ドラゴンボールZ・オルタナティブ~世界線c~   作:三軒過歩

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(第四十四話)未来の悪魔

「いろいろ、お世話になりました。」

 

「おう。無事でよかったぜ。」

 

あれから一週間。驚異的な生命力で完治した悟飯はヤジロベーにそう礼を言う。

 

「おめえ、これからもやつらと戦うのかよ?」

 

「もちろんです。」

 

迷いなく即答した悟飯を見てヤジロベーは激励を送る。

 

「そうか、無理するな…とは言えねえな。死ぬなよ。」

 

「ええ。」

 

悟飯はそう言って飛び去った。

 

「そういえば、ライはどうなったのか聞けなかったなあ。」

 

ヤジロベーの独り言が空に消えて行った。

 

 

それから数年間、人造人間はそれまでに百の都市や街を襲った。そして彼らは悟飯が一人修業をしている山麓の近くの都市、オレンジシティを襲う。

 

 

「ぎゃああああ!」

 

「うわあああ!」

 

「馬鹿、逃げるのよ、早く!!」

 

「お母さぁん!お父さぁん!うわあああん!」

 

「ははは!逃げろ逃げろ!」キュン!キュン!キュン!

 

金切り声を上げる者、驚き逃げ惑う者、子供の手を引くもの、両親とはぐれて泣き叫ぶ者。その全員をエネルギー波で皆殺す。

 

「ひっ…!」

 

何とかエネルギー波を逃れた市民の前に十八号が立ちふさがる。

 

「それ。」

 

十八号の拳が胴を貫通する。血があふれ出す。

 

「やっぱり、遠距離から殺すより、直接やった方が気分がいい。」

 

返り血で赤く染まった十八号の姿は彼女の残虐さを引き立たせる。

 

 

「ビーデル、お前も早く逃げろ。」

 

人造人間が現れるとすぐにラジオで、テレビで、その他あらゆる機関でその情報が発信される。オレンジシティから外れた郊外の豊かな土地に家を構えていたサタンは娘にそう言った。

 

「パパは!?パパは逃げないの?」

 

「俺はあいつらを食い止める。やつらを倒すためにこれまでに厳しいトレーニングを積んできたのだからな。」

 

人造人間が現れる数日前に彼は天下一武道会で優勝をした。それでも彼の強さへの探求は留まるところを知らない。ひたすらにトレーニングを積み続けた。

 

「俺はもう、お前と、妻の愛したこの町を、守らなければならんのだよ。」

 

妻のミカエルは一年前に病気で死んでしまった。それからはそれを振り切るように、修羅のようにトレーニングに臨んだ。今ならば、今の俺ならばあの時のように守られるだけには、圧倒的な力にねじ伏せられることにはならない。

 

「待って!パパ!待ってよ!」

 

そう言ってサタンは人造人間たちに向かって走り出す。

 

 

「この辺の人間も大体片付いたかな。」

 

「まだまだこの都市にはたくさんの人がいるさ。まだまだ楽しめるだろうぜ。」

 

オレンジシティの北エリアを壊滅させた二人は東エリアに移動する。

 

「ダイナマイトキック!」ドン!

 

人造人間たちが移動しようとしたときに救世主が現れる。いや、この世界ではただの格闘家。しかしただのと言えないほどに強い。必殺の蹴りを入れえすぐさまバク転をして距離を取り二人に向かって見栄を切る。

 

「おらおらおら、黙って見てればいい気になりおって。だが残念だったな。ミスターサタンのいるこの町を襲ったのが運のツキだ。貴様等はここで俺にぶっ壊される。」

 

「悟飯たちのほかにも俺達に歯向かうやつがまだいたとは。世界は広いな。まあ、俺たちを超えるレベルの奴がいない程度には狭い世界だが。」

 

サタン必殺の蹴りを受けた十七号は大したダメージを負っていないようにー実際に全くのダメージを受けていないーいった。

 

「なっ!…フン!今のはほんの小手調べだ。次はもっと重たい攻撃をしてやる。」

 

「おう、どんどん攻撃してこい。歯向かってくる人間など貴重だからな。」

 

「ふざけやがって!」

 

そう言うとものすごい速度で前進していく。

 

「ローリングアタックサタンパンチ!キングオブドリーマー!」

 

「普通の人間ではなかなかの強さだな。まあ普通、では。」

 

「くっそおお!」

 

サタンの連撃も人造人間には当然通用しない。

 

「サタンミラクルスペシャルウルトラスーパーメガトンパンチ!」

 

サタン最高の一撃、隙も大きいが威力はサタンの技の中では最高の一撃を食らわせる。

 

「それがお前の最大威力かな?」

 

「くっ!」

 

自分の最大攻撃も通用しなかったことに愕然とし、表情がどんどん真っ青になっていく。それを見て人造人間は何かを思いついたかのようにニヤリと微笑んだ。

 

「グワーッ!」

 

そう言って吹っ飛ばされる。それを見て十八号はため息をついた。

 

「な、なんて技だ…!痛い、痛いぞ!」

 

そう言って十七号はのたうち回る。

 

「ふ、ふふ、フハハハハハ、何気ないパンチに見えるかもしれないが数秒後に爆発的な衝撃に襲われるサタン必殺の技だ。どうだあ!まいったかあ!」

 

サタンの顔がどんどんと喜色に染まり始める。

 

「やったあ!流石パパね。」

 

優位になったタイミングとビーデルがサタンに追いついたのは同時。

 

「む!ビーデル、来てしまったのか。ここには来るなといっただろう!」

 

サタンが強い口調で言う。何を憂いているのかとビーデルが疑問に思うがその疑問はすぐに氷解する。

 

「へえ、娘がいたのか。これはなかなかいいショーが見れそうじゃないかい。」

 

「確かにそうだな。まさかこうなるとは俺も予想外だ。」

 

場の空気が一瞬で氷つく。

 

「や、やっぱり俺程度では…」

 

「お前も実力があるのは認めるが、残念だったな。俺たちは貴様等と次元が一つも二つも違うんだ。悟飯たちに先に会っていればこんな身の程知らずなことをしないですんだのにな。」

 

「ビーデル!今度こそ逃げるんだ。ここは俺が食い止める。急げ!」

 

「残念。無理だ。」

 

そう言って気功波を放つ。その一撃はサタンが全く反応できずにサタンの頬をかすめて走るビーデルに迫る。

 

「いや、可能だ。」

 

人類にとって、少なくともサタンとビーデルにとって本当の救世主が現れる。

 

 

「!」

 

悟飯がライを振り切って超化してから悟飯はライの元に戻ってこない。一人で修業していたライは、悟飯が人造人間の元に向かった気を感じ取る。

 

「…」

 

助けに行っても無駄かもしれない、今の悟飯を一度助けたところで何度でも悟飯は人造人間たちの元に行くだろう。

 

「それでも、私は。」

 

ライは悟飯のところに向かう。

 

 

「うん、人を襲っていれば来てくれると思ってたぞ。孫悟飯。」

 

「呼んでくれればいつでも殺しに行くぞ。人造人間。」

 

「こうして呼んでるじゃないか。」

 

「呼び方を考えろ。屑ども。」

 

気と怒りをたぎらせて吐き捨てるようにいった後悟飯は人造人間に向かって行く。

 

「逃げるぞビーデル。何者かは知らないが、あいつに任せてここを離れるんだ。」

 

そう言ってサタンたちが逃げるが、その前に十八号が立ちふさがる。

 

「逃がしはしないよ。あいつの鼻っ柱をへし折れるのはそれなりに気分が良いんだ。」

 

「くっ!」

 

向きを変えて走り出す二人を十八号は狙い撃つ。

 

「させるか!」

 

悟飯が十七号を振り切って動く。二人を庇うように飛び出す。気弾を放ち、十八号のエネルギー波を防ぐ。

 

「うわっ!」

 

「きゃあ!」

 

その余波で二人は吹っ飛ばされる。二人はまともに動くことができなくなる。

 

「おいおい、お前は俺と遊んでもらわなきゃ。」ドン!

 

「うぐっ…」

 

実力が足りない状態で援護に回れば当然大きな隙になる。一撃でやられるレベルの、大きな隙に。

 

「が、あああ」

 

首筋に大きな一撃を食らって地に這いつくばった。

 

「あらら。威力の調整を間違っちまったかな。」

 

「十七号、そろそろ行かないと、この都市の人が逃げちまうよ。早く行こう。」

 

「ふむ、そうだな。行くか。」

 

そう言うと十七号と十八号の両手にエネルギー波が集まる。

 

 

薄れゆく意識の中で、悟飯はビーデルたちの姿が目に入る。サタンが必死にビーデルを庇う姿が目に入った。

 

「うう…」

 

自分が受け取れなかった、受け取ることを諦めた親の愛情を一身受けるビーデルを見て嫉妬するほどに羨ましい。でも同時に、この人たちは死んでほしくないと思った。この残酷な世の中で少しでも幸せをかみしめてほしいと、そう思った。

 

「はっ!」

 

残った気をバリアのように展開し、それを二人に向かって打つ。意識を失う直前、何か暖かいものが、自分を抱きとめたような気がした。

 

 

「ビーデル!」

 

「パパ!」

 

地上に落ちた光が、爆弾のように広がっていくのを見た。それから庇おうとパパが両手を広げているのも見えた。しかしそれがどうしようもないだろうことを悟る。その時に自分たちを助けようとしてくれた青年から放たれた球体が自分たちを覆う。それに気づいたサタンが自分のことをエネルギー波から守るように抱きしめる。凄まじい衝撃が襲った。バリアによって相当な威力が削がれているが、それでも二人には十分な威力が襲っていた。

 

 

ライがオレンジシティに着いたのは悟飯が致命傷を食らって、人造人間たちがエネルギー波を打ち込もうとしているときだった。彼は悟飯が逃げ遅れたであろう二人を庇おうとしているのを見る。

 

(君は、やっぱり正義の味方だよ。)

 

迫るエネルギー波から悟飯を庇うように抱きしめて気でバリアを張る。凄まじい衝撃をその一身に受けた。

 

 

人造人間の二人が去っていき、ライが気によるバリアを解除する。

 

「あいつら、わざと悟飯が死なない程度の威力に抑えてた、のか?」

 

悟飯が残った気を使って二人を庇わなければ、死にはしない程度の威力ではあった。最もそれから動けるかは別の話で、そのまま死んでしまう可能性の方が高かった。

 

「さて、悟飯が庇った二人の様子も見ておかないとかな。」

 

悟飯に仙豆を食べさせて、ライは気を失った悟飯を背負い、ビーデルたちの元へ行く。いくら悟飯が庇っていたとはいえ、バリアでは防ぎきれない威力で二人は死んでしまっているだろうと思っていたが、意外なことに予想は裏切られる。

 

「う、うう…」

 

「驚いた、まだこの子には意識がある。」

 

仙豆を取り出してビーデルに与える。そしてサタンの生死を確認するが、サタンは既に息絶えていた。娘を守り切った武闘家の最期に敬意を払って手を合わせる。

 

「パパ!しっかりして!パパ!」

 

ビーデルが意識を取り戻すと、すぐに倒れている父親をゆする。次第にビーデルは父の死を察する。

 

「そんな、パパ、嫌だよ…!」

 

ビーデルが泣きわめく中、ライは何も言えなかった。

 

 

「みっともないとこを見せて、ごめんなさい。貴方達が助けてくれたんですよね。ありがとうございます。」

 

「死を悼む姿がみっともないわけはないよ。あと、そのお礼は悟飯に言ってくれ。私は何もしてない。」

 

「でも、私はあの光でボロボロになってたんです。貴方が何かしてくれたんじゃないんですか?」

 

「それも、悟飯が命がけで守ったから助けただけ、いや、私の都合で君を助けたから、こっちが感謝しなきゃいけないくらいかな。」

 

「え?」

 

そう言うと悟飯をおろして仙豆を一粒だけ取り出して、残りの仙豆の入った袋をビーデルに渡す。

 

「君を助けた人は孫悟飯って言って、私の…」

 

そこまで言いかけたところではたと言葉が止まる。悟飯は私の何なのだろう。少し前までは弟子だった。でも今の悟飯は自分のことを師とは呼んでくれないだろうし、一緒に戦う仲間という表現も、いまや正しくない気がする。自分と悟飯の関係の希薄さに、ライは今更ながら気づいた。

 

(これだから悟飯のことを分かってあげられなかったのかな。)

 

「えっと、あなたの名前は何ですか?あと、この袋をどうすればいいんですか?」

 

言葉に詰まったのを見てビーデルがライに聞いてくる。

 

「ああ、そうだったね。私の名前はライ。その袋は、悟飯にあげてくれ。えっと、餞別だって言って渡してくれるとありがたいかな。あと、仙豆一粒ぶん、勝手に使わせてもらう分だけ、一つ借りにしておくって伝えておいてくれ。」

 

「えっと、あの、悟飯…さん、を置いてどこか行っちゃうんですか?」

 

もう去ろうとしているライを引き留めるようにビーデルが言う。

 

「ごめんね。君を助けたのは悟飯への伝言をお願いしたかったからなんだ。だから重ねて言うけど、私に感謝しなくていいから。」

 

そう言ってライは飛び立つ。

 

「あ、そうだ、()()()()、悟飯は君と同い年だよ。だから変に丁寧に接されると困るはず。少し気を使ってあげて。」

 

「へ?」

 

今度こそライは飛び立った。




人造人間17号4億
人造人間18号3億
サタン99.9
ビーデル66.6
サタンはひたむきに努力を続けた結果人外の力を手に入れました。まあ死んでしまったんですけど。ライがビーデルの名前を知っていたりサタンがSATANなのは、番外編で語ります。
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