天下一武道会の選手登録を終えいよいよ予選が始まろうとしていた。
「こちらのトーナメントに番号が書いてあります。ご確認ください。予選開始は15分後となっておりますので自分の番号を間違えないように注意してください。」
司会者らしき金髪の男性が大きな声で示す。その声を聴きたくさんの人がトーナメント表の前に集まってきたようだ。
「ライ。何番だったんだ?俺は39番だったんだが。」
スウにとってはライと同じブロックだった場合ほぼ負けである。気になるのも当然であろう。
「私は92番です。違うブロックなので予選ではぶつかりませんね。父さんとの戦いは本選までお預けですか。」
「本選までお預けでよかったよ。予選突破の目標を身内につぶされるなんて悲しすぎるからな。」
「そんなこと言って諦めてはいないんでしょうに。」
スウとライが戦えば実力的にはほぼ間違いなくライが勝つことは当然理解している。
しかしそれでもこの父は一筋縄では勝てないとライは信頼していた。
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特に大きな障害もなく予選を突破したスウとライは同じく決勝進出を果たした8名の猛者と一緒にアナウンサーの指示に従いトーナメントを作ろうとしていた。
「私が読んだ順番にくじを引いていただきます。中には1から8までの数字が書いてあるボールが入っているのでその番号のところに書いてあるところから試合を開始していただきます。ではまず、クリリンさん。」
「は、はい!」
どことなく緊張した面持ちでクリリンがアナウンサーのもとへ向かう。
「5番ですね~第三試合となります。では次、ライさん。」
*
そして参加者全員がトーナメントに書き込まれた。
「まさか第一試合で私たちが戦うことになるとは思いませんでしたよ。本選で直接対決できてうれしいです。」
「8人だからな。そういったこともあるだろう。俺も嬉しいよ。お前と本選で戦えて。」
俺ではここにいるほとんどのやつに勝てないからお前と本選で戦えて嬉しい。そういった言葉をスウは飲み込んだ。
「試合も大切だが他のほかの試合もよく見ておくんだぞ。勉強になることも多いはずだからな。」
「はい!」
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「それではご会場の皆様お待たせしました。これより天下一武道会本選、第一試合を始めます。」
アナウンサーの声が会場から聞こえてくる。
「行きますか父さん。」
「おう、実力差はあれど、負ける気はないからな」
ライは笑みを浮かべると武舞台に向かった。
第21回天下一武道会本選が始まる‼
*
アナウンサーが簡単に選手の紹介をする。
「第一試合の選手はスウ選手対ライ選手です。なんとこのお二人は親子で参加して本選に出場した最強の親子といっても過言ではない親子です‼」
スウとライが武舞台の上で向かい合い構えをとる。
「それでは…はじめ‼」ドーーン
「はーーー!」
スウがライに向かって突っ込み鋭い素早さで脚や拳を繰り出す。ライはそれを体を後ろに引いていくことでうまく捌いていく。
「おーーとスウ選手の目にも止まらない猛攻だー!ライ選手うまくかわしているようですがが少しずつ武舞台の端に追い詰められております。」
(ライのやつ武舞台の端でカウンターで決着をつける気だな。)
スウとライの実力差は歴然であり、ライが丁寧な戦い方をすれば万に一つもスウに勝ち目はない。一方的な展開になることは目に見えている試合であることをスウは知っていた。しかしそうはなっておらずライは自分から武舞台の端に向かうようにスウの攻撃を捌いているのだ。ライの恩情であろう。父親に恥をかかさず、カウンターの一発勝負であれば、スウにも勝ち筋は存在する。愚かで対等な戦いをライは求めたのだ。
(我が子の恩情に甘えなければならないとは情けないな。でもそれを後悔させられるくらいの奇策は持ってるつもりだぞ、ライ。)
ライとの実力差を認めつつ、スウにもまだ闘志は消えていない。そして少しずつスウとライは武舞台の際に進んでいくそして…
(今だ!)
カウンター勝負になる半歩前、スウは武舞台を足で踏み抜き、足を埋め、ライに向かって舞台の床となっていた岩を蹴りつける。踏み抜かれた衝撃で砕けていた床はちょうどライの視界を遮るようにライを襲う。ライの虚を突いたこの奇策はこの二人のレベルでは十分な隙を作り出す。
「やーー!」
スウはその隙をついてライに渾身の一撃を繰り出そうとするが、けり上げた岩がライがいたはずのところをすり抜けることを見てとっさに回避行動をとりジャンプする。
(ライはどこに消えたんだ⁉)
スウは素早くあたりを見渡しこちらに向かって飛び上がろうと構えているライを見つけた。それを見てスウは戦闘態勢を解く。それを見たライも構えを解いた。この親子間ではそれだけで勝負の決着がついたことを理解できる。
「参った。降参だ。まさかあの攻撃を完璧に見切られるとは思わなかったよ。」
「いや、父さんが一筋縄ではいかないのは知ってましたからね。カウンター決着に乗ったと見せて何かほかの方法で倒しに来ると思って警戒してましたから。」
「俺の完敗だってことか。二回戦頑張れよ。おそらく…」
「スウ選手降参です。降参を宣言しました。よって勝者ライ選手ー!」
続きの言葉をアナウンサーに遮られる。
「おそらく…何ですか?」
「いや、何でもない。本当にすごいよ、お前は。」
カウンター作戦に乗ってしまった時点で負けだったのだろうとスウは述懐する。カウンターで決着という性質上仕掛けるタイミングは武舞台の端のほうでしか仕掛けられないのだから。仕掛けがわからなくてもタイミングがわかっていれば動揺も隙も分かっていないときとでは全然違う。加えて今回はそのタイミングで対策をとられたようである。最初から最後まで手も足も出ないとはこのことだろう。ここ数日でさえも進化し続けるライをやはり頼もしく思うと同時に悔しさも捨てきれず複雑な思いで称賛したのだった。
*
第二試合のヤムチャ対ジャッキーチュンは底の知れない強さを見せつけたジャッキーがヤムチャに触れることなく勝利し第三試合を迎えようとしていた。
「お次は第三試合クリリン選手対ナム選手です。クリリン選手は…」
アナウンサーの紹介が終わり、クリリンとナムが武舞台の上で向かい合う。
「それでは…始め‼」ドーーン
始めのコングの直後、クリリンが飛び出す。クリリンの小柄な体躯と素早さでナムを翻弄するように攻撃を仕掛けていくも、ナムは落ち着いた様子ですべての攻撃を時に受け止め、時にかわしていく。
「くっ!攻撃が全く入らない。このままじゃ…」
すべての攻撃を捌かれたことでクリリンに焦りの色が浮かぶ。
「素早さ、威力ともに私に匹敵する強さですが攻撃が単純すぎます。それに、私には負けられない理由がある。今度はこちらから行きます。」
静かにしかし力強くナムは宣言する。
「わわわっっ」
ナムの素早い攻撃にクリリンは何とかかわしていくがついに囚えられて攻撃をもろに食らい壁にたたきつけられる。
「へぶっっ」
壁に使われたレンガがすごい勢いで崩れていくもまだクリリンは立ち上がれた。
「だめだ、攻撃は当たらないのにこっちは避けきれない。経験が足りないんだ。」
クリリンは弱気になりそんなことをこぼすがすかさず悟空が檄を飛ばす。
「クリリン!落ち着いて相手の動きをよく見ろ!当てられないほどの差はないぞ!攻撃だってよけなくてもいいんだぞ!」
(そうか、避けるだけが回避じゃない、捌けばいいんだ。)
クリリンは悟空の発言の意味をしっかり理解し、冷静さを取り戻す。
「はーーー、やっ、ふっ、やーーー!」
ナムが再びクリリンに向けて飛びこんでくる。しかしその攻撃には若干の焦りがあっ
た。ナムはクリリンが立ち直ればどっちが勝ってもおかしくないと判断したのだ。そして、その焦りはクリリンに反撃の機会を与えてしまう。
(ここだ!)
クリリンの渾身の拳がナムにヒットし、ナムは後ろによろめきダウンする。
「おっと、ナム選手ダウン、1、2、…8……おおっとナム選手立ち上がります。クリリン選手の拳を受けたがまだ闘志は十分なようだーー!」
ナムは立ち上がりはしたもののダメージは確かに入っており、ナムの動きを鈍らせた。その動きを今のクリリンは逃さず確実に攻撃を入れていく。ナムよりも多く有効打を決めていく。たまらずナムは二回目のダウンをしてしまう。
「ナム選手再びダウンこれは苦しいかー」
アナウンサーのカウントが始まるがナムはまたも10カウント前に立ち上がる。
「まだ、私はここで負けるわけにはいかないっ。」
「ナム選手再び立ち上がります。その姿はまさに鬼気迫るといった様子です。」
クリリンにもナムの攻撃によって確実にダメージは入っている。
「まだ立ち上がってくるのかよ、でもこのままいけば…」
クリリンとナムの攻防が再び始まる。体力的にはクリリンより苦しいはずのナムだがここにきて鬼神のごとき迫力でクリリンと互角以上に立ち回る。その事実にクリリンは動揺し隙が生まれる。そのチャンスをナムは逃さない。
「やーーー!」ドゴッ
ダメージを与えることよりも奥へ吹き飛ばすように放った拳はクリリンを場外に飛ばすには十分なものであった。
「わっ!!」ドン
「く、クリリン選手場外!よって勝者ナム選手〜」
アナウンサーがナム選手の勝利を宣言し第三試合は決着した。
*
「続いて第四試合、孫悟空選手対チャパ王選手です。孫悟空選手は本大会少年の身でありながら本選まで勝ち上がってきた実力者三人の内最後の一人、チャパ王選手は前回大会でだれにも触れられることなく勝利を手にしたまさに王と名乗ることに恥じない選手であります。」
悟空とチャパ王が舞台に上がる。
「それでは始め‼」ドーーン
意外なことに二人は相対したまま動かない。
「さっきの二人も相当だったが、この二人もすさまじいな。振る舞いに隙がない。ジャッキーチュンと比べても遜色ないんじゃないか。」
スウが二人の振る舞いを見て慄きながら言葉をこぼす。
「ジャッキーさんからは底知れぬ強さを感じましたが、この二人からは確かな実力を感じますね。どっちが勝ってもおかしくない名勝負になりそうです。世界は広いんですね。自分の実力にも自信があったんですけどこの大会に出るとまだまだ上を目指せると感じます。」
二人が話している間に意外にもチャパ王がしびれを切らしたのか突撃した。
「やーーー‼」
それを悟空がいなし反撃をする
「はっ!」
それを読んでいたのだろう。チャパ王も無駄のない動きで回避する。そのような打ち合いが何度も繰り返された。
「チャパ王、リーチの差をうまく利用しているな。何があっても即応できる距離を保ってる。これは悟空はきついな。」
「有効打をうまく入れられないのに向こうは有効打を打ち放題。ただ距離があるのは事実なので悟空もうまく回避できてますが、このままだとチャパ王が優勢の後に勝ちますね。せめてあと半歩詰められれば互角になるんですけどね。」
半歩詰められれば悟空からも有効打が打てる距離となり五分、あと一歩詰められれば形勢は逆転する。近すぎる相手を攻撃することは難しい。殊、実力差が無いならば。
「あと距離を詰めるなら一撃は覚悟しなきゃだろうな。その一撃をどれほど軽く済ませられるかが焦点になる。」
距離を空けるにしても詰めるにしても相手から追撃は免れない。だからこそ最初動くまでに時間がかかったのだ。そして最初の突撃を成功させたチャパが優位に立っているのである。
悟空が距離を詰めようと仕掛けるがチャパ王はその距離を保とうと動く。少しずつダメージが両者に蓄積するがダメージ量は悟空のほうが多い。チャパ王有利は変わらずチャパ王の勝利になるかと思われたとき、急に悟空が普通の人間にはありえない挙動でチャパ王と距離を詰めた。
チャパ王は反応できず形勢は一気に逆転する。その様を見てスウがこぼす。
「あいつも変身型の人間だったのか?急にしっぽが生えてきた気がするんだが…。」
「いや、何か意識して動いたようには見えなかったので偶然じゃないですかね。あるほうが自然であるようにも見えますよ。動きが格段に良くなった。そういう人間もいるんでしょう。聞いたことはありませんけど。」
亜人型の人間は普通の人間と同じように暮らしている種族や人里離れて過ごす種族といろいろなタイプがいるが、人間と同じように権利が認められている上に、普通の人間からも普通の人として認知されている。そのため、ライはもちろんスウもいろんな種族の人間を知っているのだが、しっぽが生える人間はスウですら聞いたことがなかった。
「こんな形で世界の広さを実感するとは思わなかったな。俺はいろんなところを旅したことがあったからそういう点では驚くことはもうないと思っていたんだが。」
「父さん物知りですもんね。知らないことが見つかると嬉しいですか?」
「別に学者というわけではないんだ。そんな風には思わないよ。自分の無知を実感しただけさ。」
しっぽの生えた悟空の動きはトリッキーであった。チャパ王は人間のみならず亜人との戦いも対応できるように修業を積んでいるが、今まで戦ったことのない、しっぽがあるという点しか変わらない(ただししっぽを的確に使ってくる)亜人に苦戦を強いられた。
「一気に形勢が傾きましたね。もう少ししっぽが生えてくるのが遅ければチャパ王が勝っていたんでしょうけど。」
「未知なる敵の未知なる戦術に即対応することはすごく難しい。一度外から見るチャンスが彼にあればまだ巻き返しを狙えただろうが…もう時間の問題だな。」
スウの言った通り数合の打ち合いの後チャパ王が場外に落とされた。
「しょ、勝者、孫悟空選手~。」
アナウンサーが驚いたように悟空の勝どきを上げ第四試合は終結した。
戦闘力
チャパ王100
彼の初登場は遅すぎたと思いませんか。この時期に登場していれば強敵として立ちはだかったと思うんですよね。まあ一回戦敗退させちゃったんですけど。彼は今後もこの物語に参戦するので要注目です。そういえば戦闘描写がないのに一話の後書きで修業後のスウとライの戦闘力を入れちゃったの少し後悔してます。今後はないようにしたいなあ。それではまた来月。