この素晴らしい世界にいる意味を 作:怪力軍曹イボイノス
われの未練はもうない。主君である皇帝ガナサダイは二度目の生ですら自らを夢を叶えることなく散っていった。そしてその父であり、ガナサダイに殺され、魂すらも封印された『名をうばわれし王』ガンベクセンも呪縛から解放され天に昇っていった。
国王をわれは理解することができなかった。国民に名君と称えられ、平和を望んでいたガンベクセン国王を理解できなかったのだ。
われはまだ末端の兵でしかあらず、まだ若く、何よりも力に焦がれていた。それはゲルニック、ゴレオンも同じ志だったのではなかろうか。われは剣の道を進み、ゲルニックは魔法、ゴレオンはただ馬鹿の一つ覚えのように力を求めていた。
ガンベクセンを殺してしばらくして、国王が王位を後に皇帝となるガナサダイに譲ろうとしていたことを知る。
『国王が生きている限り私の願いは叶うことは無い』と言う我が主君ガナサダイを止めることができなかったのも事実。我らなら止めることができたはずなのだ。
忠誠を誓っていたからこそ、我が主君の進む道を正すことができなかったことが未だに心苦しい。
皇帝が進んだ非道の道の先に出来上がった魔帝国ガナン。主君にとってはまだそれは通過点であったのには変わりはない。われの望みは我が主君の願いを叶えることでもあったのだ。
しかし、願い叶わずドミールの守護龍を前にして潰えた夢だ。
世界征服。われらが皇帝の悲願であり、彼が道を外したキッカケでもある。
…とやかく言っても仕方がない。『死人に口なし』死者が何を喚こうとも意味は無いのだ。生前戦った竜騎士以来の強敵と戦い、敗れたのだ。悔いはない。
故にわれに思い残すことは無いのだ。
だが、我らがしたことを神は許さぬだろう。
大勢を殺し、支配し、神の使いである天使でさえ手にかけた。
たとえ君主の命であったとしても許されぬことをしたのだ。
このまま消え果てるのも悪くは無い。
ただ一つ望むならば、あの若き天使が剣の果てを見ることを願う。
…そろそろだな。
さらばだ若き天使よ。
同士たち、我が主君。われ一人遅れたことを許してくれ。
そして魔帝国ガナンに仕えた名将ギュメイは長い生涯に終わりを迎えた。ガナン王国に仕え、魔帝国ガナン将軍として、そして天使エルギオスの力で生き返った二度目の生も幕を下ろした。
帝国三将軍の中で最強であり、誰よりも仁義に溢れ、溢れんばかりの狂気を抱えた皇帝ガナサダイに心から忠誠を誓っていた男。彼の墓は存在しない。彼を知るものはもはや数える程しかいないだろう。
魔帝国の将軍としてその剣技を奮っていたギュメイ将軍。彼はこの世に二度の生を受け、魔に身を落としてなお、心まで魔に落ちることのなかった偉大な剣士である。
そんな彼に安らかな眠りを
0話はあとからあげる予定でしたが、先に公開することにしました。
これから約一週間かけて、1話目の確認、0話の確認作業を行った後に1話目を投稿予定です。