蒼き鋼のアルペジオ ーThe blue oceanー   作:酸素魚雷

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Depth09 逃亡艦隊

今俺の目の前では凄い事が起こっている。

 

「だから!何故報告一つよこさないんだ!ついこの前ネバダとコロラドに襲われたばかりだろう‼︎」

 

 

「隠密行動中に報告なんて相手に居場所を教える様なものだよ!」

 

 

「だったら量子通信を使えばよかろう!何の為に装備してると思ってるんだ‼︎」

 

 

「そ、それは……」

 

片方はアイオワだった。

 

もう片方は今まで散々通信でアイオワに説教をかましていた部下。

 

重巡洋艦ボルチモア

 

そのメンタルモデルであった。

 

容姿はアイオワとは反対の印象が強い。アイオワの服装は白のセーラーという比較的女の子らしい服装なのに対しボルチモアの服装は灰色一色の軍服チックな服装であり、堅苦しい印象が強い。

 

ブルネットの髪色に焦げ茶色の瞳。灰色一色の地味な服装に同色ショートスカート。頭の後ろで髪を短くツインテールに括っており、性格は規律の塊そのもの。一に規律二に規律三、四も規律、以下略!とでも言いそうな雰囲気がある。

 

やっと先発した艦隊に合流出来たと思ったのに開幕アイオワへの説教大会が始まった。

 

そして良く無いことに徐々に説教の矛先が此方に向こうとしているのが分かる。正直遠慮したい。

 

 

遡ること1時間前

 

無事に合流ポイントのサモア島近海へ到着して、先発艦隊とは合流出来た。そこで一安心と思いきや、そうはいかなかった。

 

 

 

「アイオワ、予定合流時間を大幅に過ぎた言い訳と後ろにいるそいつについて聞かせて貰おうか」

 

バツの悪そうな顔をするアイオワ。背後にゾッとする様な殺気を感じて振り返ると一隻の巡洋艦が浮上してきていた。

 

三連装8インチ砲3基9門に連装5インチ高角砲6基12門を搭載し、大型艦橋とマスト2本を持った大型巡洋艦。

 

 

ボルチモア級重巡洋艦

 

 

船体に赤色のバイナルパターンを浮かべながらその重巡洋艦は浮上して来た。

 

 

恐らく今までの説教紛いの報告から、彼女が重巡ボルチモアだろう。その船体の上に立つ彼女は青筋を浮かべていた。

 

 

 

その結果説教大会は幕を開けた。

 

 

 

そして今に至る

 

「ネバダとコロラドの襲撃も遅れて報告した上にアルバコアの始末も未報告。挙句の果てに所属不明な存在を連れてくるなど何をやっているんだ‼︎」

 

「いや、確かに海斗は所属不明だけど……それは……」

 

 

まずい、非常にまずい。これは俺が説教を食らう流れだ。

 

「おい!そこのお前」

 

俺?

 

「そうだ!所属と名前を言うんだ。」

 

名前は分かる。所属って何て説明すればいいんだ?

 

「名前は蒼葉海斗。所属はわからない」

 

これでいいはず。多分……

 

「所属がわからない⁉︎人類の言葉に類は友を呼ぶとあるがまさにその様だな。なあ、アイオワ」

 

ボルチモアがアイオワを睨みながらそう言った。アイオワはかなりバツの悪そうな顔をしていたが……

 

「全く。昔はあれ程規律正しく模範となる様な大戦艦であったというのに……。堕落とはつくづく恐ろしいものだ……」

 

「いつまでもあんな脳筋じゃいられないよ」

 

「少なくとも報告ぐらいはして欲しいものだな、アイオワ」

 

 

 

ある程度ボルチモアの説教(八当たり)が収まり今度は他の事を聞かれた。質問に一通り答えるとボルチモアの態度はそれなりに緩くなっていった。彼女も唯の頑固者では無かったようだ。

 

 

「と、言う訳だ。胡散臭さ満載なのは承知してる」

 

「なるほど。お前は元々人間だった訳だ」

 

分かってくれた!

 

「ああ、その通りだ。あの事故にあって死んでるはずなのに俺はこの世界に飛ばされた」

 

「しかし、身体はメンタルモデルとなっていた訳か。前例が無いが信じよう。いや、お前のコアの所属を特定出来ない以上疑いようが無いし確かめる方法も無い。人間にはコアの製造なんて真似は不可能だろうからな」

 

 

どうやら話せば分かるタイプだったようだ。とりあえず信じてくれたようだし、やっと一安心出来る。

 

 

「そうか、いいだろう。元人間だろうと今のお前は霧だ。それにアイオワが認めている上に質問でも人間が嘘をついた時の仕草は見えなかった。この重巡ボルチモア、お前をこの逃亡艦隊の艦長と認めよう」

 

そう言われ俺はボルチモアと握手した。相変わらず眼差しは鋭いが、先程のような敵意は感じられなかった。信用されたと見なしていいんだろうか?それと地味に手が痛い。

 

「じゃあ、海斗。私以外の艦艇を一通り見てきて貰えないかな?多分島の近くにいるはずだから」

 

そう言えばボルチモアは先発したグループだったな。先発艦隊と名がついている以上はボルチモア一隻では無いはず。他の艦も見てみたい。と言うか移動手段はどうすればいいんだ?まさか……泳ぐなんてことは無いよな……?

 

俺が少し渋い顔をしていると察してくれたのかアイオワが話掛けてきた。

 

「流石に泳がせはしないよ。そうだな……ガトー、海斗を向こうにいる艦達の場所まで送ってあげてもらえるかな?」

 

”了解した。私に飛び移れ、艦長”

 

アイオワからの司令を聞いて海中からガトーが紫色のバイナルパターンを発光させながら浮上してくる。アイオワもそうだがいつ見ても霧の艦隊の個性とも言えるバイナルパターンはかっこいいと思う。

 

アイオワの近くへ浮上して来たガトーの甲板へと飛び乗った。周りを見渡すとシンプルな艦橋と前後2門搭載された4インチ砲が目に入ってくる。アイオワなどの水上艦とはまた違った魅力で溢れている発展途上の潜水艦の形。現代の葉巻型潜水艦と比べ水上艦の面影を色濃く残すその型は堪らなく魅力的だった。俺がただ単にプラモデルの作り過ぎかもしれないが。

 

”そうか、水上艦とはまた違った魅力が我ら巡行潜水艦にはあると”

 

ガトー達と回線が繋がってるの忘れてた……

 

頼むからバカの独り言と忘れてくれ

 

”それは難しいな”

 

そんなぁ……

 

 

 

海斗が悶えながらガトーに運ばれた後、ボルチモアからアイオワへの秘匿回線が繋がれた。この話は海斗に聞かれると彼を不快にするかもしれない内容だ。故に干渉が極めて困難な秘匿回線によって交わされた。

 

『アイオワ、あのコアの反応は一体なんだ?メンタルモデルの形成が可能な時点で上位艦クラスだがこれ程までの高出力のコアはそうそう存在しない。重巡洋艦の比では無いぞ』

 

 

『海斗を形成しているコアは間違い無く大戦艦クラスかそれ以上。彼が船体を形成すれば恐らくかなりの上位艦の形成が可能なはず。試しに私の船体の制御を任せたら補助があったと言え彼は制御に成功した』

 

 

『大戦艦クラスの高出力コア。それに加え登録すらされていないなんてそんな事はあり得ない。やはり奴は誰かが意図的に呼び出したとしか……』

 

 

『でも彼が覚えてる時代は今から約30年前。一体誰が彼を呼んだっていうの?』

 

 

『そこは私にも分からん。但し今の我々が置かれている状況からすれば奴の助力は悪いことでは無い。奴も我々の事を信用しているようだし、我々も奴が敵対しない限り大丈夫だろう』

 

 

『そうだね。どの道この状況を脱しない限り私達は悩むことすら出来ない。後の事を考えるのも大切だけど今、目の前にある問題の解決の方が重要だから』

 

 

『ああ、その通りだアイオワ。では引き続き蒼葉海斗はお前に任せる。さっきの印象からすれば私は向かないだろう』

 

 

『分かった』

 

 

秘匿回線を閉じるとアイオワとボルチモアは再び普通の話し合いに戻っていった。

 

その頃海斗は

 

 

「なるほど霧にも補給艦や空母も存在しているのか」

 

”我々の重力子機関には燃料は事実上不要なので給油艦は存在しないがな。あと、空母では無く海域強襲制圧艦だ”

 

重巡洋艦はそのまま重巡洋艦。戦艦は大戦艦だから、てっきり空母も有るのかと思っていたが。冷静に考えたら戦艦がミサイル撃ったり魚雷が空飛んだりする時点で艦載機はいらない子扱いになってしまうな。

 

 

”一度、レキシントン級海域強襲制圧艦を見かけた事があるが攻撃時の様子を見たことは無いな。主にアリューシャン列島や日本列島の択捉島付近に駐留しているらしい”

 

択捉島付近は単冠湾、アリューシャン列島はダッチ・ハーバーかな?姿形だけで無く大戦中の要所まで一緒とは。

 

 

 

 

”まあ、説明した限りこんな感じだ”

 

ガトーに霧の種類についての質問をしていた。

 

ガトーから聞いた限り霧の艦種は大きく分けて以下の9種類

 

侵蝕魚雷や各種弾頭の補給を行い艦隊を支える補給艦クラス。

 

クライン・フィールドを持たない最下級艦艇である魚雷艇クラス。

 

隠密行動や偵察、通称破壊を得意とする反面水上艦に比べ火力に劣る巡行潜水艦クラス。

 

対潜や艦隊護衛などをこなせる万能艦艇でありクライン・フィールドを保有するが、現実同様それなりの耐久性しか持たない駆逐艦クラス。

 

駆逐艦の上位互換であり、耐久面と火力面が上昇した軽巡洋艦クラス。

 

一般的にメンタルモデルを保有可能であり、駆逐艦や軽巡洋艦より大規模なクラインフィールドを展開可能。そして超重力砲を使用できる為高い火力を有する重巡洋艦クラス。

 

重巡洋艦クラスをしのぐ火力と迎撃能力。膨大な演算能力を持ち、その強制波動装甲からは重巡洋艦とは比べものにならない程の強固なクラインフィールドを発現させ、霧の艦隊の旗艦としてその多くが君臨している大戦艦クラス。

 

その大戦艦クラスをも上回り、現在2隻しか確認されていない最上級艦艇であり、霧の艦隊の総旗艦として存在する超戦艦クラス。

 

超戦艦クラスをも上回る機関出力を持ち、脅威の制圧能力を誇る航空母艦を模した海域強襲制圧艦。

 

 

 

もちろんこれは霧の判断基準であり、人類にとってはたとえ魚雷艇であろうと強制波動装甲に守られている以上迂闊に手を出せないだろう。少なくとも俺なら手出ししない。

 

と言うか2隻しか存在してない超戦艦と言えばやはり大和型なんだろうか?そんな疑問を浮かべている内に目的地に着いた様だ。

 

”着いたぞ。艦長”

 

島の近くには軽巡洋艦が2隻と駆逐艦が4隻、補給艦1隻が停泊していた。軽巡洋艦はクリーブランド級。駆逐艦はフレッチャー級かだろう。補給艦は補給艦シマロン級か?

 

艦種は大体検討がつくが名前までは流石に聞かないと分からないな。

 

 

”名前が分からないか。軽巡洋艦マンチェスターだ”

 

”姉と同じくクリーブランド級軽巡洋艦モービル”

 

また回線オンだったのを忘れてた。

 

”フレッチャー級駆逐艦ベネットだ。我が姉妹は無口でな、左からソーフリー、ベル、マリーだ”

 

4隻のフレッチャー級の内1隻からの紹介があったのだが、正直覚えられる自信は無い。175隻も建造された駆逐艦なのだから。

 

「お前が青葉海斗か。アイオワからのアップデートで確認したが男性型メンタルモデルとはまた珍しいな」

 

後ろに振り向くとシロマン級補給艦の甲板に一人の女の子が腰掛けていた。青のパーカーに比較的低い身長。ロングのブラウンカラーに黒い瞳。そして特徴的な片眼鏡(モノクル)を付けた独特な雰囲気を持つ少女。彼女は補給艦ミシシネワの保有するメンタルモデルであった。

 

「ひょっとしてシロマン級のメンタルモデルなのか?」

 

「ああ、そうだとも!私がこの逃亡艦隊の補給事情を牛耳っているシロマン級補給艦ミシシネワだ!」

 

無い胸を張りながら自慢気に彼女はそう言った。

 

 

「折角だ、おーいガトー。どうせ消耗で補給が必要だろう。後で補給しに来い。我らが旗艦が節約に努めたお陰で弾頭はまだまだ余裕があるし、ナノマテリアルも駆逐艦2隻分程の量が丸々残っている。補給と修復が必要なら早く来い」

 

”了解した。それとソーフィッシュがアルバコアから取った鹵獲品だ。備蓄を頼む”

 

そう言ってガトーの甲板の一部が割れてアームが出てきた。割れ目からは各種弾頭や魚雷発射管、重力子機関の一部が見えている。そこからアーム伝いに瓢箪の様な形をした魚雷が30本程ミシシネワに運び込まれて船内へと収納されていった。

 

「未使用の侵蝕魚雷とはありがたい。ソーフィッシュに礼を言っておかなければならんな」

 

”ああ、ヤツにはちゃんと言っておく”

 

なんだかんだで仲がいいんだなこの2隻

 

「ガトー、そろそろ艦長をアイオワの元へ送った方が良いのでは無いか?」

 

”そうだな。ではそろそろ旗艦アイオワの元へ戻るとしよう”

 

「ああ、頼むよガトー」

 

”了解した”

 

 

もう空は夕焼けに染まっている。それなりの時間が経ってしまったらしい。今更だがアイオワとボルチモアを一緒にして来てよかったのだろうか?説教大会が再び始まっていそうなのが否定出来ない。






作者の都合で大変投稿が遅れました。

今回アイオワ以外にボルチモアとミシシネワの2隻のメンタルモデルを出しました。

あんまり関係無いですが、ボルチモアは見た目や性格を某パンツじゃないアニメのお姉ちゃんを意識しています。

段々内容がチグハグになってきそうなので、そうならない様に頑張ります。

ご意見ご感想お待ちしてます。
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