ウマが合うからいつも一緒   作:あとん

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キタちゃんもいいけどタンホイザも欲しい…

悩みますね…


オグリキャップ物語 2

 ――オグリキャップ先輩がレースの世界に足を踏み入れたのは、今から二年前。

 カサマツトレセン学園に入学したときから始まります。

 オグリ先輩が入学したカサマツトレセンは中央とは別の、ローカルシリーズというレース畑でした――

 

「オグリキャップ・・・・・・レース経験は無し・・・・・・か」

 

 カサマツトレセンの面接室で、試験官が眼下の資料に目を通して言った。

 彼が顔を上げた先には美しい芦毛の髪を持つウマ娘が、一人座っている。

 厳しい選抜基準と難解な入試の行なわれる中央とは違い、地方のトレセンはウマ娘であれば簡単な面接だけで入学できる所が多い。カサマツも同じであった。

 

「オグリ君。君はレース志望のようだが、その・・・・・・野良、所謂非公式でのレース経験も無いのかい?」

 

 その試験官の問いにオグリキャップはふるふると首を横に振った。三人いた試験官の口から同時に溜息が漏れる。

 

「確認だがねオグリ君。ここは地方とはいえ、仮にもURAの末席に係わる場所だ。その入学面接にその格好は・・・・・・」

 

 彼の視線がオグリの頭の天辺からつま先までゆっくりと移動する。試験官の言う通り、彼女の格好は面接に来ているとは思えない服装であった。

 あちこちがほつれたジャージにボロボロのシューズ。

 今正に山から下りてきたと言っても信じてしまいそうな、野暮で汚い格好だった。

 

「すまない。この服しか無かったんだ」

 

 悪びれもせず言い切る彼女に、試験官は思わず苦笑した。

 

「あーまあ、いい。で、オグリキャップ君。何故君は我が校に入学しようと思ったのか。志望動機を聞かせてくれないか?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 ごくありふれた質問にオグリは暫し考えた末。

 

「・・・・・・走れるから」

 

 それだけ言った。

 

「そ、それはどういうことだね」

 

「走るのが、楽しい。私は生まれつき膝が悪くて、小さいときは満足に走れなかった。でも、今は走れる」

 

 オグリキャップは先天性に膝に不調があり、幼い頃から母親がマッサージしていたと言われている。

 

「だから嬉しい。それにお母さんや近所の皆も、喜んでくれる。だから走りたい。そう思い・・・・・・ました?」

 

 無口でマイペース。しかし真面目で意外に頑固者。

 オグリキャップの性分は持って生まれたものだった。

 

「・・・・・・ぷっ」

 

 試験官の一人が思わず噴き出した。馬鹿にしたわけではない。あまりに青臭く、純粋なオグリの物言いに心がほぐれたからである。

 

「この娘、声がいいわね。それに体つきも綺麗」

 

 この中で唯一の女性試験官が囁いた。

 

「確かに体格はいい。それに私達ローカルシリーズは来る者は拒まずだ」

 

「ああ、それに大事なのは外見より中身。走れるかどうかだ・・・・・・」

 

 試験官は横に置いてあった合格印を、ポンとオグリの書類に押した。

 

「今日から立派な競争バに慣れるよう頑張りなさい」

 

 こうしてオグリキャップは特に何の問題も無く、競争バとしての一歩を踏み出したのであった。

 メキメキとその才能は花開き、デビュー戦こそ敗北したものの、その後は連戦連勝。

 10月に行なわれたジュニアクラウンでは快勝し、その十日後に行なわれた中京杯で後続を二バ身離しての圧勝と凄まじい戦績を挙げた。

 その1年での成績は12戦10勝。この勝ちっぷりで、オグリキャップは一気にカサマツトレセンのアイドルへと駆け上った。

 そして中京杯のレースで中央にも注目されるようになり、生徒会長のシンボリルドルフの推薦によって中央トレセン学園へと編入したのである。

 地方から中央にスカウトされることなど異例中の異例であり、当のオグリキャップも最初は困惑するほどであった。

 だが、カサマツトレセンの教師やトレーナー達。クラスメイトや地元の人達の後押しもあり、オグリキャップは中央トレセン学園へ乗り込んだのであった。

 時にデビューから1年。所謂クラシック期に彼女が突入した頃であった。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 東京都、府中駅。トレセン学園の最寄りの駅であるそこに降り立ったオグリキャップは、思わず言葉を失った。

 建ち並ぶビル群に絶え間なく続く人の群れ。嫌でも耳に入ってくる人々の喧騒とエンジン音。

 彼女が生まれ育った岐阜とはまるで違っていた。

 視界に山も川も入ってこないという事は、田舎出身のオグリにとって正しく異常事態であり異界へと足を踏み入れたような感覚であった。

 

「オグリキャップさんですね?」

 

 突然、かけられた声に思わずビクリと反応してしまう。声の方向へ顔を向けると、緑色の制服を身につけた長身の女性が立っていた。

 

「お迎えにまいりました。私は日本ウマ娘トレーニングセンター学園で理事長秘書を務めています、駿川たづなと申します」

 

「あ・・・・・・どうも・・・・・・」

 

「ふふふ、どうも。では早速学園まで案内致しますね」

 

 ぺこりと頭を下げたオグリに駿川は嬉しそうに微笑むと、そのまま歩き出した。

 暫く歩いて辿り着いた中央トレセン学園は、オグリの想像を遙かに超えたものであった。

 何せカサマツトレセンの数倍はある敷地内に、ジムやプール。ダンス用のスタジオに練習用屋外ステージ。そして多種多様なコースを再現したグラウンド。

 一流のウマ娘が揃うとのことだけあって、その設備は凄まじい充実ぶりであった。

 ウマ娘に必要なモノが全てここには揃っている。

 そう言われるだけはあった。

 

「歓迎ッ! 遠路はるばるようこそ、我がトレセン学園に! 私がこの学園の理事長を務める、秋川やよいだ!」

 

 大きな扇子を派手に広げて、小さな少女が言った。

 トレセン学園、理事長室。

 最初にここへ案内されたオグリキャップはそこで、背丈に合わない豪華な椅子に座った少女と顔を合わせた。

 

「・・・・・・あなたが?」

 

 理事長と言われても信じられない位の年格好である秋川の姿に、さすがのオグリも首を傾げた。

 

「うむ! 確かに私はまだ少女といっても差し支えない年齢ではある。しかし! 君達ウマ娘を応援する気持ちは誰にも負けない自信がある!」

 

 パン! と勢いよく扇子を閉じると、秋川はそのまま後ろの壁を差した。

 そこに設置された額縁。大きな字でこう書いてあった。

 

 ――Eclipse first, the rest nowhere.

 

「唯一抜きん出て並ぶ者無し・・・・・・我が校の理念だ」

 

 突然の事でオグリはよく意味を理解出来なかった。だが、目の前の少女が伝えようとしている何かは、自ずと分かったような感じがした。

 

「常に頂点を目指せ。期待しているぞ!」

 

「・・・・・・では私がこのまま学園内を案内させていただきますね」

 

「え・・・・・・あ、はい」

 

「その後、生徒会長への挨拶。編入するクラスの担任への挨拶。その後はこの学園をルール説明や・・・・・・」

 

 オグリキャップの一日は、そのまま中央トレセン学園の案内で終わった。

 慣れない環境にヘトヘトになり日も暮れ始めた頃、オグリはこれから生活する場所となる『栗東寮』へと案内された。

 

「今日からここが君の部屋だ。二人部屋で、先客が既にいる」

 

 寮長であるフジキセキに案内され、オグリは自室へと辿り着いた。

 表札には『タマモクロス』と書かれている。

 

「たまもくろす・・・・・・」

 

「彼女はいい子だ。仲良くしてあげてくれ」

 

 そう言うと寮長は颯爽と去って行った。

 

「・・・・・・・・・・・・お腹が空いたな」

 

 早く荷物を置いて食堂に行こう。そう思い、オグリは扉を開けた。

 部屋の中はシンプルな作りであった。両側の壁にそれぞれベッドがあり、半分ずつ各自が自由に使えるスペースになっている。

 オグリはとりあえず、使われていないベッドの脇に荷物を降ろした。

 そして、ぐいと体を伸ばす。

 今日は一回も走っていないのに、妙に疲れていた。

 明日はもう授業が始まるのだという。仲良く出来る人はいるだろうか。そんなことを考えていた時だった。

 

「う゛あああああ、疲れたたぁああああ」

 

 低い唸り声を上げながら、部屋の出入り口が開いたのである。

 見れば泥だらけのジャージに身を包んだウマ娘が、足取り重く部屋に入ってきた。

 

「ん、誰やアンタ?」

 

 小さなウマ娘だった。

 背も低く、手足も細い。同じ年齢には見えなかった。

 だがそれ以上にオグリの印象に残ったのは、腰まで伸びた美しい芦毛・・・・・・自身と同じ髪の毛の色であった。

 

「あ、ああ。今日からここでお世話になる、オグリキャップだ。よろしく頼む」

 

「おー、そういや寮長がそんなこと言うとったな。ウチの名前はタマモクロス! ま、同室で同学年同士、仲良くやろうや」

 

 ずい、と差し出された手をオグリは握った。

 小さく柔らかそうな掌。しかし鍛えているからか握られると思い重心を感じるような圧力があった。

 

「そういやアンタ、飯はもう食べたか?」

 

「あ・・・・・・いや、今ここに来たばかりでまだなんだ」

 

「そりゃ丁度ええ。ウチも今から食堂に晩飯食べに行くんやけど、一緒に行かんか?」

 

「・・・・・・いいのか?」

 

「おう! モチロンや! ちょっと待っとれ!」

 

 タマモクロスは元気よくそう言うと、急いで服を着替え始めた。

 泥だらけのジャージを脱ぎ捨て、別のジャージに袖を通した、正にその瞬間だった。

 

「っ! どうした、タマモクロス!」

 

 彼女は勢いよくベッドに倒れ込んだのである。

 

「だ、大丈夫か!? だ、だれか人を・・・・・・」

 

 慌ててオグリがベッドに駆け寄ったときであった。

 

「・・・・・・くか-」

 

 タマモクロスからそんな寝息が聞こえてきた。

 

「・・・・・・疲れているみたいだな」

 

 オグリは無言でタマモクロスに布団を掛けて、そのま一人食堂へ向かった。

気持ちよさそうにねむっているのを、無理に起こすのは忍びないと思ったからである。

 

「タマモクロス、か……」

 

オグリは人知れず呟くと、食堂へ歩いていく。

会ったばかりのタマモクロスだったが、何となく仲良くなれそうだ。そんなことを考えていた。

 

 ――これが後の芦毛の怪物と、白い稲妻の出会いだったわけです。

 それから二人は同室のよしみで、よく一緒に行動するようになりました。

 天然でマイペースなオグリキャップ先輩を、騒がしくておせっかいなタマモクロス先輩がお世話をしているという感じだったそうです。

 ですがタマ先輩はオグリ先輩の事を一度も疎ましく思ったことは無く、オグリ先輩もタマ先輩に信頼を置くようになったと言います。

 同じ学年で同じクラスにはなれなかった二人ですが、誰よりも仲良く二人で行動していたと言われています。

 オグリ先輩にとって、タマ先輩は追いつけ追い越せのライバルになるのですが、これはまだ少し先の話。

 何故なら、オグリ先輩が編入したクラスには同世代のライバルと言われるウマ娘達が、大勢いたのであります……とこれはまだ少し先の話ですね――

今後、展開について

  • 基本的にコメディで、時々シリアス
  • 基本的にシリアスで、時々コメディ
  • シリアスは無い方がいい
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