いろんな場所を回った。氷山の近くで寒さに耐える修業、活火山の近くで暑さに耐える修業、ひたすらに過酷な場所で修業を続けた。瞬く間に十二年の月日が流れた。その中で失ったものもあった。まず、人類は約一割にまで減少した。四つの都の内三つが壊滅させられ、カプセルコーポレーションのある西の都も襲撃を受け、かつて都として繁栄した面影を残すのみとなった。そして、
「今日で七周忌ですね。私がここに来るのは…四年振りですか。あれから七年もたって…私があの時、あなたを助けていれば、何もかも違っていたのでしょうか。」
ライは一人カリンまで来て折れてしまったカリン搭の根本で手を合わせる。かつて天にも届こうというカリン搭は折れ、その残骸が森に横たわっている。そして、この地でライを鍛えた仙描のカリン様は人造人間の戯れで死んだ。ヤジロベーも巻き込まれただろうが、死体は見つからず、弔ってやることもできない。
*
これからの話は七年前の出来事。悟飯がライの元を離れるきっかけになった顛末。
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「そろそろ休憩しよう、悟飯。」
「いえ、まだやれます!」
世界をまたにかけて修業の旅を続けていた。二人とも五年前よりも相当強くなっていたが、人造人間との差は広く、いまだにライ達は人造人間から隠れながら修業を続けていた。
「無理をすればいいというものではない。適度に休憩しなければ逆に弱くなってしまう。」
「…はい。」
この頃の悟飯は焦っていた。人造人間には及ばず、ライにさえも勝つことができない。思い通りに行かない苛立ちもあった。
「ライさん、ずっと聞きたかったんですけど、どうして僕に界王拳を教えてくれないんですか?」
「界王拳は危険な技だから。それに、君は超サイヤ人になった方が強い。」
「でも、僕は全然超サイヤ人になれるような兆しもないですし、もし超サイヤ人になれたとしても重ね掛けすればもっと強くなれるじゃないですか。」
自分が混血のサイヤ人であり、半分しかサイヤ人の血がない。だから超サイヤ人になれないのではないかと、悟飯は日に日に膨れる不安に押しつぶされそうになっていた。
「私は実際に超サイヤ人になれるわけじゃないけど、超サイヤ人になった悟空を見てれば併用は無理があると分かる。超サイヤ人は気が荒ぶりすぎるんだ。そんな状況で精密な気のコントロールはできないよ。」
「そう、ですか。」
納得できないような声音だが、それでも悟飯はそれを受け入れる。
「さあ、そろそろ場所を変えよう。この環境の修業もそろそろ慣れてきた頃だしね。」
「今回は少し環境変えるの早くないですか?」
「いや、ここでの修業はもう十分だよ。次に行こう。」
そう言ってライと悟飯は移動する。ライ達がいた場所の近く、ライ達なら数分で着く都市が人造人間に襲われたのはライ達がその場所を離れてから数時間後のことだった。
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「悟飯、気持ちは分かるけど、ここからじゃもう間に合わないよ。」
「分かってます。分かってますけど…!」
さっきまですぐ近くにいただけに悔しそうに悟飯が言う。
(やっぱりあの気は人造人間たちだったか。少しだけ早く離れてよかった。)
ライは人造人間の気を探れた。彼ら二人は人と同程度の気はもっていたのだ。そのわずかな気を探るなど、悟飯はもちろん、仮にクリリンやヤムチャといった気の扱いに秀でた者たちであっても考えなかっただろう。普通の人と変わらない気など、一度意識が途切れれば、つまり睡眠をとれば、気は紛れてしまう。相当強く対称の気を記憶していないとできない。二人の気を見つけるのも、都で人を探すのと何ら変わりのない苦行だった。それを修業しながら行っていた。だからライは気付かない。悟飯の不満が破裂しそうになっていることを。
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そう言うことが、これまでの五年で何度か繰り返された。ライでも事前に逃げきれずギリギリの移動になることはそれなりの頻度で起こる。悟飯が、ありえないだろうと思いつつもライが人造人間たちの気を探れている可能性も思い至り始める。そしてその時が訪れる。
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「さあ、そろそろここも移動しよう。」
移動してから数週間が過ぎ、再び移動しようとしたときに悟飯から待ったがかかる。
「もう少しだけ、ここで修業していきませんか?」
「いや、でも…」
「じゃあ、せっかくカリンの近くに来ているのでカリン様にご挨拶してから移動しましょう。たまにはカリン様やヤジロベーさんにも会いたいです。」
確かにカリン搭はそこまではなれているわけではないが、決して近いというわけではなかった。何かに気づいたように言う悟飯にライは嫌なものを感じながらそれを拒絶する。
「だめだ。情が移るぞ。悟飯、私達の手は彼ら二人を囲えるほど大きくない。」
毅然とした声音で言うライに対して悟飯は信じられないものを見る目で返す。
「な、なに言ってるんですか。だってヤジロベーさんは一緒に戦った仲間ですし、ライさんにとってカリン様は師匠ですよね。その二人はライさんの大切な人には入ってないわけが…!」
「入ってない。彼らを私は守らない。」
濁った瞳がこれ以上ないほどライが本気で言っていることを表す。
「この際だから言っておくけど、私は君か、トランクスが危険に陥らないなら助けにはいかないよ。」
「なん、で?だってライさん、故郷の人達は?ブルマさんや亀仙人さん達、チャパさんとかいう人にも良くしてもらったって言ってたじゃないですか。」
悟飯は知らない。もう今言った人たちの半分が死んでしまっていることに。
「人造人間を倒す可能性が私より高いのは、多分今は悟飯だけ。将来性を鑑みればトランクスも。君たちは最後の希望なんだよ。だからその二人は守る。情はこの世界では邪魔なんだよ。それに、もうヤジロベーさんとカリン様は助からない。」
見計らっていたかのようにカリンから大勢の気が消える。
「あなたは、やっぱり。」
「薄々気づいていたんだね。流石悟飯。」
「人造人間の気を探って動きを読んでる。だからこれまで、あいつらにが破壊し始めた町は僕たちが急いでもどうしようもない場所ばかりだったんだ。」
今までの疑問が、疑念が氷解していく。それと同時に師と仰いだこの人が何か別のナニカに見えた。
「今まで、ずっと、あなたをすごい人だと、思ってました。目的のためにひたむきに努力を続けていて、地球人のみんなは見捨ててたけど、それも仲間のことを想ってのことだと、尊敬できる人だと、そう信じていたのに。」
悟飯の中で何かがこぼれだしそうになる。
「貴方は、自分が助かりたいだけだったんですね。だから人造人間を倒してくれそうな人だけ守るんだ。貴方は自分と自分の命に大切な人だけを守っていたんでしょう?」
何に対する怒りなのだろうか、髪は黄金と黒で明滅し、瞳も緑に変化しつつあった。
「落ち着いて悟飯、何を言って…」
「うるさい!!」
腕を払うだけの動作でライは吹っ飛び近くに生えていた木にぶつかった。界王拳も使わずに攻撃を受けたライは簡単に意識を刈り取られる。
「悟飯…だめだ…!」
「自分と大切な人を守るために修業してきた。貴方と違って。」
悟飯はカリンに向かって飛び出す。
分かっていたのだ。ライの考え方が、最も人類を多く残して人造人間を倒すのに最善の策だと。でもそれを受け入れるには悟飯は少しばかり幼かった。だから、歪んだ理解をした。ライが自分のためだけに動いているのだと。
*
「ヤジロベー、一刻も早くこの場を離れよ。ここに人造人間が来る。」
「へ?この辺鄙なとこに人造人間が来る!?ここなら安全だとおもったのによ。」
驚愕と絶望が入り混じるヤジロベーにカリン様は冷静に仙豆を投げ渡す。
「地球の環境が悪化してしまって仙豆を全く作れなかったが、この七年で一粒は何とか作った。持ってけ。」
「カリン様。ごめん、いや、ありがとう。」
そう言ってカリン搭を飛び降りる。
*
「見ろよ、十八号!人が上から降ってきた!」
「ちきしょう!みんなの仇だあ!」
飛び降りるのが少し遅かった。ヤジロベーは身動きの取れない状況で人造人間たちと鉢合わせる。
「はっは!面白い。」
落下の勢いを利用して十七号に切りかかる。
「死ねええええ!」ガキッ!
剣が折れる。腕が曲がる。
「!」
「面倒残さないでよ。十七号。」
「くっそおお!」
体をひねってよけようとするも避けきれず両足が切れる。
「ぎゃああああ!」
「うるさいねえ。仕留め損ねちまった。」
「両足がちぎれたんだ。もう死ぬだろ。さ、上に行こう。ひょっとしたらまだ人がいるかもしれない。」
*
ヤジロベーが落下した直後、カリン様がこぼす。
「この八百年で、一番退屈しなかった五年だったぞい。」
カリンの地を守るボラ、ウパ、他の村の者たちの気が消えていた。
「ずっと搭を守ってもらいながら、挨拶もしなかったのは薄情だったかの。」
「いやあ、まさか、本当にこんな上空に人がいるとは思わなかった。いや、人ではないか。」
「しゃべる猫なんて珍しいねえ。飼ってやってもいいよ。私の言いなりになってくれるならね。」
「冗談じゃ…」
その言葉を最後まで言い切ることなく人造人間によって殺される。
「十七号、まだあの猫は答えてなかったじゃないか。」
「そうか?拒絶の言葉が聞こえたんだが。そんなことより上に行こうぜ。この分だとまだ上に何かありそうだ。」
*
「ここは神聖なる神様の神殿だ。お前達が来て良いところではない。」
「やっぱりまだ人がいたねえ。」
「神だってさ。そんなものが存在したのか。是非お目にかかりたいね。俺たちを放置している時点で碌な神じゃないだろうけどな。」
「神様は、地球の神様は素晴らしい方だった。地球の先をいつも憂い、人の種としての成長を心から願っていた。」
そう言ってポポは構えをとる。現在存在する勢力でライと悟飯に次ぐ戦闘力を、ポポはもっていた。最も…
「その程度で俺達に歯向かうのは、愚かだな。」
どうしようもない差がポポと人造人間の間にはあった。
*
「しかしこの神殿とやらはどうやって浮いてるんだろうな。」
「そんなのどうでもいいじゃないか。早くここも破壊しようよ。」
「それもそうか、粉々にしたらどうなるのか気になるしな。」
一瞬でポポを倒した人造人間たちが神殿の上でそう話す。二人で気功波をため始める。
「魔閃光!」ピシュン!
そこに悟飯が到着する。
*
「おや?貴様は孫悟飯じゃないか。久しぶりだな。七年振りか?随分と雰囲気が変わったな。」
魔閃光を直撃しておきながら平然としている人造人間たちに対して、瞳を怒りに染め、黄金色の気をたぎらせて二人に相対する。
「おまえたち、ヤジロベーさんやカリン様、それにポポさんまで…!」
悟空が生きていた頃、まだ学者を目指していた、戦いに関わろうともしなかったお坊ちゃまでいられた頃に悟飯はよく父の武勇伝をせがんでいた。神様の元で修業した話もよく聞いていた。
「もう許さないぞ、お前達!」
そう言って悟飯は飛び込む。
「てりゃああ!」ガシッ!
拳を簡単に十七号に受け止められる。
「今日の俺はものすごく気分が良いんだ。面白いものも見れたしな。じっくりと遊んでやろう。」
「な、めるなあ!」
蹴りを入れるが簡単に躱される。そこからは目にもとまらぬ連撃を仕掛けていく。しかしそれも地球の戦士のレベルの話。人造人間たちには通用しない。
「なかなかの速さだな。ベジータに次ぐといってもいい。」パシッ!
まるで子供をあやすかのように軽々と受け止めた。
「威力もなかなかだ。」
「馬鹿にするんじゃ、ない!」
そう言って悟飯は気功波を連続で打ち込んでいく。煙が舞い視界が遮られる。
「エネルギー波の威力も申し分ないな。よし、決めた!」
そう言ったかと思うと十七号はすごい速度で悟飯に接近し、腹に強烈な一撃を加えた。
「おごっ…」
「七年前にお前たちの仲間を殺してしまってからは退屈だったんだ。今回はしばらく生かしてやろう。また挑みに来い。」
「う、ぐぐぐ…」
「もっとも、挑みに来るときは覚悟して来いよ?俺たちはいつでもお前を殺せる。少しばかり苛立っていたら手加減し損ねてしまうかもしれない。」
(くっそお…)
そこで悟飯の意識は途絶え、落下していった。
*
「全く遊びが好きだねえ。」
「まあいいじゃないか十八号。どうせこのままでも後十年もすれば人間は確実に滅んでしまう。少しばかり遊んでもそんなに差はないさ。」
「まあどうでもいいけどね。あんな奴。」
*
ズドン!
「おっと!」
カリンから落ちてきた悟飯をヤジロベーが掴む。
「う、うう…」
「どひゃあ、人造人間に向かって行ってまだ生きとるだがね。弔ってやろうかと思ったけんど、これならすぐに安静にさせた方が良いだろうな。いや、ライのとこ行けば仙豆があるかもしれねえ。」
そう言いながらライの気を探るが全く感知できない。医療機関も人造人間によってほとんどが機能を停止してから久しい。
「医者に見せてやりたいけんど、そんなこともできなくて、すまんなあ。」
カリンに住んでいた人たちの家を勝手に拝借し、そこに悟飯を寝かせる。
「じ、人造人間めえ…」
「ライの気が探れないのはやられちまったってことかねえ。」
ヤジロベーは人造人間たちに殺された人たちを埋めていきながら、そのようにため息をついた。
悟飯250万
ライ300万
変身込みでお互いに億超えを果たしました。