アンケートご協力ありがとうございます!
投票の結果『基本的にコメディで、時々シリアス』が一番投票数が多かったので、基本はこのスタイルで行かせて頂きます。ですが、シリアスがない方がいいという票も多かったので、たまにあるレース以外は基本コメディになる予定です。ハードな展開も無い予定・・・・・・
ちなみに今回はネタ回です。
アンタレス復活から数日後。
あのチームレースの直後はチームや各個人に様々な記者や、引き抜き目的のトレーナーがひっきりなしにやってきて落ち着かなかったがようやくそれも収まってきた。そんな頃だった。
「久々! よく来てくれたな、アンタレスのトレーナー! 先日のチームレースは見事だったぞ」
俺は秋川理事長に呼び出され、理事長室へと足を踏み入れていた。
タマモクロスと同じ位小さな身長の彼女は口では歓迎してくれているようだが、表情は険しく苦々しかった。
そしてそれは横に控えている秘書のたづなさんも同じである。
「はい。ありがとうございます。これも全て理事長とたづなさんにチームの存続を認めて貰えていたらかです。本当にありがとうございます」
「うむ! 私もたづなもキミの才能を評価していたから鼻が高いぞ! まあそれはそれとして・・・・・・」
理事長とたづなさんは零落したアンタレスの存続をずっと気にかけてくれた恩人だ。
二人が俺を何かと庇ってくれなかったら、きっと今の俺たちは無い。
一生をかけて恩を返さなければいけない相手。なのだが・・・・・・今日の二人は何か様子がおかしかった。
どこか不機嫌で、なのに気まずそう。そんな不思議な感じだった。
「まずはコレを見て欲しい。今日発売されたという雑誌だ」
そう言って理事長が差しだしたのは、いかにも三流と言った週刊誌だった。
「な、何ですかコレは」
さすがの俺も困惑し、理事長に聞き返す。だが理事長はまずは見ろというだけだった。
訝しみながらも俺はパラパラとページを捲っていく。内容は表紙から想像できるような低俗の内容で、男性客がメインなのか過激なエロ記事も多かった。何でこんなモノを・・・・・・と思っていた時だった。
《特集! 期待のエロウマ娘! 走ってるだけで興奮できるエロ娘はコレだ!》
そんな最低の記事が目に入ってきた。
簡単に言うと、この三流雑誌の記者共がそれぞれ一押しのエロいウマ娘を紹介するというクソみたいな企画である。
様々なウマ娘が明らかに盗撮であろう練習風景の写真と共に紹介されているのであるが、俺はその中で一人のウマ娘に目が釘付けとなった。
この記事はランキング形式で、個々の記者基準でウマ娘が紹介されているのだが、一位に輝いているウマ娘に俺は見覚えがあった。
――1位・ダイワスカーレット。
エロい! とにかくエロい!
中等部とは思えない巨乳。今後に期待。
ムチムチボディに悩殺! 間違いなく一番の色気。
セックスシンボルの具現化。
「・・・・・・なる程。つまり俺はこの出版社に焼き討ちをかければいいんですね?」
「落ち着け、トレーナー! 気持ちは分かるが一度冷静になるんだ!」
理事長はそう言うが実際、自分の担当するウマ娘がこんな風に書かれたら怒らないトレーナーはいないと思う。
しかもスカーレットはまだ中等部。そんなまだ子供であろう少女を盗撮してエロ目線で見るなど言語道断。処刑に値する。
「現在、我々が抗議してこの雑誌を回収するように手を回している。君に頼みたいのはこのようなモノが教え子たちの目に入らない様にすることだ」
「確かにこんな最低な雑誌を本人に見せるわけにはいかないですからね」
「ああ、君を呼んだのはこの雑誌でピックアップされているウマ娘達に、アンタレスのメンバーらがいたからだ。彼女たちのためにも、気をやってやってほしい」
「わかりました、ありがとうございます……ところで、今メンバー『ら』と仰いましたが……」
俺がそう尋ねると理事長は無言で目を逸らし、たづなさんが苦しげに頷いた。色々察した俺は、ページをパラパラ捲っていく。そしてその記事はスカーレットの頁から数ページ先にあった。
《番外編! コイツだけは無し! 不人気ウマ娘!》
――1位・タマモクロス
小五月蠅いチビ。
背無し、胸無し、色気無しの三重苦。
声が絶望的に汚い。
なんとエロ一位のダイワスカーレットと同じチーム。完全に公開処刑(笑)
「……理事長。たずなさん。俺、多分実刑を受けると思うんで、皆の事よろしくお願いします」
俺は二人に丁寧なお辞儀をすると歩き出した。
嗚呼……今ならフラ○デーに乗り込んだ○けしさんの気持ちが分かる気がするよ……
「冷静! 落ち着くんだトレーナー! キミが一人で行って何とかなる問題では無い!」
「大丈夫ですよ理事長。俺は最悪、スカーレットとタマの記事を書いた奴を血祭りにあげられればいいんで」
「頭を冷やして下さい、トレーナーさん。この雑誌には私達が鉄槌を下すので、貴方は教え子達のケアをお願いします」
たずなさんもこの低俗雑誌に対して怒っているのか、いつもより口調が鋭利である。そのおかげか。俺も少しだけ落ち着くことが出来た。
「・・・・・・分かりました。このクソ週刊誌が皆の目に触れないようにします。教えて下さり、ありがとうございます。それでは・・・・・・失礼します」
俺は頭を下げて、理事長室を後にした。
腕時計をチラリと見ると、もう時刻は16時30分を迎えていた。本来なら皆はもう練習を初めている頃だろう。
両手で顔をパンパン叩くと、俺はチーム・アンタレスのホームであるプレハブ小屋へと向かうのであった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「皆、おつかれーっ。遅くなってすまなかった・・・・・・」
そこまで言って俺は口を閉じた。
場所はアンタレスのホーム、校庭の端に造られたプレハブ小屋。いつもならタマがオグリのために何か軽い食べ物を作り、皆が練習のための準備をしているハズであるが・・・・・・今日は異様な雰囲気に包まれていた。
「・・・・・・何かあったのか?」
思わず俺がそう呟いてしまうほど、現場は混沌としていた。
まず目に入ってくるのは長机に突っ伏すスカーレット。
そんな彼女の肩や背中を擦っているオグリとウララ。
姿の見えないタマ。
そして部屋の奥で無言のまま薙刀の刃を研ぐグラス。
一体どうしてこんな異様な状況になっているのか。
俺がそう思っていると、机の上に置いてあるとある雑誌が目に入ってきた。
見覚えがある。つい数分前に、理事長室で見たあの雑誌である。
「な、なんでコレが・・・・・・」
「ごめんねトレーナー、ウララが持ってきたの。ダスカちゃんが載っている聞いて・・・・・・」
ウララが申し訳なさそうにそう言ってきた。きっと天真爛漫な彼女のことだ。この雑誌と中身の記事の事なんて、知らなかったんだろう。
「それで・・・・・・スカーレットはこの中身を読んだのか?」
「・・・・・・・・・・・・うん」
気まずそうにウララが答えてくれた。
いつも元気で明るいこの娘が、何とも言えない表情で言ってくるのはある意味、現状のやばさを物語っている。
「最初は憤慨していたダスカだったが、記事を読んであまりの生々しさに恥ずかしさの限界が来たようでな・・・・・・」
オグリも困り顔で言ってくる。
そうか・・・・・・まあしっかりしているといえ、スカーレットはまだ中等部1年生。あんなドギツイ内容じゃ、初心な彼女では耐えられないだろう。
「す、スカーレット・・・・・・大丈夫か?」
俺は出来るだけ気を使いながら話しかける。彼女は耳まで真っ赤にしており、突っ伏しているからか表情は見えなかった。
「・・・・・・もう」
そんな中でスカーレットは絞り出すように言葉を吐きだした。
「もう・・・・・・お嫁に行けない・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・そ、そんなことないぞスカーレット・・・・・・」
「・・・・・・見たの?」
「あの記事、見たの?」
「あ、ああ・・・・・・」
俺がそう答えた瞬間、スカーレットはがばっと跳ね起きて俺の襟元を掴んだ。
突然の乱心に俺が硬直した直後、彼女は涙目で顔を真っ赤にしながらぶんぶんと俺の体を揺り動かした。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁんっ! 見たんだぁっ! あんたには絶対見られたくなかったのにぃぃぃぃぃっ!」
「おおおお落ち着けスカーレット! 確かに読んだけどあんな低俗な記事はあばばばばば!」
ウマ娘のパワーで体を振り揺らされては、人間などひとたまりも無い。
脳が揺られるような感覚に陥り、世界がぐわんぐわん回るように視界が震える。
「落ち着けダスカ! トレーナーが危ない!」
オグリが力尽くで俺とスカーレットを引き剥がす。俺はそのまま床に突っ伏し、腹の奥からこみ上げてくる何かを必死で抑えた。ああ・・・・・・コレはきっと昼に食べたきつねうどんだ・・・・・・
「トレーナー大丈夫?」
ウララが背中を優しく擦ってくれる。そのおかげでどうやら最悪の事態は防げそうだ。
「う・・・・・・うう・・・・・・」
オグリの腕の中で泣くスカーレットに、俺はよろめきながらも近づいて肩を優しく擦った。
「いいか、スカーレット。世の中にはとんでもない馬鹿がいて、そんな馬鹿にモノを売る商売というものも存在するんだ」
俺の言葉にスカーレットは顔を上げた。
泣いていたからか両目は紅くなっており、その表情を見るだけで何か罪悪感がこみ上げてくる。
「そんな馬鹿の書いた記事なんて、ナンバー1を目指すお前が気にするようなことじゃない。お前とこのクソ雑誌を読む奴らなんて、一生関わることなんてないし、お前が気にするようなことじゃないんだ」
彼女の頭を撫でながら、俺は言い聞かせるようにそう言った。
「スカーレット、お前は一番を目指すんだろう? ならこんな底辺のクソ記事なんて気にしていちゃ駄目だ」
「・・・・・・でも・・・・・・」
「スーちゃん。トレーナーさんの言う通りよ」
いつの間にか白装束に着替えたグラスが、薙刀を手にしてやって来た。
「この先、スーちゃんが勝利を重ねて名前が売れる度にこういった輩は増えてくるわ。でも、こんな人達の事を気にしている暇は、貴方には無いでしょう?」
「グラス先輩・・・・・・」
「でも安心して。スーちゃんはきっとトレーナーさんが守ってくれる。勿論、トレーナーさんだけじゃなくて、私もチームの皆も同じ気持ちよ」
ね、とグラスはこちらの方にウインクしてきたので、俺も大きく頷いた。
「だからもう落ち着いて。いつもの明るくて真面目なスーちゃんが皆、きっと好きだから」
「グラス先輩ぃ・・・・・・」
スカーレットは涙を拭うと、ようやく落ち着いたようだった。
オグリとウララがほっと肩を降ろす。
グラスは何だかんだ言って、やはり良い先輩なんだなぁと思う。
「さ、トレーナーさんもコレを」
すると彼女はそう言って薙刀を俺に渡してきた。
「行きましょうか」
にっこりと微笑むグラスに俺は彼女の真意を悟って、大きく頷いた。
「俺が先陣を切るから、グラスは後方を頼むぞ」
「はい。敵将の首はトレーナーさんに任せますね。私は後顧の憂いを絶つので・・・・・・」
「待て待て、どこに行く気なんだ二人とも」
出陣しようとする俺たちをオグリが慌てて止めた。
「何処って・・・・・・今からこのクソ雑誌の編集部に突撃を・・・・・・」
「落ち着け、トレーナー。そんなことをして何になる」
「オグリ先輩。私は可愛い後輩を侮辱されて黙っていられるほど、出来たウマ娘ではありません。不埒者には鉄槌を」
「落ち着くんだ、グラス! トレーナーも止めてくれ!」
基本天然なオグリがツッコミに回るという異常事態であるが、それ程グラスがブチギレているのだからしょうがない。
まあ俺もキレているんだから、同じなんだけど。
「大丈夫、二人とも。顔がとっても怖いよ?」
ウララが怯えながら、顔を見上げてきたので俺は優しく彼女の頭を撫でた。
「ウララ、男なら戦う時が来るんだ。誇りを守るために、命を賭けて」
「い、命?! 駄目だよっ! トレーナーもグラスちゃんも、死んだら駄目だよ!」
優しい彼女は必死でそう言ってくれるが、もはや怒りのスーパーモードになった俺たちを止める事は出来ない。
グラスと肩を並べ、いざ出陣しようとした時であった。
「トレーナー、グラス先輩! アタシはもう大丈夫です! ですから落ち着いてください!」
両手を拡げて俺たちの前に立ち塞がったのは、当のスカーレットだった。
「す、スカーレット。もう平気なのかッ?」
「当たり前じゃない! アタシを誰だと思ってるのよ! アンタレスの一番槍、ダイワスカーレットよ!」
先程までの狼狽ぶりは消え去り、いつもの自信満々なスカーレットの姿がそこにあった。
「一番になるまでには、色んな人にどんなことを言われるのか分からない・・・・・・その中でたかが一雑誌の記事にいつまでも気にしてたら駄目よね」
「・・・・・・ああ、そうだな。それでこそダイワスカーレットだ」
「グラス先輩もありがとうございます。おかげさまで、自信を取り戻せました」
「うふふふ、良かったわスーちゃん」
「はい! 先輩のおかげです! ですから討ち入りは・・・・・・」
「ええ、貴方が大丈夫なら私もそこまでしないわ」
手を取り合って喜ぶ先輩後輩の姿。
その様子を見たオグリとウララもほっと胸を撫で下ろす。
どうやら一件落着のようだ・・・・・・スカーレットの方は。
俺は今日、この部室に来てずっと気になっていた事を指摘することにした。
最初から誰もが触れてこなかった事を。
「・・・・・・タマはどこにいるんだ?」
俺の言葉に場が一気に凍った。
オグリもグラスもスカ-レットも、ウララまで無言で目を逸らしていく。
先程のスカーレットを慰めている時よりも重苦しい空気が流れた。
何せ今日俺はここに着いてからタマの顔を一度も見ていないのだ。
気になるのは当然なのだが、あまりにも誰もタマについて言及しないので妙な不安が脳裏を過ぎった。
「・・・・・・トレーナー」
ウララが俺の袖をクイクイと引っ張った。
俺が彼女へ視線を向けると、ウララは気まずそうに部屋の隅を指差した。
今の俺がいる位置からは、長机があって丁度死角になっている箇所。
そこに俺は向かった。そして目に入ってきたのは。
「っ・・・・・・タマ・・・・・・」
死んだような目で、床に突っ伏したタマモクロスの姿であった。
「だ、大丈夫かタマ?」
俺の言葉にタマは顔を上げる。
だがその瞳は濁りきっており、全身からどす黒いオーラを放っていた。
「ああ・・・・・・トレーナーやないか・・・・・・」
いつもの明るさは何処へやら、地獄の幽鬼みたいな重い声色でタマはそう言った。
「た、タマ。あの雑誌を見たのか・・・・・・」
そう聞かれたタマは虚空を眺め、ああ・・・・・・とだけ呟いた。
「・・・・・・まぁ・・・・・・確かにオグリとかクリークはよく男の人から声かけられたり、プレゼント貰ったりしとったもんな・・・・・・」
タマの言う通り、同期のオグリやスーパークリークはよく男性ファンからプレゼントを貰っていた。
勿論、タマだって人気が無いわけではないのだが、確かに異性のファンからプレゼントとか贈られた事はほとんど無かったな。
ちびっ子とかおっさんには絶大な人気があるんだが・・・・・・
「それに比べてウチは・・・・・・全然人気ないなぁ・・・・・・そりゃコイツだけは無しとか言われるで・・・・・・」
「そ、そんなこと無いぞタマ! 自分に自信を持て!」
卑屈になった親友にオグリがすぐにフォローを入れた。しかし。
「オグリは、ええよなぁ・・・・・・芦毛のスターウマ娘として大人気や・・・・・・ぬいぐるみまでなったもんなぁ・・・・・・ウチの方がデビュー先なのになぁ・・・・・・」
オグリキャップぬいぐるみ。発売からすぐに売り切れ続出の大人気商品である。
「た、タマ先輩・・・・・・元気を出してください。アタシも色々書かれたけど・・・・・・」
同じ被害者であるスカーレットが今度は話しかけた。
「ダスカは・・・・・・まだええよなぁ・・・・・・魅力ランキング一位やし・・・・・・ウチみたいな最底辺の便所コオロギとは違うわなぁ」
だが最低の記事ではあるものの、褒められていたスカーレットと酷評されたタマでは受けとめ方も違うのであろう。
ますますテンションが下がるタマに、スカーレットも困り顔だった。
「どうせウチにはオグリみたいな華も無ければ、ダスカみたいな胸も無い。グラスみたいな気品も、ウララみたいな愛嬌も無い、小うるさいチビなんや・・・・・・」
「お、落ち着いてください先輩! タマ先輩には良い所がいっぱいあります!」
「じゃかましいわ、ダスカ! でかい乳しよってからに!」
「え、ええ・・・・・・」
突然の逆キレに困惑するスカーレット。タマは思った以上に精神不安定のようだ。
「タマ先輩、落ち着いてください。こんな低俗な雑誌の評価など・・・・・・」
「分かるか、グラス? ウマ娘としての実力じゃなく、女として駄目だしされたんや・・・・・・」
再びダウナーモードに突入したタマにグラスも言葉を失った。
ここまでヤバい状態のタマを見るのは初めてだろう。俺も初めてだもん。
「大丈夫だよ、タマ先輩! ウララだって小っちゃいけど、こんなに元気だよ!」
「ウララ・・・・・・」
ウララのよく分からない説得に、タマはようやく顔をまともに上げた。
しかしタマはおもむろに顔色を変えると無言でウララの胸を触った。
「ひゃっ! く、くすぐったいよ-」
くすぐったそうに体を震わせるウララと、対照的に無言のタマ。
「・・・・・・ウチよりあるやないかい!」
そして暫くしてそんな叫び声をあげると、タマは泣きながら走り去っていった。
「タマ・・・・・・なんて悲しい現実なんだ・・・・・・」
「変な事言っている場合じゃないでしょ! どうするのよ!」
「・・・・・・俺が追いかける。タマの行きそうな所は大体分かるからな。皆は悪いが先に練習しててくれ」
俺はそう言うと部室を出るのであった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
今でこそタマモクロスはレースで連戦連勝であるが、そんな彼女にも駆け出しの時代はあった。
初めから強いウマ娘なんてほとんどいない。
タマも試行錯誤して強くなっていったのだ。
そしてレースで敗れることだって当然ある。
その度にタマはこの場所に訪れていた。
「・・・・・・タマ」
俺の予想通り、彼女はそこに体操座りで佇んでいた。
学園の片隅にある、小さなベンチ。
昔はよくそこで二人、語り合ったものだ。
「・・・・・・隣、座るぞ」
俺の言葉にタマは何も言わなかったが、俺が横に腰を降ろした。
「・・・・・・今まで散々、一緒に色々言われてきたろ。今更あんな中傷なんだ」
「・・・・・・・・・・・・」
タマは無言のままだ。
確かに今までレースのことなどでマスコミ達に非難されることはあった。
だが『女性』としてこき下ろされた事は無いタマは、今回の記事に予想以上にショックを受けたようだった。
これは不味いな・・・・・・
俺は大きく溜息をつくと、彼女の小さな肩を叩いた。
「いいか、一回しか言わないから。よく聞けよ」
心なしか心臓が高鳴る。
いつの間にか体中から汗が滲みだした。
だがタマの元気を取り戻すためには言わないといけないだろう。
「いくら世間の男共が、お前を低く扱ってもな――」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「皆、ごめんなぁ。取り乱してしもうて」
一時間後、タマはにこやかな顔でたこ焼きを焼いていた。
今日の練習も終わったアンタレスの部室。そこに全員が集まって、たこ焼きの焼ける芳ばしい香りを楽しんでいる。
「よかったです。タマ先輩が元に戻ってくれて」
「ありがとなグラス。それにさっき酷い事、言ってしもうた。ほんまにごめんな」
「いえいえ。本当によかったです」
「ああ、タマが元気になって本当によかった」
早速焼けたたこ焼きを頬張りながら、オグリもうんうん頷いた。
「そういえばあの雑誌なんだが、理事長が直々に抗議して回収して貰う。それに出版社にも何らかの措置をとる予定だ」
「当然よ。あんなのウマ娘を馬鹿にしてるわ!」
スカーレットが怒りながらそう言った。大分元気も戻ったみたいだ。
「でもトレーナーもタマ先輩をよく説得できたよね」
のほほんとウララがたこ焼きを食べながら言った。
「確かに、あんな状態のタマの機嫌を直すとは・・・・・・トレーナー、一体何をしたんだ?」
オグリがゴックンとたこ焼きを飲み込んでから尋ねてきた。
グラスもスカーレットも興味深げにこちらを見てくるので、俺は少々恐縮してしまう。
「何、別に特別な事は言ってないで。な、トレーナー」
「あ、ああ・・・・・・」
思い出すと小っ恥ずかしいから、あんまり蒸し返さないで欲しい。
だが、あの時俺が言った言葉でタマは元気を取り戻したのも事実だ。
多少誇張もしたけど、俺の正直な思いをタマに伝えたつもりだった。
何はともあれ、これで今回の事件は一件落着だろう。
後は理事長達に任せよう。
そう思いながら、俺はタマのたこ焼きを口に放り込むのだった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「いくら世間の男共が、お前を低く扱ってもな・・・・・・俺にとってタマは一番魅力のある女の子だよ」
今後、展開について
-
基本的にコメディで、時々シリアス
-
基本的にシリアスで、時々コメディ
-
シリアスは無い方がいい