリは一口で焼きそばを飲み込むと、ぱぁっと瞳を輝かせた。

 

「やっぱり、トレーナーの作るご飯は美味しいな。もっとくれないか」

 

「あたぼうよ」

 

 俺はどんどんオグリの口へ焼きそばを放り込んでいく。その気分はさながら雛鳥にご飯を与える親鳥のようだ。

 

「うおっほん!  げほげほ・・・・・・あぁ~ウチも疲れてしもうたなぁ~勧誘がんばったからな~食べさせて欲しいな~誰かに食べさせて欲しいなぁ~」

 

 するとタマがこれ見よがしにそんなことを言ってきた。しかも何かこちらをチラチラ見てくるのだ。

 

「ほれ、そこに皿があるぞ。好きなだけ食べてくれぐぼっ!?」

 

「このアホっ! 唐変木っ! オグリばっかり贔屓しよってからに! ウチだってウマ娘なんやぞ!」

 

 タマに思いっきり殴られて、俺は吹っ飛んでしまう。小柄だがウマ娘だけあって力は強い。痛みにのたうち回っている俺を見下ろしながら、タマは小さい体を大きく震わせて怒りを表現していた。

 

「タマ、違うぞ。俺はオグリを贔屓しているんじゃない。俺は担当するウマ娘は皆、平等に接する主義だ。皆、大事な俺の教え子だからな。特にタマ、お前は潰れかけたアンタレスに入ってくれて、一緒に支えてくれた大事なウマ娘だ」

 

「そ、そう? えへへ、照れるなぁ」

 

「ああ、だから俺にとってお前は仲間であり家族。何の遠慮もいらない関係なんだぶふぉっ!?」

 

「なんやなんや! ウチは妹か娘ちゅうわけか! うがーっ!」

 

 何か知らないが激怒したタマにポカポカ殴られている俺を尻目に、いつの間にか復活したオグリは焼きそばを頬張っている。

 ある意味、このチームアンタレスの日常であった。

 

 そんな時、俺の胸ポケットに入れていた携帯が激しく鳴った。

 俺もタマもオグリもその音にピタリと動きを止めた。俺は無言で携帯を取り出す。着信元には『駿川たづな』と表示されている。

 

「う・・・・・・」

 

 俺は恐る恐る、携帯を取った。そして暫く聞いて電源を切る。

 

「ど、どうやった?」

 

 おっかなびっくりで尋ねてくるタマに俺は顔面蒼白で答えた。

 

「お呼び出しだ。理事長室に行ってくる・・・・・・」

 

 凄く業務的な感じで理事長室まで来て下さい、と言われたのだ。

 

「だ、大丈夫かいな、トレーナー」

 

「ああ・・・・・・行ってくる。タマとオグリは先に練習をしといてくれ・・・・・・」

 

 とうとう最終通告なのか・・・・・・俺はタマとオグリに見送られながら、フラフラと外へ向かうのだった。

 

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・

 

「・・・・・・大丈夫かな、トレーナーは」

 

「うーん、正直いままで色々見逃してもらったからなぁ・・・・・・そろそろ不味いかもなぁ」

 

 タマモクロスはパンパンと服を叩いて埃を落とすと、席について焼きそばを啜り始めた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 暫し沈黙。

 タマモクロスとオグリキャップは焼きそばを口に入れながら、お互いに視線を合わせた。

 

(オグリはええなぁ・・・・・・ウチもオグリみたいにトレーナーから女の子扱いされてみたい・・・・・・)

 

(タマが羨ましいな。私もトレーナーとあんな風に気兼ねなく話したい・・・・・・)

 

「・・・・・・・・・・・・考えてもしかたない。さっさと食って練習しよか」

 

「・・・・・・・・・・・・ああ、そうだな」

 

 二人は頷いて焼きそばを一気に平らげていく。

 あの人なら何とかなるだろう。なら自分たちは彼は信じて待つだけだ。

 そう思い、二人のウマ娘は焼きそばをかき込むのだった。

 

 これは弱小チームで奮闘するトレーナーと、そんな彼に好意を抱くウマ娘の物語である。

今後、展開について

  • 基本的にコメディで、時々シリアス
  • 基本的にシリアスで、時々コメディ
  • シリアスは無い方がいい
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