「父さん、どうしてこんなところにいるんですか。占い婆さんのところに行っておいてくださいと言ったはずですが。」
足跡の主はスウだったのだ。ライは動揺でうまく回らない頭を使いながらそう疑問を口にする。
「なに、ピッコロ大魔王が現れたと聞いてな。とんでもない強さなのは十分に占い婆から聞いたから占い婆達と一緒に地下に逃げようと思ってさ。そしたらライも地下にきているって占い婆が教えてくれてな。迎えに来たんだ。お前も一緒に来いよ。ここなら安全だし、食料も占い婆の力でどうとでもなる。」
その発言を聞いたライは顔を苦渋に満ちた顔に変えてスウを見た。
「父さん。私はカリン様のところで修業をしていて、今は気の扱いについて修業しているんです。それで感じ取れる気の範囲もかなり増えて、カリン搭から占い婆さんのところまで範囲が広がったんです。おかしいですよね。数が合わないんですよ。あそこで私が感じ取れる強さの人はアックマンとミイラ君、今はいませんけどチャパさん、そして父さんの四人です。」
「それがどうしたんだ?」
ライは頬から涙を一筋流して次の言葉を次ぐ。
「三つ感じ取れるはずの気が二つしか感じ取れなくて、カリン様に聞こうとしたらはぐらかされました。そもそも、あなたが、あなたが本当に私の父親なら、私の安全よりも自分の安全を優先するはずがないんです。」
そこまで言い切るとライは構えをとった。
「すぐに終わらせます。醜い偽物はもう見たくありません。」
ライはスウに向かって行く。仮にも父親を模したものである彼に搦め手は通用しない。全力な力押しで攻めていく。
「はあああ!」
その全力の拳を振るいきる前に洞窟の岩がライを襲う。壁だったはずの岩石が離れ、ライの顔よりも大きなものを含め大小さまざまの大きさの岩石がライめがけで飛んでいった。
「なっ!くそっ」ガガガガガ
岩を砕いて戦ってくが無限に飛んでくる岩を砕きれずにダメージを負う。
(このままじゃまずいぞ。接近できれば何とかなるのに…!)
そんなライの思考を知ってか知らずか岩の間を縫うように偽物が接近してくる。岩の攻撃の隙をつき的確に急所を突く攻撃を仕掛け始めた。
「うっ、くそっ!」
(父さんと搦め手の相性がこんなに抜群だったなんて。)
戦闘力差はあれど急所を突かれ続ければ大きなダメージとなる。ライはだんだんとスウの偽物に追い詰められていった。しかし劣勢の状態もそう長くは続かない。悟空が現れたのだ。
「わっ!くっ!このっ!」
悟空だけでなく亀仙人の偽物も現れる。それによって岩の量は倍になる。悟空も捌くが明らかに悟空とライの負担は増えていた。
「悟空!来てほしいと思ったときに来てくれるのはありがたいですけど、余計なものまで連れてこないでくください!」
「おめえも余計なものつけてるじゃねえか!お互い様だろ!」
「こっちにはあなたと違って余裕が無いんです!」
「おらだってそんなに余裕があるわけじゃねえぞ!」
悟空の余裕はライのフォローでなくなっていた。悟空のフォローありきでも洞窟の偽物二体のコンビネーションはすさまじくライの負担は軽減しきれていない。二人はだんだんと崖に追い詰められ始める。後がないと悟ったライはある決心を固める。
「悟空、自壊する可能性がある奥の手使います!片方落として片方隙作るとこまでやるんで一気に決めて下さい!!」
「!分かった!!」
悟空の返答を聞ききる前に行動に移した。
「八速・狼牙風風拳!」
ライは八手拳と狼牙風風拳を掛け合わせた技を披露する。素早さを大幅に上昇させる絶技だが今のライにはリスクが高い技でもある。その技を使って近くで急所攻撃をしているスウの偽物を崖に蹴り飛ばす。
「はあ!」ドン!
すんでのところでガードを決められ崖下に落とすまでには至らない。すぐさまスウの偽物に接近して追い打ちを放ち、取って返して亀仙人の偽物のところまで行く。
(もう…持たない!)
この技は特に脚に負担が大きい。長く使い続けると脚が使い物にならなくなる。しかしライは技を酷使し続ける。
「…」
亀仙人は無言でライの攻撃から急所のみを防ぎひたすら時間を稼ぐことに集中した動きをとる。わずかレイコンマの時間であっても今のライには苦しい時間だ。
「らぁぁ!」
体の許容時間を超過しながらも無理矢理亀仙人の偽物を宙に投げ飛ばした。
「ぐうっ」
脚の痛みに耐えきれずライは立っていられなくなって倒れこむ。しかし無理をした甲斐はあった。
「サンキュー!ライ!」
右腕でかめはめ波を溜め、左手と両足で岩を捌いていた悟空は跳躍し至近距離でかめはめ波を放とうとする。
「悟空!!後ろ!」
跳躍した悟空に崖下に吸い込まれていくスウの偽物が岩石を放っていた。
「っ!」
悟空は一瞬動揺するも回し蹴りで岩を払い数瞬遅れるもかめはめ波を打ち込んだ。
ヒュウウウウウウドゴォォォン!!
轟音とともに亀仙人の偽物が吹っ飛ばされる。立ち上がらないことを確認し、悟空はライのところに向かう。
「ライ!おめえ無理しすぎだぞ。足がひでえことになってる。」
「これしかなかったから、やっただけです。けど…相当辛いです。少し休ませてください。」
「そうだ!仙豆は?おめえ仙豆持ってねえのか。」
「あの二人を倒すために技の途中で食べました。偽物たちが時間稼ぎに徹していたんで途中で食べないと足が持たなかったんです。途中で食べるつもりはなかったんですけど。」
苦しそうに話すライに悟空はすまなそうに言う。
「すまねえ!おらがもっと強ければこんな事させなくて済んだのに。」
「謝ることではないです。むしろ感謝するところですよ。」
「…そうだなありがとうライ。最後もおめえが叫んでくれなかったらやばかったしな。」
悟空が感謝の言葉を述べた瞬間何の予兆もなく地面が崩れ始めた。
「なっ!くそっ!…うっ」ズキン
ライは無事なところに飛び移ろうとするが脚の痛みによって跳躍ができない。一方の悟空はそんなライを見て助けようとし、崖に右手をかけ、ライの手首を左手でつかんだ。
「た、助かりました。」
ライが心底安心したようにいう。
「いやまだだ!」
悟空が厳しい声でいう。それを聞きライが上に視線を上げると倒れたはずの亀仙人の偽物がいた。偽物は怪しい笑みを浮かべると悟空の右手を踏みつけた。
「そいつを離せ。そうすれば超神水の元まで連れて行ってやる。」
「離すもんか。絶対に離さねえ!」
意地を張る悟空の手を偽物は何度も踏みつけ、時には顔面を蹴り飛ばす。それでも悟空はライの手を離さなかった。
「悟空、離してください。私は悟空が超神水を手に入れるためにここに来たんです。大丈夫。落ちたって死なないようにうまく着地します。」
声は震えている。まだ15歳という若さで死は重い。
「い、や、だ…!」
悟空はその提案を拒絶し一人青あざを作りながら耐える。そのうちに攻撃は止み急に洞窟が揺れだしたつぎの瞬間には崖にいた悟空とライは床に寝そべっていた。
「うわああああ…あ、あれ?」
「うん?」
二人は崖から落ちたと思っているために無我夢中で叫ぶが周りの状況が見えてくると二人して立ち上がった。
「さっきまで崖につかまってたはずなのにどういうことだ?」
悟空が不思議そうに言う。
「きっと幻覚か何かだったんじゃないですか。悟空のあざも治ってますし。」
「でもおめえの足はひでえままだぞ。」
「足は技を使った反動です。偽物にやられた傷は治ってますよ。最も一番治して欲しかったのはそこなんですが…」
「なるほどおらたちは空気にむかって技を打っていたようなもんだったってわけか。それなら納得だ。」
そんな話をしていると湖が現れた。
「!お前が闇か!!」
悟空がすぐに戦闘態勢をとり構える。
「…お前たちに超神水を与える。」
「え?」
どこからかちゃぶ台と急須、コップが二つ出てきた。
「試練を突破して認められた…ということですかね。」
「これが超神水?」
「…超神水は強い毒なのだ。すさまじいまでの体力と精神力、そして生命力が無ければ確実に死ぬ。」
「毒か…神の力を得る水は普通の人間には耐えられないってことですかね。」
「でも飲めば強くなれるんだろ?」
「分からん。神の力をお前が超えていれば超神水を飲んでも何ら変化はない。」
「なっ!では、これまで何人飲んで何人生き残ったんですか?」
沈黙が続く。
「一人とか二人とかですか?」
「十四人飲んで一人も生き残らなかった。」
闇が厳かに告げる。
「そんなの…ただの毒じゃないですか!!どうして神の力が宿ると言えるんだ!」
その発言に対して沈黙で答える。ちゃんとした答えが出せないのだろう。しかしそんな中でも悟空は解を出した。
「それでもおら飲みてえ。」
静かにしかし確かな覚悟を持って発したその言葉を止めるものはこの場にはいない。この覚悟を止められるものがいるはずがない。
「悟空、自分が超神水に耐えられず失敗したときに私がこの状態で帰れないことを心配しているならばそれは無用です。私はあなたの枷にはならない。でも本当にいいんですね?」
「もう決めたんだ。おら飲むよ。」
「健闘を祈ってます。」
悟空は片方のコップに超神水を注いだ。
「…お前は飲まないのか。」
闇がそう問う。
「馬鹿なこと言わないでください。両足がボロボロで体力と精神力は奪われ続ける、生命力だってそうです。そんな状態で水を飲もうなんて自殺行為だ。」
ライがそう言うとコップが一つ消えた。話している間に覚悟が決まったのだろう。悟空は雄々しい雄たけびと共に超神水を飲み込んだ。
「うらああああ!」
その直後悟空の周囲に稲妻が走る。
「ぐわあぁぁぁ」
数時間にわたる苦行の時間が始まる。
*
カリン様の修業の水とりもヤムチャはいまだ攻略の糸口をつかめず四苦八苦していた。
「もう少し動きを読むのじゃ。スピードはやり方次第ではわしから水をとれるレベルに達しておる。」
「くっ」
ヤムチャの欠点を指摘しながら動いているが急にカリン様の動きが止まった。
「!」ピク
「今だ!」
「おっと」
ぎりぎりでヤムチャから超神水を守る。その直後何か考え込むように止まってしまったカリン様を見てヤムチャも動きを止めた。
「どうしたんですかカリン様。」
「…いま、今悟空のとてつもないパワーを感じた、気がした。」
「ではもうすぐ悟空はパワーアップして戻ってくると。」
「これは…何とかなるかもしれんぞ。」
*
悟空が超神水を飲んでから実に半日が過ぎようとしていた。
「ぐわああああ!うわああああ!」
「す、すごい。すさまじい生命力だ。一体何時間超神水に耐えているんだろう。」
ずっと苦しみ続けた悟空だが急に叫びが終わる。
「悟空、大丈夫ですか。死んで、ませんよね?」
ライが最悪の想像をしてしまうが悟空は放心した顔で目を開けた。
「…お、おらは、どうなったんだ。」
「!よかった。無事だったんですね。それで、強くなれたんですか?」
「分からない。けど力が、力があふれてくるんだ。」
そう言うと、闇に向かって礼をいう。
「ありがとなー。…よし行くか。」
「帰り道知ってるんですか?こんな洞窟が動いてしまったり氷山魔人に追いかけまわされたりでガイドとしての役目は果たせそうもないんですが。」
「大丈夫だ。今のおらには道が、見えるんだ。ライ、おらの背中に乗れ。カリン様のとこまで連れてってやる。」
「助かります。」
*
すぐに悟空たちはカリン搭へと通じるところまで着く。
「カリン様ーーカリン様ー!」
悟空がカリン様を呼ぶ。
「やったな悟空。よく無事で帰ってきた。」
「早く上げてほしいんだけど、その前に背負ってるライに仙豆を食わせてやりてえんだ。一粒落としてくれ。」
「ライも無茶したようじゃな。ほれ!」
仙豆を食べて全回復したライは悟空と共にカリン搭に舞い戻った。
*
「ライ、悟空と一緒に修業に行ったんだったら俺も起こしてくれればよかったのに。」
「すいません。死ぬかもしれない旅だったので。大魔王に対抗できる武闘家を残しておく必要があったんです。」
「ははは、実力が足りないってストレートに言ってくれてもいいんだぜ。今の俺には事実だからな。」
その言葉にライは困ったような顔をする。
「ラーーイ!筋斗雲に乗せてやるから一緒に来ねえか?」
筋斗雲をカリン様からもらってはしゃいでいた悟空がそんなライに声をかけた。
「ええ、こちらからお願いしようと思ってたくらいですよ。正直どっちが勝ってもおかしくない勝負になりそうですからいざというときに手助けができるように近くにいたいと思ってたんです。」
「大丈夫だ。おらは負けねえぞ。」
悟空はそう言い放つ。
「もしもの話ですよ。もしもの。そうだカリン様、仙豆を三粒ほど頂いてもよろしいですか。天津飯という武闘家がキングキャッスルに向かってるかもしれないんです。」
ライはキングキャッスルに向かっている気を感じ取ってそういった。
「構わんぞ。しかし三粒でいいのか?」
「実力的には悟空が一度全回復できれば間違いなく勝てます。残り二粒の内一粒は天津飯さんのため、もう一粒は保険です。」
若返ったピッコロ大魔王を見ているライはそれでも自信をもってそういった。
*
悟空とライが筋斗雲にのってキングキャッスルに向かって行ってしまい、カリン搭にはカリン様、それにヤジロベーとヤムチャが残る。
「勝てますかね、悟空たち。」
「気の感じる量はほぼ互角、仙豆があれば実力的に確かに負けるはずはないのじゃが…」
「だったら心配するようなことなんてなんもないでしょーよ。」
ヤジロベーは楽観して言う。
「あいつは魔族を生み出すことのできる能力の持ち主じゃ。楽観はできまい。」
(ライが足手まといになる可能性もあるしの。)
ライの自信とは裏腹にカリン様の見立てでは五分五分のようである。
偽スウ60
偽亀仙人139
え、弱くねと思ったそこのあなた、ちょっと考えてみてください。例えばあなたが小学生から石を投げられるとしたらそれは脅威でないでしょうか。しかもたくさん投げてくるんです。普通にヤバイです。下手したら死にます。岩石攻撃は気弾を使った戦いをまだほとんどしていないライや悟空にとって極めて有効な技となるはずです。だからこれでいいんです。ええ。