蒼き鋼のアルペジオ ーThe blue oceanー   作:酸素魚雷

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Depth07 部下

海の中

 

漆黒の船体を光らせながらソレは居た

 

艦首には21インチ魚雷発射管6門を、艦尾には21インチ魚雷発射管4門を搭載している

 

全長95m

 

全幅8.31m

 

異様な模様を浮かべたその艦は重力子機関を停止させ海中から観察物を見つめていた。

 

霧の太平洋艦隊

 

巡航潜水艦 アルバコア

 

 

細長い船体に紫色の模様を発光させ、割れた船体からは有りとあらゆる観測機器が露出していた。

 

目の前を通過する5隻の艦隊

 

その艦隊が通過し終えた後、アルバコアは量子通信を開始した。

 

 

 

 

発 霧の太平洋艦隊

巡航潜水艦アルバコア

 

宛 霧の太平洋艦隊

大戦艦ノースカロライナ

 

 

報告内容

 

昨夜2305時においてソロモン諸島近海にて

 

大戦艦1隻

 

軽巡洋艦2隻

 

巡航潜水艦2隻

 

からなる艦隊を発見。

 

艦影及び重力子機関のパターンから大戦艦アイオワを中核とした逃亡艦隊である可能性が高い

 

当艦隊は南東方面へと航路をとった模様

 

また

ボルチモア級重巡洋艦1隻

 

フレッチャー級駆逐艦4隻

 

シマロン級補給艦1隻

 

は確認出来ず

 

恐らく、先発隊として発った後何処かに潜伏している模様

 

引き継ぎ観測及びデータ収集を継続する

 

 

これにて報告を終了する。

 

 

 

「中々おちょくってしてくれるじゃないか。アイオワ……」

 

「アルバコア、報告ご苦労だった。そう苛つくなノースカロライナ」

 

「私は苛ついてなどいないさ、サウスダコタ。ただ、アイオワを捕らえられないことがな……」

 

 

北太平洋洋上

 

海上には第二次世界大戦時の艦艇を模した艦が停泊していた。艦隊旗艦無き霧の艦隊。駆逐艦や軽巡洋艦を中核とした数十隻の艦隊の中にその2艦は鎮座していた。

 

 

アイオワより二回り程小さい船体を持ち三連装16インチ砲3基9門の主砲が艦上にて威圧感を放っている。アイオワ級に酷似したその艦影はコロラドやネバダとは一線を覆すスタイリッシュな印象を与える。

 

 

大戦艦 ノースカロライナ

 

大戦艦 サウスダコタ

 

 

アイオワを逃亡へと追いやった2隻だった。丁度巡航潜水艦アルバコアからの報告を聞いていたのだ。

 

「ネバダとコロラドが失敗した以上我々が出るしか有るまい、サウスダコタ」

 

大戦艦ノースカロライナの艦橋に立つ少女はそう言った。白のワンピースにブルネットの短髪に船体のバイナルパターンと同じ紫の瞳。大戦艦ノースカロライナが保有するメンタルモデルだ。

 

 

「そうは言ってもリスクは高い。補給艦を抑えていれば包囲戦法が使えただろうがな、ノースカロライナ」

 

大戦艦サウスダコタの主砲塔に座る少女はそう答えた。黒地に橙のセーラー服に明るいオレンジの髪色。バイナルパターンと同じ橙色の瞳が特徴的な大戦艦サウスダコタの持つメンタルモデルであった。

 

「そもそも艦隊旗艦(アイオワ)が誤作動など起こさなければこんな事にはならなかったと言うのに……」

 

「駆逐艦ティエラを処分した時から艦隊旗艦は狂った。お前も良く分かっているだろう、ノースカロライナ」

 

ノースカロライナは自分の周りを見渡す。艦隊に居るのは9割方軽巡洋艦や駆逐艦だ。霧の太平洋艦隊は霧の艦隊の中でも最多の艦艇数を誇る。ただし、封鎖する海域も最大規模というオマケ付きである。

 

日本列島近海は東洋方面艦隊による封鎖が行われている為、この辺りは関係は無い。霧の太平洋艦隊の封鎖海域はアリューシャン列島から南方のオーストラリアやニュージーランド、南太平洋までの膨大な海域である。

 

この海域を封鎖している巡航艦隊は全部で6つ。この6つの巡航艦隊によって太平洋の封鎖は維持されている。しかし、幾ら艦艇の数が多くても封鎖海域が広過ぎて折角の戦力も分散してしまう。事実、6つの巡航艦隊に戦力の殆どを割いたおかげでアイオワ率いる中央艦隊は殆どが軽巡洋艦や駆逐艦での構成になっていた。

 

今はそのアイオワすらいない有様なのだ。巡航艦隊から戦力を割けばアイオワを捕らえる為の戦力が揃う。しかし、それは自殺行為であるのだ。大海戦以降、人類は霧の打倒を掲げ未曾有の大敗北からの立て直しを急速に行っている。

 

周囲から隔絶され、風前の灯である日本では人ならざるもの(デザインチャイルド)によって新種の弾頭を搭載した魚雷を開発しているという報告も届いている。

 

 

以前に増して力を増していく人類。このタイミングで巡航艦隊から戦力を引き抜くのは愚策である。この問題がノースカロライナ達にとっての頭痛の種であった。頭を抱えているのは人類だけでは無いのだ。

 

 

「全く、アイオワにも困ったものだ」

 

「それどころでは無い!サウスダコタ!」

 

全く、呑気な奴だ!我々の置かれている状況は最悪なんだぞ!

 

「しかし、ノースカロライナ。人類は再び我々を攻撃するだろうか?この様な状況に陥ってまでお互いに殺し合っている人類が」

 

サウスダコタの考えも一理ある。今欧州では壮絶な欧州大戦が勃発している。一大軍事国家アメリカも介入が出来ず欧州全土を巻き込んだ戦乱へと拡大した。先進国同士の殺し合い。参加した面子を見れば、最早第三次世界大戦と言っても過言では無かった。霧という人類共通の敵が居るのにこの様だ。仮に新兵器を開発したとしてそれを霧だけに使うかも怪しいところだ。本人に自覚は無いが、サウスダコタは争いを止めない人類を少なからず軽蔑している。

 

 

「内輪揉めが人類の答えとはな、皮肉なものだ」

 

ノースカロライナは呆れきっていた。サウスダコタ程人類への軽蔑は無いが彼女の人類に対しての評価は高くない。

 

「人類は原子力を発見し、一気に文明と戦争をより高度なものとした」

 

「なら、ノースカロライナ。霧を駆逐した後、重力子機関や強制波動装甲の技術を人類が手にした時彼らはどうなるのだろう?」

 

「おかしなことを聞くな、サウスダコタ。人間がどうなろうと知ったことじゃ無い」

 

むしろ此方も人類が自滅してくれれば楽なんだがな。

 

「それに我々が負ける筈無かろう。サウスダコタ」

 

「確かにその通りだ」

 

当たり前だ。現に我々は人類との最終決戦に勝利したでは無いか。最早死に体寸前の人類に何が出来るというのだ。今の状況ですら殺し合う人類に。

 

「我々は何者をも貫く矛と何者をも阻む盾を持ち合わせている」

 

「しかし、その2つを使いきれるだけの頭脳をまだ我々は獲得出来て居ない。」

 

アイオワと同じ考えだなサウスダコタ。私もそうだがアイオワの影響力は低いものではなかった。それを未だに実感している。

 

「まるで、アイオワに説教されてる気分だよサウスダコタ」

 

更にサウスダコタは続ける。

 

「勿論お前の考えも理解している。戦術や戦略の獲得は急務だ。これこそが我ら霧の弱点(アキレス腱)なのだから」

 

間違ってはいない、ただ……

 

「その戦術を獲得する為我々はこの体(メンタルモデル)を作り上げた」

 

「人類と同じ様に不自由に身を置くことで更なる高みへと昇る為に」

 

「しかしだ、サウスダコタ。最近霧の中での意見の食い違いから派閥に似たものが出来つつある」

 

「私はこう思うのだ。霧が人類を真似たお陰で霧同士での衝突……いや、戦争が起きるのでは無いかと」

 

驚くサウスダコタ、当たり前か……

 

「幾らなんでも考え過ぎでは無いか?そんなことは失われた勅命(アドミラリティ・コード)を遂行しないことと同義だぞ!」

 

信じられないだろうなサウスダコタ

だが、もうその兆候は見え始めてる。いや、我々の行動が前例となるのだから。

 

「戦術を得る為に人間を真似た結果が仲間割れなど本末転倒でしかない」

 

アイオワを追い出したのも本音を言えばこれが理由だ。確かに後悔はしているが、人間の情報収集の任務を行っていた駆逐艦ティエラのコアに汚染を受けたアイオワを艦隊旗艦にはしておけない。

 

破滅を避けられないなら最小の犠牲で済まさなければならない。例え自分を犠牲にしてでも……だ…

 

 

「一大戦艦の為に霧の太平洋艦隊を潰す訳にはいかない」

 

「本音を言うなら大戦艦アイオワは優れた指揮官であり、強大な力を持った存在だ。奴に敬意が微塵も無いと言えば嘘となる」

 

「だが、私はアイオワの部下だ。上司の尻拭いは私がやる」

 

嘘は無い。私はアイオワを尊敬していた。しかし、もう生かしてはおけない。私が霧である以上守るべき物は失われた勅命(アドミラリティ・コード)であり、霧の太平洋艦隊だ。それに私の慕っていたアイオワは最早存在しない幻想なのだから。

 

「成る程、分かった。付き合おうノースカロライナ」

 

サウスダコタ……?

 

「私はアイオワに反対してお前に付いたが、今までアイオワを否定する動機が分からなかったんだ。私はてっきりお前がただアイオワを嫌っているだけかと思っていた」

 

「アイオワが狂った時ヤケにアイオワを咎めていたからな。奴を慕っていたのだから認められなかったのだと。ただ自分達の上司を軽蔑して事を起こしたのだと……我々の霧としての理想像からかけ離れていただけで恨んでいたのかと心配していた」

 

「そうでなくて良かった……ノースカロライナ」

 

「私だってアイオワを手には掛けたく無い……しかし、太平洋艦隊をアイオワの道連れにする訳にはいかない」

 

「だが、アイオワを助けられるなら私はそちらに賭ける。例え狂ってしまっても奴は我々が慕った艦隊旗艦なのだから。これを分かってくれ」

 

「サウスダコタ……」

 

 

ありがとう……サウスダコタ。

 

 

私は最悪だ。太平洋艦隊を守る為とは言え私の選んだ行動はアイオワを犠牲にすることと同義なのだから。兵器として何も考えられなかった昔が懐かしく思えるよ。

 

 

よく人類は不幸になった時には運が無かったと言うらしい。私はもちろん運なんてものは信じていない。だが、その運に見放された時はこんな心情なのだろうな……

 

 

アイオワが狂った時、ずっと嘘だと思っていたかった。ただの間違いだったとどれ程考えたか。しかしアイオワは誤作動を起こした。最早私の尊敬していた霧の大戦艦はこの世に存在しないのだと。

 

 

 

 

 

 

すまない……アイオワ……

 

……霧の存続の為に”死んでくれ”……

 




深夜のテンション恐るべし

話がズレ無い様に必死の作者です。

え?もうズレてるって?

あまり作者に爆弾を投げないで下さい……
もうHPはゼロです……


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