ピッコロが、ライが、そしてベジータが孫悟空の幻影を追い続けることをやめていれば、あるいは、それが幻影でなく、本物であれば、結末は全く違うものとなっていたはずだ。あるいは、もっと他の、少しだけ何かが味方をしてくれるだけで、結果は変わったのかもしれない。だが、事実として悟空は死に、三人も幻影を追い続けていた。
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五月十二日、午前十時頃、南の都の南西九キロ地点に二人の悪魔が現れる。その日はちょうど悟空がレッドリボン軍を亡ぼした日からちょうど十六年の節目の日だった。そして悪魔の誕生、それから続く地獄の日々を憂うかのようにその日は曇っていた。
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(急に気がどんどん消えていく。どうしてだ。戦争でもあったのか、もしくは爆弾でも落ちたのか?いや…)
その島の異変に気付いたのはヤムチャだった。犬国王が国王に着いてから内戦はほとんど起こらなくなった。世俗を離れたライやピッコロ達とは違い、彼は世界の情勢を彼らの仲間内ではブルマに次いで詳しかった。だからこそそれが異常なことであると、彼が、彼だけが気づいた。
(昔の、ちょっと前までの俺なら、気にしないでいただろうに。俺が悟空の真似事なんてらしくないよな。)
ヤムチャが修業してきたのは仲間を守るため、そこに一般人は入っていなかった。それだけの力が彼にはなかったから。仲間のピンチが地球のピンチだったから今まで戦ってきただけだ。今回は仲間は誰も危険にない。最も地球人同士の戦いなど今のヤムチャにはただの児戯に過ぎないが。
「さて、爆弾なら一斉に死ぬし、軍隊がいると思ったんだが…いないな。」
戦争をしているのならば近くに行けば軍人がいる。少し近づけば分かるがそうと分かるような人影はなかった。ヤムチャは悲鳴のする方へと飛んでいく。
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「弱い、弱すぎるね、人間はさ。」
「俺たちが強すぎるんだ。なにせ…」
そう言って逃げている子供の背中に向かって気功波を放つ。悲鳴と共に煙が舞う。
「俺の気分ひとつで、少し指をかざすだけでどんな人間も俺の思うままだ。」
そう言って二人はクスクスと笑う。しかしその笑みは次第になくなっていく。
「違う、お前達の思うままにはならない。世の中、悪は滅びるようにできている。」
あのフリーザでさえと、言葉にせずに続ける。煙が晴れる。
「ドクターゲロのデータによれば、貴様はヤムチャだな。こんな早く孫悟空の手がかりを得られるとは。」
「ドクターゲロ?悟空?どうやら貴様が何者なのかも、聞かなければならないようだな。」
さあ、お逃げと子供を逃がして破壊者二人と相対する。
「なに、隠すほどのものではないさ。俺たちは孫悟空を倒すためにドクターゲロによって改造された最強の人造人間だ。」
「ま、私たちはゲロの命令なんてどうでもいいんだけどね。こんな風に改造してくれちゃってさ。でもせっかく手に入れた力だ。気に入らないものを壊して行こうかと思ってさ。」
「復讐も済ませてゲロも殺したし、好き勝手生きる。俺たちのやりたいように、生きていく。まずは、俺達の最強をかみしめるのも悪くないだろう?」
「改造されなきゃできないことをしておいて、しかも殺してるとか、トんでるな。お前等なら躊躇はいらないようだ。」
ドン!
ヤムチャが本気を出せば、いや加減を間違えば、地球上に存在するあらゆる暴力は太刀打ちできない。それは改造人間たる人造人間にも適応されるはずだった。彼は本気だった。本気で人造人間の片方、十七号を打った。
「流石に強いな。ドクターゲロの予測の孫悟空のデータよりも強いじゃないか。この分だと孫悟空はもっと強いのかな?」
しかし、それを難なく受け止められた。
「は?」
「もう少し楽しませてくれよ。」ガンッ!
「ぐっ!」
蹴りを入れられて吹っ飛ばされる。ビルが崩れて瓦礫がヤムチャを襲う。
「うらぁ!」
シュン!
それを気合だけですっ飛ばし、すぐに人造人間に襲い掛かる。彼をまとうオーラは赤い。
「おっと!」ガッ!
凄まじい速度で襲ってくるヤムチャを難なく払う。すぐに瓦礫を足場に利用して追撃にかかる。十七号を円の中心に置くように何度も何度も襲い掛かる。その猛攻はまるで獲物を襲う狼。
「こいつ面白い!いいおもちゃになりそうだ!」
十七号が嬉々とした残忍な笑顔でそう言った。
「十八号、手を出すなよ!これは俺のおもちゃだ!」
「はいはい、分かったよ、好きにしな。」
不機嫌そうに言って十八号はどこかに向かって行く。
「服でも探すのか?人は殺しすぎるなよ、楽しみはじっくりといかなきゃな。」
十七号が余裕そうに言った。
「させるか!」
ヤムチャがそう言ったが十七号が阻止する。
「おいおい、お前は俺と遊んでもらわなきゃ。」
「くそっ!」
*
「!」
亀ハウスで、クリリンはヤムチャが全力を出したことを感じ取る。しかし、ヤムチャが全力を出すに足る相手の気を感じ取れない。
「様子を見に行った方が良いよな。」
亀ハウスは南に浮いている孤島。すぐ近くだった。
*
「「!」」
ある旅路で、餃子と天津飯もヤムチャが全力を出したことを感じ取る。しかし、ヤムチャが全力を出すに足る相手の気を感じ取れない。
「天さん、これ…」
「ああ、様子を見に行こう。」
この場所は南の島から遠かった。
*
「「!」」
ある場所で、ライとピッコロもヤムチャが全力を出したことを感じ取る。しかし、ヤムチャが全力を出すに足る相手の気を感じ取れない。
「珍しい、ヤムチャが界王拳を使うとは。」
「尋常ではないことが起こってるのでは?」
「仕方ない、様子を見に行ってやるか。」
その場所は南の島から決して近くはなかった。
*
「ゴホッ!」
「脆いな、お前も。そこらの雑魚よりはやるみたいだけど、やっぱり手加減しなきゃ死んじまうってとこは一緒だな。」
シュッ!
油断した十七号に対してヤムチャは口角を上げて指を少しだけ上に動かす。それだけでいい。それだけで繰気弾は十七号に向かって行く。地面からの気弾は完璧な不意打ちとなって襲う。
「ぐっ!」
完璧な不意打ちは十七号を吹っ飛ばす。
「やはり見たまんま子供だな。隙が多すぎるぞ。」
額から血を流し、それでなくとも体は既にボロボロだった。それでも不敵に言い放つ。
「なるほどな、それは忠告感謝する。参考にしよう。」
そう言ってあらぬ方向に気功波を放つ。その様子にはダメージを受けている様子はない。
「うわっ!」
気功波を放った方向から辛くも回避したクリリンがヤムチャの横に並ぶ。
「クリリン!」
「無事でよかったです。ヤムチャさん。」
「貴様は…クリリンか。」
「俺も有名になったみたいだな。俺はお前のこと全く知らないのに。」
「そう言えば名乗ってなかったな。俺は人造人間十七号だ。まあ覚えたところでお前らは死ぬことになるんだが。」
ヤムチャとクリリンはそう言う十七号の言を聞き流しながら作戦を練る。
「逃げましょう。すいません、不意打ちで太陽拳打とうと思ってたんですけど。」
そう言いながら上を見上げる。太陽は雲に隠れている。
「いや、俺が余計なことしなけりゃその不意打ちが成功していたんだろうさ。クリリンのせいじゃない。」
クリリンであれば太陽拳でなくとも何か気を引ける技を使えただろうということだ。とはいえ、繰気弾を撃たなければクリリンは間に合わず、ヤムチャは十七号に致命傷を負わされていただろう。
「二人で行けばその隙も作れるでしょう。行きますよ!」
戦闘力ではヤムチャに分があるが、技の多彩さにおいてクリリンは一歩も二歩も秀でている。格上に勝つのではなく、格上相手に生き残る戦い方にクリリンは特化している。
「残像拳!」
そう言いながら十七号を囲うように動く。動けば動くほど残像は増えていく。まずは相手が気を探る能力があるかを見極める。繰気弾を食らったがクリリンの存在には気づいた。洞察力の賜物か、レーダーか何かが内蔵されているのか。
「こいつは、なかなか面白い技を使うな。スピードは今のヤムチャと互角くらいだから全く大したことのない雑魚だが。」
そう言いながら十七号は衝撃波を全方位に放つ。
「うわっ!」
「ぐわっ!」
二人とも弾き飛ばされた。
「さて、君たちはさっき逃げるとか言ってたみたいだけど、逃げたければ逃げてもいいんだぜ。もちろん無様な背中を打ち抜くけどね。」
その発言に二人は戦慄する。
「ああ、ここら一帯を気功波で焼き尽くすのもありだな。死人もたくさん出るだろうな。今生きている人間が何人この島にいるかは知らないけど。」
嬉々として殺害を予告する人造人間におののきながら、クリリンとヤムチャは攻撃を放つ。
「「波ああああああ!」」
拡散エネルギー波と連続のかめはめ波。当てるのではなく周りにあてることによって目くらましとする。土煙が舞い、相手から自分の姿が見えなくなる。その隙を逃さず、二人は目配せをして一斉に逃げ出す。残像拳を少し方角が違うところに濃く残すのも忘れず、クリリンの機転で衝撃波でできた血を残像拳の囮の方に数滴たらした。気を捉えられない以上、全力で逃げて構わない。この悪魔たちは自分たちではかなわなかったが、ピッコロやライなら、ベジータならば大丈夫だろうと逃げに全力を注いだ。ただ、土煙の性質上、飛んで逃げると見つかる可能性が高まる。まずは地上で充分に距離を取って隠れる必要があった。ただそれでも逃げ切れるはずだった、二人にとってはどうとでもなる逃避行だった。
ドン!
角を三つ曲がったところでクリリンが人にぶつかる。
「うわっ」
あまりに焦っていたのだろうそのまま転びかけたが何とか体制を立て直す。そして焦ったようにぶつかった人に言った。
「君、ここは危険だ、どうしてこんなところに…!いや、そんなことはいい、とにかく今は逃げよう。」
そう言ってその
*
ちょうどそのとき、ピッコロとライは島に到着していた。
「ひどいものですけど、戦争をしていたわけではなさそうですね。」
「地理的な話をすればここはたいして重要な場所じゃない。ここで人同士の争いが起こることは考えにくいだろう。」
大魔王として世界を征服しようとしていた父であり、自分、その記憶。
「ヤムチャさんとクリリンが心配です、急ぎましょう。」
*
「汚い手で触るんじゃないよ、おっさん。」
「クリリン!離れろおおお!!」
十八号が手を出すよりも先にヤムチャがクリリンを襟首をつかんで上空に投げる。
*
「チッ」
土煙の中で二人を見失い、うっすらと映った人影めがけて気功波を撃つが手ごたえはない。さらに血痕の残った方に特大のエネルギー波を撃ったが手ごたえはなかった。しかし彼は見つける。上空に投げられた人の姿を。
「はは!俺は運がいい!」
クリリンを殺すには大きすぎる、避けることも防ぐことも許されない全力のエネルギー波。
「あ、ああ、ああああああああああ!」
叫ぶ相手がいない。この絶望が払える人が、こいつなら大丈夫だとすがる相手がいない。そのようにしてクリリンは死んだ。
*
「クリリーーーン!!」
投げるという選択肢はその場においては最善手だった。とっさに投げたのが上空だったのは最悪手だった。叫んでいても人造人間はそんなものを考えてはくれない。
「このおじさんもうるさいねえ。」グサッ!
「うぐっ…」
肺を打ち抜かれ声も上げられず、最期を迎える。
「服が汚れちまった。こんなおっさんたちのせいで。チッ。」
気功波で完璧に消滅させられる。遺体すら残らなかった。
*
「あ、ああ…」
クリリンが殺されるのをその目で見た。次いでヤムチャの気がなくなるのを感じ取った。ライは呆然と言葉をこぼし、ピッコロは苦虫を嚙み潰したような顔だった。ライがオーラをどんどんと強くしていく。
「許さない、ゆるさないユルサナイ…」
「ライ、落ち着け!ライ!」
父の死、そして悟空の死、ライは今、死というものがトラウマになっていた。死が本当に今生の別れであると、強く実感していた。ライはそのまま特大の気功波が打たれた方に飛んでいく。
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「ずいぶんと派手にやったねえ…おや?」
十七号の元に戻ってきた十八号がそうこぼす。驚いたのはその速度、ヤムチャやクリリンを軽く超えている。
「貴様だな!クリリンを殺したのは!お前があああ!」
全力の蹴りを顔面に打ち込む。十七号はなすすべなく蹴り飛ばされる。
「なかなかやるじゃないか。それにしてもヤムチャといいクリリンといい、孫悟空は来ないくせに他はよく来るねえ。」
その発言がさらにライを怒らせる。
「じゃあお前は、ヤムチャさんの仇か。」
ふつふつと気が充溢してくる。普段はめったに使わない力を使う。白いオーラがだんだんと赤く染まっていく。
「おもちゃがなくなってしまったと思ったが、お前の方がずっといいおもちゃになりそうじゃないか。」
蹴り飛ばされた十七号が大してダメージを負っていなそうにがれきから出てきた。
「チッ」
それを見てライは舌打ちを撃つ。
「ライ、怒りに身を任せるな。こいつらは強い。俺達で確実に仕留める。」
ピッコロも合流し二対二の構図が出来上がる。
太陽拳だったらクリリンは死んでなかったでしょうし、空飛んで逃げきれてたでしょう。本編世界が偶然が生んだ奇跡の連続でうまくいった世界であれば未来世界は偶然が生んだ不幸の連続で壊されていく世界だと思ってます。もちろん最後には救いを与える予定ですけどね。予定です。
ヤムチャ45万
クリリン35万
悟空が死んでから人造人間出没までの期間の修業で全員を一律+15万にしてます。悟空の死はZ戦士+ベジータにとって等しくつらい喪失だったという意味を込めて。天津飯や餃子、ベジータもこの後の話で今の時期の戦闘力を書く時が来るのでお楽しみに。