蒼き鋼のアルペジオ ーThe blue oceanー   作:酸素魚雷

21 / 29
Depth20 アイオワの帰還

 

ソロモン海諸島群より北北東20km地点

 

朝靄のかかったソロモン海、その海中650m、アンカー()を海中に垂らし船体を固定させる1隻の白銀の大戦艦。艦の灯りという灯りを消し、探知されない為に主機である重力子機関の火も落としている。漆黒の海中に白銀の船体を輝かせる大戦艦も戦闘指揮所だけは赤々とした光が漏れていた。

 

 

「諸島群砲台沈黙。ノースカロライナ及びサウスダコタ、北西へ向け20ktで離脱……コロラド達と合流する気かな ? 」

 

「そのつもりなら厄介だ、大戦艦級が2隻から4隻に増えたらもうお手上げだからな」

 

電灯を非常用ランプに切り替え、禍々しい雰囲気と共に赤々と輝く戦闘指揮所。そのランプに照らされながらディスプレイに映った情報を顔を顰めながらも確認するアイオワと海斗、状況はあまり良くない様だ。

 

「……あのロケット砲台で撃破出来る自信結構あったんだけどな……」

 

元々あのロケット砲で倒し切れると考えていたのか若干落ち込み気味の海斗、ただノースカロライナが諸島群を砲撃出来なければあの2隻を撃沈出来た可能性は決して低くは無かっただろう。

 

「仕方ないよ海斗、重巡クラスまでなら余裕で撃沈出来ただろうけど相手は艦隊組んでたし旗艦は大戦艦クラスだったから」

 

「流石は霧の大戦艦ってか……でもロケット砲台(プランA)で仕留め切れなかった以上は博打打ち(プランB)しか残って無いんだよな……」

 

プランAが失敗した以上残された手段はスペア扱いだったプランB、ただしこの作戦はまさに博打打ちと呼ぶに相応しい代物だった。

 

「確かにノースカロライナは比較的無事だけどサウスダコタは重度のダメージを受けてる、コロラドとネバダが増援に来なければ仕留め切れるよ」

 

「てことは応援を呼ばれる前に決着をつける必要があるな……アイオワ、プランBの為に用意したアレは使えるか ? 」

 

「勿論 ! 今直ぐにでも動かせるよ」

 

「なら俺たちが飛び出した少し後に動く様に頼む」

 

「分かった、デコイm63を起動開始。2分18秒後に速力50ktにて海中の移動を開始……と」

 

頬にバイナルパターンを浮かべながらそう呟いたアイオワ、すると一回り小さなディスプレイに2分台にセットされたカウントダウンが始まる。

 

「それじゃあ上にいる2隻を驚かせてやろう。アイオワ、浮上だ」

 

「ん……了解、重力子機関起動、船体固定アンカー解除及びに重力子バラスト解放を開始…………完了、大戦艦アイオワ浮上します」

 

アイオワの呟きと共に揺れる艦内、アイオワを海中650mに押し留めていた重力子バラストと固定アンカーを解放した為に急激な水圧の変化が船体を襲う。だが霧の大戦艦にとってそんなものは一切関係無い、白銀の大戦艦は巨大な推進力を得て海面へ向け270mを越える船体を浮上させて行く。

 

轟音

 

海面を突き破り姿を現すアイオワの船体、主砲や副砲からは砲身内部に溜まっていた海水が滝の様に吐き出され、甲板を伝って海へと流されて行く。ソロモン海の朝靄の中に浮かび上がる蒼のバイナルパターン、海の王者たる威厳を放つその白銀に輝く姿は例え様も無く美しいものだった。

 

そのアイオワの前方に展開する紫と橙のバイナルパターンを浮かび上がらせる2隻の大戦艦、紫の大戦艦は然程損傷していないが橙の大戦艦は船体中央から船尾にかけての部分が主砲塔も船体も全て破壊されてボロボロになっていた。

 

何方の大戦艦も船体前部の2基の主砲塔をアイオワへと向ける、穏便にことを済ます気は無いらしい。

 

「ノースカロライナ、サウスダコタ、少しだけ辛抱してね……」

 

火蓋は再び切って落とされた。

 

 

 

 

 

「……やっと出て来たのか……アイオワ……」

 

「周囲の海上にアイオワ以外の艦影見えず……幾ら手負いとは言え大戦艦級2隻の目の前に単艦で出るとは舐めてくれるな……」

 

目の前に単艦で浮上したアイオワに向けて即座に主砲塔の照準を合わせる2隻、その表情には悔しさの様なものが混じっていた。

 

損害らしい損害を受けていないノースカロライナはもちろん、サウスダコタは船体後部を破壊されているが前部2基の主砲塔は健在で超重力砲の発射も可能な状態。つまり2隻ともクラインフィールドこそ削れているものの戦闘能力は然程喪失していない、その目の前に単艦で現れることは2隻にとって侮辱に等しいのだ。

 

「笑わせるな……単艦だと……我々を仕留めるには……お前1隻で十分だとでも……言いたいのか……アイオワ!!」

 

自身の中に溜まりに溜まった心情を吐き出し激昂するノースカロライナ、その叫び声と共に2基の3連装16インチアクティブターレットが砲身を真っ二つに開き、周囲に紫電が走る。それは主砲塔だけでは終わらず、艦底部魚雷発射管、側面に並んだ連想12.7cmターレット、甲板に埋め込まれた320セルのVLS、大戦艦ノースカロライナが誇る火器という火器を作動させて行く。

 

「私も同感だノースカロライナ。旗艦アイオワ、出来るならば手段は選びたかったが……残念だ」

 

ノースカロライナに続きサウスダコタもアイオワへの攻撃シークエンスを開始する、前部2基の3連装アクティブターレット、艦底部魚雷発射管、右舷2基と左舷3基のみ残った連装12.7cmターレット、生き残った173セルのVLS、失われた船体後部の火器を残したままサウスダコタはアイオワを目標に艦載火器を展開する。

 

「「沈め」」

 

アイオワへ向けて雨霰の如く降り注ぐノースカロライナとサウスダコタの弾幕の雨、砲弾が海面を耕しながら巨大な水柱を幾つも作り、主砲塔と副砲塔から放たれるレーザーが海水を蒸発させて水蒸気を生み出す。

 

轟音、轟音、轟音

 

自分達への侮辱とも取れる行為を行ったアイオワへの半ば八つ当たりの様な攻撃、止むことを知らないかの様な弾幕はひたすらに攻撃座標を耕す。

 

そして砲弾とレーザーの雨が止んだ時、座標地点の海面には崩壊したナノマテリアルである銀砂が漂っていた。

 

「……なんだ……たったこれだけか……口ほどにも無いじゃないか……」

 

「海中に物体の沈降音を確認、仕留め切れたのか ? 」

 

何処か小馬鹿にした様に言い放つノースカロライナとは裏腹に何処か違和感を感じずにはいられないサウスダコタ、今まで数々の手段で自分達を消耗させて来たアイオワがこんな単純にやられる筈は無い、そんな考えが離れない、そんなサウスダコタの疑問に答えるかの様にアイオワの作戦は最終段階へと移行する。

 

 

ーーコレヨリデコイm63ヲ起動、スペア重力子機関ノ作動ヲ確認、デコイm63 ミズーリ 起動ーー

 

 

「 !! 海底より微弱な重力子反応と推進音を確認、ノースカロライナ!!まだ仕留め切れてはいないぞ!!」

 

サウスダコタからの報告に慌てて浮遊画面を確認するノースカロライナ、するとそこには50kt程の速力で海中を進む大型物体の反応が示されていた。

 

「ナノマテリアル反応も重力子機関の反応も微弱だがあるな……だが、速力50ktとは……重力子機関が損傷したのか ? 快速が自慢だったお前にとってはこれ以上無い皮肉だな」

 

50ktといえばかなりの高速であるが、大戦艦アイオワがネームシップのアイオワ級は最大速力105kt、ネームシップのアイオワは120ktもの速力を出すことが出来る。人類にとっては高速でも、霧にとっては下位艦艇並みの速力なのだ。

 

「運良く攻撃を耐えた様だが……これを食らっても無事でいられるか見ものだな……」

 

「 !! ……なる程、付き合おう。ノースカロライナ」

 

僅かに微笑みながらそう言い放ったノースカロライナ、それを汲み取ったサウスダコタ、砲弾やレーザーで仕留め切れないならばとっておきの最終兵器を使えばいい。それが2隻の出した答えだった。

 

「超重力砲、起動(エンゲージ)!!」

 

ノースカロライナの声と共に輝きを増すバイナルパターン、余剰な重力子を吐き出しながら上下2つに割れる船体。その船体内には加速器たる役目を持つリング(サイクロトロン)が幾つも並び、その上下には禍々しい重力子機関やVLSセルが露出する。

 

そして変化が起きるのはノースカロライナとサウスダコタだけでは無い、2隻の直下の海面が削られながら徐々に割れて行く、この様を人間が見れば口を揃えて旧約聖書のモーゼの再来だと声高らかに叫ぶかもしれない、そう言える程壮観な光景をこの2隻は斜線の確保の為に作り出す。

 

「逃がさんぞアイオワ!!最早お前に抗うだけの力は残されていないのだからな!!」

 

「ロックビーム照射、超重力砲をアイオワへロック」

 

海の割れがその物体に追いついた時、ノースカロライナはサウスダコタと共にロックビームを照射。動きを封じ込められ、遂に空中に浮くミズーリ、スクラップ寸前の船体にはナノマテリアルが付着しており、元機関室には補助タイプのスペア重力子機関を放り込みアイオワへと化けていた。それをこの2隻は知らぬまま、超重力砲の発射準備を進めて行く。

 

「哀れだな……アイオワ、最早バイナルパターンを発光させることすら出来んとはな」

 

「重力子縮退域、臨界。さらばだ艦隊旗艦、我々は多くを失い過ぎた」

 

大気を震わせる震動と轟音を響かせながら紫と橙に輝くノースカロライナとサウスダコタの超重力砲、そして発射寸前になった今、この2隻はアイオワの罠に嵌った事実を知ることとなる。

 

轟音

 

ノースカロライナとサウスダコタの背後で突如として浮上する物体、それは白銀に輝く大戦艦、アイオワだった。

 

 

遡ること2分前

 

 

「本当に博打打ちだよね……もう少し潜るのが遅かったら危なかったよ」

 

「あと12秒でデコイが動く、それまで潮流に乗ってあの2隻の背後を取ることが出来れば……」

 

「作戦……完了だね」

 

最初の待ち伏せ時と同じく赤々とした非常灯に照らされたアイオワの艦内、その戦闘指揮所でアイオワと海斗はデコイの行く末を見ていた。

 

ディスプレイ越しに見える戦況、オワフ島からサルベージしたミズーリにナノマテリアルを振りかけ、スペアの重力子機関をぶち込んだ特性デコイは動き始める。そしてデコイの動きが止まると共に船体越しに海中の震動が艦内へと伝わる。

 

「超重力砲発射時の空間制御だね……多分上では海が割れてると思うよ」

 

超重力砲発射時の重力制御による空間変異、アイオワから聞かされていた海斗だったが、それを身体で体感すれば改めて霧の規格外さを感じることが出来る。

 

「それじゃあ始めようかアイオワ、重力子機関を最大出力で起動させてあの2隻を真後ろから超重力砲で狙撃する、演算の補助は俺がやる」

 

「了解、重力子機関始動、並びに超重力砲発射シークエンス開始、補助演算をコアID20150815へ接続。大戦艦アイオワ、浮上します」

 

 

超重力砲発射の為に船体を真っ二つに割りながら浮上する大戦艦アイオワ、通常ならばこんな荒技は不可能である。だがそこは補助演算が成せる技、アイオワが操艦をしている間に海斗が補助演算でアイオワの超重力砲を保護して置く、たったこれだけだ。

 

そして超重力砲発射シークエンスに入ったまま海中より浮上するという前代未聞の行為をノースカロライナとサウスダコタは目の当たりにすることとなったのだ。

 

 

 

「何故だ!?アイオワなら目の前に!!」

 

「……まさか……囮だったというのか……!!」

 

混乱するノースカロライナとサウスダコタ、しかしそれに追い打ちをかけるかの如くアイオワからは重力子臨界の反応が出ていた。

 

(まずいぞ!!今の臨界に達した重力子を抱えた私とノースカロライナは言わば巨大な重力子爆弾……これを狙っていたというのか……アイオワ!!)

 

アイオワの狙いを即座に見抜くサウスダコタ、超重力砲の発射は霧にとっての勝利宣言であると共に最も危険な時間でもある。超重力砲の発射には莫大な演算処理が必要となり、それによって霧の演算処理は極限にまで達する、その上発射方向のクラインフィールドを開かなければならず迎撃能力も著しく低下する、いわば丸裸同然なのだ。

 

「ノースカロライナ!!早く重力子を放棄して回避行動に移るんだ!!」

 

「ダメだ!!今超重力砲を撃たずに重力子を放出すればお前も私も船体が持たない!!」

 

先程までロケット弾を浴び続けていたツケが回って来た様だ、損傷が目に見えるサウスダコタは勿論、それはノースカロライナも例外ではなかった。今の強度の不足した船体で重力子の強制排出を行えば2隻の船体は持たない。回避行動の為に重力子を強制排出すれば船体が崩壊し、このままでいればアイオワの超重力砲を浴びることとなる、前門の虎後門の狼とはこのことだろう。

 

「クソォォォ!!」

 

せめてもの足掻きと後部主砲塔と副砲塔でアイオワを砲撃するノースカロライナ、だが最早意味は無い。

 

「取り舵一杯!!最大戦速!!」

 

取り舵をきり、左方向へ120ktで海面を滑るアイオワ。そして超重力砲の射軸にノースカロライナが入る寸前、海斗が叫ぶ。

 

「撃て!!アイオワ!!」

 

「了解!! 超重力砲、発射!!」

 

急旋回しながらの超重力砲発射、蒼の重力子が光の束となり、ノースカロライナに直撃、そして薙ぎ払う様に滑りサウスダコタにも命中。通常ならば擦る様な短時間の超重力砲照射には耐えられる大戦艦級も飽和寸前のクラインフィールドに超重力砲発射寸前状態が重なれば耐えられる筈も無かった。

 

超重力砲の崩壊により行き場を無くした重力子が手当たり次第にノースカロライナとサウスダコタの船体内部を破壊していく、船体内部は重力子に抉られ、最早原型をとどめていなかった。彼方此方で大小の誘爆が発生し、船体を破壊し尽くしていく。

 

(ああ……私は……アイオワに負けたのか……)

 

画面に表示されるのはシステムエラーの文字ばかりだ……もう重力子の暴走は止まらない。もうすぐ私の船体を巻き込んでの大規模な重力子爆発が始まる、爆発時の光はさぞかし美しいものとなるだろうな。そしてその時私もその光の中に引きづりこまれる、コアもこの身体も跡形無く消え去るだろう。

 

何処までも続くかの様な空虚な感覚。最早何もかもがどうでも良くなった、私では力不足だったのだから……結局のところアイオワは正しかったのだ、私はそれを否定し破滅への道を突き進んだだけだった。確信していたものが欠陥だったなどこれ程滑稽なことは無いだろう。

 

(……そうだったのか…………この空虚な感覚こそが諦め……そしてこの僅かな無念こそが後悔なのか…………。最期の最期にアイオワと同じ感情の体験が出来た訳だ……こんな私の最期としては悪くは無い)

 

『まだだ、お前達2隻にはここで消えてもらっては困るのだよ』

 

『そうは問屋が降ろさないと言うわけだ』

 

突然自分達へと送られて来た概念伝達、それと同時に崩壊する船体の上に立つノースカロライナとサウスダコタ目掛けて突っ込んで来る物体。

 

「ぐっ!!……い、錨だと!?」

 

「何が、何が!?どうなっているんだ!?」

 

船体を掠める様に飛来して来たのは小型艦用固定用アンカー、混乱するノースカロライナとサウスダコタの問いに答える様にその通信の主は姿を現す。

 

『『こうなっているのさ!!』』

 

2つの声が聞こえた直後、錨の鎖が続く海面を切り裂き浮上する2隻の小型艦艇。

 

「ガ、ガトー級巡航潜水艦だと!?」

 

「どうしてお前達が!!」

 

水面を切って現れたのは2隻のガトー級巡航潜水艦、アイオワの直属の部下たるガトーとソーフィッシュだ。

 

「旗艦アイオワからの命令……いや、ここはお願いと言うべきか」

 

「お前達は気にせず錨に捕まってろ」

 

有無を言わせないとばかりにノースカロライナとサウスダコタのメンタルモデルを錨に巻いたまま甲板な降ろすガトーとソーフィッシュ、しばらくするとハッチより2隻の白黒メンタルモデルが這い出て来た。

 

「戦闘は終わった、だがあと一仕事残ってるんだ。ノースカロライナ、サウスダコタ、コロラドとネバダ、ウィチタへの停戦命令を出してくれ」

 

ハッチより這い出て来たガトーがノースカロライナとサウスダコタを見上げながらそう告げる。

 

「……ああ……全くお前達には構わないよ……いいだろう、全艦艇に告ぐ、これより旗艦は大戦艦ノースカロライナより大戦艦アイオワへと移る……これより大戦艦アイオワの指揮下に入れ……これでいいか ? ガトー」

 

「恩に着るよ、ノースカロライナ」

 

ノースカロライナに帽子を取り、礼をするガトー、それを傍目にソーフィッシュは自らの主への報告を行う。

 

「旗艦アイオワ、ノースカロライナからの旗艦変更が完了した。おかえり、艦隊旗艦」

 

何処か砕けた話し方だが、その表情は主の帰りを祝福している様だった。

 

 

大戦艦アイオワ艦上にて

 

 

 

「ありがとう、ソーフィッシュ」

 

「これで終わりか ? アイオワ」

 

「ううん、面倒なことになる前にノースカロライナとサウスダコタの船体を早く処分しないと……」

 

アイオワの見つめる先、自身の超重力砲で撃ち抜いたノースカロライナとサウスダコタの船体。複数の赤黒い球体が膨みと萎みを繰り返しており、誰が見ても異常な雰囲気だった。

 

「確かにヤバそうだけどどうなるんだ ? 」

 

「超重力崩壊が起きる前にノースカロライナとサウスダコタの船体との回線を切っちゃったからね……あのまま放っておいたら小規模な重力源……マイクロブラックホールが生まれちゃう……」

 

一瞬訳が分からなかった海斗、そして理解すると共に自分が演算補助をしていた武器の恐ろしさに少しばかり背筋が寒くなる。

 

「……結構洒落にならないな」

 

「そうなんだ……重力子兵器を撃ち込めば問題無いけど私の超重力砲はしばらく使えないし侵蝕魚雷でどうにかなる代物じゃ無い……一体どうすれば……」

 

「大丈夫だアイオワ、ノースカロライナとサウスダコタ以外にもこの海には大戦艦級が2隻いる」

 

「 !! 」

 

 

 

 

アイオワより洋上310km地点

 

「あの2隻がやられたらしい、流石にコアにはとどめを刺さなかったところがいかにもアイオワらしい」

 

「そうだなコロラド……」

 

洋上にて超重力砲によって受けたダメージを放出中のコロラドとネバダ、そんな2隻にアイオワからの通信が入る。

 

『コロラド ! ネバダ ! 聞こえてる ? 』

 

通信にて入って来た可愛らしい声、アイオワだ。

 

「あの時の追撃戦以来だな、聞こえているよ。旗艦アイオワ」

 

『うう……艦隊旗艦に戻ってから5分も経って無いけど2人にはお願いがあるんだ』

 

「勿論だとも、アイオワ。で、要件とは何だ ? 」

 

『撃破したノースカロライナとサウスダコタの船体がマイクロブラックホールを作りそうで……』

 

「了解、座標を教えてくれ」

 

『座標はP182-W232、この座標に超重力砲をお願い』

 

「了解したよ、アイオワ」

 

「はぁ……全く、騒がしさは昔と変わらないな」

 

通信終了と同時に少しばかり嬉しそうに呟くネバダ、それに付き合う様に返すコロラド、何方も心の底ではアイオワの帰還を待ち望んでいたのかもしれない。

 

「そう言ってやるな、それに夢想家だったのはアイオワでは無く我々の方だったがな……良し、湿っぽいのはここまでだ。アイオワが旗艦に戻ってからの初仕事だ、やるぞネバダ」

 

「いいぞ、コロラド」

 

「「超重力砲、起動(エンゲージ)!!」」

 

船体を上下真っ二つに割るコロラドとネバダ、赤と緑の光を放ちながら船体内部には臨界点を迎えた重力子が溢れて行く。

 

「超重力砲、発射!!」

 

コロラドの掛け声と共に放たれる赤と緑の光の柱、それは水平線の彼方まで伸びていく。

 

「なあコロラド、私達はどうなるんだろうな……どんなに軽く見ても我々がやったのは反乱だ……」

 

「気にするなネバダ、それを決めるのは我々では無いんだ」

 

「そうだな……コロラド」

 

 

 

 

 

「命中まで、3、2、1、0!!」

 

アイオワのカウントダウンと共にノースカロライナとサウスダコタの船体にコロラドとネバダの超重力砲が直撃、マイクロブラックホールになる寸前だった重力源を根刮ぎ破壊、消滅させた。

 

(……美しい…………)

 

その反動なのか白銀の光に飲み込まれて崩壊して行く2隻の船体、13年の時を過ごした自身の船体の最後を焼き付けながら、ノースカロライナは電子の海へと意識を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。