初見狩りアニメにいる俺はどうしたらいいですか?   作:サトシ16852

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一話

「ねぇ、またニケノ冒険譚を読んで!」

 

6歳になる小さい子供はその美しい灰色の髪を揺らしながら暖炉の前の椅子に座ってる無表情の青年に期待を込めてお願いをする

 

「イレイナは本当にその本が好きだな」

 

呆れたような顔しながらしっかりと少女の持っている本を受け取る。そして青年は膝を掌で叩き座るように促すとイレイナは青年の膝の上に乗る

 

「あらあら、結局読むのね。なんだかんだ言って嬉しいのかしら?」

 

その光景を見ていた少女の母であるヴィクトリカは青年を揶揄うように少し大きな声で尋ねる

 

「そうですね、なんだかんだ言ってやっぱり嬉しいですよ。妹みたいで可愛いし」

 

しかし彼女の揶揄いを受け流し、少し目線を下げる

 

膝に乗っている少女がまだかまだかまだかと足を揺らし本の朗読を待っている。そんなイレイナを見て、いつも無表情の彼の瞳からどこか少し悲しげな色が見えた

 

「ねえ!早く読んで!」

 

彼がいつまで経っても読まないことに痺れを切らしたイレイナは彼の手を掴みながら揺らす

 

「ごめん」

 

青年はイレイナの行動に促され持っているニケの冒険譚を読み始める。何度も何度も読み聞かせてきたこの本を

 

そして読み終わった時、彼が持っていた本を取り上げ、イレイナは母の前に行き、言った

 

「私、大きくなったらニケみたいに冒険する!」

 

青年から取り上げたニケの冒険譚を母親に見せつけるようにし、自分の意思を高らかに宣言した

 

そんな娘の姿を見たヴィクトリカは家事の手を止めイレイナに笑顔で言った

 

「あら、それならまず魔法の勉強を沢山してニケのような魔女にならやきゃね」

 

「たくさん勉強して魔女になったら世界中を旅していいの?」

 

希望に満ちた瞳で見つめるイレイナにヴィクトリカはしゃがみ、目線を合わせた

 

「ええ、もちろんよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前で物語が始まるやりとりを見ていた

 

魔女の旅々という物語の主人公であるイレイナがニケの冒険譚という本を読み、外の世界の美しい光景に憧れ、旅をするために魔女になるという子どもらしいけれどとても素敵な目標

 

俺は魔女の旅々はアニメでしか見たことないがこの作品が大好きだった。幻想的で個性的な主人公、旅を経て成長していくイレイナ

 

人生でやりたいことなんて全くなくただのうのうと生きてきた自分には目標に向かって全力で取り組み、夢が叶っても腐らず前へ進むそんな主人公が好きだった

 

この世界にきた時は嬉しかった。大好きな物語の世界だとそれは大はしゃぎした。まだ主人公であるイレイナが生まれていなかったので母親であるヴィクトリカに会いに行った

 

そして彼女の旅について行き様々な旅をした

 

それからだった

 

俺以外の人間が人に見えなくなっていったのは

 

旅について行き、原作にある話の体験をした時、自分以外の人間がどのように動くかプログラミングされたNPCのように見えてきた。しかし、彼らにはそれぞれの生きたエピソードがあり歴とした人間である。

 

彼らは生きている、それはわかっているが俺には人形のようにしか見えなかった。なぜならこの世界は人の手によって描かれた世界なのだから

 

作者が神様であり世界の物語が決められるのだ。この世界の人間は自分の意思で生きていると思っているが、それは間違いでありそう思わされているだけなのである

 

もしかしたら俺もこの世界の人間と同じ人形なのかもしれない

 

そのように考えるとだんだんバカらしくなってきていた。人が死のうが生きようが、物語が原作通りに進もうがどうでもいい。もうこの世界はアニメで見るのではなく間近に観れる魔女の旅々である

 

この世界に生きる一人の人間ではなく、傍観者として生きていこう

 

 

 

 

 

 

 

 


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