準々決勝がすべて終わり、準決勝が始まろうとしていた。
「では準決勝の前にここで第三試合、第四試合とすさまじい強さを見せたこの丸亀マークのクリリン選手と孫選手、そして同じく同年代でありながらこちらも恐ろしい強さを見せたライ選手にインタビューをしてみたいと思います。クリリン選手は第三試合惜しかったですね。しかし13歳にしては驚異的な実力でしたね。次回も期待していますよ。さて、クリリン選手は13歳ということですが孫選手とライ選手はいくつなんですか?」
「私は12歳です。」
「これ何?食えるの?」
悟空がマイクを見てそうこぼす。それを聞いてクリリンが突っ込み会場に笑いが起こる。
「…気を取り直して、ライ選手は孫選手やクリリン選手とは面識がないようでしたが二人についてどう思いますか?」
「そうですね…、正直言って同年代に張り合えるような人が思っていなかったのでとても驚いています。この二人とは全力で戦っても五分といったところですかね。同年代のライバルが欲しかったので、大会が終わってからも修業に身が入ります。」
「いや、13歳や12歳の子供が本選に出場するなんて中々無い…というか私がこの仕事を始めてからは一度も無かったんですけどね。さて、孫選手とクリリン選手はライ選手についてどう思いますか。」
「張り合う人がとか言ってますけど、僕からすれば、ライ選手のような人がいるということがもう恐ろしいですよ。僕たちは武天老師様という最高の環境で修業してこの実力で、僕のほうこそこんな人がいるとは思いませんでしたし。」
クリリンがそう驚きを口にするが悟空は、
「いやおらはこんな強えやつと戦えるなんてわくわくすけっどなあ」
と、喜びを口にする。
「なるほど…二人はあの武術の神と呼ばれる武天老師様のお弟子さんなんですね。道理で強いわけです。それにしてもあの方生きていたんですねぇ。ではライさんにはお師匠といえる方はいらっしゃるんですか?」
「私の師匠は父さんですよ。武術のことだけでなくこの世界のいろんなことを教わりました。私にとっては最高の師匠兼父親です。」
自信をもって言い切るライの姿に競技館の側で聞いていたスウの顔がほころぶ。
「それはそれは…次回の大会はもちろん三人の今後の展開も非常に楽しみですね。ありがとうございました。ではそろそろ第五試合を始めます。」
アナウンサーが第五試合を始めようとしてジャッキーを呼ぶとまたジャッキーも自己紹介をし始めるのだった。
*
「それでは第五試合、始め‼」ドーーン
始めのコングを聞きジャッキーチュンとライは戦闘態勢に入る。全く隙がないが動く気配もない。様子見のつもりだろう。
「余裕…ですね。こないならこっちからいきます。」
「わしもお主の実力に興味があるからな。いつでも全力でどうぞ。」
「お望みどおりに!」
ライがジャッキーチュンにむかって突撃し素早い蹴りや拳を繰り出す。
「ほい、ほい、ほい」
ジャッキーチュンが落ち着いた様子で避けていくのを確認し、ライは全力で攻撃し始める。
「はああああああ!」
さすがに焦った様子であったが手を使って拳を受け止めた。
「やるのう。このわしに手を出させるとは。」
「ここにきてもあなたの実力の底が見えないのは本当に恐ろしいですよ。」
そう言いつつ距離を取ろうとするがジャッキーチュンはそれに合わせて接近し拳を繰り出す。ライは両腕を使って受け切った。
「ぐっ、」
「わしのスピードについてくるやつはなかなか久しぶりじゃ。パワーも十分にあるようだしのう。じゃが…食らいつくのが精いっぱいのようじゃな。」
「格上との戦い方も教わってます。」
(技量もスピードもパワーですら私より強い。私がこの御仁に優れている部分があるとすればそれは…)
格上の相手とは優位のとれる部分で勝負する。それが無理なら逃げる。戦いの基本として最初に教わったことである。
「技お借りします!狼牙追風拳!」
同レベル内の実力ではスピードに抜きんでた技である。相手が格上であっても圧倒的力量差がなければ渡り合える技でもある。
「はい!はい!はい!はい!」
早業で攻撃を繰り返す。しかしそれを紙一重で躱される、受け流される。狼牙風風拳としての完成度は低い。でもそれでいいと思って打ち続ける。これは狼牙風風拳であって狼牙風風拳ではないのだから。
「見よう見まねではわしには通じんよ。あの若者のレベルに昇華させないとわしには通じない。」
ジャッキーチュンはそう声をかけるがライは気にせず打ち
「ほい、はっ!おっと、それっ。」
軽々とした身のこなしで避けているように見える。ただがむしゃらに打ち続ける。技を打っている方と避ける方、スタミナの削りあい。スピードを落とすと不利になるライに一度でも攻撃を食らうと連撃を食らってしまうジャッキー。この打ち合いは精神的にはライ優位、体力の消費量的にはジャッキー有利。しかしジャッキーの精神力の前に精神的優位は意味をほとんどなさなかった。一撃を覚悟でジャッキーが重い一撃を食らわせる。
「ぐっ、」
「ライ選手ダウンしました。1、2、3…8、9」
アナウンサーがカウントをするがぎりぎりで立ち上がる。
「あまり長引いて決勝戦に差し支えてもいけないので、悪いがここで決着をつけさせてもらうとするかのう。じゃがここまで善戦したご褒美だ。見せてあげよう。このわしのかめはめ波を。」
そう言ってかめはめ波をため始める。
「なーーんと、かめはめ波を使えるのは武天老師だけだと聞いておりましたが、この御仁も打てるのでしょうか。」
アナウンサーが疑問の声を上げるなかライはかめはめ波を打たせまいと接近していく。
「はああああ!」
しかしライの拳は空を切った。ジャッキーチュンが残像を残して後ろに回ったのだ。
「かめはめ、破ーー」
かめはめ波をもろに食らい場外にたたき出される。
「威力は調節した。大けがはしとらんじゃろ。また次を楽しみにしておるぞ。」
ライ親子の天下一武道会はここに終結した。
*
「いよいよ決勝戦です!決勝戦に残りましたはジャッキーチュン選手と孫悟空選手です。ジャッキーチュン選手はここまで危なげない展開で勝利をもぎ取った実力者、孫悟空選手は前回優勝者を下した実力者です。どちらが優勝の栄光を手に入れるのか全く想像できません。さあ第21回天下一武道会決勝戦、初めーー‼」ドーーン
二人の戦いは壮絶を極めた。悟空はジャッキーの技をかなりの精度で使い、時には応用して戦っていく。しばらくし、ジャッキーがここ一番の大技である萬國驚天掌を出した。
「さあ降参せい、そうしないと死んでしまうぞ。」
悟空はかなり粘ったが長くはもたなかった。
「く、悔しいけどま、まい…」
そこで悟空に変化が起こる。目は開かれたまま呆然とし、今まで萬國驚天掌に苦しんでいたのなど嘘のようであった。しかし、その状態は長くは続かない。悟空の体に変化が起こり大猿のすがたになっていく。その変身はジャッキーの萬國驚天掌をも押し返す。
「ぐぐぐぐ、ぐおおおお!」
「わぁぁぁ、悟空も私たちと同じように満月を見ると変身する種族だったんですね。しかも私たちよりも相当強くなるみたいです。」
「ここまでパワーアップするならぎりぎりまで変身しないのも納得だよ。もう勝負にならないんだから。」
悟空が大猿になると理性を失うことを知らない二人は会場の雰囲気には似合わないほどのんきにそんな話をする。
「がああああ!ぐおおおお!」
悟空がただ叫びながら会場を崩壊させていって二人も流石に焦り始めた。
「わっ!危ないなあ。理性を維持できないなら使っていい技じゃないですよねっ。」
石やがれきをよけながらライはそうこぼし自身も満月を視界に入れた。
「ほんと、ふざけてるよ‼」
スウもつけていたサングラスをとる。二人のすがたがだんだんと荒々しい狼の姿へと変わっていった。
「変身したところで俺たちじゃ食い止められないんだろうけど、何とかあいつの注意をこっちによこすぞ。観客が死ぬ‼」
「はい!」
二人が変身し素早く接近していくのを見たヤムチャが二人に声をかけた。
「おい!あいつの弱点はしっぽだ。しっぽを切れば元に戻る!俺も手伝うからあいつを止めるぞ‼」
「お、俺も手伝うぞ!」
ヤムチャ、クリリンも参戦し大猿を止めようと動き出し大猿を翻弄しようとしたその時、ジャッキーチェンがMaxパワーのかめはめ波を放った。
「あ、あの人恐ろしい。悟空と戦ってまだ余力を残していたなんて」
ライが驚きの言葉を漏らすがその声は暗い。
「悟空を殺してしまうとは、仕方なかったとは言えやるせないな。」
クリリンやブルマなど悟空の友人たちがジャッキーチュンを非難するなかであったが、ジャッキーチュンは落ち着いて言う。
「慌てるな。これを見るがいい。かめはめ波でぶっ飛ばしたのは月じゃ!」
アナウンサーが驚き風情もくそもないと嘆いている間に悟空が目を覚ましてしまう。
「風情もくそもとか言ってましたけど仕方なかったとはいえ二度と変身できない体にされてしまうとは思いませんでしたよ。間違いなく今日は厄日だ。あと少ししか変身が維持できないんですから。最後にこの体を見納めておかないと。」
ライが落胆した声でそうこぼす。
「人狼からすれば泣きたくなる話だな。まあ俺は変身できなくてもそんなに落胆しないけど。」
一方スウはそこまで堪えた風もなくそういった。
「父さん人の姿好きですもんね。変身した方が強くて素敵だと思うのですけど。来年は絶対に直接対決して、鬱憤を晴らします。」
「今ならお前は世界一の武闘家だよ。もう少しだけの時間だがな。」
大猿は月が出ていないと変身を維持できないが人狼は一度見ると一定時間は維持され続ける。あと少しの寿命とはいえ最強の武闘家となった事実をライはかみしめた。
*
「あの爺ちゃんもすごかったけど、おめえ変身できたんだな。すげぇ強くなれんじゃねえか。」
「まったくだ。対戦のカード次第では優勝できただろうに。惜しかったな。」
大会が終わり悟空とヤムチャがライに話しかけてきた。
「あなたと同じでもう二度とできないんですよ。今の私はただの第21回天下一武道会ベスト4です。次はジャッキーさんに直接対決して雪辱を果たします。」
「おらもだ。もっともっと修業してあの爺ちゃんには負けねえくらい強くなる。」
そこですぐ後ろで談笑している亀仙人たち一行が目に入る。
「あのご老人、ジャッキーさんでは?身内全員が本選出場とかすごいですね。」
自分のことを棚に上げてそういうライに悟空はおかしそうに言う。
「何言ってるんだよ。あの爺ちゃんは亀仙人っていってジャッキーの爺ちゃんじゃねえぞ。」
「?まあいいです。三年後に出てくれなければあの人のところに行くだけですし。」
ライには月を壊されたのが相当応えたようだ。
「そういえば、えっとヤムチャさんでしたっけ。大会中は技を勝手に使ってすみません。それで厚かましいとは思いますがあの狼牙風風拳をぜひ教えてもらいたいのです。」
ライは人狼として狼の動きをモチーフとした彼の動きは参考になると踏んでいた。
「え、あの狼牙風風拳をか、大会中も真似してくれたもんな。正直ちょっと嬉しかったんだ。俺の技はお前のレベルでも通用するってわかって。もちろん教える、と言いたいところだが、ブルマに許可をもらわないといけないんだ。これからは一緒に住むことになるからな。」
「あ、いえ、無理にとは」
そこまで言いかけたところでブルマが言う。
「別にいいわよ。部屋は余ってるし。礼儀正しくていい子そうだしね。」
「ありがとうございます。ブルマさん、ヤムチャさん。これからよろしくお願いしますね。」
「俺のほうこそよろしく頼む。それで技を使いこなすまで、俺にも修業をつけてくれると嬉しいのだが。」
「ええ、もちろん教えます。一緒に頑張りましょう。」
この日から占い婆のところに行くまでヤムチャに技を教わることとなる。
今回は新キャラがいないので後書きの戦闘力紹介はなしです。その代わりにオリキャラ紹介をして場を濁そうと思います。
ライ
今作の主人公。人狼族であり満月を見ると狼になる。スピードも戦闘力三倍相当なので狼化すれば現段階でも天津飯程度は余裕で捻れる。武術においてヤジロベーに次ぐ素養を持っている天才児。口調は丁寧だが敵には口調が荒くなることがある。
スウ
ライの父親。本文にも書いたが新月以外の夜は変身できる。変身すれば通常のスウと並ぶ実力を持つ。頻繁に変身できる都合上狼状態での身のこなしは完璧。これから彼とチャパはセットで登場する。
それではまた来週。