ドラゴンボールZ・オルタナティブ~世界線c~   作:三軒過歩

2 / 83
この話一週間ほどは最新話においておきます。まあ明日には最新話じゃなくなるわけですが…


(第一.五話)大会前夜

「明日到着ですね。」

 

焚火に囲まれながらライがそう言った。その表情は少しだけ思い詰めている。

 

「…何か言いたそうだな。ライ。」

 

「いえ、えっと…」

 

決意を固める。

 

「私と勝負してほしいんです。」

 

きれいな夜空の下、ライはそう宣言する。

 

「そうか、今日、いや、明日だな。お前の誕生日は。」

 

十二で一人前。そうなる前に一度自分の師匠と戦っておきたいと、そう思っていた。明日になれば、父が自分を見る目が少し変わってしまう気がしたから。自分の実力は素の状態では師である父を大きく超えている。明日になったら、尊敬する師として振舞ってくれないような気がした。

 

「本気で、来てほしいんです。」

 

もちろん、一人の大人として扱われることも代えがたい喜びだ。でもその前に一度()の本気を見てみたかった。

 

「分かった。師として最後の試験だ。」

 

そう言うとスウはサングラスを外す。満月でなくても変身できるスウの体は人のそれから変わっていく。

 

「行くぞ。」

 

 

「参りました!」

 

勝負の決着がつき、相手に対して礼をする。その瞳は失望に染まっている。彼が天下一武道会で優勝してから、否、天下一武道会でさえも彼が全力を出すことは一度としてなかった。

 

(そろそろ道場に戻るかな。)

 

門下生は天下一武道会優勝者という看板に惹かれてかそれなりに集まったが、自分に匹敵しそうな素養のあるものはいなかった。そうそうに諦めた目で見ていたからかもしれないが。だから、一番弟子に道場を任せ、一人武者修行に出ていたのだ。彼が二人の戦いに遭遇したのはただの偶然だった。

 

 

 

「はああああああ!」ドン!

 

ライがスウに向かって行く。全力の拳はしかし簡単に受け止められる。

 

「攻め方が素直だぞ。」

 

連続で振るわれる拳に蹴りをすべて躱し、捌きスウがそう言った。半年前は変身しても及ばなかったが、今は変身すれば直線的な攻撃などは簡単に防げる。

 

「反撃も容易!」シュッ!

 

そう言って反撃を繰り出すが、それはライに躱された。攻撃を単調化している分回避反応に集中できているのだろう。

 

「なるほどなっ!」

 

右拳と見せかけて左拳、左脚蹴りと見せかけて左拳。フェイントを混ぜた攻撃にライがだんだんと押されていく。攻撃の手が止み防戦一方になる。

 

「なかなかやるじゃないか。」

 

防戦一方になりつつも急所は確実に避けている。

 

「くっ!はっ!」

 

一撃覚悟で距離を取ると、意外にもスウは追撃をしない。

 

「同じ修業をしていても差は広まるばかり、ですもんね。気づいてないと思ってましたか?」

 

「あらら、結構高く評価されてるみたいだな。」

 

スウはライとの修業が終わった後に一人夜中に修業をしていた。それにライは気づいている。そして夜中に変身して戦う修業を積んでいるのも見ていた。

 

「高く評価しているんじゃなくて、真っ当に評価してるんです。」

 

狼姿の戦い方を自分ではうまくできなくても対策はとれる。だから変身したスウに食らいついていけてる。

 

「対策を盾に押し込もうと思ってたんですけどね!」

 

実力差は殊の外大きい。スウの変身した動きの癖を見切っていても防ぐのが精一杯だ。

 

「格上と勝負するときは有利を押し付けなければなりませんよね。」

 

優れたところで勝負する、不利なところでは戦わない。どうして父がそんなことを知っているのか分からないが、そう教わった。それはスウがライよりも格上がいることを暗示していることを意味する。今のように。

 

「腕を使った殴打も蹴り技もすべてが自分よりも上の相手と会ったらどうするかも教えたよな。」

 

「その時は、逃げの一手!」

 

そう言い切ると、スウは言った。

 

「言葉と行動がかみ合ってないな!」

 

引いて守って時間を稼ぐ。それが望めないなら逃げる。これも教わったことだ。今は時間を稼いでいる。

 

 

(これほどの動きが…!受け手に回っている方の実力ですら私に匹敵する、あの狼姿の方は私を超えている!)

 

ライ達の戦いを見たチャパ王は驚愕する。五年間世界を旅してきたがついぞ見つけられなかった自分に匹敵する存在にチャパはそれこそ十年振りに震えた。いや、十年なんて生ぬるい年月ではなかったかもしれない。この高揚感を最後に感じたのはいつだっただろう。

 

(戦ってみたい、あの二人と、全力の勝負を…!)

 

独自流で一見見たこともない動きだったが、その動きは彼が唯一敵わなかった仙描の動きに似ていた。

 

 

 

「そろそろ止め!」

 

ボロボロに追い込んだライに対してそう宣言する。流れるような拳の連撃の最後に繰り出すは…

 

「くっ!」バッ!

 

その拳を防ごうとライは両腕を胸に構える。拳に見せかけた足技の警戒も忘れていない。しかし、それを見てスウの口元が歪む。最後に繰り出すは爪による攻撃、それも()を狙う。

 

「っ!」

 

ライが驚いたような表情を作る。スウは決着を確信する。

 

ビシッッィ!

 

「なっ!」

 

意識の外、不意を撃とうとしている側はどうしようもなく不意打ちに弱い。

 

「不意打ちは読まれてたら最弱の手ですよ?」

 

頬から血を流しながら得意げにライは全力の蹴り技をスウに打ち込んだ。

 

 

 

「誰に似たらこんな無茶するのかねえ。」

 

「私は父さんの子供で、父さんを見て育ってきたんだけど…」

 

そう言って少し怒ったように付け足す。

 

「それにしたって、いくら本気でといったからって、ホントに顔面を爪で裂こうとするとは思いませんでした。」

 

「嘘つけ、顔に来るって分かってたから、最低限かつ最効率の動きで反撃できたんだろうが。」

 

手当をされながら珍しく文句を言うライに対してスウが言った。

 

「あはは…真っ当に評価してましたから。来ると思ってました。」

 

夜に一人修業していることを見ていたことがバレていることを織り込み済みでそこで練習してこなかった爪技を使った。これなら確実に不意打ちになると思ったから。でも練習が不足していたがゆえに、不意打ちのアドバンテージが無ければライにも十分に対応できる範囲だった。

 

「戦いのセンスがあるよな。もう、お前も一人前か。」

 

「そうですね。」

 

寂しそうに言う二人。日付はもう変わっていた。

 

 

「骨逝っちゃったな、大会までに治ると良いんだけど。」

 

「この傷が残ったら恨みます。」

 

「一応言い訳すると、寸止めする予定だったぞ。相打ち覚悟で来る様子を見せなければ。」




骨は治りました。人狼は治癒力が人より早めという設定を今作りましたし、まだスウも若いので。(三十代後半)
スウがライに対して不干渉気味なのはライを既に一人前として認めているからです。
チャパが第二十一回天下一武道会に参加したのはこの二人を見ているからです。スウとチャパがセットなのもそれが影響してます。スウは自分よりも強い武道家だと思ってるということです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。