公式のストーリーと育成シナリオ尊い……
本家にこんな最高の出来を用意されたので、どうしようかと思いましたが自分のプロット通り、タマとトレーナーの話を書きました。
俺とタマの期間限定なトレーナー契約が結ばれた。
次の模擬レース、彼女を見事一位に入着させることが出来ればタマは俺を正式にトレーナーとして迎えてくれる。だが負けたら二度と彼女を誘わない。
そういう約束だった。
まあ既に崖っぷちの俺にしてみれば、最後のチャンスが転がり込んできたわけなので、この条件でも充分だった。
恐らく、今のタマを超える逸材は俺の中でもう現れないであろうという予感もある。
期間は二週間。
時間はあまりにも少なかった。
「よっしゃっ。準備できたであんちゃん」
ジャージに着替えたタマがグラウンドにやってきた。準備運動も終えて、今すぐにでも駆け出せそうだ。
「よし、始めよう」
久々のトレーニング。
俺は大きく深呼吸すると、タマに向き合って言うのであった。
…
……
…………
「ふむ……やっぱり思った通りだな」
一通りのコースをタマに走って貰い、走法もいくつか試してみた。
これで大まかではあるが、彼女の適正距離とそれに合った走法を絞ることが出来る。
そしてその結果、今まで勝てなかったのは走り方のせいだと俺は結論づけた。
「逃げはオススメ出来ないな」
「何が逃げや。ウチは何時でも戦う気満々やで」
「気持ちの問題じゃない。走り方さ」
逃げは作戦自体がシンプルで実行しやすい反面、その走り方で勝とうと思えばかなり難しいと俺は考えている。何せ一気にスタートからゴールまで駆け抜けるのだ。短距離ならまだしも、タマの適正距離は恐らく中距離から長距離。その長さで逃げに徹するには、かなりのスピード・スタミナ。そしてパワーが必要だ。タマはどれも足りていない。地元ではこれでも勝てただろうが、ここ中央ではそうもいかないだろう。
幸い、スピードは中々ある。あとはこの小さな身体と少ないパワーとスタミナでどこまで頑張れるかだ。
「差しか追込。次のレースは距離的に差しで行くほうがいいか……」
そのためには温存したスタミナを一気に爆発させる力強さと、他ウマ娘のブロックを避ける足さばきと広い視野も必要だ。それはそんなに簡単に身に付くものではない。となると勝つためには先行も視野に入れるか……
「…………」
俺がうんうん思案していると、気がつけばタマがこちらをじーっと見ていた。
「ど、どうした?」
「いや……そんな顔もするんやなと思ってな」
「どんな顔だそれは」
「いつもの気が抜けるような顔やのうて、真面目な顔もするんやなって話や」
「失礼な。俺は何時だって大真面目だ」
俺がそう返すと、タマはナハハと笑った。
この自然で明るい笑顔。こういう時は年相応の少女なのだ。
「とりあえず、今の君に足りないのはパワーとスタミナだ。この二つを重点的に二週間の間鍛えていく。それとは別に走法の訓練だ。君は差しか追込が合いそうだが、今回は勝つために先行作戦で行く」
レースの位置取りやペース配分など慣れるまでに差しと追込は時間がかかる。まずは勝たないといけないので、比較的簡単な先行作戦で行くことで決めた。これなら弱点のスタミナとパワーの弱さもカバーできる。
「何かようわからんが……次のレースまではアンタを信じるって決めたんや。どんな練習でも付き合っちゃる。ドンとこいや!」
こうして俺とタマの厳しい特訓が始まったのだ。
…
……
…………
「お前、本気であの子を育てる気かよ」
「ああ。だからこそお前を呼んだんだろ」
一週間後、俺は三鷹をグラウンドに連れて来た。
タマと併せウマの練習をするためだ。
こればっかりは俺だけでは出来ない。一緒に走ってくれるウマ娘がいるのである。
「この一週間。ひたすら基礎体力の鍛錬に注いだ。そのおかげでタマはずっと前より良くなった」
「そうかもしれないが……でも彼女では限界があるぞ。あの体躯じゃ……」
「あの体躯が何だ。タマなら走れる。そう信じてる」
「分かっているのか。お前、もう後が無いんだぞ。何でこんな博打みたいなこと……」
「博打……そう思うか。だが俺はその博打に負けても悔いは無い。マルゼン以来、初めて心惹かれるウマ娘を見つけたんだ。彼女で失敗したって本望だ」
――まあ、負ける気はないけどな。必ずタマを最強のウマ娘に育ててみせる。
そう決心した俺に対して三鷹は大きく溜息をつくと、後ろに控えてきたウマ娘を紹介した。
「ミヨシライガー。俺の担当するウマ娘の一人で、中等部二年。既に選抜レースでも勝利している」
三鷹に紹介されたミヨシライガーはペコリと頭を下げた。俺も頭を下げて、互いに自己紹介を終える。
そして俺はすぐにランニングをしているタマをこちらへと呼び寄せた。
「併せウマ?」
「ああ。そろそろレースを見据えた練習が必要だろう。だから併せウマ……いや、簡易的な模擬レースを行う」
「それはわかっとるけど……相手が……」
タマはチラリとライガーの方を見た。彼女にしてみれば、既にデビューして活躍している先輩だ。委縮してしまうのも無理はないだろう。
「まあ、俺も勝てるとは思っていないさ。だから、ライガーにはタマの後方200mからスタートして貰う」
するとタマの耳がピクリと動いた。
「これなら勝てるんじゃないか? 距離は予定しているレースと同じ800mだ。俺達には丁度いいだろう」
「……せやな。それやったらウチもええ勝負できそうや」
少しだけ間を置いた後、タマはニヤリと不敵に笑ってスタート地点へと向かって行った。
遅れてミヨシライガーもタマより後ろのスタート地点に立つ。
そして簡易模擬レースは始まった。
「どりゃぁぁああああああっ!!」
雄叫びを上げながらタマはスタートを切った。まずまずの出だしだ。
「ちょっと掛かってる気もするが、中々好調だ」
やがて後方のライガーがタマへと距離を詰め始めた。
それに気付いたタマは必死で足を動かし抜かれまいとするも、徐々にその差は縮まっていた。
三バ身、二バ身、一バ身……そして遂に二人は並んだ。
「ぐぬぬぬぬぬ……」
タマの顔が悔しさに歪む。
いくらハンデを付けたとはいえ、相手は既に実績を残している先輩ウマ娘。苦しい勝負なのは明らかだった。
「……負けて堪るか……負けて堪るかぁッ!」
「むっ!?」
三鷹が思わず声を上げた。
もう抜かれてしまう寸前だったタマが一瞬、息を吹き返してライガーを差し返したのだ。
だが、それもほんの一瞬。
再びタマはペースを落とし、そのままずるずると後退していった。
「一瞬、ヒヤッとしたな……だがあの負けん気は凄い」
「ああ、あれが俺が彼女に惹かれた理由だ」
そしてタマの強みが分かった。そして弱点も。
俺は走り終えて息を切らすタマの方へと近づいて行った。
「はぁ……はぁ……くそっ……」
練習のレースでも心底悔しそうに息を吐くタマの背中をさすってやる。
彼女の小さな体は熱を帯び、陽炎のように周りが歪んでいる。
「お疲れ様。いいレースだったよ」
「……はっ、アホか……負けちゃ意味ない……」
「いや、十分意味はあった。見ろ」
俺は握りしめていたストップウオッチの数値をタマに見せた。実はこっそり測っていたのである。
「タイム更新だ。今までで一番だよ」
「へ、どういうことや?」
「結果が出たってことさ」
タマの頭をくしゃりと撫でる。彼女は少し戸惑いはしたが、やがて照れくさそうに笑った。
「特に一瞬だけ、ライガーを差し返したのは凄かったぞ。正直、驚いた」
「ま、まぁな。練習とはいえレースやし。負けたくなかったんや」
「そう。それこそタマ。君の強みだ。そして弱点である」
「ど、どういうことや?」
「…………」
今の走り、俺が彼女を初めて見たレースと同じ感覚だった。
強い闘争心。激しい負けん気の強さ。凄まじいハングリー精神。
そのがむしゃらな勝負根性に俺は魅了された。
強い思いはレースにおいて最大の武器である。
どんなに厳しい状況でも、諦めずに喰らいつけば勝機は見える。
だがそれは同時に、危険なモノでもある。
熱くなって周りが見えなくなれば、自分の置かれている状況に気が付かず、潰されることになるのだ。
「タマ、君は相手のウマ娘と並べば強い。一人で走っていた時よりも、タイムが伸びたのはそのためだ。だが熱くなりペース配分を間違えて、そのまま沈んだ」
「…………」
思い当たる節があるのか、タマは顔を下げた。
「タマの勝負根性は君の最大の武器で強みだ。だがそれを使いこなすには、同時に冷静さと周りを見渡す能力が必要だ」
「……そんな無茶な」
「胸の怒りは炎の如く、されど頭は氷の如く……明鏡止水の心意気。それがあれば君は大成する」
「無茶苦茶や! そんなことできるわけないやろ!」
「ああ。一朝一夕で出来るようなことじゃない。だがもし出来れば確実に強くなる」
「…………」
「あと一週間は今までの練習に加えて、精神力の鍛錬だ。どんな不利な状況でもクールな判断力さえ残っていれば、巻き返しは可能だ」
「……そんなこと、ウチにできるかな?」
「出来る!」
俺はタマの肩をガッシリと掴んだ。
「タマなら出来る。俺は信じてる」
「…………」
大きな瞳を見開くと、タマは頬を朱く染めて顔を背けた。
「……そんな力強く言われたら、ウチも本気になってしまうやろ」
ボソリと呟いた一言は、紅く染まり始めた空の中へ消えていった。
…
……
…………
「お疲れ。済まなかったな。俺の同期が無茶を言って」
「いえ、大丈夫です。それにあの子」
「ん?」
「強くなる気がします。凄まじい気迫を感じました」
「ああ。あいつが本気で入れ込むのも、あながち間違ってないのかもな……」
今後、展開について
-
基本的にコメディで、時々シリアス
-
基本的にシリアスで、時々コメディ
-
シリアスは無い方がいい