ウマ娘とトレーナーの甘い日常   作:2度漬けウインナー

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滅茶苦茶期間が空いてしまい申し訳ありません…
どのような物語が甘く、皆様に楽しんで頂けるか、などと考えていたらどのような形が良いのか分からなくなってしまい、勝手ながら少しお休みしていました。
本当に申し訳ありません…

そして今回はフジキセキのお話ですので、楽しんで頂けると嬉しいです。
それではどうぞ!


私を騙し、心を溶かして

まだ日が登りきっていない朝。私はいつも通り学生寮の入口にて日を眺めながら、柱にゆったりと寄りかかる。

ポニーちゃんたちが来たら直ぐに携帯を取り出して写真を激写するだろうと思えるこの光景だが、いつもと違うところが1つ

 

「うーん…これは少し困ったねぇ…」

 

珍しく少し携帯を弄っていた。

彼女が操作する画面に写っているのはメッセージアプリの画面。

そして現在会話しているのが彼女のトレーナーだった。

 

最近トレーナーさんは体調を崩してしまったため寝込んでいた。しかしいくら看病をすると言っても『うつるかもしれないから来るな!』の一点張り。メッセージアプリ内では『自分より私を優先してくれるなんて、今度しっかりとお礼をしなきゃね』や『そんなに気遣ってくれるなんて、トレーナーさんは本当に私のことが好きだね?』と軽口を叩いてはいるものの、内心は体調は悪化していないか、苦しんではいないかと一日中考えてしまうほど心配しているのだ。

 

『おはようトレーナーさん。体調の方は大事かな?まだ辛いのだったらこの後向かうから鍵を空けておいて欲しい。』

 

『余裕!もう問題はないから来なくて大丈夫。てか来るな』

 

今日もこうやってメッセージを送ってみるものの、やはり返ってくるのはいつもと同じ返事。このやり取りもかれこれ1週間。顔も合わせられず、電話をすることも許されていなかった。

 

正直、すごく寂しい。

 

(君の姿を見たい。君の言葉を聞きたい。君の気持ちを感じたい…)

 

気づいた時には私の手は勝手に動いており、一通り自分の意志を伝えるメッセージを送ると、入口の奥から聞こえてくる物音に備えて携帯をポケットへと閉まった。

 

「フジキセキ先輩!おはようございます!」

 

「おはようポニーちゃん。今日もみんな輝いているね。」

 

いつも通りの黄色い歓声。朝の練習に向かう彼女たちをこうやって鼓舞するのが私のちょっとした役目だ。今日もこれを遂行するとしよう。

 

ちなみに、私がトレーナーさんに送ったメッセージは…

 

『悪いけれど、彼女たちの労いが終わり次第部屋に行かせて貰うよ。鍵はしっかりと開けておいてね?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝の練習に向かう子達の労いを終えると、足早に彼の部屋へと向かう。無理やり押し切る形で来てしまったので鍵を開けて貰えているか心配であったけれど、しっかりとあけてくれたようだ。

 

「お邪魔するよ〜…トレーナーさん〜…」

 

そのまま中へと入ると、いつも香っていた彼の匂いが漂っており、私の思考を鈍らせる。しかしそんなことにうつつを抜かす訳にもいかないのでそのまま彼の寝室へと足を進めた。

トレーナー君の寝室に着いたはいいものの、何故か人の気配は全くしておらず、布団の中はもぬけの殻だった。そして不自然に空いた人1人が通れるくらいの窓の隙間…

 

「まさかトレーナー君…死んでしまったりしてないよね…?」

 

そんなことは有り得ないと思いながらも、最近会えていなかったせいか、それともこの香りのせいで判断力が鈍ったのか、恐らく両者だろう。絶対にありえないであろう結論へたどり着こうとする

 

「勝手に俺を死なせるんじゃねぇ」

 

「ひゃあぁ!?」

 

するといつの間に後ろに回っていたのか、そもそも気配をずっと消していたのかは分からないが、突然背後から声をかけられる。全く警戒していない方向から声をかけられたため、普段ならあげないような声を出してしまった。

 

「おぉ、いいじゃん今の反応。80点ぐらいやるよ」

 

「君はいつから後ろにいたんだい///…?せめてもう少しマシな方法で声をかけておくれよ…」

 

私はあんな声を彼に聞かれたことを知って少し顔が赤くなる。こんな顔を何度も見られたくはないため話しかけ方を変えてもらおうと軽く説得してみる。しかし彼はその提案を聞いた後軽く笑うと

 

「断る!驚かせるのはマジシャンの生きがいなんでね。それはフジもよーく知っているはずだけどな〜?」

 

「それは…まぁ…そうだね。」

 

…まぁ、こうなるとは思っていたからそんなに衝撃を受ける訳ではないけれどもね?そこまで胸を張ってまでして言わなくてもいいのでは無いかな?トレーナー君?

 

「そんなことより!久しぶりだね。トレーナー君。1週間ぶりに顔を合わせたけど…寂しかったかい?」

 

「いや全然」

 

「ッ!」

 

彼の口から出た心にもない発言を聞いた私は思わず感情が荒ぶってしまい、トレーナー君の太腿に向かって足を振り抜く。

 

(本当にッ!本当に何なんだいこの男はッ!私が今日までどんな想いで過ごしていたと…!)

 

「痛ってぇ!突然蹴るんじゃねぇ!俺一応病人だぞ!?」

 

「ふんっ!悪いのはトレーナー君なんだからね!?どうしてそうハッキリと…本当に思っていたとしてもせめて少しはオブラートに包んでだねぇ!」

 

そんな私の言葉を聞いたトレーナー君は「くははっ!」ともはや聞き慣れてしまった独特な笑い方をすると悪戯な笑みを浮かべた。

 

「何を今更!それが嫌なら俺の真意を読み取れるようになってみなぁ…ゴホッ…ゴホッ」

トレーナー君は私を煽るような口調で飄々と話していたが、途中から声量は小さくなっていき、最後には苦しそうに咳き込んだ。

 

「…トレーナー君?やっぱりまだ体調が治りきってないんじゃ…もしかしてただの風邪ではないのかい?」

 

「ズズッ…ぁ゙あ?大したことねぇよ、普通の風邪だ。ただ…この身体が弱っちぃだけ…ゲホッ!ゴホッ!」

 

「ッ!トレーナー君っ!」

 

そう言って先程よりも苦しそうに咳をこみ、壁へと寄りかかった。その姿を見た私は急いで彼の脇から腕を回して身体を支える。

 

そう。私のトレーナー君は元マジシャンであると共に、学園内でも有名な凄腕のトレーナーなのだが、とてつもなく身体が弱いのだ。このようにただの風邪をひいてしまうと、普通の人ならば2日程で治るが、トレーナー君の場合は1週間、長いと1週間半ほどかかってしまう。

 

以前は睡眠時間を多く削ってまでして複数のウマ娘たちのトレーニングメニューを作ってみたりもしていたのだが、その生活を2週間ほど続けた時に身体が悲鳴をあげ、私たちにメニューを渡したすぐ後に廊下で血を吐き倒れてしまった。あの時は3日間眠り続けており、私は本当に生きた心地がしなかったことを今でも覚えている。

 

「横にはなれるかい?辛い体制があったら教えて欲しいな。」

 

「…すまん。」

 

やはりトレーナー君は自分の弱った姿を見せたくなかったのか、バツが悪そうに目を逸らし、小さな声でぽつりと謝罪の言葉を口にした。

 

「そうだ。お見舞いに林檎を見繕ってきたんだ。君の好きな物だったら食べられると思ったんだけれど…少し台所から果物ナイフを借りて…」

 

「ズズッ…ナイフなら…よっっ…と。ほらよ」

 

「君今何処からナイフを取り出したんだい!?」

 

私がトレーナー君の為に林檎を剥こうと思い台所へと足を運ぼうと思っていると、彼は何かを思い出したかのように手首をくるりと回して軽く腕を振り下ろす。すると先ほどまで何もなかったはずの手にはナイフが一本。そのままナイフを半周させて持ち手側を私の方へと向けてきた。

 

あっという間の出来事だったのでとても驚きはしたものの、このようなことがあるのは割と日常茶飯事なので深くは突っ込まず、そのまま林檎の皮を剝き始めた。

部屋の中にはシャリシャリと林檎の皮を剥く心地よい音が流れる。私は皮を剥き終わるとそれを8等分に切り分け持ってきた紙皿へと乗せるとその中のひとつをつまんで彼の口へと運ぶ。初めは嫌がる仕草を見せたものの、最後は観念したように口をあけてくれた。

 

「そういえば、このナイフは何に使うんだい?日ごろから持ち歩くような物ではないと思うのだけれど…」

 

「あむっ…ナイフトリック。やよいさんにファン感の出し物頼まれたんだよ。たまにあんだろ?ナイフ投げて林檎に当てるやつ」

 

「トレーナー君はそんなこともできるんだ…流石だね。…それで…だね…」

 

私は林檎を食べさせる手を一時的に止め、会えなかった期間に気になっていたことを聞くために口を開く。

正直な話を言うと、トレーナー君がファン感謝祭の出し物を頼まれたことは理事長さんから聞いていた。けれど私が気になっているのはそんなことではなくて…

 

「当日のマジックだけれどもね?…助手は、決まっているのかい?」

 

そう。彼のマジックでの助手の存在だ。ファン感謝祭まではまだ時間があるし、今から一緒に練習すれば余裕で間に合うだろうし、何より私以外の生徒が彼の助手をしているのを見るのは…ちょっと、嫌だ。

そんな私の考えとは裏腹に、トレーナー君は「あぁ、それね」と軽く口を開く

 

「今回は俺が現役だった頃の相方にしてもらう予定。」

 

「っ!…そのっ…理由を聞かせて貰ってもっ…」

 

「ナイフトリックは一応危険物を使って行うもんだからな。まぁ…俺は外さない自信はあるけど、まぁ一応だよ一応」

 

(…そうだ。そうだよね。ナイフトリックなんて危険なマジックに、私たち生徒を助手に置くはずがないよね。)

 

ナイフトリックをやると聞いた時点で薄々分かっていた事だろうに、いざ面と向かって言われるとこんなに胸が苦しくて、泣きそうになってしまうのは何故なのだろう。

けれどこんな気持ちを悟られてはいけない。と言うよりも悟られる訳にはいかないため、もう一度林檎を食べさせる手を再開させた。するとトレーナー君が一言

 

「…別にフジを信用してねぇ訳ではないんだ。けどな、もしもの事があってからじゃ遅いんだよ。その…なんだ、大事な相棒に一生の傷を付けるのみたいな趣味、俺は持ち合わせてねぇ」

 

そう言って顔は見ないようにしながら、私の髪をポンポンと2回軽く叩く。必死に隠したつもりであったけれど、彼にはお見通しだったみたいた。

 

(ふふっ…本当に、彼には敵わないな。)

 

私はまた林檎を食べさせる手を再開させる。彼からあんな言葉を貰えただけで、ここまで心が踊り、気分が舞い上がってしまうのは…私の心は相当彼色に染められてしまってるようだ。

もう少ししたら授業も始まってしまう。そろそろ戻らないといけないだろう。けれど今はこのまま、この空気を、雰囲気をもう少しだけ堪能するとしよう。

 

 

 

 

「ちょっと待て」

 

私が部屋を後にしようとすると、トレーナー君が声をかけてきた。寂しいから残って欲しいなんて言われたらどうしようなどと考えてみたものの、そんなことではあるはずでもなく、テーブルの上にある小さな封筒を指さしていた。

 

「それ、当日の予約席のチケット。特等席を取ってあるから…その…時間があったら見に来い。最高のキセキを見せてやるよ」

 

トレーナー君は私にそう伝えると、そのままゴロンと反対側を向いてしまい、少し経つと規則正しい寝息をたて始めた。

もうトレーナー君に私の声は届きはしないだろう。だけれど私は彼の背中に

 

「意地でも時間を作るよ。当日、楽しみにしてるね」

 

それだけ伝えて部屋を後にする。教室まで足を進めている道中、私の頭の中はファン感謝祭でのトレーナー君の事でいっぱいだ。トレーナー君はどんなキセキを見せてくれるのだろう?今から考えるだけでとても心が踊った。

 

 

 

 

 

 

そして忘れもしないファン感謝祭当日、最高のコンディション、最高の舞台の上で彼は…

 

「くっはは!君たちはとても幸運だ!さぁ!最高のキセキを見せてあげようじゃないか!」

 

私の、そしてこの場にいる全ての人たちの心を奪い、そして最高のキセキを届けてくれたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で?何だよこの書類の量はさぁ!?」

 

ファン感謝祭を完璧にやり遂げた翌日。トレーナー君は多くの書類に囲まれていた。いや、1部はファンレターなのだが

 

「それはトレーナー君がマジックに夢中になって残していたのが原因じゃないか。」

 

「ぐっ…なぁフジ?「私は手伝わないからね?」畜生がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

あれはあそこまで書類を溜めてしまったトレーナー君のせいなので、ここで手伝ってしまうのはいけないだろう。私の返事を聞くとトレーナー君はブツブツと文句を言いながらも書類に手をつけ始めた。

 

今日は練習が休みだしすることも無いからトレーナー君の事を眺めていた。その時にある癖に気がついた。

トレーナー君は悩むと唇にペンをコツコツと当てる癖があるみたいだ。もう出会ってから相当の時間が経つというのに全然気づかなかった。

トレーナー君がいつも私に言ってくる『普段している行動の中にこそ、面白い一面がある』と。なるほど、面白い一面と言うのは癖の事だったんだね。

 

(それにしても…君は綺麗な唇を持っているんだね…)

 

「んぁ?なんだよフz…」

 

「んっ…」

 

気づいたら私の唇は彼の唇へと吸い寄せられていた。初めての彼とのキスは…甘く、このまま身体が溶けてしまいそうだった。

 

「…ぷはっ///。どうだい?私の唇の味はっんむっ!?!?」

 

突然キスをしてしまったのは自分でも想定外だったが、これで彼の恥ずかしがる顔を見れるだろうと、少し火照る顔を上にあげようとすると、トレーナー君が首に手を回してきて、そのまま私の顔をグッと寄せて再度口付けを再開させた。そしてそれはさっきよりも深く、強く

 

「んっ///とれぇなぁさっ…んんっ///…」

 

「…ふぅ。俺を理解するなんざ1000年早ぇよフジ。」

 

強く繋がれた唇を離すと透明な糸が2人を結び、プツリと切れる。ここまでされると思っていなかった私の顔は真っ赤に染まり、思考が甘く蕩けてゆく。しかしトレーナー君はいつも通りであったが、少しだけ頬が赤くなっていた。

 

「それじゃあ…///どうすれば君を…///」

 

「ふふっ、そうだなぁ…一生俺の傍に居れば、少しは理解出来るかもな?」

 

そう言って私の顎をクイッと上に上げた。そんな目でそんなことを言われたら…私は…

 

「じゃあ、もっと近くに居なきゃだね…」

 

外から気持ちの良い風が頬を撫で、カーテンが優しく靡き、私たちの姿を隠す。その優しい空間の中で、私たちの影はもう一度ひとつに重なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぉはよ…滅茶苦茶眠てぇ…」

 

今日も彼は眠たそうに瞼を擦りながら部屋から出てきた。この時彼は絶対に左眼を先に2回擦るのが彼の癖だ。そんな彼に私はいつも通り優しく語りかける。彼は朝に大きな声を出されるのが嫌いだからね

 

「貴方はいつも土曜日の朝は眠たいようだねぇ。これからはもう少し早く『じゃあ夜に俺の部屋に甘えにくるなよ?』まっ、まぁ!休みの日くらいは遅く起きてもいいかもしれないね!」

 

それはマズイ、彼に私がベッタリと甘えられる時間を作れる土、日曜日は大切な時間だから…

 

「いやそれだと俺の睡眠時間変わらねぇ…」

 

「…ええっと!そんな話は置いておいて!」

 

私は彼をいつもの窓際の椅子へと座らせると窓を開け、後ろから肩を抱きしめる。さぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日はどんなキセキを見せてくれるんだい?愛しの貴方(トレーナーさん)




如何でしたでしょうか?久しぶりなので、誤字等ありましたらすみません。
これからは少しずつペースを戻していきますので、また読んで頂けると嬉しいです!
次回はできる限り早く描きますので、よろしくお願いいたします!

このウマ娘のifstoryが見てみたい!

  • トウカイテイオー、メジロマックイーン
  • サイレンススズカ、シンボリルドルフ
  • オグリキャップ、エアグルーヴ
  • スペシャルウィーク、ゴールドシップ
  • アグネスタキオン、ミホノブルボン
  • サクラバクシンオー、ライスシャワー
  • ナリタブライアン、テイエムオペラオー
  • マンハッタンカフェ、ナイスネイチャ
  • タマモクロス、セイウンスカイ
  • サトノダイヤモンド、キタサンブラック
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