GE2 OS・ブレイカー   作:黒槍

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原作をdisるつもりではありませんが、話のスケールをもっと大きくするべきだと思いました。

ライクディス。




 1-1 伸ばした手と始まり

――手を伸ばす。

 

あと少し、あと少しなのである。

 

あとは、止めの一撃を奴の心臓部に思いっ切り叩き込んでやるだけなのである。

 

だが、奴に切り落とされた情けない右腕は、あろう事か神機を手放してしまっていた。

 

すると、残った左腕がその跡を引き継ぐ事となり、その体を懸命に突っ張らせていた。

 

しかし、左腕がそれを成し遂げる前に、一つだけ問題があった。

 

それは何かというと、奴に止めを刺す事が出来る神機を制御するための腕輪が、右腕に装着されていたという事であった。

 

――手を伸ばす。

 

かといって、このまま奴に止めを刺さずにいれば、奴の能力によって落ちて来ている月はまもなく地球に衝突し、世界は新たに創り直される事となるだろう。

 

それは、人類の敗北を意味する。

 

そしてそれは、今この瞬間に辿り着くまでに預かった仲間達の命と意志を、全て無駄にするという事でもあった。

 

それは裏切りと同義であり、そんな事をするためにここまで来た訳ではないのである。

 

そんな事をするために、仲間達の命と意志を預かった訳ではないのである。

 

――手を伸ばす。

 

今や人類の命運は奴を…”レヴィ・ブラスピナ”を倒せるかどうかにかかっていた。

 

レヴィ・ブラスピナは、マントルを捕喰した事で地球を覆うほどに巨大な体躯を得た、世界最大のアラガミである。

 

それをここまで追い詰める事が出来たのは、この世界に生きる人々の戦う意志を、奇跡的に一つにまとめる事が出来たからであった。

 

あと少し、本当にあと少しなのである。

 

――手を伸ばす。

 

仲間達の声が脳裏に響く。

 

まるで、今この時この場所に、共に在るかのような錯覚さえ覚える。

 

まるで、今この時この場所で、背中を押してくれているかのように思える。

 

――手を伸ばす。

 

もう少し、あともう少し。

 

遂に左腕は限界まで背伸びをし、神機目掛けて全身全霊の体当たりを敢行する。

 

――そして。

 

何かを掴んだ、気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブラッドに配属されて、一日経ったその日。

 

およそベストコンディションどころか、アベレージコンディションにも満たない様子のそいつは、話しかけられた事にも気付かずに、長椅子の前を通り過ぎようとしていた。

 

「あのー…聞いてる?」

 

すると、長椅子にゆったりと腰掛けていた人物が、再びそいつに話し掛けた。

 

黒のショートパンツに、白い布きれを胸部に巻き、その上から腋丸出しのフード付きミニジャケットのようなものを羽織った少女は、犬耳というよりは猫耳ぽい髪を左右に揺らしながら、困った笑顔をそいつに向ける。

 

「ごめん……なに…?」

 

そこまでされてようやく気が付いたらしいそいつは、抑揚のないトーンで返事を返すと、少女の文字通り無防備な格好に驚きを隠せない表情になる。

 

「やっぱり!聞いてなかったんだ……えーっとねー……君も、ブラッドの新入りの人だよね?」

 

しかし、それに気付いていないのか、もしくは意に介していないのか、さして気にした様子もなく少女は話を進める。

 

「うん…」

 

「良かったー…!もしかしたら間違えちゃったのかも、とか思っちゃった!えへへ…」

 

そして、そいつが頷くのと同時に安堵の笑顔を浮かべた。

 

「あ!えっと、私もブラッドの新入りの、香月ナナです!よろしくねー!」

 

ナナと名乗った少女はそう言うと、そいつに向かって右手…に載った奇妙なパンのようなものを差し出した。

 

「うん…よろ、しく…?」

 

てっきり握手を求められたのかと思い、そいつは同じように右手を差し出そうとするが、途中で思い留まってしまう。

 

「?…あ……そうだよねー…」

 

その直後、戸惑うそいつの心中を察したのか、ナナという少女は表情に影を落とすと、小さく唇を噛んだ。

 

が、何かに気付いたようにすぐに顔を上げ、元の調子で元気一杯に振る舞う。

 

「…自己紹介!君の!私、うっかり聞きそびれちゃってたよー!そうだよね!フツー、お互いに自己紹介しないと変だよねー!」

 

そして、「さ!はりきってどうぞ!」と言わんばかりにそいつに顔を近付け、ナナは自己紹介を待つ。

 

その、目まぐるしく変わるナナの様子と、何とも言えない雰囲気に尻込みしながらも、そいつは恐る恐る口を開いた。

 

「え…と……ブラッド?に、配属された…その……名前は……何だっけ…?」

 

空気が、固まった。

 

「………あ、はは!うん!あるある!たまに緊張したりすると、名前何だっけ?ってなっちゃうよね!」

 

そんな空気を一笑のもとに融かしてしまうと、ナナは緊張をほぐすかのように話しやすい空気を作ろうとする。

 

「…えっと…アリス…?ベネット…?クリス…?デクス…?エリー…?ファリス…?ジーニアス…?……あれ、何だっけ…?」

 

しかし、その名前の数々を聞く度に、ナナの表情が青ざめていく。

 

「…もしかして、君って……」

 

そして、何か思い当たる節があるようにそいつの事を指差すと、ごくりと喉を鳴らした。

 

「…孤児、だったり…する…?」

 

 

 

 

 

「…そっか…小さい頃に、お父さんとお母さんを……それで、今のお父さんとお母さんに引き取られて…」

 

ある程度の話を聞き終えたナナは、改めて未だにそいつ以外に呼びようのないそいつの方を見る。

 

「よく…キヨウって呼ばれたり、イイセンスって呼ばれたり、シンドウって呼ばれたりもしてたけど…もしかして、あれは名前だった?」

 

当のそいつは、話している間に眠気も飛んできたのか、冗談を言う余裕も出てきていた。

 

「名前じゃないよー」

 

なかなか表情から本意を読み取れないそいつに、ナナは言葉だけでツッコミを入れる。

 

「…でも、名前を付けないでここまで育てるお父さんとお母さんって、本当にいるのかなー……あ、今のって冗談で合ってるよね?」

 

「うん、合ってる」

 

一応、冗談かどうかの確認を取り、ナナはどこか楽しげな表情のそいつを見る。

 

「…ところで、君って男の子?それとも女の子?見た感じも、声の感じも、どっちなのか分かりづらくて…何か、失礼な事聞いてごめんねだけど…!」

 

ショートな髪形に加え、貧しいのか無いのか逞しいのか分からない胸部、男にしては高く女にしては低い声と、性別の分かりにくいそいつの風貌は、ナナをして判別不能の結論を出さしめていた。

 

にも関わらず。

 

「…ナイショ」

 

そいつは、あろう事か答えを濁した。

 

しかも、依然楽しげな表情で。

 

と言っても、タグというメタ要素があるから既にばれてはいるのだが…

 

「ええー…それは、ミステリアス過ぎるよー…」

 

と、そう言ったところで、ナナは何かを思いついたようにそいつに指を突き付けた。

 

「そうだ!名前が分からないなら、私が名前考えてあげるよ!」

 

どうやら、性別に関してはどうでもよくなったらしく、ナナは本人の承諾も待たずに名前を考え始める。

 

「ミステリアスな感じがするから、ミストってどう?あ!エリアスでもいいよ!」

 

エリアスだとエアリス…エアリーズぽいという理由で、そいつはミストを選ぶ事にする。

 

「ミスト…ミスト……うん…じゃあ、ミストで」

 

そいつ改めミストは、ナナに特別な笑顔を向けると、今度こそ右手を差し出した。

 

「!…うん!改めてよろしくね!ミスト!」

 

そして、それに応えるように、ナナは右手…に載ったパンのような何かを差し出した。

 

「お母さん直伝、ナナ特製のおでんパンだよ!お残しは許さないからね!」

 

 

 

 

 

(…S装飾弾を真上に撃ち上げ…下に思いっきり向けたM制御の敵向きに…M弾をコンマ五秒ごとに撃ち出してLL爆発…)

 

最高のバレットを作ろうと意気込んで二日目、つまりはナナと別れた後、その場の雰囲気で名前を決められてしまったそいつことミストは、バレットエディットに勤しんでいた。

 

作っているバレットの銃種は、ブラストである。

 

ブラストはエディットの幅が広く、消費の限界値も高いので、色々と遊び甲斐のある銃種である。

 

その代わり、あまりスキルに期待が出来ない面も持ち合わせており、火力を取るかスキルを取るか、一部のものを除いて悩みどころもある銃種である。

 

その点ミストは、攻撃に特化しているものの方が好みに近い事もあって、スキルよりも火力を取る事の方が多い。

 

今日の組み合わせは、今しがた完成した試作バレットの試し撃ちをすべく、刀身をショートに、銃身をブラスト、装甲をシールドと決めていた。

 

「…今日は、実地訓れ…ん…?」

 

その時、睡魔がミストを襲うが、バレットを撃ちたくてたまらないミストには、あまり効果はないようだった。

 

しかし、ミストの足元を覚束なくさせる事には成功しており、しばらくの間はこの状態が続きそうである。

 

(…ねむい…)

 

射撃場からふらふらと彷徨いながら、なんとかロビーまで辿り着いたミストを迎えたのは、ミストの名付けの親であるナナだった。

 

「あ!きたきたー!ほらほら、こっちだよー!」

 

ミストに気付いたナナはぴょんぴょんと小動物のように飛び跳ね、猫耳髪をゆさゆさと揺らしながら、ついでに布の許容量を危うく超過してしまいそうな胸部も揺らしながら、眠そうなミストの気を引こうとする。

 

その年頃の女の子としてどうなのかと思うような行動を見て、ミストは眠気が少しずつ引いていくのを感じながら、ナナの代わりに羞恥に頬を染めた。

 

「こ、こほんっ…」

 

その時、ナナの背後にあるカウンターの向こうに控えていたオペレーターが、その様子を見兼ねたのか、前触れもなく咳払いをした。

 

「~~っ」

 

ミストの羞恥心が加速する。

 

「あの…ナナさんもうやめて下さいお願いします何でもしますから」

 

その羞恥心の加速具合は、早口で話す事など滅多にないミストの滑舌をも加速させていた。

 

「え?う、うん。ミストがそこまで言うなら…」

 

どうやら、ナナは自分の置かれている状況を理解していないようで、飛び跳ねる事は止めたものの、ミストの慌てようも、オペレーターの咳払いの意味にも気付いていないようだった。

 

「???」

 

そうして、ナナは口元に人差し指を当てながら首を傾げ、疑問符を頭上に浮かべた。

 

ミストの頬に差した朱が、少しだけ薄れる。

 

「…実地訓練…行こっか」

 

「うん!行こー、行こー!」

 

眠気と合わさってどっと疲れが押し寄せるのを感じながら、ミストはナナを伴って覚束ない足を出撃ゲートへと向けた。

 

 

 

 

 

「…ジュリウス隊長…流石に、実戦はまだ時期尚早なのでは」

 

インカムから響くオペレーターの声に、インカムの主は毅然とした態度で返事を返す。

 

「基礎訓練の結果から判断して、彼らには恐らく実戦の方が効率がいいだろう。それに、ゴッドイーターが命を賭してまでアラガミから守るものを、彼らには早い内に知っておいて貰いたい」

 

そして、インカムの主…ジュリウスは、合流地点に近付いて来る足音の方へと振り返った。

 

「…分かりました。ご武運を」

 

オペレーターからの通信が切れるのと、件の新人二人がその場に現れるのは、ほぼ同時の事だった。

 

「し、新人二名、ただ今到着しました!」

 

「…しました」

 

笑顔とやる気に満ち溢れたナナと、寝顔と眠気に満ち溢れたミストは、ジュリウスに向かって敬礼をすると、ジュリウスの言葉を待った。

 

「…ようこそ、ブラッドへ。早速自己紹介に入りたいところだが、詳しい事は訓練の後でもいいだろう。俺は、ジュリウス・ヴィスコンティ。ブラッドの隊長を務めている。よろしく頼む」

 

ジュリウスの挨拶は簡素そのものといった感じで、必要最低限の事だけを二人に伝えると、二人の視界を遮るように佇んでいた体を壁際へと寄せる。

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

喋る事のほとんどをナナに任せて、ミストはナナと同じように軽く頭を下げると、次の瞬間、ジュリウスによって遮られていた景色に目を奪われた。

 

つまみ食いをされたかのように、不可解な箇所が削り取られたビル群。

 

心行くまで荒らし尽くされ、廃墟と化した建物の数々。

 

人の足が途絶え、けれど力強さを感じさせる草花達。

 

そして、それらに囲まれた小さな水面に差し込む目映い光。

 

「…綺麗だ…」

 

眠気を吹き払うように通り過ぎる風が、ミストの溜め息交じりに吐き出された言葉を運ぶ。

 

「…うん、綺麗だね」

 

思わずこれから訓練である事を失念してしまいそうな空気が流れると、二人の意見に同調して頷いたジュリウスは、確かな決意の込もった口調で言う。

 

「…この世界は、これから我々が守っていくものであり、守らなくてはならないものだ。その道のりは険しく、厳しいものとなるだろう。だが、我々は一人ではない。我々の力を合わせれば、どんな困難でさえ乗り越えて行ける事だろう。どうか、それを忘れないで欲しい」

 

ジュリウスのその言葉は、目だけでなく心も奪われたミストの心に、深く刻み込まれた。

 

「………時間だ。これより、訓練を開始する」

 

そうして、二人にとって初めての、実地訓練という名の実戦が始まった。

 

 

 

 

 

「そ~…れっ!!」

 

ナナの振るったポールタイプの神機…ブーストハンマーは、枯れ木の幹から顔を覗かせているような風貌のアラガミを正確に捉え、顔なのか胴体なのか今一つ区別の付かない体を、無慈悲に殴り飛ばした。

 

びしゃびしゃと、盛大に噴き出した返り血が、ナナのハンマーと地面を汚す。

 

「う、うわわわっ!???」

 

まさかここまでの血を見る事になると思っていなかったらしいナナは、危うく神機を手放してしまいそうになりながら、ジュリウスの方を見た。

 

「こ、これって、もしかして…本物のアラガミ!?」

 

当のジュリウスは、ナナの攻撃で虫の息となったアラガミに止めの一撃を放ち、その返り血を存分に浴びる。

 

「…そうだ。配属されたばかりで右も左も分からない新人には悪いとは思うが、現実問題として、お前達はまだ弱い。そして、アラガミはお前達の成長を待ってはくれない。守りたいものがあるのなら、強くなる事だ。それが出来ないと言うなら、お前達に価値はない」

 

血で濡れた前髪の間から覗くジュリウスの眼光が、二人を見つめる。

 

「…俺に聞かせて欲しい。お前達には、それが出来るか?」

 

突然の事に戸惑いを隠せない様子のナナは、後ろにさり気なく立っていたミストに気付き、アイコンタクトを送る。

 

「………」

 

ジュリウスとナナの両方から視線を受け、言い知れないプレッシャーを感じたミストは、どうやら二人から意見を求められているらしい事に気付いた。

 

仕方なく、ミストは考える。

 

ミストにとって、強くなる事は結果の一つでしかない。

 

何故なら、ミストにとって、アラガミがどうこうというのは動機の一つに過ぎず、本当の両親の仇討ちですら考えた事がなかったからである。

 

端的に言えば、アラガミが誰を殺そうが、ミストは特に興味がなかったのである。

 

では、ミストは何に興味があったのかと言えば、それは神機であった。

 

今の両親に引き取られてからというもの、ミストの周りには常に神機があった。

 

正確には神機のレプリカであるが、重量バランスなどは本物の神機と同じであり、ミストはそれを持ったり振ったりして、両親の神機開発の手伝いをしていた。

 

そのため、ゴッドイーターに選ばれた時、ミストは心から喜んだのである。

 

自分が手伝いをして開発された本物の神機を、自分の手で操る事が出来るのである。

 

だから、ミストがゴッドイーターになってやりたかった事というのは、誰かを守りたいとか、アラガミに復讐したいとかではなく、多種多様な神機を組み合わせて心行くまで楽しみたい、という事だった。

 

そして、それを達成するためには、星の数ほどのアラガミと戦い、刀身を作り、銃身を作り、装甲を作る必要がある。

 

それはつまり…

 

「!?予想外のアラガミが作戦エリアに侵入っ!!来ますっ!!!」

 

オペレーターからの緊急連絡が、ミストの熟考を遮った。

 

直後、三人を囲むように地面から何かが飛び出して来る。

 

それは、胴体と同じくらい大きい尾を持った、二足歩行の白いアラガミだった。

 

「!!」

 

すると、その内の一体が、ナナ目掛けて飛び掛かって来る。

 

「…色んな神機が使えるなら、何でもいい」

 

盛大に熟考の邪魔をされてご機嫌斜めになったミストの返事は、神機がアラガミの胴体を貫通して撒き散らされた血飛沫だった。

 

「…ふっ…面白い奴だ」

 

何かが通じ合ったかのように、ミストとジュリウスは笑みを交わし、残りのアラガミへと神機を向ける。

 

「………うーんと…つまり……どういう事…?」

 

そして、何が面白いのか理解できなかったナナは、いつの間にか血の海と化している周囲に溶け込めずに、一人素材回収に勤しむ事にした。




サブタイは変える可能性ありです。

と思っていたら、内容が少し変わっていました。

不思議ですね。

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