かなりの距離を歩いたブルマたちは手ごろな洞穴を見つけた。ご令嬢であるブルマは洞穴生活に抵抗があるようだがしぶしぶ洞窟に入っていく。
「クリリンさん、スウさん。向こうに気を感じませんか。」
「ほんとだ。さっきとは違う感じの気だな。」
「今度こそナメック星人かもしれませんね。」
先ほどまでとは違う、優しい感じの気を探っているとスウがそこに向かって飛んでくる気をいち早く感じ取った。
「!みんな、気配を殺して洞窟に隠れろ!あっちから別の気が近づいてくるぞ。」
「こっちに向かってくる…!」
「僕たちのこと、バレたのでしょうか。」
悟飯の心配はとりあえず杞憂に終わり、その集団はその場を素通りしていった。
「よかった、あの人たち、私達が目的じゃなかったのね。で、でも今のは一体何だったの?」
ブルマが三人に向かって言うと三人は金縛りにあったように固まり唇を震わせていた。
「ブルマさん、ドラゴンレーダーで確認を。」
「四つのドラゴンボールがどうなってるか調べてくれないか。」
クリリンとスウがそう言ってブルマがドラゴンレーダーを確認するとその集団がドラゴンボールを四つ持っていることが分かった。
「悟飯、クリリン、感じたか?あの、前から二番目の奴の気。」
「はい、ものすごい力を感じました。」
「あいつだけは桁違いだ。ベジータの比じゃないとんでもない強さだった。」
「ベジータより?そんな、何者なの?」
「分からないが…」
スウが言いよどむとクリリンが吐き捨てるように言った。
「ちきしょう!あんな奴からどうやってドラゴンボールを奪えば…!」
「服装からしてベジータの仲間だろうな。」
「今の連中、もう一つのドラゴンボールに向かってる。どういうことなの?」
「クリリンさんがナメック星人の気を感じたところです!」
「俺、様子を見に行ってくる!」
「僕も行きます!」
「ちょっとちょっと行ってどうするのよ?」
「相手が万が一ドラゴンレーダーを持ってるとしたら一巻の終わりです。それだけでも確かめてこないと。スウさんは残っててください。俺たちに何かあったら、すぐにここを移動できるように。」
「分かった。無理はするなよ。何があっても飛び出したりするな。」
「ええ、分かっています。悟飯!気を抑えながら急ぐんだ。行くぞ!」
「はい!」
二人は舞空術を使わず、それでも凄まじい速度で様子を見に行った。
*
二人が凄い速度で去っていった。
「大丈夫かなあの二人…」
「クリリンはまあ、自分の分をわきまえているしへまはしないだろう。問題は…」
「悟飯君?彼もしっかりしてるし大丈夫だと思うけど。」
「あいつは正義感が強すぎる。それは決して悪いことじゃないが…もし、あの集団が非道の限りを尽くしたら、悟飯は飛び出しても不思議じゃない。っと俺は少しこの先にいる気の持ち主の元に行ってみる。この気は多分ナメック星人だ。生き残ってるナメック星人ももうきっとほとんどいないはずだし、今は少しでも情報が欲しい。」
「そうね。確かにそうだわ。じゃあ私はこの洞穴にカプセルハウスを用意しておくからお願いね。」
「ああ。」
*
スウが洞窟を離れてすぐに五つあった気から三つ離れた。
(五つあった気から三つ離れた。あの集団が向かった村に向かってる。多分助けに行ったんだろう。ナメック星人は気を探れるのか、いや、でも…?)
気を探る能力があるのならば力の差が歴然であることもすぐにわかるはずだろう。スウは不審に思いながらもベジータ達に気取られないよう気を抑えつつ、その二人の元へ向かう。その間にフリーザたちのいるところでは波乱の展開が巻き起こる。
(!悟飯!あのバカ!飛び出しやがって!)
援護に行くべきか逡巡するが、すぐに二人が逃げた始めたことを確認し、ナメック星人を優先する。
(大丈夫。クリリンが飛び出したってことは逃げきる算段か何かしらあるはずだ。)
より一層気を抑えてナメック星人の元に向かった。しかしそう悠長にしているうちにもどんどん事態は変化する。スウが向かう先のナメック星人たちがデンデのいた村で生き残ったフリーザ兵と遭遇してしまっていたのだ。
*
「三人は無事でしょうか?」
畑仕事に出かけたのは五人、村の様子を見に戻ったのは戦闘力が完成している大人たち三人。残ったのはもうすぐ畑仕事から長老の補佐に仕事を移すことになる初老のナメック星人と、最近畑仕事を始め、大人の仲間入りをした青年のナメック星人。
「むう…嫌な予感が一向に晴れない。村の者たちが無事だといいのだが…」
村のことを気にしながらも畑仕事を継続する二人のナメック星人の元にフリーザ兵が通りかかる。
「ん?あいつらは…ナメック星人じゃねえか。しかもまだ年端も行かねえガキと爺さんだ。これなら俺でも十分に制圧可能だろう。ほかの村のことを聞き出せれば…」
そう、あの三人の猛攻に勝つとまではいかずともやられないでいられただけの戦闘力。ザーボンやドドリア、キュイにすら遠く及ばないながら、確かにこのフリーザ兵、アプールもエリートの部類なのだ。
「!サウン、構えなさい。何やら邪悪な気配の持ち主がやってきたようだ。」
アプールが接近してきたことで、初老のナメック星人ガウがその気配を感じ取る。それを聞いて青年のナメック星人サウンもガウに倣った。
「このような星に何用かな?」
「ナメック星人が住んでいる村についてすべての正確な場所を話してもらおう。俺たちはドラゴンボールを探しているんだ。」
「貴様からは邪悪な気配を感じる。ドラゴンボールや村の情報を渡すことはできない。この星を立ち去るがよい。」
ナメック星人は龍族のようにもとから備わる能力とは別に年齢と共に備わる能力がある。相手の善悪を見抜くこともナメック星人の持つ能力なのだ。しかし戦闘タイプでないナメック星人は最長老クラスにならなければ彼我の戦力差を知ることはできない。だが、ナメック星人は子供を除けば戦闘力1000はゆうに超える超エリート種族。大抵の宇宙人には負けない、性格によってはサイヤ人に匹敵するほどの戦闘種族として名をはせただろう。先の発言は何も間違っていない。ただ、相手が悪いだけだ。
「では少し痛い目にあってもらうぞ。」
アプールが動き出し、ナメック星人二人とフリーザ兵の語られなかった戦いが始まる。
*
「くっ…」
「ガウさん!大丈夫ですか!」
「やはり先程のナメック星人たちほどの実力はないな。俺でも十分勝てる。もちろん苦しめて村の場所を聞きだすがな。」
「わしがもう少し遅くに生まれておればこ奴如き…!」
二人がかりで戦うも、戦いに関してはこれから指導を受けようというサウン、体が衰え始めて久しい上に超能力といった技をこれから長老たちに教わろうというガウ、戦況は圧倒的に不利だった。
「サウン、わしが時間を稼ぐ、お前は逃げるのだ。このままではわしらは二人とも捕まる。大丈夫。同胞を裏切ることは絶対にせん。お前はこのことを最長老様に伝えるのだ。」
「そんな!同胞を、ガウさんを置いて逃げるなんてできません。俺がもう少しうまくやれればまだ勝ち目はあります!」
「無駄だ。こやつは今の我々が勝てる相手ではない。みすみす死ぬことはあるまい。お前は大人になったばっかりなのだからな。」
ガウが覚悟を決めた時、二人にとっての救世主が舞い降りる。
「やっ!」ガスッ!
「では三人ならどうだろう?」
アプールを蹴り飛ばし、スウはそう言い放った。
「話は後といいたいところだけど、簡単に状況を話す。あんたの村の仲間たちはあいつの仲間に皆殺しにされてドラゴンボールを奪われた。俺はあいつらとは別口でドラゴンボールを探しに来た地球人だ。今は少しでも情報が欲しいから危険を冒して助太刀する。では行くぞ!」
そう言うとスウは気を開放してアプールに飛び込んでいった。
「フン!」ガシッ!
アプールに向かって殴り掛かるがアプールはそれを受け止める。
「さっきは不意を突かれたが、貴様もそこのナメック星人たちと大して変わらん実力なんだろう?貴様ごときが一人増えたくらいじゃ俺の優位は崩れないぜ!」
そう言うと空いた左腕でスウを殴り飛ばし、追撃に来たサウンも蹴り飛ばす。
「助けに来たのに役目を果たせなそうだな…」
何とか起き上がると弱音を吐きながらもアプールに向かって行った。
「「「やあああああ!」」」
三人がかりで猛攻を仕掛けるもアプールはうまく躱しきる。
「よっよっはっ…フッ!」
「グッ!」
「グハッ!」
ガウがやられ、スウもやられてしまう。
「最後はお前だ!」
「カハッ…!」
サウンも重い一撃を受けて倒れこんだところを蹴り飛ばされた。
「サウン!」
ガウが呼びかけるが彼はうめくだけで立ち上がれない。
「助けに来ておいてこの体たらく。全く恥ずかしい限りだ。…奥の手を使うことにする。頼むからこれを使ったからって俺を拒絶しないでくれよ?」
「奥の手?」
「できることならこれを友好関係を結びたい人たちには見せたくないのだが、このままだとこちらに死人が出る。」
「ごちゃごちゃと今さら逃げる相談か?さあおとなしく捕まるんだな!」
アプールが接近してくるそれに合わせてスウは必殺技を放った。当たれば文字通り必ず殺す技。ある世界線では全く使われなくなった悪魔の一手、アクマイト光線を。
「アクマイト光線!」
両手を額に合わせてアクマイト光線を放つ、今まで一度も気功波を放たなかった相手が急に打ってくる気功波にアプールはもろにアクマイト光線を受ける。
「む、なんだこれはエネルギー波ではない?…うおおおおおおお!」
アプールに当たったアクマイト光線はその効果を十全に発揮する。アプールの悪の気を増幅させアプールの体がだんだんと肥大化していった。
「さあ、とどめだ!ボカ…は?」
少し間抜けな掛け声と共にアプールは爆発するはずだった。しかしアプールは両手から気功波を放つことで増えた悪の気を逃がしていた。
「なるほどな。エネルギーを増やすことで自滅させる技とは面白い技だ。だが、エネルギー波なんてフリーザ様の兵士ならだれでも打てるぜ?では、このフルパワーエネルギー波を食らえ!」
そう言うとアプールはフルパワーのエネルギー波を連続で放つ。
「くそっ!普通あの速さで対策できるかよ!」
「技は失敗ということか!?」
エネルギー波は一つ一つがとんでもないものだが大ぶりな攻撃だったために何とかガウとスウは避けていた。
「腕が肥大化してから気づいたのがせめてもの救いだ。攻撃が雑にしか打ててない。でもこの技の効力が切れるまでしばらく逃げ回ってくれ!」
「ひいい!」
ガウがここ何年も出していないだろう悲鳴を上げるほどに状況は切迫していたが何とか効果が切れるまでスウとガウは避けきった。
(サウンが動けないのはむしろよかった。生け捕りが目的な以上、この気功波の嵐を受けずに済んだ。)
ガウが何とか避けきりサウンの無事を見て安心していると、再びスウがアクマイト光線の構えをとる。
「!やめろ、それはもう通じない!それどころかさっきよりも精度の高い気功波がくる!」
それを見たガウが止めようとするがスウはアクマイト光線を発射する。それを見てアプールは無防備にそれを受けようとするがその光線はスウ自身に向けて放たれた。彼はピンクのオーラをまとい、気が悪に染まっていく。
「気づかなければ、ラッキーだったが…気づいたなら仕方ない。じゃあ、この技本来の力を見せてやろう…お前らは、下がれ…」
自信にアクマイト光線を当てると何が起こるか、そう、悪の気が
「あまり、強くすると、心が…悪に取り込まれる、のでね。それじゃあ、第二ラウンドと行こう…!」
心身が侵食されていく感覚。界王拳とは違った意味で負担がかかる技。二倍より強くすると問答無用で心が悪に染まる。あまり長いこと使っていたい技ではない。しかし、この技でアプールの戦闘力を確かに
「なにっ!」ドン!
「うっ…」
最初と同じ軌道で殴ってくる攻撃をアプールも同じ動きで受け止める。しかしその衝撃だけで気圧される。そのために左腕で反撃をする前に相手の蹴りを食らった。
「おらよっ!」バキッ!
「あが…」
顎を強打してまともに言葉を発せなくなったアプールに対してスウは残忍な笑顔を浮かべた。
「他愛、ない…じゃあな。」
悪の気を発散するかのように気功波をアプールに打ち込んでアプールは絶命した。
*
スウの戦いを唖然とした表情で見ていたガウ、そして意識を取り戻したサウンは敵を倒し、オーラが消えたスウを前にしても、すぐには感謝の言葉を告げられなかった。
「こうなる気がしたからやりたくなかったんだけど、これしかなかったんだ。悪いね。俺を悪と断ずるのは構わないけれど、今の戦いを理由にドラゴンボールを渡せないといわれたら…」
次の言葉を言う前にガウが言葉を遮っていった。
「いや、すまない。恩人に対してとって良い態度ではなかった。わしたちを救ってくれたあなたに感謝を。」
「ありがとうございました。」
「いや…こっちもこの星には少し前に着いたばっかりでね。何が起こってるのか、知ってることを教えてほしいんだ。もちろん、俺が知ってることも全部話そう。」
*
時を少し進めてスウがアプールを討った時から数時間後。ザーボンは予定していた三時間が経過したため、フリーザの宇宙船に戻ってきていた。
「遅い、三時間後に集合といったというのに。」
アプールに対するザーボンの評価は高い。三時間後といったら三時間後に来ると信頼していた。
「チッ、戻ってきたらきつい仕置きが必要だな。少しは休ませてやろうと思っていたが…おい。」
「はっ!」
「ナメック星人の村を再び探す。今度は貴様に手伝ってもらうぞ。お前はあっちだ。ついでにアプールを見つけたらすぐに戻って来いと伝えろ。」
アプールの代わりに手近な兵士に指令を与え、再び村の探索を始めた。ザーボンがベジータと出会うのはもう少し先である。
アプール2400
サウン1850
ガウ1750
備考
ナメック星人:戦闘タイプ・気のコントロール相手の気を探る能力にたける。
ナメック星人:龍族・回復能力、ドラゴンボール作成能力あり。
ナメック星人:通常・年齢と共に能力を取得。
アクマイト光線1.5倍が基本限界、それ以上は悪に染まる可能性がある。
2倍を超えると精神汚染、2倍ちょうどで五割の確率で精神汚染
アプールは原作ではこの二人を生け捕りにし情報を得ようとしますが、とらえたところを二人に自害されて情報を得られず、そのためザーボンにも報告をせずに何食わぬ顔で三時間後に合流、フリーザ船で雑務をこなすことになった。その後メディカルマシンでベジータが意識を取り戻したことにより殺される。というストーリーが私の中に出来上がっています。アニメの矛盾はこの流れで補完できる?