蒼き鋼のアルペジオ ーThe blue oceanー   作:酸素魚雷

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Depth19 ソロモン海の蹂躙劇

 

 

「クソッ!!次から次へと休みなく!!」

 

「左舷後部クラインフィールド消滅!!これ以上は持ちこたえられないっ!!」

 

諸島群に設置された48本の筒を束ねたロケット砲、計30基1440本のロケット砲は休みなくノースカロライナとサウスダコタの頭上に弾幕の雨を降らせ続ける。

 

侵蝕弾頭や通常弾頭、囮の空弾頭など多種多様なロケット砲の弾頭。先のEMP攻撃を受け、防空レーダーを封じられたノースカロライナ率いる艦隊は効果的な防御も出来ず一方的な攻撃を受け続ける。

 

侵蝕弾頭がクラインフィールドを削り、その穴から強制波動装甲へと直に砲弾が直撃する。ノースカロライナの隣では軽巡洋艦と駆逐艦が侵蝕弾頭によってクラインフィールドに穴を開けられ、砲弾の雨を受けて船体を蜂の巣へと変えていた。侵蝕弾頭が、通常弾頭が、容赦無く艦隊に降り注ぐ。

 

通常ならば面制圧の用途で使う為にお世辞にも良い命中率とは言えないロケット砲も今の的は重力変化によって機動力が落ちた艦艇、尚且つその艦艇の真下の重力源に引き寄せられて終末誘導すら不要な有様。限界まで炸薬を搭載した砲弾は、艦の真下の重力源を目指して目標の艦を次々とスクラップへと変えていく。

 

(何故だ……何故なんだ!!私は……何処で間違えたと言うのだ……!!)

 

せめてもの悪足掻きと飛来するロケット弾に向けて四連装40mm機銃と連装5インチターレットからレーザーをばら撒いて応戦しながらノースカロライナはそんな想いに駆られていた。

 

自分の目の前で起こる一方的な蹂躙劇、副官であるサウスダコタは既にクラインフィールドを破られ満身創痍、配下の駆逐艦や軽巡洋艦は撃ち込まれるロケット弾になす術無くその艦影は海中へと没していく。

 

(何故だ……こんな、ことがあっていいハズが……)

 

人類との戦闘でもここまでの被害は受けなかった。否、これからも霧は被害など受けないと高を括っていたが為の油断、指揮官の失態は配下の者達まで破滅へと導くということをノースカロライナは改めて実感したのかもしれない。

 

 

ーーノースカロライナより洋上300km地点にてーー

 

「ノースカロライナ、応答しろノースカロライナ。クソッ!!どうして通信を切った!!」

 

ノースカロライナから離れること距離300km、別動隊たるコロラドは突然回線を切ったノースカロライナの為に必死に呼びかけていた。

 

「ねーねーコロラド、ノースカロライナがどうかしたの ? 」

 

「まずいぞウィチタ、概念通信まで遮断とは……嫌な予感しかしない」

 

自身の後方に展開する重巡洋艦ウィチタが不安そうにコロラドに話しかける。その問いに焦る様に答えるコロラド、ノースカロライナとの連絡手段の途絶が意味するものは2手に別れたどちらかの殲滅、おそらく手頃なのは此方だろう。

 

(いや……今度同じ手を食う訳にはいかない。もう二度と部下を撃沈などさせるものか!!)

 

「ウィチタ!!ネバダ!!これより通信途絶ポイントへと向かう、後続の軽巡洋艦と駆逐艦にも伝えろ!!」

 

コロラドが指示を出し、先頭の大戦艦を筆頭に艦隊が回頭する。ノースカロライナとの通信が切断された諸島を目指して艦隊を前進させる、そして諸島群への回頭が終わった時にそれは起きた。

 

前方より飛来する高エネルギー反応、それと共に検出される重力子反応。それは上位の霧が持つことを許されるあの兵器だった、海面を払う様に前方から来た赤い重力波は艦隊正面のコロラドとネバダを直撃する。

 

「超重力砲!?一体何処から!!」

 

「クラインフィールド飽和率57%……危なかった、掠っただけで幸いだったな……」

 

海面を薙ぎ払う様に発射された超重力砲はコロラドとネバダに直撃するも重力子の照射時間が短くクラインフィールドを破れず、また回頭後で2隻が艦隊の盾となる様な配置だったことも幸いして損害は至って軽微だ。

 

「規模からして大戦艦級の放った超重力砲では無い……ボルチモアだな……」

 

自分達を狙撃した超重力砲を分析し、即座に敵を割り出すコロラド。

 

「命中率を上げる為に回頭しながら撃ったのか……第2射目まではしばらく時間があるが2発目の超重力砲を受ければクラインフィールドはもたない……」

 

弱気になるネバダ、海面を払う様に撃てば洋上艦には高確率でヒットする、そのまま第2射目を放たれればどうなるかを想像したのだろう。

 

「あーもう!!イジイジして鬱陶しい!!相手がそれならこっちも超重力砲で撃てばいいだけだよ!!」

 

「……それもそうだ……後手に回るばかりではつまらない。ウィチタ、やれ」

 

「了解、任せてよ!!」

 

ネバダの慎重さに痺れを切らしたウィチタの発言にコロラドが同調、ウィチタに超重力砲の発射許可を出す。そして待ってましたと言わんばかりに喜びながらウィチタは艦隊前方に移動、重力子機関の出力を上げていく。

 

「超重力砲起動!!(エンゲージ)、弾道より発射地点を逆算……完了。今直ぐ吹き飛ばしてあげるよボルチモア!!」

 

ウィチタの艦橋と煙突が真っ二つに割れ、その中より2基の制御ユニットが現れる。周囲に青色の重力子が漏れながらウィチタの船体は変化していく。艦橋が2つに割れた直後、喫水下のバルジが開き中の重力子機関の一部が露出、低い重低音を響かせながら制御ユニットへエネルギーを送り続ける。

 

「超重力砲、発射!!」

 

青の閃光が視界を覆った次の瞬間、大気を揺るがす轟音と共に割れた海をウィチタの青色の重力波が超重力砲として発射される。

 

彼方の水平線に向けて走り続ける重力波の塊、そして数十秒後には臨界させた重力子を使い果たし超重力砲は途切れた。

 

「良くやったウィチタ、では早いところノースカロライナに合流しよう」

 

ウィチタが薙ぎ払い荒れる海面を睨みながらそう言ったコロラド、この時内心仕留め切れたとは思って無かったのかもしれない。

 

 

その頃ノースカロライナ率いる艦隊はある打開策を考え出していた。

 

「ノースカロライナ……弾道からロケット弾の発射位置を特定した、ここから南西20kmの諸島群だ……」

 

サウスダコタから入った通信、既に大部分のクラインフィールドを失いロケットの雨によって満身創痍な状態から弾道を元に発射ポイントを特定したようだ。

 

「良し、目標ポイントH185-A122!!誘導弾に諸元入力……完了。今直ぐ根刮ぎ吹き飛ばしてやる……!!」

 

ロケット弾が降り注ぐ中、誘爆の危険を押しのけて満身創痍のサウスダコタに変わり誘導弾の発射シークエンスに入るノースカロライナ、攻撃まであと一歩と迫った時にその異変は起きる、攻撃は何時になっても始まらなかったのだ。

 

「何故だ!!何故誘導弾を撃ち込まない!!」

 

座標を誘導弾にインプットし、VLSハッチまで開いた状態での何処からかの強制停止命令。発射寸前まで準備された弾頭は静まりかえり、発射されること無く沈黙を保ったままだ。不審に思ったノースカロライナがWarningの警告文に彩られた手元の浮遊画面を覗き込むと共に絶句する。

 

「Admiralty code……だと……成る程、島に重火器を据え付けたのはそう言う訳か……こんなとこらで我らが勅命の邪魔が入るとは」

 

アドミラリティ・コード、霧にとっての失われた勅命であり大部分の上位の霧の興味の対象でもある存在。人類を海洋から駆逐したのち海洋を分断、占拠せよと全ての霧へと命令を送りその反面陸地への攻撃を禁ずるなど霧にハンデを与えている存在でもある。

 

ノースカロライナにとってのアドミラリティ・コードはある意味守るべきものであり、同時に霧として解明せざる負えないものである。

しかしこの存在のせいで諸島群に据え付けられたロケット砲を攻撃することが出来ない、アドミラリティ・コードの対地上攻撃の禁止が頭から抜けていたことにノースカロライナは後悔した。

 

「大丈夫だ……ノースカロライナ……座標を島の後方に設定……主砲で島ごと薙ぎ払えばいい……」

 

メンタルモデルに損傷は無いものの既にクラインフィールドを破られた艦尾を中心に船体半分がスクラップと化したサウスダコタからの提案。

 

アドミラリティ・コードが対地上攻撃を禁ずるならばその後方を狙い目標物を射線に挟んで撃てばいい、アドミラリティ・コードを回避して陸地を攻撃する為のサウスダコタの考えはあながち外れた物では無かった。

 

「分かった。サウスダコタ、お前も主砲を動かせるか ? 」

 

自身の主砲を島に向けると共にサウスダコタに主砲の安否を問う、今のサウスダコタの見た目からすれば当たり前の判断だ。

 

「ああ……生憎、船体前部の2基しか使えないがな……」

 

ロケット弾の猛攻によってスクラップとなった後部主砲塔を見つめながら自嘲気味言ったサウスダコタ。

 

「2基残っていれば十分だ。あのロケットが次弾装填している今がチャンスだサウスダコタ」

 

「ああ、座標H185-A122……いや、座標H185-B252。主砲斉射!!」

 

ノースカロライナとサウスダコタの主砲から紫と橙色のレーザーが照射される、島を直接の座標としない為にアドミリティ・コードの制限は受けず島の後方の座標に向けて撃たれた粒子砲はその射線上にあるロケット砲を薙ぎ払う。

 

轟音

 

ロケット砲内に装填されていた砲弾に誘爆、30基のロケット砲は次々と誘爆を起こし数を減らしていく。誘爆したロケット砲のあった諸島群には所々赤黒い光が見える、恐らく装填中だった砲弾が破壊されたのだろう、その数にノースカロライナは寒気がした。しかし、あれ程までに苦しめられたと言うのにやってみれば何とも呆気ない最後だ。

 

「良し、全ロケット砲の沈黙を確認。サウスダコタ……残存艦艇の数は ? 」

 

「…………」

 

味方艦の数を尋ねるノースカロライナ、しかしサウスダコタは口をつぐんだままだ。

 

「どうかしたか ? 答えろ……サウスダコタ……」

 

「いない……」

 

「サウスダコタ ? 」

 

「ノースカロライナ……この部隊はお前と私以外、もう1隻も残っていない……」

 

「なにっ……!!」

 

改めて周りを見渡すノースカロライナ、最早周りには燃え盛る残骸が浮かぶのみ。ノースカロライナの配下の艦は比喩で無く全滅したのだ。

 

 

 




みなさん、ウィチタは戦闘狂ではありませんよ。
マヤちゃんみたいなキャラですがテンションが高いだけということを説明しておきます。

対ノースカロライナ戦は多分次で決着は着くはず(多分)

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