IS 〈インフィニット・ストラトス〉 蘇りし帝国の亡霊 作:トッキー
漸く書けました!!……が、全然進んでない…。
ガッデム!!
今の織斑千冬の心中には、様々な感情が蠢いていた。家族の一夏が誘拐されたというのもあるが、目の前にいる侵入者の強さに圧倒されているのも関係した。
少しでも離れようとすれば、敵が持っている重火器による弾幕の嵐が襲い掛かり、接近戦に持ち込もうとするとその鈍重そうな見た目に反し、中々の反応速度を見せ付けてきたのである。
もし目の前の敵(バケモノ)が会場の外に出てしまったら、更なる悲劇は免れないだろう。
だがそんな思いを余所に、敵は更に攻撃を仕掛けようとしてきており、彼女は退けようとしたが、鍔 迫り合いに持ち込む事すら厳しいものがあった。
何故<ブリュンヒルデ>ともあろう人物がこれ程までに遅れを取っているのか。
それは彼女自身と互角に戦う存在が今までいなかった事も大きい。彼女自身、心の何処かで教導やそれに伴う技術を、『教えてやっている』というある種傲慢に近い感覚によって 周囲に教えていたのである。
そしてその感覚に、彼女自身薄々気付いてもいた。しかし日々の生活の中でそれが当たり前のものと考えるようになってしまい、段々気にも留めなくなってしまっていたのだ。
だがそんな傲慢に近い感覚も、今の戦闘によって恐怖や焦り、そして喜びと共に払拭されようとしていた。
自身を打ち破るかもしれない敵に対する恐怖と、ようやく戦う相手が見つかった喜び、そして唯一の家族の元へ速く駆けつけねばならない焦燥等、様々な感情が今の彼女の心の中に存在していたからである。
そんな思いを他所に、目の前の敵はまたもバズーカ砲や肩に鎮座している大砲の砲口を千冬に向け、排除しようと弾幕を展開させた。
それは煙幕を作り出すと共に、自身の行動の障害ともなる会場の名残を、悉く瓦礫の山に変えていったのである。
煙幕が作り出され周りが全く見えなくなり、千冬はサーモグラフィーを展開させた。すると目の前にいたあの侵入者は姿を消していたのである。
すぐさま千冬は周囲を確認したが、人影らしいものは何もなかった。
「逃げたか」
彼女はそう口にしたが、突如警告が鳴り響いたのである。
――――警告、直上から急速に接近する物体有り――――
「!?」
千冬はブースターをも使い、今立っている場所から飛び退いた。次の瞬間には、そこには轟音と土煙が上がっていた。
なんとあの侵入者は、瓦礫をハンマーのように使いながら、彼女を押し潰そうと真上から襲い掛かったのである。
地面は決して浅くはない程に陥没しており、いくら絶対防御があるからといえども、完全に防ぎきれるか分からなかった。
だが今の彼女にしてみれば、それ程『やりがいがある相手』というように受け止めており、正常な判断が付きにくくなっていたのである。
だが再び緊張によって張り詰めていた空気を、ディーゼルエンジンとキャタピラの駆動音、そして煙霧を切り裂き、侵入者に命中した一発の砲弾が打ち消したのである。
・・・
そこにいたのは、かつてドイツが誇る最新鋭だった戦車、レオパルド4が存在していた。この戦車は、アメリカが誇るエイブラムス・タンクシリーズの全てを上回る性能を有し、そしてなにより、緊急時には操縦や射撃等の必要な動作の全てを、搭乗員一人で行う事が可能であった。
しかしながらも、ISの台等によってこの戦車は僅かの台数を残し、退役した代物であった。
何故この戦車がここにあるのか。それは、今回のモンド・グロッソ開催における警備の為に、『無いよりはマシ』という事から、全くの新品の状態で払い下げられた本車が数両配備されていたのである。
『<ブリュンヒルデ>、御無事ですか!』
スピーカーを通して聞こえてきたのは、あまり若くはないであろう男の声であった。そして侵入者の方に目をやると、なんとIS数機の攻撃を受けても僅かな破損しか負わなかったものが、砲弾―――恐らく徹甲弾だろう―――を受け、なんと片膝を着いたのである。しかも砲弾が命中した箇所からは、装甲が剥げ落ち、中の配線や機器が火花を上げながら丸見えになっていた。
先程のIS部隊の攻撃では傷一つ付かなかったのに、何故たかが砲弾一つでここ迄傷付いたのか?
それは偏にベイル・エネルギーがもたらす欠点に依るものであった。
これは完全なる偶然だが、ベイル・エネルギーに守られた物体は光学系の兵器全般を無力化する能力を得る事が出来る。だが逆に、実弾系や刃物による攻撃に対しそれ程効果がある訳ではない為に、守られるべき対象は自身の装甲に頼らなければならなかったのである。そして専らこのエネルギーは、装甲服等を使用する者の肉体補助、及び装甲服の動力補助にも使われていたのである。
これが侵入者の肩の装甲部分が傷付いていた理由である。因みにこの装甲部分を傷付けたのは、なんとISを身に着けていない特殊部隊の一人が放った、百数十発余りの鉛弾だった。
余談だが、この事は第二次大戦時におけるシュトラッセ博士率いる研究チームの課題の一つになっており、ヒトラーが直々に『克服する為には、どのような犠牲を払っても構わない』という命令を下したという逸話も残っている。この事から、ヒトラーが如何にこの未知なる力を熱望していたかが窺えるだろう。
そして後にエネルギーを圧縮する事で、銃弾や砲弾を弾き返す程のエネルギー波を生み出す事に成功したが、それは時間もコストも掛かるものであり、前線の大量投入には程遠いものとなってしまったのである。
だがその場にいた者達はそのような訳も知る由もなく、ただ単に『攻撃が効いた』程度にしか考えていなかった。
普通ならば、強力な味方が現れたと喜ぶだろう。
だが千冬はこれを見て、そして『獲物を取られるかもしれない』という、先程とは別の焦りが自分の中で生まれるのを感じた。
「違う…。それは、私の…」
そして千冬は、よく注意していないと聞こえない程の声で呟いた。
だがそんな彼女の願いに近い呟きも、戦車の自動装填装置による度重なる砲撃によって虚しく掻き消えた。
そして行動する間も無い程に十数発以上の砲弾を浴び続けた侵入者は、なんと次の瞬間には自身の左肩を犠牲にして戦車に突っ込んでいったのである。
体当りされた戦車は、ぶつかった瞬間に吹き飛ばされ、転がり爆発炎上し、中にいた元陸軍将校だった操縦者は、脱出する間もなく愛車と運命を共にした。
侵入者は、もはや満身創痍といっても良い状態になっていた。装甲部分は僅かに残り、左腕は根元から欠落。そして中の配線や機械類、そして関節等からは絶えず火花が上がっていた。
しかし決して倒れず、歩みを止めようとしなかった。
だが突如その足を止め虚空を見つめながら、ぎこちなく、そして奇妙な程に機械的な口調でこう言った。
『ニン、務…完、了…!』
「!!」
千冬はISを展開させながらも、急いでその場に身を伏せた。もしそうしなければ自分の身が危ないという一種の勘に従っての行動だった。
そしてその行動は正しかったと実感した。
次の瞬間には強烈な閃光と爆音、次いで爆風が彼女を襲い、彼女は五十メートル以上も吹き飛ばされたのである。
千冬は朦朧とする意識の中で、侵入者がいた場所に目をやった。そこには先程襲いかかっていたものとは比にならない程、大きな穴が開いていたのである。
ふと自分の額に手をやると、手に血が付いていた。絶対防御を展開させながらも、彼女の身には多大な負担が掛かっていたのである。
そして改めて彼女周囲を見回すと、天井に巨大な穴を開けたアリーナ、炎を上げ時折爆発する戦車、そして夥しい瓦礫と死体の山が目に入った。
「うっ、うおええええええぇぇぇぇぇぇ………!!」
死体を直視してしまった千冬は胃の中身を全てその場で吐いてしまった。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ…」
そして胃を空にし、呆然とした彼女は最愛の弟が囚われている場所へ向かった。まるで、惨劇から目をそらしその場から逃げるように…。
「一夏、一夏…。今、向かうぞ………」
今回は、千冬の色々な甘さや未熟さを表現させてみました。
如何でしたでしょうか?
もし宜しければ批評等宜しくお願い致します。