ウマが合うからいつも一緒   作:あとん

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ご褒美

「ハルウララ、初勝利おめでとうっ!!」

 

『かんぱーいっ!!』

 

皆の掛け声と同時に、6つの紙コップが重なりあった。

我がチーム・アンタレスのホームであるプレハブ小屋の一室で、ささやかながらウララの初勝利を祝う打ち上げが開かれているのだ。

 

「みんな、ありがとーっ!」

 

今日の主役であるウララは所謂お誕生日席に座り、ジュースの入った紙コップ片手で嬉しそうに笑っている。

テーブルにはお菓子や俺の作った焼きそばが置かれ、早速オグリが喰らいついていた。

 

「よぉーく、見とくんやで! これがタマモクロス直伝! 浪花のたこ焼きやーっ!」

 

さらにタマがノリノリでたこ焼きを次々に量産している。彼女の意外に几帳面な性格が出ているのか、均整の取れた綺麗な球体が各紙皿に平等に盛られていく。

 

「へい、一丁上がり! コメの準備はええかっ!」

 

 小気味よくタマが言うと、オグリがコクコク頷いて炊飯器から白米を盛り始めた。

 

「粉ものにご飯を?」

 

「炭水化物に炭水化物?」

 

 グラスとスカーレットが首を傾げたが、これが関西の食文化なのだからしょうがない。

 山盛りのたこ焼きをおかずにご飯を頬張るオグリの姿に、軽く引くグラスとスカーレットに俺は苦笑しながら、一つ摘まんで口に入れた。

 

「ん、これは……中身がタコじゃないな」

 

「せやで。タコだけじゃ飽きると思って、色々入れたんや」

 

「これは……ハムか?」

 

「せや! 他にもいっぱい味があるで!」

 

「あ……これはカニカマですね」

 

「美味しい! タマ先輩、これはトマトですね!」

 

「わぁ~っ! チーズだっ~」

 

 タマ特製のアレンジたこ焼きに、皆が舌鼓を打っていく。彼女は幼い時から母親の代わりに下の弟妹たちの面倒を見てきたのもあって、料理が上手い。

 特に粉物やもやし・ハンペンの料理は、俺も素直に降参するほどである。

 

「さすがタマだな」

 

「おおきに。はい、トレーナーも食べや」

 

 ちょっと照れているのか、頬を若干朱く染めて頭を掻くタマからたこ焼きをさらに受け取り、頬張っていく。

 熱々で外はカリカリ。中はとろっとした最高の焼き上げだ。

 

「でも本当にウララ先輩が勝って良かったですね」

 

 暫くしてスカーレットが言った。

「ああ、本当によくやってくれた。皆が練習に協力してくれたおかけだ」

 

皆、自分の練習があるにも関わらず、それでもウララのために一緒に頑張ってくれた。それにどれだけ助けられたか。

 

「でもやっぱり一番は、ウララ自身が頑張ってくれたおかげだよ」

 

 俺はそう言って、隣にいたウララの頭を撫でた。正直、ウララをモノにするためには、時間が無さすぎた。それをどうにかするには最低限の問題を解消し、あとは本人のポテンシャルにかけるしかなかったのだ。そしてウララは俺の言うことをよく守り、走り抜いてくれた。

「頑張ったな、ウララ」

 

「えへへへ。初めて勝ったよ」

 

「嬉しかったか?」

 

「うんっ! レースはいつも楽しいけど、勝つともっと嬉しかったよ!」

 

「そうか。よかった。俺も嬉しいよ」

 

俺はそう言ってウララの頭を撫でた。気持ち良さそうに目を細めながら、ウララは頬を緩めて破顔した。

「ちょいちょい、トレーナー。頭を撫でたい気持ちも分かるが、ウララやってもう中等部3年なんやで。子供扱いしちゃ失礼やろ」

 

「おお、すまんウララ」

 

確かにそうだと思い、俺は慌ててウララの頭から手を離した。

 

「え? ウララは大丈夫だよ?」

 

 だがウララは首を傾げてそう言った。

 

「ウララ、トレーナーに頭を撫でられるの、気持ちよくて好きだよ」

 

「そ、そうか。よかった」

 

嫌だったらどうしようと思ったが、杞憂だったようだ。ヘタすりゃセクハラ扱いを受けるかもしれんしな……ウララでよかった。

 

「ねぇ、トレーナー。またレースで勝ったら頭を撫でてくれる?」

 

「ああ、勿論だ。いつでも撫でてやるよ」

 

 上目遣いでそう尋ねてきたので、俺はそう答えてこらまた頭を撫でてやる。

 

「ほう……」

「へぇ……」

 

「あらあら……」

 

すると、何故かオグリとスカーレットとグラスからそんな声が聞こえてきた。

何かとそちらを見ると三人が真剣な表情で、こちらに視線を向けていた。

 

「ど、どうしたんだ皆」

 

三人の凄みのある顔に、俺は思わずたじろいでしまう。

 

「なんでもないって。次のレース頑張ろってやつや」

 

タマが簡単にそう言ったが、そうは見えないのですが……それはそれとして。

 

「次のレースはいよいよチームレースだ」

俺のその言葉に、皆が息を呑んだ。タマもたこ焼きを焼く腕を止めて、静かに聞いていた。

 

「アンタレスが最後にチームレースへ参加したのはもう、5年も前だ。そのときのメンバーはもう残っていない」

 

マルゼンが抜けてからチームは一人抜け、二人抜け……半年で0人となった。それからタマが来るまでの半年間は、文字通りの暗黒時代だった。タマが入ってからもウマ娘は戻らず、オグリやグラスが入るまで一年を要した。そして今年、ようやくスカーレットとウララが参加し、チーム・アンタレスは規定の数を揃えたのである。

 

「本来ならチームに誰もいなくなった時点で、アンタレスは解散しなくてはいけなかった。しかし今までのマルゼンの功績で、何とか存続を許して貰っていた」

 

他のトレーナーたちから見れば変に贔屓されているように見えただろう。実際、俺への当たりは強かった。

 

「そしてお前たちが入ってからは、各個人がレースで活躍していたから、存続できていた。全部、皆のおかげだ」

 

 タマがまず活躍し、オグリが持ち前のスター性でレース盛り上げた。

 あまりよくは思わなかったが、マルゼン二世と呼ばれるグラスが俺のチームに入ったのも話題になった。あれだけ嫌がっていた『怪物二世』の渾名を、グラスはチームの名が売れるならと笑って許してくれるようになった。

 何もしてやれない自分が情けなかった。

 結局、ウマ娘の自力におんぶにだっこなのかと悩んだ時期もあった。

 

「……俺に出来る事は皆にチームでも勝たせてあげることだけだ。その練習はしてきたつもりだ。だから俺は皆なら勝てると思っている……だから……」

 

 一呼吸。そして皆の顔を一人ずつ見て、言った。

 

「チームレースを楽しんできてくれ」

 

 しばしの沈黙。

 それを破ったのはタマだった。

 

「何言っとんや。ウチらはトレーナーが育てたウマ娘やぞ。楽しんで勝ってくるに決まっとるやろ!」

 

 屈託のない満面の笑み。この笑顔に俺はどれだけ救われてきただろうか。

 

「安心してくれトレーナー。きっと勝つ。勝ってみせるさ」

 

「……マルゼン先輩が成したチームでのURA制覇。これをしなくては、あの人を超えたことにはなりませんからね」

 

「アタシは個人でもチームでも一番になるって決めたのよ! それを支えるアンタが弱気になってどうするの!」

 

「ウララも頑張るよ! 皆で一番を目指そうっ!」

 

 ……目頭が熱くなった。

 本当に。本当によく、こんな俺に皆が付いてきてくれた。

 彼女たちに報いるのは勝たせてあげるしかない。

 アンタレスをかつてのマルゼン時代以上のチームへと変えていくのだ。

 苦しい、しかし皆となら出来る気がした。

 

「さ、さっさとたこ焼き食った方がいいで。冷めたら不味なるからな」

 

 タマがそう言って再びたこ焼き作りを再開する。

 すぐに部屋の中がソースの良い香りに包まれた。

 

「皆、ありがとう」

 

 俺がそう言うと、皆は花のように笑った。

 その日、和やかな雰囲気のまま、ウララの祝勝パーティーは続けられたのだった。

 

 …

 ……

 …………

 

「勝ったら私も頭を撫でて貰えるのか……」

 

「うふふ、トレーナーさんに……」

 

「勝ってなでなでよ……絶対に負けられないわ……」

今後、展開について

  • 基本的にコメディで、時々シリアス
  • 基本的にシリアスで、時々コメディ
  • シリアスは無い方がいい
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