ウマが合うからいつも一緒   作:あとん

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お久しぶりです。

忙しくてなかなか描けませんがよろしくお願いします。

しかし応援団の制服を着たキングは(以下略)


オグリキャップ物語 4

「おうオグリ。ちょっと話があるんやけどええか・・・・・・って、どうしたんや!?」

 

 夜。

 学生寮の部屋に戻ったタマモクロスが見たものは、ベッドに突っ伏すオグリキャップだった。

 明らかに元気が無い。

 真っ白な耳はしゅんと垂れ下がり、尻尾もだらんとベッドから溢れていた。

 

「ああ・・・・・・タマか・・・・・・」

 

 生気の無い声でオグリキャップは答えた。

 

「な、なんかあったんか? 腹が減ったんか?」

 

「・・・・・・それもあるのだが・・・・・・」

 

 オグリは疲れ切った様子で口を開いた。

 

「もしかして会長さんとの併走で何かあったか?」

 

「いや、ルドルフとの併走は楽しかった。色んなトレーナーにも会えたし・・・・・・でもそこで私はとんでもない事実を知ったんだ」

 

「とんでもない・・・・・・事実?」

 

 タマモクロスはゴクリと唾を飲み込んだ。

 

「・・・・・・実は私は日本ダービーに出場出来ないらしい」

 

 日本ダービー。その名前を聞いたタマモクロスは顔をしかめた。

 

「ダービーはウチも色々あったかんなぁ……」

 

 遠い目をしながらタマモクロスは溜息をつくと、オグリキャップの真っ正面にどっかりと腰を降ろした。

 

「で、なんでダービーに出れんのんや。オグリの実力なら、充分通用すると思うけどなぁ」

 

「……実は、クラシック登録していなかったんだ」

 

「おおうそれは……まぁ、しゃあないか。色々忙しかったしなぁ」

 

 ただでさえ地方からの転入で忙しかったオグリに、そう言った細かいことは無理だろうとタマモクロスは思ったのだ。

 

「……で、随分と落ち込んどるようやけど、そんなにダービーに出たかったんか?」

 

「ああ……私は笠松トレセンにいたんだが、そこで私は東海ダービーを目指していたんだ」

 

 懐かしむようにオグリは言った。

 

「結局、中央に来たため東海ダービーには出れなかった……だから中央のダービーに出て故郷の皆に一着をプレゼントしたかったのだが……」

 

 そこでオグリは再び深い溜息をついた。

 

「出れないって……」

 

 ずーんと落ち込んでいるオグリキャップの肩をタマモクロスはポンポンと叩いた。

 

「まぁ、クラシック三冠だけがレースやない。その分、色んなレースに出れば名前だって売れるやろ」

 

「だが……ダービーが……」

 

 それでも未練たっぷりなオグリにタマは更に深い溜息をついた。

 だがタマモクロスにとって、いや正確にはアンタレスにとって日本ダービーは、因縁深きレースだった。

 かつてマルゼンスキーは当代最強の一角とされていたが、当時のURAの規定によってダービーに出場出来なかったのだ。

 タマモクロスはダービーに出場する予定であったが、その前に落バ事故に巻き込まれた影響で回避している。

 アンタレスのトレーナーにとって日本ダービーは因縁めいた、関係があるのだ。

 

「……いい考えがあるで」

 

 だからこそタマモクロスも一発かましてやろうと思ったのであろう。

 

「……何だ?」

 

「クラシック登録出来んのんなら、せんかったらええ。その分、重賞を荒らし回ってやればええんや」

 

「重賞か……」

 

「そこで勝ちまくれば、あっちからオグリに言うてくる」

 

 オグリキャップは思わず顔を上げた。すると目の前にあったタマモクロスがニカっと白い歯を見せて笑った。

 

「お願いします。ダービーに出て下さいってな……」

 

 ――タマ先輩の作戦は見事に当たりました。

 オグリ先輩はクラシック登録できなかった腹いせと言わんばかりに、重賞を荒らし回ったのです。

 本来ウマ娘は専属トレーナーか、チームに所属していなければレースに出場出来ないという決まりがあります。ですが転入生であるオグリ先輩は数か月だけトレーナーがいなくとも、レースに出れる特権を持っていました。

 それをフルに利用したオグリ先輩は急ピッチでレースに出場しました。

 初重賞のGⅢ・ペガサスステークスに快勝し、その勢いで毎日杯も圧勝。

 クラシック未登録故に皐月賞には出場できなかったのですか、この時に皐月を制したのが毎日杯でオグリ先輩に敗れていたヤエノムテキ先輩だったので、また物議を醸しました。

 もしオグリ先輩が皐月賞に出場したら勝っていたのではないか?

 その後に控えている日本ダービーはクラシック最強を決めるレースであるのに、その候補たるオグリ先輩は出場できないのか?

 ファンの方々はオグリ先輩をダービーに出したいと声を上げ始めました。

 ダービー出場を求める署名運動や、クラシック登録制度に対する批判。

 世間を揺るがす大きな騒動に発展したのです。

 さすがのURAもこの大きな流れを無視できなくなり、公平さの観点からオグリ先輩のダービー出走は認めなかったものの、クラシック制度の方向転換を行うことを決めました。

 笠松からやってきてたった数ヶ月で、オグリキャップ先輩は中央を大きく動かしたのでありました。

 そしてダービーに先駆ける事、一ヵ月前。

 

『やった……やったな、タマ……』

 

『ああ……ありがとうな、トレーナー……』

 

 タマモクロス先輩が春の天皇賞で堂々の一位に輝いたのです――

 

「日本ダービー、出たかったな・・・・・・」

 

「クラシック登録しとらんかったんやししゃーない。むしろあんだけ世間が動いたんやから、凄いもんや」

 

 ダービーをサクラチヨノオーが制してから、少し経った頃。

 タマモクロスとオグリキャップは喫茶店で顔を合わせて、パンケーキに舌鼓を打っていた。

 

「やけど、トレーナーを見つけんかったらクラシックどころか、中央のレースに一つも出れんくなる。はよ見つけた方がいいで。学園は待ってくれん。それに、勧誘はいっぱい来とんやろ?」

 

「ああ・・・・・・それはありがたいことなのだが・・・・・・」

 

「だが?」

 

「これと思える人がいないんだ。誘ってくれる皆には悪いと思うのだが・・・・・・」

 

「・・・・・・まあしゃーない。トレーナーってヤツは、ウマ娘にとって一生の問題やからな。妥協したらアカン。慎重に決めんとな。でも急いだ方がええで」

 

「ああ・・・・・・そういえばタマのトレーナーはいい人だな」

 

「っ・・・・・・」

 

「色んなトレーナーの人達に会ってきたが、タマのトレーナーは何というか・・・・・・他と違う気がするんだ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「なぁ、タマ。良かったら同じチームで・・・・・・」

 

「アカン! それはアカン!」

 

 突然声を荒らげて立ち上がったタマに、オグリは目をまん丸にして

 

「あ、いや・・・・・・オグリのことが嫌って訳やないで。トレーナーもきっとオグリが入るのは喜んでくれると思う」

 

「それなら・・・・・・」

 

「でも駄目なんや。今のウチのチームじゃ駄目なんや。オグリほどのスターが・・・・・・」

 

 ――この頃、世間はいよいよオグリ先輩ブームが始まろうとしていました。

 オグリ先輩のファンやマスコミ関係者の関心は、オグリ先輩がどのチームに入るか。どんなトレーナーと組むのか。

 クラシックレースに出場できない分、チームレースならと……期待に胸を膨らませていたそうです。

 当然、多くのトレーナーがオグリ先輩を勧誘しました。

 まさにオグリ先輩の争奪戦。

 ですが当のオグリ先輩は中々所属チームやトレーナーを決めませんでした。

 それにより勧誘の勢いはますます激化し、多くのトレーナーやマスコミ関係者がオグリ先輩を追うようになりました。

 そしてオグリ先輩はそんな状況に辟易としていたといいます。

 何せ朝の練習時間や昼休み、放課後は勿論、授業の合間まで彼らはやってくるのです。 

 さすがのオグリ先輩も疲れ果てたと言っていました――

 

「すげぇな、オグリ大明神様は。今日もあんなに人がくっついてるぜ」

 

「あのオグリキャップだ。皆、喉から手が出る位欲しいだろうな」

 

 追い掛け回されるオグリキャップを遠くから眺めながら、三鷹が言った。 

 現在、アンタレスのトレーナーは同期の三鷹と鮫島の三人で、職員室から窓の外を見下ろしている。その眼下には多くの人達に纏わりつかれている、葦毛のスターウマ娘の姿があった。

 

「しかし普通に考えたら、スピカかリギルにいっちゃうと思うけど、皆健気だねぇ」

 

「いや、オグリキャップは多くのチームの勧誘を受けて、視察にも行っているが未だに所属を決めかねているらしい」

 

「へぇ、もったいないねぇ。それこそ引く手数多だろうに」

 

「オグリはちょっと天然な所があるからな。彼女に合う所じゃないと駄目だろう」

 

 トレーナーの言葉に三鷹と鮫島が彼の顔をじっ……と覗き込んだ。

 

「な、なんだ、どうした」

 

「いや、妙に親しげに言うなと思ってな」

 

「い、いや、別に他意は無いさ。ただタマの同室だから、よく彼女のことは聞くんだよ」

 

「そう言えばそうだったな。というか折角接点があるんだし、タマちゃんに口聞きしてもらえばいいのに」

 

「それも考えたが、あのオグリキャップを今のアンタレスにいれたら、世間が何ていうか……」

 

「ふん、下らん。周りの目を気にして強いウマ娘を育てられるものか」

 

 鮫島がふんと鼻を鳴らすと、立ち上がった。

 

「本当にそのウマ娘を担当したいのなら、周りの目など気にならないはずだ。貴様がタマモクロスを選んだようにな」

 

「そういうお前はどうなんだ、鮫島。お前が良く言ってた、ダイヤの原石だぞ」

 

「……オグリキャップはもはやダイヤそのものだ。俺の夢は原石を共に磨き上げる事。オグリキャップは既に完成されている」

 

 それだけ言うと、鮫島は席を立った。彼がアグネスタキオンと出会うのはこの翌年の事になる。

 

「じゃあ、俺も行くか。お前はどうする」

 

「俺もタマが待っているからな。もう出るよ」

 

 残った二人も立ち上がるとそれぞれのチームのホームへ足を進めるのだった。

 

 …

 ……

 …………

 

「タマ―、遅れてすまない。早速、今日の練習なんだが――」

 

 校庭の端に建てられたプレハブ小屋、もといチームアンタレスのホームに足を踏み入れたトレーナーはそこまで言って動きを停止した。

 現在、チーム・アンタレスに所属しているウマ娘はタマモクロスだけ。

 だが彼女以外のウマ娘がいれば驚きもしよう。 

 

「……やぁ、君か」

 

 しかもそれが今話題のオグリキャップ。さらにそんな彼女が、さも当然のように座っていれば驚きもするだろう。

 

「な、なんでオグリキャップが……」

 

「いやすまんなぁ、トレーナー。オグリの奴、ぎょうさんな数の人に追われとったんで、ここにかくまったんや」

 

 奥の方からエプロン姿のタマが現れた。

 

「そ、そうか。そうだったのか……で、タマ。お前は何をしているんだ」

 

「オグリが腹空かせてしゃーないからな。たこ焼き作っとたんや」

 

 確かに何となく芳ばしい香りが漂ってきていた。当のオグリキャップも待ち遠しいのか、そわそわしている。

 

「成程。たしかにタマのたこ焼きは絶品だからな」

 

 関西出身のタマモクロスはたこ焼き作りが妙に上手い。トレーナーもよく作って貰って食べていたので、その美味しさは折り紙つきだ。

 タマモクロスはそのまま奥に戻って、すぐに出来たてホカホカのたこ焼きを器に盛ってやってきた。

 

「さ、出来たで! タマモクロス特製、熱々ふわとろたこ焼きや!」

 

 ドン! と置かれた皿にはソースと青のり、そして鰹節がふんだんにかけられたたこ焼きがズラリ。

 それを見たオグリキャップはじゅるりと、垂れてきた涎を袖でぬぐっている。

 

「トレーナーも食いや! 出来たてが一番美味いんやで!」

 

「じゃあ御言葉に甘えるとするかな」

 

 そう言うとトレーナーは爪楊枝でたこ焼きを一つ突き刺すと、そのまま口へ放り込んだ。

 

「……うん、美味い。やっぱりタマの作る料理は美味いな」

 

「えへへへ……そうか? そら嬉しいな。どや、オグリも……」

 

 そこでタマモクロスの言葉は途絶えた。何だろうとトレーナーもオグリキャップの方を見る。

 そして絶句した。

 

「はふっ……うん、おいひぃな。タマ、おいひぃいぞ」

 

 ハムスターの如く、頬をパンパンに膨らませたオグリキャップの姿がそこにはあった。

 

「健啖家と聞いてはいたが、ここまでとは……」

 

 トレーナーもさすがに驚いたようだ。

 そんな二人に対しオグリキャップは詰め込んだたこ焼きをもぐもぐごっくんと飲み込むと、満足気に大きく息を吐いた。

 

「ああ、美味しかった……」

 

「そ、そうか。そう言ってくれると嬉しいもんやな」

 

 タマモクロスは嬉しそうに頭をポリポリと掻いた。これでオグリの空腹も収まったかに思えたが……

 

 ――ぐぅううううううっ!

 

「……嘘やろ」

 

「あのマルゼン以上の食欲か……」

 

「タマ、お代りはないのか?」

 

 戦慄するトレーナーとタマモクロスであったが、当のオグリキャップは涼しい顔でお代りを要求する。

 タマモクロスはウマ娘の中で少食であるし、トレーナーも彼女に四年も付き合っているので自然と食が細くなっていた。

 

「うー、もうタコはないで」

 

「そ、そうなのか……それは、残念だ」

 

「……よし。じゃあ今度は俺が作ろう」

 

 すると今度はトレーナーが腕まくりをすると奥へと向かっていく。

 

「む、君が作るのか?」

 

「ああ。タマほど上手くはないけどな」

 

 それだけ言うとトレーナーはホットプレートを持ち出して、電源を入れる。そのまま冷蔵庫から食料を取り出して、食材を刻み始めた。

 

「……いつも、こんな風なのか?」

 

「何がや?」

 

「タマのチームさ」

 

 それを待ちながらオグリはタマに尋ねた。

 

「……まぁ、あながち間違いやないな。こうやって時々、お互いに飯作るんや。ウチもトレーナーも粉物なら得意やからな」

 

「そうか……いいな」

 

 今までオグリが見てきたチームとは一風変った雰囲気だ。程よい緩やかさが何だか心地よい。

 やがて奥の方から芳ばしい香りとソースの匂いが漂ってきた。

 

「よっしゃ、出来たぞ! 俺流特製お好み焼きだ!」

 

 そう言ってトレーナーは皿に盛った料理を持ってきた。

 湯気の立つその料理を見て、オグリは目をまん丸に見開いた。

 

「な、なんだこれは。初めて見るものだ」

 

「おう、お好み焼きは初めてかい。これは俺の故郷のソウルフード、広島のお好み焼きだ!」

 

「広島? 確かに初めて見るな。私の知っているお好み焼きとは違うな」

 

「ああ。ボリュームならなんと言っても、広島のだ! さあ食え食え」

 

 オグリキャップは目を輝かせると、トレーナーが切り分けたお好み焼きを一つ箸で取って口の中に放り込んだ。

 

「んんっ! これは……」

 

「美味いかい?」

 

「ああ……とても美味しい……タマのたこ焼きに勝るとも劣らない……」

 

「そ、そうか……」

 

 直球に褒められて嬉しかったのか、トレーナーは耳を朱くして頭をポリポリかいた。

 

「あーホンマ美味いな! トレーナーの『モダン焼き』は!」

 

 が、タマモクロスの放った一言により、彼の笑顔は一瞬で消え失せた。

 

「タマ……貴様、今なんと言った?」

 

「いやートレーナーの『モダン焼き』は最高やな! 舌の上で蕩ける美味しさや!」

 

 言葉ではトレーナーのお好み焼きを褒めている。だがトレーナーはそう思っていないことは、オグリも空気で察した。

 

「ど、どうしたんだ二人とも。なにがあったんだ」

 

 突然の展開にオロオロするオグリだったが、肝心の二人は話を勝手に進めていく。

 

「これは広島人の魂の一つ、お好み焼きだ……モダン焼きでは無い……」

 

「モダン焼きやぁ~、本物のお好み焼きは関西風だけや」

 

 挑発するようにタマモクロスは言うと懐から金属のヘラを取り出した。

 

「……『本物』っつうモンを見せたる。覚悟しぃや」

 

「望むところだ。俺も本気の肉玉そばを見せてやる」

 

「よっしゃ、オグリ! 審査は頼むで!」

 

「え……いきなりどうした」

 

「戦争だよ……俺とタマには絶対に譲れないモノがあるんだ……」

 

 突然怒り始めたトレーナーと、それに対して何故か戦う構えを見せたルームメイトに、流石のオグリキャップも混乱する。

 だがそんな彼女を尻目に、二人は各自でお好み焼きを作り始めた。

 普通の人間、もといウマ娘ならあまりの急展開にさらに混乱を深める所であるが……

 

「待てよ。つまり私は、あと二枚お好み焼きが食べられるのか」

 

 うんうんと頷くと、オグリキャップは喉をゴクンと鳴らしながら着席する。

 冷静さを失った広島人と、悪ノリした関西児。そして天然マイペースの笠松ウマ娘しかいないこの空間。この異常事態を止める者など、存在しなかったのであった。

 そして数十分が経過した。 

 

「おお……これはどちらも美味しいな」

 

 出来上がったそれぞれのお好み焼きを、オグリはホクホク顔で頬張っていた。

 

「……認めたくは無いが流石はタマが作っただけはある……美味いな」

 

「トレーナーのもな……これは引き分けかな?」

 

 タマモクロスはそう言って不敵に笑うと、トレーナーもニヤリと笑ってガッチリ握手を交わす。どうやら決着は引き分けで落ち着いたらしい。

 

「んん……しかし、二人が羨ましいな。毎日、こんな美味しいモノを食べているのだろう?」

 

「いや、毎日っちゅう訳じゃ無いけど……でも、こんな風にお互いで作ることはあるな」

 

「オグリキャップがウチに入ってくれたら、毎日作ってあげるのになぁ」

 

 トレーナーは冗談のつもりで、何気なしに言った言葉だった。

 だが。

 

「何……それは本当か?」

 

「ん、ああ。まあな。でもそれくらいじゃ」

 

「入る」

 

「え?」

 

「私はここに入る」

 

「は……い、いきなり何を言うてんねんオグリ」

 

「私はこのアンタレスに入る。駄目か?」

 

「…………」

 

 突然の衝撃的発言に、トレーナーとタマモクロスは思わず固まってしまう。

 

「ま、待てぃオグリ。本気で言っとるんか?」

 

「ああ……本気だ」

 

 迷い無く言い切るオグリキャップにタマモクロスは頭を抱えた。

 

「ええか、オグリ。チームっていうたらウマ娘にとって一番大事な所やで? ウチのチームに入りたいってのは、嬉しいけど……そんな簡単に決めるとかはないで。もう少し真剣に考えんと」」

 

「俺はオグリが入ってくれるなら、大大大歓迎なんだが……」

 

 トレーナーとしてはオグリキャップは喉から手が出るほど欲しいウマ娘だ。

 だが大手チームに引っ張りだこな彼女が、こんなに軽くチームに入りたいと言ってくるとは思わず、困惑しているというのが今の状況だった。

 

「……いや、真剣に考えているつもりだ。タマは今の私にとって一番の目標だ。タマと一緒に競い合えば、私はきっと強くなれる」

 

「お、おお……」

 

 大真面目に言うオグリキャップに、タマモクロスは少し赤面する。純粋で真っ直ぐな評価にまだ慣れていないのだ。

 

「それに君のトレーナーとしての能力は、前のタマの併走の時に分かったつもりだ。それに他のトレーナーと違ってあんまりしつこく無かったし……」

 

 相当、迷惑な勧誘を受けたのかオグリキャップは少しだけ不満そうに顔をしかめた。

 確かにここ数日の彼女に付きまとうトレーナー達の数は以上であったので、辟易した面もあるのだろう。

 

「だからこのチームに入ろうと思ったんだ……いけないかな?」

 

「…………」

 

 正直、トレーナーはオグリキャップが自分のチームに入る可能性など微塵も考えていなかった。

 才能もあり、顔も実力も知れ渡っている彼女はきっと設備もしっかりしていて強いウマ娘のいるチームへ行ってしまうのだろうと、悟ったように思っていた。

 だがそのオグリキャップが今、自身のチームに入りたいと言ってくれている。

 トレーナー冥利につきるとしか言い様がなかった。

 

「大歓迎だ、オグリキャップ! チームに入ってくれて本当にありがとう……!」

 

「ちょいちょいトレーナー! こんな上手い話、あるわけ……」

 

「タマは……私がチームに入るのは嫌か?」

 

「……あー、もう! そんなことあるわけないやろ、もーっ!」

 

 タマモクロスも本音ではオグリキャップが同じチームに入ってくれることを喜んでいた。しかし彼女の才能と自身のチームの現状を考えて、難しいだろうと考えていたのである。

 

「これからよろしくな、タマ。トレーナー」

 

 お好み焼きをモグモグ頬張りながら、オグリキャップは柔らかく微笑んだ。

 一方、トレーナーとタマモクロスは嬉しさからか体を震わせて、興奮気味にせわしなく動き回るのであった。

 

 ――こうしてオグリキャップ先輩はアンタレスに所属することになりました。

 何というか、あっさりというか味気ないというか……それもまたオグリ先輩らしかったのかもしれません。

 ですがオグリ先輩に、そしてアンタレスに受難が訪れるのはこの後のことでした。

 弱小チームの悲哀というモノを、トレーナーさんは嫌というほど味わう事になるのです―― 

今後、展開について

  • 基本的にコメディで、時々シリアス
  • 基本的にシリアスで、時々コメディ
  • シリアスは無い方がいい
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