「続いて第四試合、ヤムチャ選手対シェン選手です。」
本選第三試合はクリリンが善戦するもマジュニアとの実力差を痛感しギブアップをして、第四試合が始まろうとしていた。
「ヤムチャ選手は前回大会前々回大会と本選出場を果たした実力者、対するシェン選手はノーマークでありながら、前回大会本選出場のチャパ選手を破ったライ選手をも撃破した無名の実力者です。正直、どうして今まで無名だったのか分かりません!」
アナウンサーの紹介を終え、二人が相対する。
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「どっちが勝つかな。ライで勝てないってなると、ヤムチャさんに厳しい戦いになりそうだけど。」
「まあそうだろうな。シェンの武術は年季が違う。でもなクリリン、おめえがあのマジュニアに善戦したように、ヤムチャにだってこの三年間で積み重ねてきたものがあるだろ。どっちが勝ってもおかしくねえ。」
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「この試合まではある程度実力を隠しておきたかったのですが、なかなかそうもいかない方たちばかりだ。ここ数年間の武術レベルの上昇には目を見張るものがありますね。」
「…少し武術に心得があるからって立派に観測者気分か?その余裕が俺との戦いでいつまで持つのか楽しみだぜ。」
苛立っているように見せて心は穏やかに。ライと共にした修業の日々は武術もさることながら精神面をを大きく成長させた。そしてそのヤムチャの言葉は以外にもシェンに刺さる。
「観測者ですか…。これはこれは言い得て妙ですね。ではそろそろ始めますか。こうしていては観客に申し訳ない。」
そう言うと気配を一変させ立ち姿から隙が消え去る。観測者という言葉に反応した隙をつくように攻勢に打って出ていたヤムチャは攻め手を見つけあぐねて距離をとる。
「ぐっ…!」
しかし距離をとろうとするヤムチャの動きを読んでいたかのようにシェンは急接近して攻撃を撃ち込んだ。たまらずヤムチャが膝を崩す。
「神速の一撃!ヤムチャ選手たまらずダウンです。1、2…8、おっと立ち上がりました、試合再開です‼」
仕切り直しとばかりに相対したヤムチャに対し、シェンが言葉を投げかける。
「いや、まさか釣りに引っかからずきちんと距離をとるとは、一撃で決めるつもりでしたが…いやはや、思うように威力を乗せられなかった。」
「あれほどの反応速度で、あの威力で思うような威力でないとはな。本気で言ってるんだとしたら大したものだ。仕方ない。準決勝と決勝用にとっておいた奥の手を切らなければならないようだ。」
シェンとの実力差は明白になったものの未だヤムチャの顔に焦りはない。それを不審がったのかシェンは気を集中させて構えをとる。
「新生・狼牙風風拳!」
ヤムチャがそう叫びものすごい速度でシェンに飛び掛かっていく。
「はいはいはいはいはいはいはい!」ダッ、ガッ、ドン!
「…少しだけ、修行をつけてあげましょう。」
今までの狼牙風風拳よりはるかにパワーアップした速度の狼牙風風拳もシェンには通用しない。それどころか、足元がお留守だと攻撃を食らう始末である。
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「スピードもパワーも以前の狼牙風風拳からは考えられないほど上がってますね。特にスピードは凄まじい。」
「だが、スピードとパワーの両立をした結果、以前の狼牙風風拳にあった強みがなくなっている。」
「…ええ。あれを蹴りにも適応させれば完成された技だったんですが、あれだと足元の弱点を見抜かれたら意味のない技になってしまいますからね。」
「もともと、狼牙風風拳を知っている相手に向けた技だったんじゃないか。元の技は蹴りも早くなってたし、そういう先入観がある相手には刺さるだろ。」
「まあ、シェンさんがすぐに弱点を見抜いたことが凄すぎるんであって、相当な修行の末の技で充分奥の手として使えますよね。」
*
観戦しているライがそうまとめ、スウが指摘したように元々ヤムチャはこの技をクリリンや、天津飯といった顔見知りの相手対しての奥の手としてとっておいていた。予定を崩され調子を狂わされたまま戦っていってもよい結果を引き寄せられるはずもない。
「グハッ」ダン!ズザァァァ
狼牙風風拳の隙を的確に突かれて強烈な反撃を食らったヤムチャは武舞台の外に向かって飛ばされるが、何とか武舞台を滑りながらも持ちこたえた。
「切り札がまだあるのならば全て切ることをお勧めしますよ。出し惜しみをして負けるのは本意ではないでしょう。」
圧倒的優位を維持しているシェンがそのように言うがまだヤムチャの瞳は諦めの色に染まらない。
「再三の忠告本当に感謝するぜ。だが切り札はまだ切り終わっちゃいない。…操気弾!」
そう言ってヤムチャが右腕をかざすとその手のひらから球状の気弾が露わになる。
「はあああああ!」
ヤムチャが右手を動かすとそれに呼応するように気弾が動く。
「ひえっ、はっ、おわっと。」
縦横無尽に動き狙ってくる気弾をかいくぐっていく。その動きには余裕があるようにすら見えた。操気弾はシェンを急降下して狙うがそれも避けられ武舞台を突き抜け地中にもぐっていった。
「いや、まさかエネルギー弾を操ることができるとは。これは驚きました。私にもできない技です。気の扱いにおいて光るものを持っておられるようですね。」
本当に驚いたと称賛するシェンに対して不敵な笑みを浮かべてヤムチャは言葉を紡ぐ。
「攻撃する一瞬、防御する一瞬、意識して気を高める集中とは違い、気を最大限まで高めてそれを維持し続ける技術。それを習得してから俺の戦術の幅は大きく広がった。」
急に気の開放について話し出すヤムチャにシェンは怪訝な顔をするがヤムチャは構わず続ける。
「気を集中させることで戦う奴等と俺には決定的な差がある。それは…不意打ちが有効かどうか、だ!」
そう言った瞬間、地中から操気弾が出てきてシェンを襲った。無意識化では気を集中していない。そのシェンにヤムチャの全力の一撃が極めて有効な一撃となった。
「グフッ」
武舞台の端の方に吹っ飛ばされるシェンに向かって止めの追撃を放とうと、一気に突っ込んでいく。
キッ!「ほい!」ガッ!
このままヤムチャが勝つかに思われたが、シェンは武舞台に腕を使って受け身をとり、即座に接近してきたヤムチャをその勢いを利用して後ろ側に蹴り飛ばした。
「んなっ」
即座のリカバリーからの反撃をもろに食らい宙を舞っているヤムチャにシェンは舞空術を使って接近しとどめの一撃を放った。
バン!ドォン!
場外に向かって蹴り落とされたヤムチャになすすべもなく、そのまま決着となった。
「じょ、場外、よって勝者、シェン選手~!」
土煙が収まり、勝敗が明らかになった後アナウンサーの宣言が響いた。
*
「完敗です。まさかあの操気弾を受けてあそこまで早く反撃を打ってくるとは思いませんでした。」
試合が終わりそう言ったヤムチャの顔は晴れやかだ。持てる力のすべてを出し切ったからだろう。
「いやいや、完敗というにはあまりにもあなたは強い。最後場外に飛ばされた時も気功波での復帰を試みていたでしょう。あそこまで的確に反応できていればそれこそ、先のライさんに勝るとも劣らない才能をお持ちのようだ。貴方も、まだまだ強くなれますよ。」
*
「勝負あり!勝者孫悟空選手!」
四身の拳の弱点を見抜かれ、太陽拳をもろに食らった隙を突かれ場外に出た天津飯は悔しそうにその宣言を聞いた。
「四人になったのは驚いたけど一人の力を四人に分けちまったのは失敗だったな。スピードもパワーも四分の一になっちゃんもんな。」
「ライやヤムチャは気配をつかっていることを聞いたときにこの弱点を見抜かれるのは時間の問題とは思ったが、あの乱戦の中でそこまで早く見抜かれちまうとはな。」
悟空に手を引かれ武舞台に戻った後そう言った。
「ははは、天津飯も気配を探る修業をライに付けてもらってたんだろ?もう少し極めればすぐにできるようになるさ。」
ライとの修業の中で天津飯たちは舞空術の修業をつける代わりに気を感じる修業を受けていた。しかし、一年ではある程度の感知にとどまり、戦闘に応用するまでには至らなかったのだ。普通の人よりも目がいいという天津飯の長所は、殊、気の感知に関しては短所となった。
「完敗だよ。決勝も頑張れよ。」
素晴らしい試合を披露した悟空と天津飯に会場の観客から惜しみない拍手が送られた。
*
「魔封波だ!」
ナメック語を使って何事かを話した後、シェン改め神様が魔封波を放った。神様からまばゆいばかりの光が放たれ、光の筋がマジュニアを囲む。
「馬鹿め!魔封波返しー!」
光がマジュニアに到達する直前、不敵に笑ったマジュニアがそう叫ぶと光の筋が逆流して神様を囲う。
「し、しまっ…うわああああ」
神様でさえも予期しえない思わぬ反撃を受け、悟空に望みを託し小瓶に吸収されていった。
*
「(い、今の技は魔封波じゃ、魔封波じゃった。まさかいや、そんな…)ちょっと行ってくる。」
魔封波を見た亀仙人は一人そうこぼすと一人観客席から離れていく。
「薄々感じていたことではあったが、俺の実力では、マジュニアの力の半分をやっと引き出せたかどうかだったんだろうな。」
ピッコロは実力を隠していたのだろう。直接戦ったスウだけがマジュニアの実力を観客で見ている者の中で最も正確に見抜いていたのだろう。そんなスウと魔封波という技の存在を知っているライとチャパは深刻そうな顔を崩せない。
「…シェンさんに会ってきます。聞かなきゃならないことが山ほどある。」
魔封波を使ったことで、ライ達にとってシェンはただ強い武闘家という存在ではなくなり無視できない存在になった。彼の匂いを探り、シェンの元に急ぐ。人狼の優れた嗅覚はこの人ごみの中でも正確に機能し、すぐに目当ての人物を見つけ出す。
「シェンさん!シェンさんってば!あの!聞きたいことが!」
目当ての人物を見つけたライは彼を呼びかけるがかなり大きな声を出したにも拘わらず彼は聞こえないのか反応しない。結局肩を掴んで少し強引に引き留める。
「無視しないでくださいシェンさん、さっきの技は何なんですか、どうしてあなたが魔封波を知っているんですか。しかもあの技を放っておきながら生きてますし、どういうことですか!」
「へ?シェンって私のことですか?私はそんな名前ではないですけど?」
強い口調で突き詰めるライにぽかんとした顔で応じる男にあきれと一緒に怒りをもってさらに強く聞こうとする。
「ふざけないでください。あの技は…」
そこまで話したところでライは目の前の男が自分が戦った時の気と全く別の気を発していることに気づく。
「…昨日の昼頃、いえ、一昨日の夕方からの記憶ありますか。」
気が全くの別物になっていたことでライがこの体を誰かが乗っ取って操っていた可能性に思い至る。
「いやそれがどうも天下一武道会を見ようと思って家族と一緒に会場に来たとこまでは覚えているんですが、それからはさっぱりなんですよね。」
(やっぱり誰かがこの人の体を使っていたんだ。だとすればそんなことをできる人、いやそんなことをできる存在は限られている。そもそも魔封波を使える時点で…)
ライの中である確信に近い仮説が生まれる。その仮説を証明すべくライは全速力で悟空の元へ向かった。
*
「やつは、ピッコロ大魔王だ。」
ライが悟空の元に着くとちょうど、魔封波を見て問いただしに来た亀仙人と同じくあいつの異次元の強さに驚愕している天津飯たちに悟空が本当の正体を明かしていた。
「なるほど、腑に落ちない点はあるが、あいつの強さを見ればそれは納得だな。しかし、神様でさえもやられてしまっている。俺達で何とかなる相手なのか?」
シェンが神様だと悟空から聞いたヤムチャがそういうのを聞き、図らずも最悪の仮説が正しかったと証明されてしまう。
「何とかするさ。この日のためにおらは修業を重ねてきたんだ。」
「全員でかかるべきです。私の見立てが甘かった。正直、私と父さんとチャパさんでかかれば勝てるだろうって思ってましたけど、そんなレベルじゃないです。全員でかかっても勝てるかどうか。」
悟空が厳しい顔でそういうのを遮ってライが言った。
「悟空がどんな修業を天界で積んだかは知りませんけど、
なおも言い募るライを制して悟空が言う。
「一人でやらせてほしいんだ。おらさっきの戦い見てたけど、さっきのがあいつの本気ならおらは負けねえ。神様も借りもんの体だったし、全力は出せてなかったはずだけど、おらはあの戦い見て少なくとも神様よりは強くなったことを確信した。」
「神様よりも強くなったから?だから勝てるっていうんですか。あいつがどれだけ強くなってるかも分からないのに!!」
「勝てるなんて言わねえし、手合わせもしないうちから自信あるなんて思ってねえ。それはあいつだけじゃねえ。戦う前から勝てる自信のある試合なんて一つもねえよ。だから何も変わらねえ。おらはほかの武闘家と同じようにあいつと戦い、そして勝つんだ。」
どれほどの実力を持っても慢心しない。武闘家としてある種完成された姿がそこにはあった。
「ライ、悟空に任せてみてもいいんじゃないか。もちろん全員でかかった方がいいのかもしれない。でも、もしライが想像している強さをあのピッコロ大魔王が持っていたとしてその時俺たちはちゃんと力になれるのか、俺たちは神様よりもずっと…弱いのにさ。」
悔しそうにそう言ったヤムチャにライは言葉を失う。
「休憩時間が経過しましたので、これより決勝戦を行います。孫悟空選手とマジュニア選手は武舞台まで上がってきてください。」
深刻な話に合わない明るい声が武舞台に響いた。
ヤムチャ400
ライが250でチャパが225で何言ってんだとなると思うはずですけれど気の開放を習得したためです。ライは気の集中で500まで上げられますし、チャパは450までいけます。ヤムチャがかめはめ波打っても戦闘力そのまま400です。そんなにおかしくないでしょう。ヤムチャびいきはここでも発動です。
今回ヤムチャがつかった狼牙風風拳は戦闘力500相当の速度が得られます。でも腕の動きだけ。