ウマ娘とトレーナーの甘い日常   作:2度漬けウインナー

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本来であればリクエストを頂いていたの予定でしたが、行き詰まり筆が完全に止まってしまったので、急遽書き溜めてたif storyのお話を先に出させて頂きます。
今回のif storyはオペラオーのお話です。前回同様若干のキャラ崩壊がありますので注意です!
それではどうぞ〜!


~if story~覇王の往く物語

いつからすれ違っていた?何処で道を間違えた?そんな言葉が脳内を埋め尽くした。

 

何気ない日常、いつも通りの生活、俺を送り出す時に見た屈託のない彼女の笑顔…

何一つとしておかしな点なんて在りはしなかった。

在りはしないと、思っていたんだ。

 

 

 

始まりは突然だった。

この日は仲の良い同僚が休んだため、仕事が長引き帰宅時間が遅れてしまった。いつも通り仕事を終え自宅の扉を開ける。しかしいつもならば「おかえりなさい!」と元気に迎えてくれる彼女が居ない。違和感を覚えながらも音が聞こえる方へと足を進める。

音がしていたのは台所、そこに彼女は居た。

何故か電気をつけておらず、何かをうわごとのように呟いている。そして足元には…

 

今日休んだはずの同僚が、力なく横たわっていた。

 

信じられない光景に思わず声を上げた。その声を聴いてようやく俺の帰宅に気づいた彼女はとてつもない勢いで掴みかかってきた

 

「何なんだよ…どういうことなんだよぉ!」

 

「アイツが悪いんだ…君には僕がいるというのに、アイツが君を誘惑するから…」

 

そう言って憎しみを持った視線をもう動かない同僚へと向ける。確かに同僚と俺が共に行動した時間は長かった。しかしそれはあくまで同僚として、共に切磋琢磨する友として信頼を置いていたに過ぎない。同僚は彼女と同じウマ娘であったが、邪な感情なんてお互い一度たりとも思ったことはなかった。

しかしそんな声は彼女に届くわけもなく、腕を掴んでいた手は次第に首へと場所を変えていく

 

「ごめんね…ちゃんと君の後に僕も行くさ…」

 

「落ち着け!話し合えばわかる!」

 

このままではまずいと声を上げる。しかし彼女は「ごめんね…ごめんね…」と取りつかれたように呟くだけで、力は強くなる一方だった。

逃れようともがくが、ウマ娘に対して力勝負で敵うわけがない。次第に薄れていく意識の中で、最後に思い出したのは彼女と夢を追って走り抜けた日々、数々のレースを制した彼女の笑顔を思い浮かべたのを最後に、俺の意識は完全に切り離された。

 

 

 

 

 

「カットッ!」

 

 

 

 

 

その言葉が現場に響く、すると首に添えられただけの手が退けられ、倒れていた同僚が伸びをしながら起き上がり、暗かった部屋に照明が炊かれ、倒れている俺に手が差し出された

 

「オッケーです!お二人とも文句なし、100点満点の演技ですよ!」

 

「ありがとうございます…ケホッ…」

 

彼女役から差し出された手をとって俺も起き上がる。大きな声を出したので少し喉が痛く、軽くせき込む。しかしその姿を見た彼女役はアワアワと大変慌てた様子で声をあげ、首回りを触ってきた。

 

「あああ大丈夫かい!?力は全くかけていないはずなのだけれど…」

 

「いや声出したから軽くせき込んだだけ…いやちょっと待て、何で泣きそうになる!?こんなところで抱き着くなぁ!」

 

「あっはは!オペラオー君の君に対する愛は変わらないねぇ!」

 

「フジキセキさん笑ってないで助けてくれません!?」

 

さっきの重苦しい雰囲気とは打って変わって笑いに包まれた部屋、もとい現場。

俺は愛バのオペラオーの卒業と同時にトレセン学園を去って今、彼女と一緒に俳優、女優として活躍をしていた。

 

 

 

 

時はまだオペラオーがトレセン学園在学中の時まで遡る

 

「やあトレーナー君!今日の僕も一段と美しいよ!」

 

「あぁ、うん。いらっしゃい」

 

独特な挨拶をしながらトレーナー室へと入ってくる愛バテイエムオペラオー。初めのころはいちいち動揺していたにも関わらず、今となってはいつも通りとしか感じない。慣れというのは怖いものである。

 

「今日はどうしたんだ?後輩指導も今日はなかったはずだけど…」

 

彼女はもう現役は引退しており、今はその数々のG1を制した彼女の走法、知識などを二人で後輩に指導するのが主な仕事なのだが、今日はそれもない。彼女とは恋仲にあるため意味もなく来るとも考えられるが、それをするならば必ず俺の自室に向かうはずだ。

彼女が来訪した理由に頭を悩ませていると、机の上にぺらりと一枚の紙がおかれた。

 

「今日は君にこれについて相談をしにきたのさ」

 

「進路希望表…」

 

進路希望表。もうそんな季節になるのかと、時の速さを感じた。

 

「オペももう少しで卒業か…早いもんだな。」

 

「本当だよ…それでトレーナー君に質問をするためにここに来たのさ」

 

そう言うと「失礼するよ」と一声かけ、膝の上に乗っかってくる。あの日以来何かあるごとに膝に座るようになったため、座るまでの動きがとてもスムーズだ。

 

「トレーナー君は、僕が卒業した後どうするつもりなんだい?」

 

「そうだな…まぁ、他の子を担当するんじゃないかな」

 

「まぁ、そうだろうね」

 

順当に行くならば、恐らくは別の子を担当することになるのだろう。既に数人から次に担当してほしいといった言葉をかけられており、もしかしたら彼女が卒業した次の日から違う子の担当なんて話もなくはないのだろう

 

「しかし、そんなに話はうまく進むと思うかい?」

 

「オペの強さを知らない子なんてここにはいないよ。そのトレーナーとなると、結構注目はされてるんだよ」

 

「そうかい…」

 

俺の言い分を聞くと、うやむやな返事だけをしていつも通り手鏡で自分の身だしなみを確認し始めた。

正直なことを言うと、この話を持ち掛けた時点で勘づいてはいた。俺は彼女が使っている手鏡を取り上げ、優しい声色で語り掛ける。

 

「なぁ、本音を教えてくれないか?」

 

するとゆっくりと首を回し、本音をさらけ出した。

その時の彼女の瞳は少し潤んでおり、涙が零れるのを必死で堪えていた。

 

「………嫌だ。君の隣に居ていいのは僕だけだ。君の視線を向けられるのも、君からの愛情を受け取るのも、共に喜びを分かち合うのも、それは世紀末覇王である…いや、君の愛バである僕だけの特権だ。」

 

「だから…僕以外のことは契約をするな。君の愛を受け取れるのは僕だけの特権だ」

 

そう言ってキッとにらみつけるように鋭い視線を向けてきた。今にも零れそうなほどに涙ぐんでいるはずなのに、彼女の視線から感じるプレッシャーはまさに数々のレースで恐れられた"世紀末覇王"の眼光だった。

 

「だよな。俺もそう思うよ」

 

彼女の瞳に溜まった涙を指の腹を使って優しくぬぐい取ると、引き出しの中にしまっていた封筒を取り出した。

 

「…これは何だい?」

 

「俺の親ってテレビ業界で働いててさ、今の子の契約が終わったら俳優をやってみないかって誘われたんだ」

 

オペにすら話してはいなかったが、昔は子役としてテレビによく出ていた時期があり、その経験を生かして次は俳優として活躍してみないか?という話を父親からされたのだ

 

「俺はオペとの契約が終わったら俳優として頑張ってみるつもりだよ。道のりは厳しいし、今迄みたいに毎日顔を合わせられなくなるけd「なら、僕も一緒に目指すとしよう」…はぁ!?」

 

自分のこれからを説明している最中に投下された大きな爆弾に声を思わず荒げる。彼女には既に大きな劇団からオファーが届いており、彼女自身もそれをとても喜んでいたはずだ。こんなことで彼女の人生を壊したくないと伝えようとするが、俺の言おうとしていることを察しているようだった

 

「僕は本気さ。確かに望んだ環境とは少しばかり違うけれど…どちらも多くの人を笑顔にするという点には変わりはないさ。だから…これから先の旅路に、僕も一緒に連れて行ってはくれないだろうか…?」

 

そう言って今度は涙ぐんでいない、自信に満ちたまっすぐな目線を向けてきた。こうなったオペはてこを使っても動かないことは、何年も共にしているからこそ知っている。

 

「…わかったよ。親父に一人追加って伝えとくよ…まぁそもそもオペのことを意地でもスカウトしてこいとは言われてたし」

 

俺の負けだと両手を上げると、オペは嬉しそうに立ち上がり、いつもの高笑いをし始めた。そんな彼女の背中に聞こえないくらいの声量でポツリと

 

「これがあの世紀末覇王様の独占力ねぇ…」

 

本当に小さな声で言ったつもりだったがバッチリ聞こえていたようで、大きく声を裏返し、頬をムッと膨らましながら

 

「君が僕を変えたのだろう!?」

 

と言い俺に向かって指をビシリと突き立ててきた。そんな可愛らしい覇王様の姿に胸の高鳴りを覚え、椅子から立ち上がりギュっと抱きしめた。

 

「ちゃんと変えてしまった責任は取りますよ覇王様。」

 

「…当然さ、一生愛さないと許さないからな」

 

絶対にこちらに顔を向けてはくれなかったが、その言葉を聞くだけで十分満足だった。そんな愛しい世紀末覇様の温もりを感じながら、ゆっくりと穏やかな時間を過ごしていた。

 

 

 

 

 

時は戻って現在

 

 

 

 

 

 

「まさかフジ先輩と共演する日が来るとは思わなかったよ」

 

「俺は現場で泣きつかれるとは思わなかったよ…」

 

二人で同棲しているマンションにて、二人でソファに並んで座りながら今日の撮影を振り返っていた。キャストの一人が体調を崩してしまったため、急遽同じスタジオに居合わせたフジキセキが穴埋めをしてくれたり、結局あの後泣き始めたオペを慰めているのを居合わせた全員に見られるという恥ずかしい思いをした。

 

「それは…演技とはいえ君の首の手をかけたんだ。不安にもなるさ」

 

「そうだけどさ…昔みたい美しい僕!って言って悲しさ吹き飛ばしてくれよ」

 

「あれは…少し恥ずかしい…」

 

やはり成長すると恥じらうものも増えるものだ。彼女のあの行動はトレードマークみたいなものでもあったので、若干の寂しさを覚える。

 

「君が僕をこうしたのだろう?」

 

表情でばれたのだろうか、頬をムッと膨らまして抗議してくる。こういう所は昔と全く変わっていない

 

「これからも君を変えてしまうかもしれないな」

 

「別に構わないさ。僕は君だけのテイエムオペラオーだよ」

 

昔のように膝の上に座りながら、優しく口づけを交わした。

これから先も様々な試練が俺たちの前に立ちはだかるだろう。だとしてもオペと一緒ならばどんな試練も乗り越えられる確信があった。

 

 

 

 

俺と世紀末覇王の物語は、まだまだ先が長そうだ。




如何でしたでしょうか?
オペラオーは人の目につく仕事をしそうだなという想像の元描かせて頂きました。楽しんで頂けたなら嬉しいです!
今回は急遽予定を変更してしまい申し訳ありません…リクエストを頂いたお話も直ぐに仕上げますので、待って頂けると嬉しいです。
そして今回も閲覧、コメントありがとうございます!いつも励みになっております。
それではまた次回でお会いしましょう〜!

このウマ娘のifstoryが見てみたい!

  • トウカイテイオー、メジロマックイーン
  • サイレンススズカ、シンボリルドルフ
  • オグリキャップ、エアグルーヴ
  • スペシャルウィーク、ゴールドシップ
  • アグネスタキオン、ミホノブルボン
  • サクラバクシンオー、ライスシャワー
  • ナリタブライアン、テイエムオペラオー
  • マンハッタンカフェ、ナイスネイチャ
  • タマモクロス、セイウンスカイ
  • サトノダイヤモンド、キタサンブラック
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