「ライに、ピッコロ。こいつらもドクターゲロの予測データより強い。あてになんないな、ゲロのデータは。」
数回の打ち合いのあと十七号がそう言った。
「手伝ってやろうか、十七号」
「冗談じゃない、あいつら二人よりよっぽど強い、良い遊び相手になりそうだ。」
二対二といいながら一対二に傍観者が一人。それでも互角以上の戦いを相手に展開されていた。
「(引くぞ、ライ。少なくとも俺達じゃ勝てない。大丈夫だ、俺もお前も界王拳を全開までは出していない。逃げに徹すれば逃げ切れる。)」
早々に状況を判断しピッコロがそう話しかけてくるが、ライは首を横に振る。
「(逃げるなら一人で逃げてください。ドラゴンボールのこともありますし、それが最善手でしょう。隙は作ります。私はこいつらを、ヤムチャさんとクリリンを殺した二人から逃げるなんてできない。)」
「(馬鹿言うな。ベジータでも敵わない可能性も考えろ。ここで戦力を削ぐのは得策じゃない。)」
「(逃げるなら気を引きますから、その隙に逃げてください。)」
そこまで言ってライは飛び出す。自分が逃げることなど眼中にない。
「こんなもんじゃないんだろう?」
ライの連撃が十七号を襲うがそれを完璧に捌かれる。
「よっ、よっ、よっ」
蹴りも殴打もすべて両腕で捌かれる。こっちが四肢を使った戦いをしていながら相手は二肢で対応している。戦力差は大きい。
「その余裕を砕いてやる!」
ライが界王拳を二十倍まで引き上げる。赤いオーラは深紅に染まり、ライの全力が披露される。
「はあああ!」ドン!
急にスピードとパワーが増せば反応できない。普通なら。
「俺たちは人造人間だぞ?見えている攻撃なら急にスピードとパワーが上がったってどうしようもない。」ゴン!
「うぐぅ…」
「チッ!ライ!」
膝を入れられたライにピッコロも界王拳を最大まで引き上げ気功波を放つ。しかしその気功波が十七号に届くことはない。
「これは…」
「バリアーだ。自分を守るためじゃなくて、こういう使い方もできるんだぜ。」
ピッコロは十七号のバリアーに閉じ込められた。しかしピッコロもやられっぱなしではない。すぐさま対策を練る。二本の指に気を集中させる。
「もう少し楽しませてくれ…よっ!」
そう言ってライに向かって拳を放つ。
「ま、負けるかあ…!」
気弾を手のひらに出し、そのまま爆弾のようにぶつけようとする。
「よっと。」
バリアを十七号に当たる直前に出され気弾が爆発し、右手が焼ける。右腕を掴まれる。距離を取ることもできない。
「くっそお!」
残った左腕で気功波を今度は
「十七号!いつまで遊んでるんだい。そんな奴さっさとやってしまいなよ。」
「まあそう言うなよ、十八号。こいつらの顔がだんだんと絶望に染まっていくのを見れるのは最初だけなんだからさ。」
「わ、私の全力だった。全力のエネルギー波をこいつは…!」
「バリアのおかげかと思うか?生身で食らったっていいんだぜ?」
十七号は圧倒的な自信を持って挑発する。
「な、舐めるなあああ!」
オーラを再び深紅に染め、焼けた右手に左手を合わせ、両手で全力の気功波を放つ。凄まじいエネルギーに放った方向が更地になって海が広がる。
「やはりこんなものか。」
「そんな、そんな馬鹿なことが…」
ライが驚いたのは自分の気功波をもろに食らって平気でいる十七号に対してではない。バリアを脱出するために打ったピッコロの魔貫光殺砲、それはバリアを突き破って十七号に向かって行ったがそれを十七号は手のひらだけで受け止めて見せたのだ。
(勝てない)
その四文字がライの脳内を支配する。戦意が折れそうになる。
(だから、どうした!?)
今まで格上と戦うことなんていくらでもあった。今だにフリーザは超えられてないし、悟空には言わずもがな。ピッコロにもベジータにも及ばない。自分が最強でないことは知っている。今は、まだ。
「染まってやるもんかああああ!」
体力を削って衝撃波を放つ。命を燃やすほどではないが十七号がライの腕を離すには十分だ。
「(撤退、します…)」
テレパシーを送る。それを聞いているのは
「チッ!面倒な技を。ん!?」
追いかけようとする十七号だが、体が一瞬止まる。
「真・気功砲!」ピシュン!
ドゴオオオン!!
格上相手にも通用しうる命を削る技、鶴仙流の奥義。
「はあ!」ピシュン!
ドゴオオオン!!
「(天さんが食い止めてるうちに早く!)」
餃子の声に押されライとピッコロが逃げ始める。しかし、悪魔はそんなことを許さない。
「あの馬鹿。遊んでるからそうなるんだ。」
そう言ってエネルギー波を四人に向かってはなつ。今まで戦いに参加する様子を全く見せなかったから、しかも、十八号には十七号みたいな遊び心が無かったから、その攻撃は今までの何よりも脅威足りうる光線だった。
「うっ」
「ぐっ」
「わっ」
「うぐっ」
両手で二発、続けざまにもう二発。ライとピッコロは避けきれず、気功砲を撃っている天津飯も同様だ。辛うじて餃子だけが避ける。
「ライとピッコロ、逃がす!」
餃子は気功砲を撃った後の天津飯を連れて逃げようと、一番人造人間の近くにいた。彼の判断は早い。超能力を使用してライとピッコロを後方に投げ飛ばす。
「させないよ!」
しかしそれを見ていた十八号が両手で気弾を放った。片手ではない、両手の気弾は速度も威力もさっきとは違う。
「ぐっ…」
「餃子!」
超能力が切れてピッコロとライが落ちる。
「グググ、それっ!」
最後の渾身の力を振り絞り、ライだけ逃がす。ピッコロよりライの方が軽かった。だから逃がせた。
「餃子!天津飯!ピッコロ!」
叫んでもどうしようもなく、ライは撤退に成功する。
*
「!」
パオズ山の自身の家で、悟飯は次々と人が死んでいくのを感じ取る。悟飯は世界の情勢についてまだ詳しくはなかったが、それが異常なことであることは理解できた。
「様子を見に行った方が良いよね。」
悟飯の家は東のエリアのさらに奥地、すごく遠かった。
*
「はあ、はあ」
「ピッコロごめん、もう限界だった…」
気功波を受けて辛うじて立ち上がったピッコロは餃子の最期を看取る。天津飯も真気功砲と十八号の気功波のダメージで辛うじて意識はあるがもはや死を待つだけだ。
(チッ!俺もここまでか。)
「しまったねえ。一人逃がしてしまった。」
「少し遊びすぎたかな。まあいいだろう。どうせまたやってくるさ。」
「魔閃光!」
そこまで言ったところで気功波が飛んでくる。二人は辛うじて回避する。
「おやおや、次は…孫悟飯かな?」
「お、お前達、まさか…まさかクリリンさん達を…!」
「まあ、そうだな。俺達にはむかってきたから始末した。一人逃がしたけどな。」
「ゆ、許さない、絶対に許さないぞ!お前達!!」
「悟飯、逃げろ。お前じゃ勝てない!」
怒りに震え悟飯が向かって行く。怒りに任せた蹴りを十七号の首筋に打ち込む。ピッコロの声は届かない。
「お前、孫悟空の息子だろう、孫悟空は来てないのか?」
飄々とそう聞く十七号に悟飯はさらに怒りを増す。
「うるさいうるさい!お父さんがいれば、お父さんが生きてさえいれば、お前達なんか!」
そう言って連撃を繰り出す。すべて躱されてしまう。
「ほう、孫悟空は死んだのか。はは!これは良い。すごくいいことを聞いた!」
「くっそおお!」
連撃の嵐の中でもおしゃべりを続ける。
「ゲロはもう死んだやつを殺すために俺達を起動して殺されたんだ、はは!最高だ。傑作じゃないか!」ドン!
「カハッ」
そう言って鳩尾に重い一撃を入れると悟飯をピッコロと逆方向に投げ飛ばす。その時、
「地球を…舐めるなあああ!」ダン
ピッコロのまとうオーラが赤から深紅に染まる。四肢がもげる。ナメック星人であるピッコロは界王拳を十倍より引き上げることができない。再生する四肢は人間の、地球人のそれと比べて脆い。二十倍にしたら攻撃する前に体が壊れる。でも彼にとってはそれでよかった。彼には自分の命よりも大切なものがある。
「何だと?」
急激なパワーアップによる不意打ちは人造人間たちには効かない。でも、急に四肢を弾けさせながら突進してきたら?
「悟飯!今すぐ逃げろ!そして生きるんだ!」
瓦礫に十七号を吹っ飛ばしそう叫ぶ。
「これは流石に反応できないね。」
十七号を横目に十八号がピッコロに気功波を放ちピッコロが絶命する。そして即座に悟飯に手を向けた。
「あ、ああ…」
あまりのことに悟飯は動けない。
「き、気功砲!」
「うわっ!」
気功波が放たれる寸前、横から天津飯の気功砲が
「すまない、悟、は…」
その日、五月十二日、クリリン、ヤムチャ、餃子、天津飯、ピッコロの五名、人造人間の襲撃により死亡。あまりにもあっけなく、あまりにも唐突な絶望の幕開けだった。
*
「!」
とある渓谷でベジータはヤムチャが全力を出したことを感じ取っていた。そしてライが、ピッコロが、どんどんそこに向かい、気を開放させては気を消していった。
「地球人がどうなろうとも俺には関係のない話だ。」
ベジータがいる場所は南の島から遠かった。少なくとも様子を見に行こうと思える距離にいなかった。しかし、ベジータの態度も軟化し始めていた。あと数ヶ月あれば、いや、あったとして結果が変わっただろうか。それは誰にも分からない。
*
「うぐぐ…があっ!!」ドン!
気功砲に飛ばされた悟飯は衝撃波でそれをかき消す。髪は金色に輝き、瞳は澄み切った緑色、黄金の気を放っていた。
「うぐっ…」
気功砲をかき消すのに力を使いきって気絶し孤島に落下する。三人目の伝説の戦士がここに降臨した。
*
ドボン!
超能力で飛ばされたライは海に落ちた。
「………」
気を感じ取れるライはもう分かっている。ヤムチャが、クリリンが、天津飯に餃子が、そしてピッコロが殺されたことを。顔だけ海面に出して静かに涙を流す。たっぷりと時間をかけて動き出す。
(悟飯を迎えに行かなきゃ。)
悟飯の気が消えたところに向かって飛び始めた。逃げられたことは分かっていた。生きているだろうということも。
*
気絶している悟飯を連れてカリン搭に向かった。見つけるのはそこまで難しくなかった。気が消えた場所の真下にいたからだ。
*
「お久しぶりです。カリン様、ヤジロベーさん。」
「おう、久しぶり。」
「何もなけりゃ全く来ないのう、お主。」
「五年振り…いえ、二年振りでしたか。」
二人と最後に会ったのはサイヤ人襲来のときでない、悟空が死んだとき。
「しんみりしてしまったな。話を変えよう。とはいえ、これからのことも暗い話になるわけじゃが。」
「俺は戦わねえぞ。」
「お前には期待してないんで大丈夫じゃよ。」
「とりあえず、仙豆を悟飯に分けてください。このままでは悟飯も厳しいでしょうし。」
そう言ってカリン様から仙豆をもらう。悟飯に仙豆を食べさせると、傷が癒えて穏やかな表情になる。まだ目は覚めていない。
「ちなみに仙豆ってどれくらい余っているんですか?」
「結構あるぞ。十四粒だ。今ので一粒減ったがの。」
「十三とはまた不吉な。」
「まあお主らに預けておく。わしが持ってても仕方ないしな。」
そう言ったカリン様からライが仙豆を受け取った。
「それで、今後の話ですね。」
「ベジータが人造人間に勝てれば問題はないんじゃ。じゃが…」
「勝てないでしょうね。」
ライは感じ取っていた、ピッコロが二十倍界王拳を使ったこと、たった一度しか使えないとしてもその力はベジータに肉薄する。それでも通用しなかったからこそ、悟飯は逃がされたのだろう。
「ですので、これまで通り修業します。人造人間たちから隠れてあいつらに勝てるようになるまで。」
「それが良いんじゃろうな。悟飯はどうするのじゃ?」
「本人の希望次第です。一緒に戦ってくれるのであれば私の戦いの術は教えますが、学者を目指すというならばそれを尊重しようかと。」
「なるほどな、二人で戦えりゃあ、やつらを倒すのに必要なレベルも下がるけんど、子供にそんなことを頼むわけにはいかねえもんな。」
「じゃが、こいつは人が殺されてるのを黙って見ていられるほど大人ではないぞ?」
「ここで、私に任せておけって言えればいいんですけどね。」
寂しそうにライが笑う。
「悟空が生きてりゃあなあ…あ、すまん…」
ヤジロベーの言葉が三人に重くのしかかる。
「ま、まあとりあえず、悟飯の家に向かいます。チチさんも心配してるでしょうし。そしたらブルマさんと亀仙人さんのところに行って事情を話します。修業はそれから。」
「うむ、お主が人造人間に勝てる日が来ると、信じておるぞ。」
「ええ。任せてください。」
そう言って悟飯を背負ってパオズ山に向かう。
ライ150万
ピッコロ900万
天津飯125万
餃子25万
皆に活躍してもらいたかった。だから強化した。メカフリーザ戦を見てからの修業でパワーアップしないのはおかしいと思います。本編世界のとんでもないパワーアップをもとにそう考えました。悟飯だけは勉強してましたから据え置き。