蒼き鋼のアルペジオ ーThe blue oceanー 作:酸素魚雷
「その代わりに、私達の艦長になってくれないかな?」
あれ?艦長?
確かに面倒見て貰えるのはありがたい。しかし、自分に艦長なんて務まるのか?そりゃ、ちょっとぐらいの指示は出来るかもしれないが………
「ねぇ、もしかしてダメだったかな……」
戸惑って居るとアイオワが話掛けてきた。艦長に成れる事はいい事だろうし、面倒見て貰えるのも好条件だろう。だけど、自分じゃ艦長は務まらない。
確かに将来海自に入るつもりだったし、父さんからそれなりの知識は教えて貰った。だけど、それだけ。ただ、知っているだけでしかない。自分では役不足だろう。
「いや、艦長に成れるのは凄い嬉しいさ。ただ……」
「ただ?」
「俺じゃ艦長は務まらない」
使える事と使い熟せることは別物。父さん仕込みの知識があろうと実際のところ自分には経験など無いのだから。
「幾ら知識が有ったってそれだけだ」
流石にこの子に迷惑は掛けられ無い。そう思っていた。
「なーんだ。そんな事か」
え?……そんな事?
「今の世界じゃ実戦経験のある人なんて大海戦の生き残りぐらいしかいないよ」
「訓練でやってない事は実戦でも出来ないんだ。そんなに心配しなくてもいいよ」
「それにさ、私は人間との全面戦争なんて望んでない。人類を滅ぼすつもりは無いし私達霧が全滅するのは困る。仲間が居なくなるのはさみしいしね」
「その為には今の霧を変える必要があるんだ」
「だからさ、私の事を心配してくれるなら、尚更艦長になって貰いたい」
アイオワの説得。今の状況ではいつ元の世界に帰れるかどうか分からない。それならいっそこの世界で生きる覚悟を決めよう。俺だって男なんだから。
「分かった。アイオワ、君の艦長をやらせてもらうよ。よろしく」
「よろしく、海斗」
さて、これから大変そうだ。握手を交わしながらそう思った矢先のことだった。
「アイオワ!!何処で油売ってるんだ!!」
周囲に鳴り響く大音量の声。ちょっと頭がクラクラする。
「ボ、ボルチモア!いやーちょっと用事が有ってさ……」
見るとさっきのグラフ輪の一部が出現して喚き散らしている。ボルチモアって言うとボルチモア級重巡洋艦だろうか?間髪入れずに説教が続く。
「合流予定時間を過ぎてるんだ!!それでも艦隊旗艦なのか!?」
「う…うう……申し訳ない」
めちゃくちゃ怒られてるな。重巡洋艦と大戦艦ならアイオワの方が上司に当たるんじゃないのか?それともただアイオワに落ち度があるのかどっちだ?
「全く、部下の私がなんでこんなに注意せねばならんのだ!!」
更にボルチモアの説教は続く。
「昔は規律正しい模範となる様な大戦艦だったというのに………とにかく‼︎早く帰還しろ‼︎」
さっきのグラフ輪の一部はプツンと
回線が切れた。どうやら回線を切ったらしい。
「アイオワも大変だな」
イマイチ状況が掴めなかったが、とりあえず慰めておく。あまり深い入りはしない。
「じゃあ……私の艦隊に案内するよ……ついて来て……」
「あ……さっきのは深入りしないで……」
さっきよりか落ち込んでいる様に見える。てか、絶対落ち込んでる。
その後アイオワに足元にあの六角ガラスを出してもらい、海の上を歩いていく。というか、アイオワの六角ガラスは白っぽい色なんだな。
海の上を歩いているとさっきのアーレイ・バーグ級の残骸以外にも様々な残骸が散らばっていた。5インチ砲弾か3インチ砲弾の薬莢や救命艇の一部らしき物。12.7mmM2重機関銃の付いたボートにSH-60らしき残骸まであった。あらゆる種類の残骸が浅い海の底に沈んでいるのが見える。それは1つや2つでは無いのだ。
「ごめんね。もうちょっと歩くかな」
大戦艦アイオワが本当のBB-61アイオワを模したものなら浅瀬には入って来れない。もう少し海の上を歩く事になりそうだ。しばらく経った。日が落ちてきたのも有るがさっきまで所狭しと海底に横たわっていた残骸が見えなくなっていた。かなりの沖合に来たのだろう。
「着いたよー。海斗」
え?……ただの海面しか見えないんだが?
「アイオワ、どういうk」
「 全艦浮上 」
アイオワがつぶやくと4隻の艦艇が海の中から現れた。2隻の潜水艦と種類の違う2隻の軽巡洋艦だった。海中からの出現などあり得ない艦艇達。水中からの急浮上により、軽巡洋艦の砲身からは水が流れている。
「 ! あっちのは……クリーブランド級!こっちは防空巡洋艦アトランタ!!向こうにはガトー級潜水艦まで!!」
今は無き戦闘艦。その4隻の浮上後一際大きな物が海面へと浮上した。潜水艦の3倍近い長さの船であり、その艦上には所狭しと火器が搭載されている。
「これが……戦艦アイオワ……世界最大級の超弩級戦艦……」
まさに圧巻の一言だった。
BB-61アイオワ
全長270.43m
全幅32.97m
満載排水量57450t
最大速力33kt
最大出力254.000馬力
あの大和型戦艦を超える全長を持つ高速戦艦。スラッとした印象の船体には前に2基、後ろに1基搭載してある三連装16インチ砲があり、側面には所狭しと防空火器が搭載されている。
史実においても絶大な防空火力を誇り、戦艦屈指の速力を持った戦艦。正確には戦艦アイオワでは無いが瓜二つの戦艦が目の前に鎮座していた。
「海斗、先に私のデータを教えるよ」
そう言って目の前に出現したパネルを見た。
大戦艦アイオワ
全長270.43m
全幅32.97m
満載排水量57450t
最大速力120kt
最大速力(海中)120kt
武装
超重力砲
三連装16インチアクティブターレット3基9門
連装5インチアクティブターレット10基20門
40mm近接レーザー防御システム60基
20mm近接レーザー防御システム60基
その他各種近接防御システム多数
艦底部魚雷発射管128門
VLSセル384基
「まあ、こんなもんだね海斗」
……なんだこりゃ……
…最早戦艦なんてレベルじゃない………そりゃ人類が負ける訳だ……
「おーい、何か感想は?」
(アイオワ……もう、戦艦の形じゃ無くていいんじゃ無いか?」
「途中から声に出てるよ」
「悪い、しかし本当に凄い船だよ」
驚きを通り越して最早呆れていると先程のボルチモアとは違う声がした。
”旗艦アイオワ、随分遅い帰還だった”
”重巡洋艦ボルチモアからの催促の山だ”
「アイオワ、今の声は?」
「クリーブランドとアトランタからのメッセージだよ」
クリーブランドとアトランタ?
「軽巡洋艦や駆逐艦や潜水艦は演算力の関係でメンタルモデルは持つ事が出来ないんだ」
演算力?パソコンみたいな感じか
「でも、思考システムが無い訳じゃ無いから皆答えてくれるよ」
俺も霧だから聞こえるんだろうか。
”アオバカイト艦長、旗艦アイオワをよろしく頼む”
”男性型とは珍しいな、誤作動か?”
さっきとは違う声
「ガトー、ありがとう。ソーフィッシュ、失礼だよ」
今度はガトー級2隻からだった。霧にも色んな奴がいるんだな。
「海斗、それじゃ行こうか」
大戦艦アイオワの甲板へさっきの六角ガラスが伸びていく。
「ああ、よろしく。大戦艦アイオワ」
「じゃあ、そろそろボルチモア達の先発艦隊へ合流しようか、海斗」
「ああ、そうだな」
アイオワが何処から出したのか船の艦長が頭に被っている帽子を手渡してきた。何故かピッタリのサイズだ。
「それじゃあ、蒼葉艦長ご命令を」
アイオワからの帽子を手に取って自分の頭に被り、命令を下す。
「全艦最大戦速!先発艦隊へと合流する!」
「「「「「了解‼︎」」」」」
ガトー級2隻が海中へ潜航し、クリーブランド、アトランタ、アイオワは水流噴射推進を開始する。
5隻の霧の艦は目的地へ向け、再び動きだした。日は沈み、水面は月の光で輝いていた。
一話分だけストックが有ったので投稿しました。
やっぱり3000字は少ないですね。
もっと文の量を増せるよう努力します。
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