ウマが合うからいつも一緒   作:あとん

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遅くなってすいません。


ダイワスカーレット

タマに引っ張られて俺とグラスは、ホームであるプレハブ小屋に辿り着いた。

薄い扉を潜って中に入ると、先程タマが言っていたように、チーム・アンタレスのメンバーが既に集まっている。

 

「遅いっ!」

 

俺が入ってくるなり、一番出入口に近い椅子に座っていたウマ娘がそう叫んだ。

 

「す、すまん、スカーレット」

 

俺はすぐにそのウマ娘が――ダイワスカーレットに頭を下げた。その様子を見た彼女は不機嫌そうに腕を組んで、こちらを睨んできた。

 ダイワスカーレット。それが彼女の名前である。

 チーム・アンタレス、最後のメンバーにして期待のルーキー。今年、中等部に入学してきたばかりの彼女は、このチームの最年少でアンタレスに所属してから日も浅い。だが既に先輩達とは打ち解け、俺にはタメ口を使ってくるほど馴染んでいた。これで普段の学園生活ではアイドル的存在の優等生で通しているのだから、凄いものである。

 

「全く! 一番を目指すためにはそれに見合ったトレーニングが必要なのに……そのトレーニングを指導するアンタが遅れちゃ、世話無いじゃない」

 

 真面目で時間に厳しいスカーレットは、俺の遅刻にご立腹のようだ。すると俺の後ろにいたグラスが、すーっとスライドしたような自然な動きで、俺の前に移動した。

 

「ごめんなさいスーちゃん。私がここに来る途中、トレーナーさんと偶然出会ったの。そして二人で少し話していたら、遅くなってしまったわ」

 

 丁寧に頭を下げるグラス。だがスカーレットは何やら面白くなさそうに、眉を吊り上げた。

 余談だが、スカーレットのことをグラスは『スーちゃん』と呼んでいる。ちなみにタマとオグリは、彼女のことを『ダスカ』と呼んでいた。

 

「ふぅん。二人で、ね」

 

 そして何やら怒りの目線を俺にぶつけてくるスカーレット。どうやら相当怒っているようだ。

 

「ごめんなさいね、スーちゃん。トレーナーさんと二人で話し込んじゃって……」

 

「いえいえ、グラス先輩のせいじゃないですよ! 責任はこのバ鹿トレーナーにありますから! 全く、今日はアタシのトレーニングに付き合ってくれる約束だったのに!」

 

 スカーレットは立ち上がってそう言うと、俺の腕を掴んで言った。

 

「ま、待て待てスカーレット! 大事な話があるんだ」

 

「そうですよ、スーちゃん。トレーナーさんが困ってますよ」

 

 何だか不機嫌そうなスカーレットと、それを能面のような笑顔で受けるグラス。

 この二人、決して不仲という訳では無いのだが、時たまピリついた空気になる時があるのだ。

 個人的には仲良くして欲しいのだが・・・・・・

 ちなみにオグリはタマが焼いたであろうたこ焼きを嬉しそうに頬張っていた。俺が作った焼きそばは、もう平らげてしまったようだ。

 

「落ち着きぃや、二人とも。トレーナーはわざわざ、たづなさんに呼び出されたんや。きっと大変な話があったはずや」

 

 タマが何とか助け船を出してくれたので、俺はこれ幸いと便乗することにした。

 先程、理事長室で下された宣告。一ヶ月以内に正式なメンバーを集め、チームを再編成しなければアンタレスは解散しなければならない。

 それを皆に伝えた。

 暫し、沈黙が流れる。

 流石に話が話だけあって皆、暗い顔をしていた。

 タマもグラスも、オグリでさえたこ焼きを摘まみながらではあるが俯いていた程だ。

 

「なる程ね。つまりあと一人集めれば、チームは存続できるって事じゃない!」

 

 だがその沈黙を破ったのは、スカーレットだった。

 彼女は勢いよく立ち上がると、拳を握ってそう言い放った。

 

「だ、ダスカ。そうは言うてもなぁ・・・・・・今までこのチームにはほとんど新しいウマ娘は入ってこなかったんやで」

 

 タマが困った顔でそう言うも、スカーレットは自信満々に言葉を続けていく。

 

「タマ先輩! 今年はこのアタシが入っています! 一ヶ月もあればあと一人くらい、皆で勧誘すれば不可能じゃありません!」

 

 そうだ。

 このダイワスカーレットは、現チームで俺の勧誘ではなく、自らの意思でアンタレスに入ってくれたのだった。

 

 ・・・・・・遡る事、一ヶ月前。

 スカーレットはデビュー戦を控え、とあるチームの選抜テストレースに顔を出していた。

 常に一番を目指す。

 それが信条のスカーレットが、トレセン学園最強とも言われるチーム・スピカのテストに顔を出すことは当然であった。スピカといえば、トウカイテイオーやサイレンススズカ、ゴールドシップといった名ウマ娘が所属する強豪チームで、URAシリーズ創世記から活躍する名門チームだ。スピカのトレーナーは俺の師匠である桐生院先輩と同期で、俺達世代かしたら憧れの存在である。そんなスピカにスカーレットが目を付けるのは、自然なことだった。

 だがこのレースでスカーレットは二位の結果に終わってしまう。一位を取れなかった悔しさは勿論、その時の一位がよりによって同室で日頃からライバルとして競いあっていたウオッカだったのが、スカーレットの怒りをより燃え上がらせた。彼女はスピカのトレーナーの勧誘を断り、別のチームに入ることにしたのだ。同じチームでは満足にウオッカと勝負出来ないからである。

 スカーレットはすぐに新しいチームを探すべく、学園の掲示板に足を運んだ。そこには様々なチームが勧誘のポスターを貼っていたのであるが、そこで彼女は隅っこに掲示されている小さな手書きのポスターを見つけたのだ。

 

「このポスターにビビっと来たわ!」

 

 勢いよく入ってきたスカーレットの手に握られていたのは、俺が手書きしたアンタレスの勧誘ポスターだった。

 ちなみに手書きなのは単純に金が無いから。印刷所に頼むことは出来ないし、だからといってPCで簡単に作るのは味気ないと思い、手書きにしたのだ。

 デザインはシンプルにサソリ・・・・・・に見えるが実は仮面ライダーV3に出てくるデストロンのエンブレムを丸パクリしたものだ。余談だがこの事に気が付いたのはマルゼンだけであった・・・・・・

 まあそんな感じでやって来たスカーレットであったが、久々のメンバーしかも新入生。そりゃ嬉しいに決まっている。

 皆で大歓迎し、逃がさないように気を使いまくった。さらにスカーレットは期待の新人だけあって、指導すれば指導するほど期待通り伸びていってくれたのだ。

 今や、チームの有力株。ライバルであるウォッカとのレースでも、一進一退の攻防を繰り返すまで成長していた。

 

「それにアタシはこのチーム・アンタレスで一番になるって決めたんだから、こんな所で終わらせたりしないわよ!」

 

 そう言って自信満々に大きな胸を張る彼女を見ていると、本当にどうにかなりそうな気がしてくるのだから不思議である。 

 プライドが高くて、負けず嫌い。そんなスカーレットだからこそ、ここまで強くなれたし、俺も惚れ込んだのだ。

 

「・・・・・・せやな! くよくよしとっても始まらん! 残り一ヶ月、バリバリ勧誘活動するで!」

 

「私もレースに出場し、チームの名前を売ろう。勝ち続ければ、いずれ誰かの目にも留まるだろう」

 

「中等部を中心に私も勧誘をしてみようと思います。もしかすると別のチームから移ってくれる方もいるかもしれませんし」

 

 一番後輩のスカーレットがここまで言っているのだ。先輩達が奮起しない訳にはいかないだろう。

 タマもオグリもグラスも先程の暗い雰囲気は吹き飛び、勧誘活動へのやる気に満ちていた。

 

「スカーレット、ありがとな。お前のおかげで、希望が湧いてきたよ」

 

「ふふ、当然じゃない! アタシを誰だと思っているの!」

 

「ああ、チームアンタレスの一番槍・ダイワスカーレットだ」

 

「えへへ・・・・・・」

 

 俺は思わず感極まって、スカーレットの手を握った。照れくさそうに彼女ははにかんだ。

 

 ――ドスン。

 

 何かが俺とスカーレットの間を通り抜け、直後に壁に何かが刺さった。

 思わずそちらに目を向けると、そこには薙刀が刺さっていた。薙刀が刺さっていた。薙刀が――

 

「え、ええええええっ!? 何!? 何!?」

 

 突然、凶器を投げつけられた衝撃で俺は動転して掴んでいたスカーレットの手を離した。

 すぐに飛んできた方向へ目をやると、グラスが張り付いたような笑顔でこちらを向いている。

 

「邪な気配を感じましたので~」

 

 ニコニコ笑ってそう言う彼女だったが、背後から妙にどす黒い雰囲気を出しているのは気のせいだろうか。

 

「・・・・・・グラス先輩、ちょっと危ないじゃないですか。もしトレーナーに当たったら、大変でしたよ」

 

「大丈夫よ。トレーナーさんには決して当てないから」

 

 『には』の部分がやけに強調されていた気がする。あ、笑顔のスカーレットの額に青筋が・・・・・・

 

「ウマ娘の先輩として尊敬していますし、チームの仲間として信頼してますけど・・・・・・こればっかりは譲れません」

 

「あらあら、私もよ~」

 

「あはは・・・・・・」

 

「うふふ・・・・・・」

 

 何だろう、二人とも笑っているのにこの背筋に流れる嫌な汗は。

 グラスもスカーレットも普段は普通に仲の良い先輩後輩なのに、時々妙に重い雰囲気を出すのはなんでだろう・・・・・・

 

「トレーナーはもっと女心っちゅうもんを理解した方がええな」

 

 いつの間にか俺の横に来たタマが、脇腹を小突く。オグリもたこ焼きを頬張りながら、コクコク頷いていた。

 

「・・・・・・まあ、何はともあれあと一ヶ月。皆で頑張っていこうじゃないか」

 

 これ以上深入りをすると、大変な事になりそうなので俺は強引に話を締めた。

 だが、この狭い部屋を見渡して皆の顔を見ていると不安な気持ちもふっとんでいくようだ。

 必ず、最後の一人を見つけてチームを再興しよう。

 そう心に誓うのだった。

今後、展開について

  • 基本的にコメディで、時々シリアス
  • 基本的にシリアスで、時々コメディ
  • シリアスは無い方がいい
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