ドラゴンボールZ・オルタナティブ~世界線c~   作:三軒過歩

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本日で連続投稿日間終了です。また週一投稿に戻ります。また気まぐれに連続投稿することもありますが、書き溜め次第ということで。それでは今週は毎日私の小説にお付き合いありがとうございました。来週もよろしくお願いします。


(第十五話)ある戦士の結末そしてリスタート

ドッガアアアアン

 

轟音が響きあたり一帯が焼け野原となる。

 

「ふっふっふっ…はーはっはっはっ。ようやく終わったぞ、ようやく消し飛んだ!」

 

ピッコロ大魔王が喜ぶのも束の間、ピッコロ大魔王は悟空の気を感じ取る。

 

「ばかな!あの怪我では避けられるはずがない。」

 

あたりを見回すと天津飯に抱えられた悟空とライが空中に浮いていた。天津飯は落ちるように降りていく。

 

「天津飯!ライ!すまねえおらの実力が足りなかったから…!」

 

悟空を庇うために爆力魔波を食らったライにライが防ぎきれなかった部分を悟空から庇いながら舞空術を使った天津飯は既に満身創痍であった。

 

「どうやら二度目はないようだな。」

 

二人の様子を見てピッコロ大魔王が動揺を抑え込む。

 

(い、意識が朦朧とする。もう、持たない…)

 

力尽き天津飯が気絶してしまう。ライも辛うじて意識があるようだが耄碌していた。

 

「もう一回撃ってみろ。お前も今のでずいぶん消耗したはずだ。今度は一人で受け切って見せる。」

 

「俺様の爆力魔波をなめるなよおおお!」

 

悟空の挑発を受けピッコロ大魔王が再びパワーをため始める。その時を見逃さず悟空が全力の拳をピッコロ大魔王に食らわせた。

 

「たあああああ!」

 

「…ぐっくっそおおお」

 

その一撃を受けながらピッコロ大魔王は再び爆力魔波を放つ。悟空を巻き込んだその爆力魔波は威力のわりには範囲は狭く天津飯もライもまだ生きていた。そして直撃した悟空も。

 

「そろそろ決着がつきそうだな。おらが死ぬか、おめえが死ぬか。」

 

そう言う悟空の気迫に気おされピッコロ大魔王はライを人質にとった。

 

「はーはっはっはっ、ようしわずかでも動いてみろこいつの頭が砕け散るぞ。」

 

「な、汚えぞ!」

 

「汚い?なかなか小気味よいことを言ってくれるじゃねえか。」

 

人質をとったことで余裕ができたのか饒舌に話し出す。

 

「…悟空…私のこ、となど気にしな、いでこいつをたお…!」

 

「余計なことは言わんでいいんだ。」

 

ライが悟空に攻撃するように言おうとするが頭を握られて言葉を区切られる。

 

「ぐぅぅ…」

 

「ライ!くそっ!」

 

悟空はライがやられているところを見て動けないでいた。

 

「それでいいんだ。こいつの命が惜しければ決して動くんじゃないぞ。」

 

そう言ってピッコロ大魔王は悟空の左腕を岩石をぶつけて動かせなくする。

 

「はっはっはっ。貴様ら人間の弱点はそこだ。非情になり切れない心の弱さ。それがある限り貴様たちは絶対に勝てん。」

 

自分の優位を確信したピッコロ大魔王はそう言ったがその一言が悟空に決断をさせた。

 

「…すまねえライ。きっとドラゴンボールで生き返らせるから、おらを、許してくれ…‼…はあああああ!」

 

悟空は今出せるすべての力を右腕に集約させ始めた。

 

「な、なに⁉この俺に攻撃をしようというのか。こいつがどうなってもいいというのだな!」

 

「かーめーはーめーー波あああああ!!!!」

 

ピッコロ大魔王が狼狽するも気にせず悟空渾身のかめはめ波を撃ち込んだ。 

 

 

「カリン様、悟空達は本当に勝てるでしょうか。」

 

ヤジロベーが筋斗雲に乗り損ねて下まで落ち静かになったカリン搭に残されたヤムチャはキングキャッスルの方を眺めながらそうこぼした。先ほど聞いたときカリン様が含みを持たせたのが気になったのだ。

 

「悟空とピッコロ大魔王の実力は同じくらいであることは間違いないが、正直厳しじゃろうな。」

 

「!どうしてですか。実力が伯仲していればライもいるんですし負けるはずがないでしょう。仮にライと次元が違う強さだとして、ライが援護に入れなくても仙豆があるではないですか。」

 

「悟空には守るものが多い。ライに悟空達よりも先に戦いに赴いたという武闘家。逃げ遅れた一般人がいればそいつも悟空は見捨てられんじゃろう。守るものが多いというのは諸刃の剣じゃ。おそらくピッコロ大魔王はその弱点を巧みに突いてくる。そうされたら仙豆を一粒どころか百粒あったって勝てんよ。」

 

 

 

 

「すまねえ。すまねえ、ライ」

 

荒れ果てた大地に土煙が舞う。かめはめ波をライを巻き込んでピッコロ大魔王に直撃させた悟空は悔しそうな顔でそう言った。

 

ヒュン!ガン!

 

岩石が土煙の中から悟空の左脚に当たった。

 

「ぐ、うわああああ‼」

 

痛みに悶える悟空をあざ笑うようにピッコロ大魔王が姿を現した。

 

「ふふ、はーはっはっはっ。この肉壁のおかげでこの俺は貴様を殺せる程度には体力を残すことができた。」

 

ボロボロになったライを投げ捨てピッコロ大魔王が言い放つ。

 

「そ、そんな、おらは間違いなく、間違いなく本気でやった、やったはずなのに。」

 

「ふん、非常になり切れんのがお前の、お前たちの弱点だ。無意識に威力を弱めたな。」

 

「ち、ちきしょう、ちくしょおおおお!」

 

悟空は悔しさに任せて叫ぶ。

 

「ドラゴンボールもこの俺が壊したし、魔封波も魔族を増やせば驚異足りえない。今度こそこの俺が支配する悪に満ちた世界の幕開けというわけだ。」

 

「!そんな、嘘だ!!ドラゴンボールが壊されたなんて嘘に決まってる!」

 

無慈悲な宣言に悟空の顔が絶望に染まる。

 

「それだ!その表情!!絶望に満ちたこの世界こそ俺の支配する世界にふさわしい。恐怖の世界の幕開けだ!…ではそろそろ止めと行こう。」

 

ピッコロ大魔王が舞空術で上昇していく。全員に当たるように攻撃を放つつもりなのだろう。しかしそう簡単に悟空は戦意を喪失しない。人を殺めた後悔に打ちひしがれながらせめて仇をと残った力のすべてを捧げる。

 

「失敗したなー!腕が一本残ってるぞー!波あああ!」

 

悟空が残った片腕でかめはめ波を地面に放ち飛び上がる。

 

「おらのすべてをこの拳に賭ける!つらぬけー!」

 

悟空の全力の右拳がピッコロ大魔王を貫いた。

 

「じっちゃん!クリリン!ライ…。か、勝った、勝ったぞーーー!」

 

勝利の咆哮と共に悟空は地上に落下していった。

 

 

「裁定は終わったかの」

 

ところ変わってあの世に行ったライは閻魔様の裁定を受け天国に行こうとしていたところを呼び止められた。

 

「…占い婆さんじゃないですか。そうかあの世とこの世を行き来できるんですもんね。どうしたんですか。」

 

「いやなに。お主はカリン搭の修業を終えたら来てもらうつもりだったからの。一日限定の戦士であるが切り札として捕まえておこうかと思ってな。ついでに悟空とピッコロ大魔王の戦いの結末を教えてやろうと思っての。」

 

付け加えられた言葉にライは息をのむ。

 

「…悟空は勝ったぞい。ピッコロ大魔王は死んだのじゃ。わしの弟を始め魔族に殺された者も報われることじゃろう。」

 

悲しそうに死者を悼む声音であるがその言葉を聞いてライはほっと胸をなでおろす。

 

「死んだ甲斐が、ありました。」

 

そう言葉にしたとたんライの目から涙が留めなく流れてくる。

 

「あ、すいません。死んで、しまったことに、ようやく、実感が…」

 

すすり泣くライが泣き止むまで占い婆は何も言わずにそばにいた。

 

 

 

 

「お恥ずかしいところをお見せしまして…すいません」

 

何とか涙を抑え込み落ち着いたところで占い婆に謝罪の言葉を紡ぐ。

 

「なに、気にすることじゃないわい。わしも長生きしておるからの。人の死には何度も立ち会って居る。お主のような反応が普通じゃよ。」

 

「いえ、父さんやチャパさん、亀仙人さんだったらこんな風にくよくよしないはずです。もっと強くならないと。」

 

死んでしまっても尽きない向上心を持ちそう言った。

 

「死んでしまったのは悲しいですけど、父さんやチャパさんに会えますし、母さんにも会えますからね。」

 

「…そのことなんじゃがな。お主の父親やわしの弟のように魔族が原因で死んでしまった者はあの世に来ることさえできず現世に魂のみが漂い永遠に苦しみ続けることになるんじゃ。」

 

「なっ!そうですか。」

 

ライがあの世に来たのは止めを刺した人物がピッコロ大魔王ではなく悟空だったからだろう。

 

「そんなに驚いていないようじゃな。うすうす勘付いておったのか?」

 

「いえ、父さんもチャパさんもピッコロ大魔王に立ち向かった人はあの世の存在を知らずに死んだわけですし、二度と会えないと分かっていてその選択をしたわけですから、ここで泣いたら彼らの誇りある死を汚すことになります。私もあの世で会えるからと思ったから死んだわけではないですからそこの覚悟はしてましたし、後悔は涙と一緒に流しました。」

 

精悍な顔つきをみて占い婆は本来の目的を果たすべく話す。

 

「…お主はアンニンという女仙のところで過ごせるように話を通しておいた。孫悟飯もいるし二人で鍛えるといい。天国にも行きたければいけるが、天国に行くと魂だけの存在となってしまい戻ってこれないから行くならよく考えていくのじゃぞ。切り札といったが気にせんでいいからの。世界を救った礼とでも思っとくれ。」

 

「何から何までありがとうございます。」

 

「天国行きを引き留めるんじゃからこれくらいはしないとじゃろ。戦士として使いたいときは会いに行くから気が変わって天国に行く際は孫悟飯にでも言伝を頼むぞい。ではな。」

 

「あ、ちょっと待ってください。聞きたいことがあったんです。」

 

今にも立ち去ろうとする占い婆をライは引き留める。

 

「なんじゃ、わしにかかれば大抵の事は答えられるぞい。占いもあるしの。じゃが…お主の父親の魂をあの世に連れていく方法は分からない。」

 

「いえ、占い婆さんは未来を占えるといってましたので、わざわざ言伝を頼まなくても分かるんじゃないかと。そもそもピッコロ大魔王と悟空の戦いの末も知っていたんじゃないですか?だとしたら…」

 

ライの声音に怒気が含まれる。ライは暗に言っているのだ。父親であるスウや占い婆の弟である亀仙人も占い婆が未来を教えていれば死ななかったのではないか、と。

 

「確かにわしは先にこの結末を知ることができた。弟に死を伝えることもできたじゃろうし、戦いに赴く前のお主にも結末を教えることができたじゃろうが…それだけじゃろうよ。」

 

「それだけ…とは?」

 

「お主も弟も死ぬことが分かったくらいでは死に向かうということじゃ。わしの行動で変わる程度の未来は見えないんじゃよ。もしわしがお主の死ぬ未来を見てしまったが最後、わしがどうあがいてもお主は死ぬ。じゃからわしは生死が関わる未来はもちろん、当人のその後に大きな変革をもたらす未来は見ない。わしがそいつの人生を狂わしたことになるからの。」

 

「なるほど、ありがとうございました。」

 

過去に覚えがあるのか少し苦しそうに言う占い婆の心境を察してかライはそれ以上の追及をしなかった。

 

「例を見せてやろう、お主アンニン様のところに行ったら間違いなく勝負を挑むじゃろう。あの方はピッコロ大魔王ほどではないがお主よりは強いからの。その時の決め手を占ってやろう。」

 

そう言うと占い婆は水晶玉をとりだし何事かとつぶやき始めた。

 

「へえ、そんな人がいるんですか。世界は広いですね。」

 

ライが感心したようにそうこぼすころには未来を見れたらしく呪文の詠唱は止まっていた。

 

「それでその決め手は何になるんですか、必ず防いで見せますよ。」

 

そう聞くが占い婆は急に笑い出したまま答えなかった。

 

「ふぉっふぉっふぉ。いやなに、お主はアンニン様と戦うことができないようでな、勝負が始まらないんじゃ決め手もなにもないようじゃよ。」

 

ようやく話したかと思えば予想外のことをなぜか嬉しそうに話した。

 

「アンニン様ってよっぽど忙しいんですか?でもこれからは無限に時間があるようなものですし一度も戦えないってことはないと思うのですけど…あったら勝負を挑んでみます。」

 

「すぐに意味が分かる。お主は戦えんよ。ではわしはこれでな。戻ってやらなければならないことがあるようじゃからの。」

 

そう言って占い婆がこの世に戻っていった。

 

 

 

(どういう意味なんだろうな。勝負を挑めないなんて…)

 

占い婆の言葉の意味を考えながら来た道を引き返しアンニンの元へ向かう。あの世とこの世の出入り口の管理者、自分よりも強い者の存在に胸を高鳴らせつつアンニンの元へと目指していると急に体が透け始めた。

 

「えっ、なにちょっ、は?」

 

急なことに何もできずに体が透けていくのを見守る。だんだんと意識も薄くなってきてライはそっと意識を手放した。

 

 

 

 

目を覚ますと自分が何かのカプセルに入れられているようだった。

 

(ここは…?)

 

靄のかかった意識がだんだんと晴れていくうちにカプセルの蓋がひとりでに開いていった。起き上がって周りの様子を見ると天津飯やブルマたち、そして同じようなカプセルからチャパ、亀仙人、クリリン、餃子と死んだはずの面々が顔を出す。

 

「生き返った?でもどうやって…?」

 

混乱しているライにブルマが教える。

 

「神龍よ神龍!孫君が神様に神龍を生き返らせるように頼んだの。」

 

「まさか本当に生き返らせてしまうなんて。あの時の言葉を本当にしたんだ…」

 

悟空に思いを馳せているといまだ状況が読めていないクリリンが驚いたように言う。

 

「え、なに俺、死んでたの?」

 

「のんきな奴だな、クリリンは」

 

ピッコロ大魔王の存在を知る仲間たちが呆けているクリリンをみて朗らかに笑った。

 

 

 

 

「悟空の奴上手くやりおったわい。ライたちが生き返ったようじゃ。」

 

カリン搭でヤムチャの修業をつけているカリン様がライ達の気を感じてそう言った。

 

「そうですか。良かった。ライ達は生き返れたんですね!」

 

「会いに行くか?」

 

「…いえ、今はまだいいです。次の天下一武道会の時までとっておきますよ。それに何人かはここに来ると思いますしね。今はただ早く悟空達に追いつきたいです。」

 

生き返ったもの達との再会は待ち遠しいものではあるが、それよりも今のヤムチャを突き動かすのは、ピッコロ大魔王相手に何もできなかったことに対する自責の念だった。

 

 

 

 

「そうか、悟空の奴が、やっぱすげえや!」

 

「ピッコロを倒すとは。それで悟空は今どこにいる。」

 

一通りの話を聞いてクリリンと亀仙人がそれぞれ話す。

 

「それが、よくわからないのですが、神龍によれば天界で修業しているそうです。」

 

亀仙人の疑問に天津飯が答える。

 

「て、天界じゃと!」

 

「老師様、ご存じなのですか。」

 

「ま、まさか信じられん!いや、悟空のことだ、ありえるかもしれん。」

 

「どういうことなの、説明して。」

 

亀仙人の剣幕にブルマが疑問を挟む。

 

「わしにも詳しいことは分からんが、天界で主修業をしているということは、教えているのは神様じゃ。」

 

すさまじいスケールに信じられないと驚くも、それぞれの武闘家たちは神様の修業以上の修業をしてやろうと意気をあらたにした。

 

 

 

 

亀ハウスから離れ、チャパとライはブルマからもらった飛行機に乗り占い婆の館を目指していた。

 

「しかしまあ天界で修業とは、少し前までは互角に戦えていたはずなのに若者の成長は目覚ましいな。」

 

「何言ってるんですか。チャパさんも十分強くなっているじゃないですか。」

 

「もちろん数年前とは比べ物にならないくらい強くなったが、武術の王を名乗っていたころが遠い昔のように感じるよ。」

 

チャパは十分若々しい見た目ではあるが既に孫もいる年齢になっている。日頃の修業によって老化が遅れているが止まっているわけではない。自身の限界を感じつつあるのかもしれない。

 

「このまま占い婆さんの館でいいんですか?それともお弟子さんに会いに行きます?」

 

「ああすまない。私の道場までにしてくれ。家族にも会いたいしな。そこからは自分の足で占い婆の館に行く。ライはどうするのだ?」

 

「私はカリン搭に行きます。まだまだ修行の続きでしたから。でも今度の三年間こそ修カリン様の修業を終わらせて占い婆さんのところでチャパさんや父さんと修業します。」

 

「はっはっはっ。君と修業できる日を楽しみにしているよ。」

 

 

チャパを道場に送りカリンまで着いたライはカリン搭を踏破してカリン様のところに着いた。

 

「ただいま戻りました!」

 

「おう、ライお疲れさん。」

 

「カリン様、またご指導よろしくお願いします!」

 

「わしの教えられることなどあとは気の扱いくらいじゃがの。完璧になるまで教えてやるぞい。」

 

カリン様に礼をすると修業が終わって休んでいるヤムチャの元へ向かった。

 

「ライ!生き返れて良かった。本当に良かったよ。」

 

ライを見つけるや否やそうこぼすヤムチャもライを心配していた人の一人だ。

 

「悟空のおかげですよ。これからしばらくは一緒に過ごすことになりますね。よろしくお願いします。」

 

「ああ、お前にもすぐに追いついて見せるさ。」

 

各々が修業に身をいれて三年という月日は瞬く間に過ぎて行った。




ライが天国に行ったのはとどめの一撃が悟空だからです。これを語るべきか迷いましたけど、それを知った方が悟空のセリフに重みが出ると思いましたので無粋ですけど書かせてもらいました。
そう言えば気の集中は第二十二回天下一武道会から使えてますのでそのつもりでお願いします。

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